もし東京オリンピックが開催されなかったら? ―東京オリンピック開催の新型コロナ感染拡大への影響の推定―
[22/09/24]
提供元:PRTIMES
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[本文はこちら] https://bmjopen.bmj.com/content/12/9/e061444.full
東京2020 夏季オリンピック大会は、新型コロナウイルス流行の最中、そして緊急事態宣言の発令下、最大限の感染対策を講じる中での開催となりました。一方で、「もし」オリンピックが開催されていなかった場合、感染者数の推移はどうなっていたでしょうか。
東京財団政策研究所では、オリンピック開催に伴う新型コロナ感染者数の推移を、政策介入評価の文脈で多く用いられる数理モデル「合成コントロール法」を活用して推定しました。これはオリンピック開催という政策介入が“行われなかった場合”、いわゆる反実仮想“if”を推定する方法論です。
感染拡大を懸念し、オリンピックの開催は意見が分かれました。メガ・イベント開催における感染症伝播リスクに関する知見は、まだまだ途上です。科学的手法に基づいて“if”を推定する本研究は、将来のパンデミック下におけるメガ・イベント開催判断の議論に資する情報を提供します。
本結果は、9月21日付で、査読付き国際医学誌であるBMJ Openに掲載されました。
[論文概要]
目的:本研究では、東京オリンピック開催(2021年7月23日〜8月8日)による新型コロナ感染状況への影響評価を行いました。
方法:日本で仮にオリンピックが開催されなかった場合の、国内1日あたりの感染者数の推移を、他地域のデータを合成(加重平均)することによって仮想な値を創出する手法である合成コントロール(Synthetic Control)法を用いて推定しました。加重平均はオープンソースから様々な予測因子を抽出し、42か国を対照群として構築しました。
結果:オリンピック閉会日の時点で、人口100万人あたりの実際に報告された感染者数(7日間平均で109.2人)は、反実仮想のそれより115.7%多い推定結果でした(反実仮想:50.6人)。オリンピック期間中の累積感染者数に関しては、実際は143,072人と、反実仮想の89,210人より61.0%多い推定結果でした(p=0.023)。反実仮想の感染者数の推移は、実際の推移より10日遅れる結果と推定されました。
考察:日本では、アスリートや関係者の外部との接触を遮断する「バブル」方式が採用されました。しかしながら、オリンピック期間中の実際の感染者数が反実仮想よりも多かった推定結果は、様々な理由でローカルな感染が増加した可能性を示唆しているかもしれません。例えば、アスリートは感染予防対策に関して一般市民の模範となる可能性がある一方で、オリンピック開催に際して、アスリートが例外的に入国できたことや、オリンピック選手の感染対策ルール違反が大きく報道されたこと等が、一般市民の感染対策遵守に影響を与えた可能性があります。他にも、緊急事態宣言下でのオリンピック開催というダブル・スタンダードの認識や、いわゆるオリンピックムードも、関係しているかもしれません。
結論:今後も新たな新興感染症が報告される可能性もあり、本研究の結果は、新型コロナあるいは将来のパンデミック下におけるメガ・イベント開催判断の議論に資する情報を提供します。
[関連研究プログラム]
「ヘルス・メトリクスを用いた政策インパクトのモニタリングと評価に関する研究」
https://www.tkfd.or.jp/programs/detail.php?u_id=34
「ポスト・コロナ時代における持続可能かつレジリエントな医療・看護・介護システムの構築に関する研究」
https://www.tkfd.or.jp/programs/detail.php?u_id=33
[執筆者]
本研究は「ヘルス・メトリクスを用いた政策インパクトのモニタリングと評価に関する研究」プログラムの野村周平主席研究員(研究代表)、米岡大輔主席研究員を中心とする研究班によって行われました。
米岡 大輔 東京財団政策研究所 主席研究員
江口 哲史(千葉大学予防医学センター講師)
福元 健太郎 東京財団政策研究所 研究協力者(学習院大学法学部教授)
宮田 裕章 東京財団政策研究所 研究主幹
川島 孝行(東京工業大学情報理工学院助教)
田上 悠太(早稲田大学商学学術院(ビジネス・ファイナンス研究センター)助教)
田淵 貴大 東京財団政策研究所 主席研究員
ガズナヴィ サイラス (慶應義塾大学医療政策・管理学教室客員研究員)
渋谷 健司 東京財団政策研究所 研究主幹
野村 周平 東京財団政策研究所 主席研究員(※責任著者)
*……………………………………………………………………………………*
◇◆東京財団政策研究所の方向性◆◇
戦後75年が過ぎ、国内外を問わず、社会の大きな転換が進んでいます。この大転換は、戦後の政治・経済・社会の体制から本格的に脱皮し、市民一人ひとりが独立した人間として自らの人生と社会の充実、国家の再生、平和の維持に携わる新しい時代を日本にもたらしています。また、この新たな時代を創るための政策研究・実践のイノベーター(革新者)として、戦後の体制からの独立した政策シンクタンクが必要とされています。
当財団の研究部門は、この大転換期が求める日本再生のイノベーターを目指します。
◇◆取り組む分野◆◇
国際情勢と歴史認識への冷静な視座のもと、下記5領域で約30の研究プログラムを並行して進めています。
I. 経済・財政、環境・資源・エネルギー
II. 健康・医療・看護・介護
III. 教育・人材育成、雇用・社会保障
IV. 科学技術、イノベーション
V. デジタル革命、デジタル化による社会構造転換
[画像: https://prtimes.jp/i/56667/24/resize/d56667-24-ac5a1033c2dbab491d67-0.jpg ]
所在地:〒106-6234 東京都港区六本木三丁目二番一号 六本木グランドタワー34階
URL:https://www.tkfd.or.jp/
東京2020 夏季オリンピック大会は、新型コロナウイルス流行の最中、そして緊急事態宣言の発令下、最大限の感染対策を講じる中での開催となりました。一方で、「もし」オリンピックが開催されていなかった場合、感染者数の推移はどうなっていたでしょうか。
東京財団政策研究所では、オリンピック開催に伴う新型コロナ感染者数の推移を、政策介入評価の文脈で多く用いられる数理モデル「合成コントロール法」を活用して推定しました。これはオリンピック開催という政策介入が“行われなかった場合”、いわゆる反実仮想“if”を推定する方法論です。
感染拡大を懸念し、オリンピックの開催は意見が分かれました。メガ・イベント開催における感染症伝播リスクに関する知見は、まだまだ途上です。科学的手法に基づいて“if”を推定する本研究は、将来のパンデミック下におけるメガ・イベント開催判断の議論に資する情報を提供します。
本結果は、9月21日付で、査読付き国際医学誌であるBMJ Openに掲載されました。
[論文概要]
目的:本研究では、東京オリンピック開催(2021年7月23日〜8月8日)による新型コロナ感染状況への影響評価を行いました。
方法:日本で仮にオリンピックが開催されなかった場合の、国内1日あたりの感染者数の推移を、他地域のデータを合成(加重平均)することによって仮想な値を創出する手法である合成コントロール(Synthetic Control)法を用いて推定しました。加重平均はオープンソースから様々な予測因子を抽出し、42か国を対照群として構築しました。
結果:オリンピック閉会日の時点で、人口100万人あたりの実際に報告された感染者数(7日間平均で109.2人)は、反実仮想のそれより115.7%多い推定結果でした(反実仮想:50.6人)。オリンピック期間中の累積感染者数に関しては、実際は143,072人と、反実仮想の89,210人より61.0%多い推定結果でした(p=0.023)。反実仮想の感染者数の推移は、実際の推移より10日遅れる結果と推定されました。
考察:日本では、アスリートや関係者の外部との接触を遮断する「バブル」方式が採用されました。しかしながら、オリンピック期間中の実際の感染者数が反実仮想よりも多かった推定結果は、様々な理由でローカルな感染が増加した可能性を示唆しているかもしれません。例えば、アスリートは感染予防対策に関して一般市民の模範となる可能性がある一方で、オリンピック開催に際して、アスリートが例外的に入国できたことや、オリンピック選手の感染対策ルール違反が大きく報道されたこと等が、一般市民の感染対策遵守に影響を与えた可能性があります。他にも、緊急事態宣言下でのオリンピック開催というダブル・スタンダードの認識や、いわゆるオリンピックムードも、関係しているかもしれません。
結論:今後も新たな新興感染症が報告される可能性もあり、本研究の結果は、新型コロナあるいは将来のパンデミック下におけるメガ・イベント開催判断の議論に資する情報を提供します。
[関連研究プログラム]
「ヘルス・メトリクスを用いた政策インパクトのモニタリングと評価に関する研究」
https://www.tkfd.or.jp/programs/detail.php?u_id=34
「ポスト・コロナ時代における持続可能かつレジリエントな医療・看護・介護システムの構築に関する研究」
https://www.tkfd.or.jp/programs/detail.php?u_id=33
[執筆者]
本研究は「ヘルス・メトリクスを用いた政策インパクトのモニタリングと評価に関する研究」プログラムの野村周平主席研究員(研究代表)、米岡大輔主席研究員を中心とする研究班によって行われました。
米岡 大輔 東京財団政策研究所 主席研究員
江口 哲史(千葉大学予防医学センター講師)
福元 健太郎 東京財団政策研究所 研究協力者(学習院大学法学部教授)
宮田 裕章 東京財団政策研究所 研究主幹
川島 孝行(東京工業大学情報理工学院助教)
田上 悠太(早稲田大学商学学術院(ビジネス・ファイナンス研究センター)助教)
田淵 貴大 東京財団政策研究所 主席研究員
ガズナヴィ サイラス (慶應義塾大学医療政策・管理学教室客員研究員)
渋谷 健司 東京財団政策研究所 研究主幹
野村 周平 東京財団政策研究所 主席研究員(※責任著者)
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◇◆東京財団政策研究所の方向性◆◇
戦後75年が過ぎ、国内外を問わず、社会の大きな転換が進んでいます。この大転換は、戦後の政治・経済・社会の体制から本格的に脱皮し、市民一人ひとりが独立した人間として自らの人生と社会の充実、国家の再生、平和の維持に携わる新しい時代を日本にもたらしています。また、この新たな時代を創るための政策研究・実践のイノベーター(革新者)として、戦後の体制からの独立した政策シンクタンクが必要とされています。
当財団の研究部門は、この大転換期が求める日本再生のイノベーターを目指します。
◇◆取り組む分野◆◇
国際情勢と歴史認識への冷静な視座のもと、下記5領域で約30の研究プログラムを並行して進めています。
I. 経済・財政、環境・資源・エネルギー
II. 健康・医療・看護・介護
III. 教育・人材育成、雇用・社会保障
IV. 科学技術、イノベーション
V. デジタル革命、デジタル化による社会構造転換
[画像: https://prtimes.jp/i/56667/24/resize/d56667-24-ac5a1033c2dbab491d67-0.jpg ]
所在地:〒106-6234 東京都港区六本木三丁目二番一号 六本木グランドタワー34階
URL:https://www.tkfd.or.jp/