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第22回総会で「脱原発」、「TPP反対」の特別決議を採択

 福島第一原子力発電所の重大事故によって、国のエネルギー政策・原子力推進政策の是非がようやく大きな社会的争点となったことを受け、生活クラブ連合会は、脱原発をめざす運動に力を入れて取り組んでいきます。
 また、東日本大震災を利用して「TPPを復興の礎にせよ」との論調が政界・財界に見受けられるため、TPPに反対する見解を社会に対して明らかにすることにします。
 以上の方針にもとづき、生活クラブ連合会は2011年6月24日の第22回通常総会で、二つの特別決議を採択しました。

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【特別決議(1)】 脱原発社会をめざしましょう

 1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故による放射能汚染を受け、生活クラブは1年以上の組合員討議と提携生産者との協議を経て、当時の国の暫定規制値の1/10にあたる放射性セシウム37ベクレル/kgを自主基準として設定しました。そして当時、基準を超えた茶葉を、苦渋の判断で処分しました。
 生活クラブはこれまで、原発推進に象徴される浪費型の暮らしと社会のあり方を見直すため、資源・エネルギー・CO2の削減をめざし、おおぜいの組合員参加による日々の共同購入運動をつうじて、グリーンシステムを推進してきました。また、他団体とともに、六ヶ所再処理工場に反対する全国運動に取り組んできました。風力・太陽光発電などの再生可能エネルギーにチャレンジしてきた会員単協の活動もありました。
 これらの実践をふまえ、2010年に決定した「第5次連合事業中期計画」では、「原子力発電に依存しない、脱原発社会、持続可能なエネルギー社会に向けた取組みを進めます」と、初めて脱原発を明確に方針化しました。そうしたなか、2011年3月に福島第一原発の重大事故を迎えるに至りました。
 日本は今、チェルノブイリの時をはるかに超える放射能汚染に直面しています。大気・土壌・海洋・人体・作物の汚染は現在も続いており、最終的な汚染の範囲と程度を未だに見極めることができない事態です。
 放射能汚染が人の健康に与える影響に閾(しきい)値はなく、できるだけ避けるのが望ましいこと。より影響を受けやすい子どもや妊婦にとってはなおさらであるということ。しかし、広域・長期にわたり汚染されつつある東日本に、多くの組合員が、そして多くの提携生産者が暮らしていかざるを得ないこと。日本に暮らす私たちは、この二つの課題をふまえて再出発するしかありません。生活クラブの共同購入運動も、この現実から逃れることはできません。
生活クラブ連合会は「福島第一原子力発電所事故に関する見解」を決定し、自主基準の運用を停止し、国の暫定規制値にもとづき供給するという苦渋の判断を行ないました。生活クラブに集う組合員が抱える不安を受けとめ、向き合い、生産者とともに解決していくために、まず、自主検査を実施してその結果を明らかにしています。そして今夏中に、検査体制・設備を強化します。
 汚染値が見えなかったことによる不安から、検査体制の強化によって、今後は具体的な値が見えることによる不安へと変わっていくことが予想されます。検査体制強化後の最大の課題は、おおぜいの議論をつうじて、提携生産者とともに、放射能による健康リスクの低減をめざすための自主基準をどう定め直せるかです。この課題に、2011年度から2012年度にかけて取り組んでいきます。各会員単協でのおおぜいの組合員討議を積み上げて検討し決定していきましょう。
 生活クラブはこれまで、食をめぐるさまざまな課題に対して、おおぜいの消費者と生産者が知恵と力を合わせ、持続的な利用結集をつうじて一歩ずつ問題解決をめざしてきました。東日本大震災そして福島第一原発の重大事故に直面している現在そしてこれからも、共同購入運動の可能性をめざし、その限界性も自覚しながら、再び一歩ずつ問題解決に取り組んでいきましょう。
 共同購入運動の取組みをさらに強めながら、同時に、脱原発をめざす運動にもこれまで以上に力を入れて取り組んでいかなければなりません。国のエネルギー政策・原子力推進政策の是非がようやく大きな社会的争点となったことを受け、原発問題に対する具体的な政策提案を行なっていきます。
 危険を地方に押しつけながら、原発由来電力をすべて首都圏で浪費してきた社会・経済構造への真摯な反省から、私たちの暮らしと社会は再出発しなければならないでしょう。放射能に怯えながら暮らすエネルギー浪費型社会の価値観を見直し、「生活の質」をめざす社会への転換をはかる時です。日本における原発の「安全神話」が崩壊しつつあるこの機を、エネルギー政策の歴史的転換点にすべきです。
 「『六ヶ所再処理工場』に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク」に集う団体をはじめ、脱原発をめざす全国の仲間とともに、脱原発社会、持続可能なエネルギー社会に向けた活動の取組みを強めます。
 まず、現在のエネルギー需給に影響を及ぼさない、六ヶ所再処理工場の本格稼動中止と、原発の新規建設中止から求めます。

 また、以下の政策提案について今後の検討課題とし、組織討議をすすめます。
○省エネルギー化、そして再生可能エネルギーの開発普及を強化しながら、既存の原発についてリスク順に廃炉にする。
○停止・廃炉までの運転期間の対策として、安全対策・情報開示のさらなる強化と第三者監視機関の早期設置。
○長期目標は、すべての原発・関連施設の廃炉。


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【特別決議(2)】 TPPに反対し、食料・飼料の自給と飼料備蓄を進めます

 民主党政権の政策のなかでもっとも衆目を集めた行政刷新会議の事業仕分け。昨秋行なわれたその第3弾において、「飼料穀物備蓄対策事業」が対象になりました。農林水産省は、60万トンあった備蓄実績に対して2/3に削減した40万トンで概算要求していましたが、事業仕分けのワーキンググループはさらにその要求の半額に削減すべきと結論づけました。その結果、従来の1/3の20万トンまで削減することになりました。さっそく約20万トン分の競争入札が行なわれ、4月に売却を実施することが決まっていました。
 こうしたなか、3月に東日本大震災が発生しました。
 飼料穀物の約9割を輸入に依存しているため、東北から関東にかけての太平洋側の輸入港と物流機能が停止・停滞すると、東北各地をはじめとして畜産業の飼料在庫はすぐに逼迫し、国は飼料穀物備蓄を貸付け放出する事態となりました。その規模は、4月末時点で35万トンにのぼりました。
 万一、事業仕分けの結論どおりに20万トンにまで備蓄を削減してしまっていたとしたら、国内の飼料は底を尽き、日本の畜産業は壊滅的な状況に陥っていたところでした。政府は4月の国会答弁において、事業仕分けの結論が誤りだったことを認め、農林水産省の概算要求レベルである40万トンに復活させるとしました。
 食料安全保障の観点から、この政策の失敗に学ぶべきことは3つです。一つは、目先の経費削減ではなく、輸入に依存している飼料穀物の備蓄を少なくとも震災前の60万トンに戻し、しっかり行なう必要があること。次に、飼料用米をはじめ飼料穀物の自給力を向上し、過度な輸入依存によるリスクを低減すべきことです。そして、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加を前提とした政府の姿勢について、あらためて見直しを求めるべきことです。
 TPPについては、生活クラブ連合会はすでに11月の理事会で次の見解を確認しています。


(1)  食料安全保障をはじめ、この国のかたちのゆくえを大きく左右するTPPについて、国民的な議論も合意形成もないまま、交渉・参加を前提とした検討に着手すべきではありません。
> TPPは日本の第1次産業に壊滅的な打撃を与える恐れが高く、「食料・農業・農村基本計画」で掲げた「自給力向上」政策に反しており、食料安全保障政策の放棄につながりかねません。個別所得補償制度では、これらの問題は解決できません。また、食料生産・食料関連産業だけにとどまらず、地域経済(金融、保険、医療など)に与える悪影響も深く懸念されます。

(2)  生活クラブの取組みにとってTPPは、産消提携によるさまざまな実践のこれまでの成果と将来に向けた可能性を壊す恐れが高く、強く懸念します。
> TPPによるさらなる価格破壊によって、志ある生産者、自覚的消費者がこの国にますます存在しにくくなることは避けるべきと考えます。


 TPPへの参加について、政府は当初、今年6月までに結論を出すとしていましたが、東日本大震災を受けて検討がいったん止まったため、結論は今秋以降に持ち越される見通しです。東日本大震災を利用して、「TPPを復興の礎にせよ」との論調が政界・財界に見受けられるため、引き続き監視が必要な状況です。
 「第3の開国」という空虚なスローガンの下、政府・経済界と多くのマスコミは、TPPの論点を「工業VS農業」「都市VS農村」という構図にすり替えようとしてきましたが、上記見解のとおり事実は異なります。農業という一産業の問題ではなく、日本の社会・経済のあり方そのものが問われる問題です。
 もし日本がこれに参加した場合、TPPは実質的に例外条項なき日米FTAになると言われており、米国のオバマ大統領が2010年1月の一般教書演説で表明した「輸出立国宣言」を実施するための舞台となります。日本から米国へ輸出する工業製品への関税が若干引き下げられたとしても、米国によるドル安誘導の為替操作でその効果は吹き飛ばされるため、輸出は増えないと見られています。日本に輸出の恩恵を与えぬまま、日本の農業・金融・保険・医療などの完全な市場開放を迫るのが米国の外交戦略です。関税だけでなく、米国が「非関税障壁」と批判している日本の消費者保護政策も、緩和・廃止の槍玉に挙がるおそれがあります。たとえば遺伝子組み換え食品をはじめとする食品表示制度や、食品添加物・農薬・BSEなどの食品安全基準などです。
 以上の理由から、生活クラブ連合会は本総会を機に、TPP交渉への参加に反対する態度を内外に明らかにします。

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