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HIV/エイズ:ウイルス量検査の最新事情をMSFが分析。途上国でも検査拡大を




2012年7月25日
プレスリリース

開発途上国でもHIV治療が普及拡大しているが、富裕国では当たり前のウイルス量測定はいまだ十分とはいえず、対策が求められている。国際医療・人道援助団体、国境なき医師団(MSF)は7月23日、ウイルス量測定が普及すれば、患者は抗レトロウイルス薬(ARV)の併用療法を可能な限り継続し、薬剤耐性の発現も回避できると、調査報告書「検出不可域:ウイルス量測定が開発途上国のHIV治療を向上させる理由(UNDETECTABLE: How Viral Load Monitoring Can Improve HIV Treatment in Developing Countries)」で発表した。

ウイルス量検査とは、患者の血液中のHIVウイルス量を測定するもの。血液1ミリリットルにおけるHIVウイルスの遺伝物質のコピー数が50以下であれば、その患者のウイルス量は“検出不可”とされる。それはつまり、患者が健康に生活を送り、感染を拡大させる可能性も大幅に低減したといえる水準までウイルスが抑制されているということだ。

ウイルス量検査が不可欠な理由は2つある。1つには、薬の服用にたびたび問題が生じている患者を特定し、アドヒアランス(服薬順守)のための追加的なカウンセリング開始の契機となること。2つめは、薬剤耐性が発現し、別の治療法への移行が必要な患者を特定する方法となることだ。ウイルス量検査により、高価な治療薬への不必要な移行で、その後の治療の選択肢を減らす事態を避けることができる。また、服薬はしているものの、薬剤耐性が原因で現行の併用療法が効きめを失っている患者の特定にも役立つ。

MSF南アフリカのエリック・フーマーレ医師は、「HIV治療における先進国・開発途上国間のダブルスタンダードに終止符を打つ時です。命をつなぐのに必要な服薬を患者に徹底させるとともに、ウイルス量測定が受けられる環境を確保する必要性が高まっています」と話す。先進国では、ウイルス量検査は日常的に行われているが、コストが高いため、限られた条件下での実施には不向きで、開発途上国に住む人びとのほとんどがこの検査を受けられずにいる。

同報告書でMSFは、患者のいる場で行うポイント・オブ・ケア検査(POCT)から、自治体の研究所でも行える検査方法まで、従来のウイルス検査技術と、今後3年以内に市場に登場することが予想される新技術の多くを幅広く概観。また、検査の複雑さとコストの壁の解決策も提案している。

MSFは先ごろ、ウイルス量検査用のPOCT機器1種類を実地実験したが、その一方で、アフリカにおけるウイルス量検査の著しい不足を解消する一助として、今後3年にわたり、新旧のウイルス量検査技術を実施実験するための助成金を、資金援助機関である国際医薬品購入ファシリティ(UNITAID)から提供された。後者の新たな実地実験は、MSFがHIV治療プログラムを展開するアフリカ7ヵ国で行われる予定。この実地実験の目的は、新たな検査方法や製品のうち、制約の多い環境下での使用に最もふさわしいものを特定することだ。新規のPOCTを試す実地実験や、既存の技術の新しい活用方法を模索する実地実験も予定されている。


開発途上国で現在採用されている主なHIV測定方法は、白血球の1種であるCD4数の測定だが、各患者の治療への感受性を十分な精度で把握することはできない。ウイルス量検査であれば、CD4数測定よりも迅速に問題を特定することができる。

南アフリカ共和国、カエリチャにおけるMSFのプログラムでは、日常的なウイルス量検査が実現されており、ウイルス量が“検出可”とされた人びとを対象に、治療のアドヒアランス向上を促すためのカウンセリングが提供された。その3ヵ月後に行われた検査では、“検出可”だった患者の71%において、ウイルス量が“検出不可”になっていた。

カエリチャでMSFの治療を受けているファネルワ・グワシュは次のように話す。
「ウイルス量が“検出不可”だったことが誇らしくて、皆に自慢しました。ARV治療は一生続けなければならないため、大きな効果が出ていることがわかれば、励みになります。明日への希望を持ち、今後も普通の生活が送れるという確信が得られるのです」

MSFは現在、23ヵ国で22万人にHIV治療を提供している。


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