<メディア向けセミナーレポート>不妊治療専門「トーチクリニック」が「就労と不妊治療の両立」をテーマにオンラインセミナーを開催
[24/06/18]
提供元:PRTIMES
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不妊治療専門 「torch clinic(トーチクリニック)」(住所:東京都渋谷区恵比寿4-3-14、院長:市山卓彦)は、2024年5月22日(水)に「就労と不妊治療の両立」をテーマにオンラインセミナーを開催しました。第一部では杉山産婦人科丸の内の黒田院長にご登壇いただき、第二部では実際に不妊治療に係る支援制度を行っている株式会社エムティーアイ様と制度導入を検討されているSTORES株式会社様にご登壇いただき、それぞれトーチクリニック院長の市山と対談しました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-94dee89dfc755a96c512-0.png ]
登壇者
・トーチクリニック 市山卓彦院長
・杉山産婦人科 丸の内 黒田恵司院長
・株式会社エムティーアイ コーポレート・サポート本部 人事部部長 岩渕由希氏
・STORES株式会社 PX部門HR本部カルチャーグループマネージャー ダイバーシティプロジェクトリーダー 高橋真寿美氏
・司会 田中麻耶氏
不妊治療の実態
不妊治療を受ける女性は、仕事と治療の両立が困難なケースが多く、不妊治療が原因での離職率は17%にのぼるというデータがあり、トーチクリニックはこれを解決すべき大きな課題と捉えています。
8年連続で出生数が減少し、ますます進行する少子化ですが、体外受精による出生数は増加傾向で2021年に体外受精で生まれた子どもは過去最多の6万9797人となりました。これは11人に1人が体外受精で生まれたということになります。体外受精を始めとする不妊治療は2022年から保険適用化され、金銭面における受診ハードルが下がり、今後も不妊治療を受ける患者数は伸長することが想定されます。
[画像2: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-6feba1daab606c55a604-5.png ]
第一部
杉山産婦人科丸の内 黒田院長、トーチクリニック市山院長のトークセッション。「クリニック目線、企業目線での就労と治療の両立のために取り組むこと」
(黒田院長)
不妊治療の保険適用が拡大したことで、初診患者数は明らかに増加し、特に若年女性が少し増えた印象です。体外受精を行っている方の平均年齢は、これまで40歳近かったですが38〜39歳に下がりました。保険診療で体外受精を行っている方が7〜8割となり、自費で行うような高度な検査を希望する方は減少しました。以前は体外受精に抵抗がある方が多かったですが、気軽に治療出来るようになったと思います。ただ、着床不全や不育症などの難治性の方など保険適用がない検査や治療が容易にできなくなってしまったことや不満がある方は、ある程度いらっしゃいます。
[画像3: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-5570a36cca8eba9ff4e8-2.png ]
国や自治体は、不妊治療に通いやすい環境整備のための休暇制度やリモートワークなどの柔軟な働き方の導入の推奨を行い、「不妊治療と仕事の両立がしやすい環境整備に取り組む企業」に対する認定事業などを積極的に行っていますが、あまり普及していないことが問題かもしれません。個人の意見としては、企業の代表は男性が多く、不妊治療や妊娠について理解することが難しいことから、進んでいない部分もあると思います。
(市山院長)
トーチクリニックに通院される患者様の平均年齢は35〜36歳と、当院でも治療年齢の若年化を感じています。不妊治療は自由診療を背景に発展してきた領域ですが、保険診療になったことで、黒田院長のおっしゃるように患者様の治療選択のハードルは下がり、診療の標準化はより進むと思っています。
[画像4: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-27e63dc9a802bdd6466b-1.png ]
経済的負担軽減と医療サービスの質の標準化が進むのはポジティブですが、治療と就労との両立のサポートが十分行き届いていないことは依然課題です。厚生労働省の調査によると、実に67%の企業が「不妊治療を行っている従業員がいるかいないかを把握していない」と回答していて、これは心配な数字です。不妊治療が社会全体に浸透し徐々に市民権を得てきましたが、「不妊治療をしているが職場には明かしていない」と答えた人が58%もおり、まだまだ周囲に共有しにくい状況にあるかと思います。また製薬会社が行った調査では、「制度があるけど利用しなかった」という人が43%もおり、支援の制度はあるものの利用されていない背景があります。クリニックサイドで出来ることもまだまだあると思いますし、企業がスタッフを理解して利用しやすい制度設計を進めていただくことも必要かなと思います。
(黒田院長)
保険適用拡大する前の2018年のアンケート調査では、不妊治療をしながら仕事をされている方が約8割で、不妊治療と仕事の両立を困難と感じている方が87%と非常に多く、離職率が16.7%でした。不妊治療は急な休みを取らないといけなかったりして、そうすると不妊治療のことを理解していない方からは心無いことなどを言われてしまうことがあるようです。
当院としてできることとして、土日祝関係なく毎日診療を行なって、遅い日は19時まで開院しています。丸の内という場所柄か、思ったよりも仕事の後に来院される方は少なめで、むしろ朝採血をして仕事をした後、昼前や午後に来院し採血結果をもとに診療する方が多いです。そのため、昼休みを短めにして診療をするなど対応していますが、今後どの時間にニーズがあるかをアンケート調査したいと考えています。
(市山院長)
不妊治療は、通院の頻度が高く、突然受診日が決まり、受診あたりの時間もかかることが大きな負担になっており、クリニックサイドはより患者様が通院しやすい環境を整えていくべきだと思います。
当院ではこの時間的制約を減らせるように工夫しております。具体的には黒田院長の杉山産婦人科と同様、土日祝や平日夜間の診療はもちろん、診療以外の滞在時間を極力減らすために、自社開発アプリで事前問診や、完全キャッシュレス事後決済を導入しています。アプリ上で後日会計ができるので、診察・治療が終わればそのままご帰宅も可能です。加えて、院内処方にも応じているので薬局で薬を受け取る時間も省略できます。当院に通う患者様にアンケート調査を行ったところ、離職を選択した方は5.7%と、先行研究の16%を大きく下回ることができています。
一方で、医療サービスの質を落とさず広い診療時間に対応するには、優秀なスタッフの確保は必須です。全国的に生殖医療に従事するスタッフ不足は深刻な問題で、今後は生殖領域の魅力を広く伝えていってリソースを確保する必要があると考えています。特に現在体外受精で出生する子供が11%になっているにも関わらず、現行の医学部・研修医教育では、生殖領域にしっかり関われるカリキュラムは組まれていません。出来るだけ早くから生殖医療に触れる機会が必要と考えます。
第二部
約10年前から不妊治療の支援制度の導入をしている株式会社エムティーアイ 岩渕様、現在支援制度を導入検討しているSTORES株式会社 高橋様とトーチクリニック市山院長のトークセッション。「企業が従業員向けに取り組んでいる不妊治療に関する支援制度の実態と利用について」
(岩渕氏)
2013年から導入している不妊治療の休暇制度を利用した従業員はこれまで2名おり、どちらも治療に集中できてよかったと話しています。一方で制度ができる前はフレックスをうまく使って通院をしていましたが、薬の副作用による体の不調や心の負担が仕事に影響していたという従業員もいました。現在は長期休職制度の他にも、1日単位で治療のための休暇が取れる制度も導入しています。現在はスーパーフレックスやテレワークという働き方が標準化しているため、あえて制度を利用しない人もいて利用率が上がっていない部分もありますが、制度自体があることが「会社としてバックアップするよ」というメッセージにもなるので、従業員の心理的な安全性につながっていると思います。
[画像5: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-a890ba4b957dedfe3f7f-3.png ]
課題は不妊治療の基礎知識を理解してもらうためにセミナーや研修は行なっていますが、知識や理解は人によって差があるのが実態です。制度を利用しやすく、周囲も受け入れやすくできる、歩み寄りの機会を創出していきたいと考えています。また、制度をどこまで充実させるかという方向性は、今後議論していく必要があります。不妊治療は、病院に行ったら「明日来てください」と言われるなど、自分で時間のコントロールできない問題があり、待ち時間の目安がわかる仕組みなどがあればそれだけで安心感があると思います。
(高橋氏)
2023年8月に「STORES ダイバーシティ方針」を掲げており、この方針の実現に向けて2024年中を目処に福利厚生の見直しを行う予定です。「STORES のバリューを体現する人が、STORES で働く時に壁になること」に対して、それを乗り越えるためのサポートを行うための制度をつくる想定です。
[画像6: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-4002ae316d4a69f05185-4.png ]
すでに「Fun for Family」というパートナーや家族を持つ人をサポートする休暇制度は導入しています。また、女性の育休取得率は100%、パートナーの育休取得率も85〜100%と非常に高く、多様な働き方を支える土台は現状も一定あります。その上で、追加で不妊治療専門のサポートを検討したいと考えています。不妊治療をしている従業員は、有給休暇等を活用して仕事と両立している実態がありますが、名前のついた制度があることで「会社から両立を支援してもらっている」と安心してほしいと考えています。ダイバーシティ方針を掲げる段階で、多様な人々が働くことができる組織をつくっていくことについては経営陣も含め目線が合っています。ただ休暇制度を目的ごとに作ると際限がないので、一人一人のライフスタイルに合わせて柔軟に選択できるように、全体のパッケージとして総合的に見直していきたいと考えています。また、福利厚生や休暇制度をつくるということは、「企業として、そのことを応援している」というメッセージにもなりうると思っています。生き方や働き方が多様になる中で、企業としては社会的な文脈も捉えながら制度を検討していく必要があると考えています。
(市山院長)
ご登壇いただいた2社様のように、意識高く不妊治療の制度設計に向き合っている企業はそんなに多くないように感じていたので、大変素晴らしい企業様だなと感じました。実際、全体の97%の企業が、「不妊治療の休暇制度はあっても周知を進める活動はしていない」というデータもあります。一方で企業側の努力もありますが、医療者サイドもやらなければいけないことが多くあると考えています。不妊治療中は、受診が頻回かつ突然のため、急に業務調整が必要になったり、受診あたりの平均滞在時間は2-3時間と皆さんの想像以上に長いです。かつ治療の終わり(妊娠)の確約もなく、時期も見えないため、治療スケジュールの可視化と事前の調整は大変重要だと切に感じています。当院でも行なっている事後決済やオンライン診療は導入ハードル低いので、今後広く不妊クリニックで導入を検討していただき、業界全体でこの社会課題を解決していきたいものです。
トーチクリニック開院2年の活動報告
トーチクリニックは2022年5月に開院し、2024年現在月間に通院される患者様の数は1000名を超えてきました。施設規模を表す指標として、年間採卵術の件数が用いられることが多いですが、現在当院は年間に1300-1400件程度の採卵術を実施しており、体外受精を実施する全国600施設の中でも、50-120番目(※1)の中規模クリニックに成長しました。
[画像7: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-751749e69bcffacbdcdb-6.png ]
2023年5月〜2024年4月の1年間での妊娠例は人工授精で177件、体外受精で439件でした。国内で凍結胚移植による妊娠数は約8万件強(※2)であり、200件に1件程度が当院での妊娠例と推計されます。
不妊治療を理由に仕事をやめる選択をする人は全体の16%(※3)に上り、「通院回数が多い」「時間的な制約と心理的な負担」といった理由が多いです。
一方、当院で実施したアンケート調査では、土日や夜間の開院、院内処方、事後決済などによって、当院の患者様で通院を理由に仕事をやめた人は5.2%と先行研究よりも低く、85.2%の方が「周囲の治療に悩んでる人に当院を進めたい」とお答えをいただけています。
[画像8: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-d2b4f5f370ccb96af2cf-7.png ]
(参考)
※1ARTデータブック2020年 体外受精・胚移植等治療周期数からみた施設数の分布
※2ARTデータブック2021凍結融解胚移植による妊娠数より
※3厚生労働省福井労働局「不妊治療と仕事との両立支援のお取組みのご案内」2022
就労との両立を叶えるためのトーチクリニックの5つの施策
1.受診日・手術日の選択肢の拡充
これまで月曜日と金曜日の午後を休診としておりましたが、休診日を撤廃し、週7日を開院・一部平日に20時までの診療日を設定致しました。仕事帰りに通院しやすいように、またカップル揃って受診しやすい環境を整えております。
体外受精や卵子凍結にむけた採卵術も休日に実施することが出来ますので、卵子にとってのベストタイミングと仕事のタイミングも合わせやすくなります。
2.アクセスの良い立地
当院はJR恵比寿駅から徒歩1分に位置しています。恵比寿駅からは4つの路線が利用可能で、都心で働く患者様の通院しやすさを重視しております。
3.専用アプリ導入による在院時間の短縮
自社開発の患者様専用アプリを導入し、予約、事前問診、完全後日キャッシュレス決済をアプリで完結でき、在院時間の短縮および患者様の受診体験の向上につながっています。
予約機能はオンタイムにスムーズに予約ができるだけでなく、予約データを元に、診療項目ごとの待ち時間の原因分析や、混雑時間帯の予約枠調整等も行うことが可能です。
問診をあらかじめアプリで行うことで、院内で問診にかかる時間の15分を削減だけでなく、事前に情報が得られるため患者様に合わせた治療を行うための薬剤やオペレーションの準備が出来、スムーズな診療提供に寄与しています。
不妊治療においてカップルの知識とモチベーションを合わせせることが大変重要ですが、生殖領域は難しい言葉や、内容が多いため、診察室内での説明を帰宅後にパートナーへ説明することは難しいです。そのため電子カルテに記載した説明内容をアプリで閲覧できる文書作成機能を開発し、好評をいただいています。
[画像9: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-84701a5e26d97d1847f9-8.png ]
4.治療計画の提案
当院では、年齢と妊娠率・流産率について説明を初診の段階で行い、自身の妊孕性の理解を深めてもらった上で、タイミング法、人工授精、体外受精の妊娠率について説明を行うことで、患者様が自身の治療方針を決定する時間を短縮することができます。
また、いつ、何人授かりたいか(家族計画)をヒアリングして可視化し、2人以上の挙児希望がある場合、より多くの受精卵を獲得し、将来の妊娠に向け凍結もできる体外受精も提案します。
身体や家族状況、ご本人同士の希望に応じた効率的・効果的な治療を提案することで、結果的に治療期間の短縮につながります。
5.オンライン診療の導入
当院にてブライダルチェックや不妊症検査をご希望の方を対象にオンライン診療を導入致しました。院内にいらっしゃらなくとも、初回の予診、結果説明及び今後の治療プランの相談をいただけます。
またオンラインを併用した遠隔診療を開始致しました。遠隔地にお住まいの患者様を対象に、当院で体外受精をはじめとした高度生殖医療を提供するための施策で、手術や注射指導など、当院でしか行えない診察や手技以外は、オンラインを利用してご自宅近くのクリニックもしくは提携院様と連携して実施します。診察毎に結果を当院にご報告いただくことで、当院へのご来院回数を最小限に、治療を受けていただけます。
現在はまだ対象を限定しておりますが、今後効果を確認しながら対象範囲も拡大していく予定です。
医療法人トーチクリニック理事長・恵比寿院院長 市山卓彦のご紹介
[画像10: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-6ce7eb33585ebd511294-9.jpg ]
2010年 順天堂大学卒。国内に約1,000名程の生殖医療専門医。年間7000周期の高度生殖医療を行う西日本最大の不妊治療施設セントマザー産婦人科を経て、前職の順天堂大学浦安病院では不妊センターの副センター長を務める。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、2021年の同学会で世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど研究の分野でも注目されている。2022年5月 torch clinicを開院。2023年10月医療法人torch clinicを設立し、理事長に就任。
【資格】
日本生殖医学会生殖医療専門医
日本産科婦人科学会専門医
日本産科婦人科学会専門医指導医
臨床研修指導医
日本生殖心理学会評議院
<クリニック概要>
クリニック名:torch clinic(トーチクリニック)
所在地:東京都渋谷区恵比寿4-3-14 恵比寿SSビル8階
電話:03-6447-7910
アクセス: JR『恵比寿』駅 東口徒歩1分、 日比谷線『恵比寿』駅 徒歩3分
URL: https://torch.clinic/
[画像1: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-94dee89dfc755a96c512-0.png ]
登壇者
・トーチクリニック 市山卓彦院長
・杉山産婦人科 丸の内 黒田恵司院長
・株式会社エムティーアイ コーポレート・サポート本部 人事部部長 岩渕由希氏
・STORES株式会社 PX部門HR本部カルチャーグループマネージャー ダイバーシティプロジェクトリーダー 高橋真寿美氏
・司会 田中麻耶氏
不妊治療の実態
不妊治療を受ける女性は、仕事と治療の両立が困難なケースが多く、不妊治療が原因での離職率は17%にのぼるというデータがあり、トーチクリニックはこれを解決すべき大きな課題と捉えています。
8年連続で出生数が減少し、ますます進行する少子化ですが、体外受精による出生数は増加傾向で2021年に体外受精で生まれた子どもは過去最多の6万9797人となりました。これは11人に1人が体外受精で生まれたということになります。体外受精を始めとする不妊治療は2022年から保険適用化され、金銭面における受診ハードルが下がり、今後も不妊治療を受ける患者数は伸長することが想定されます。
[画像2: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-6feba1daab606c55a604-5.png ]
第一部
杉山産婦人科丸の内 黒田院長、トーチクリニック市山院長のトークセッション。「クリニック目線、企業目線での就労と治療の両立のために取り組むこと」
(黒田院長)
不妊治療の保険適用が拡大したことで、初診患者数は明らかに増加し、特に若年女性が少し増えた印象です。体外受精を行っている方の平均年齢は、これまで40歳近かったですが38〜39歳に下がりました。保険診療で体外受精を行っている方が7〜8割となり、自費で行うような高度な検査を希望する方は減少しました。以前は体外受精に抵抗がある方が多かったですが、気軽に治療出来るようになったと思います。ただ、着床不全や不育症などの難治性の方など保険適用がない検査や治療が容易にできなくなってしまったことや不満がある方は、ある程度いらっしゃいます。
[画像3: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-5570a36cca8eba9ff4e8-2.png ]
国や自治体は、不妊治療に通いやすい環境整備のための休暇制度やリモートワークなどの柔軟な働き方の導入の推奨を行い、「不妊治療と仕事の両立がしやすい環境整備に取り組む企業」に対する認定事業などを積極的に行っていますが、あまり普及していないことが問題かもしれません。個人の意見としては、企業の代表は男性が多く、不妊治療や妊娠について理解することが難しいことから、進んでいない部分もあると思います。
(市山院長)
トーチクリニックに通院される患者様の平均年齢は35〜36歳と、当院でも治療年齢の若年化を感じています。不妊治療は自由診療を背景に発展してきた領域ですが、保険診療になったことで、黒田院長のおっしゃるように患者様の治療選択のハードルは下がり、診療の標準化はより進むと思っています。
[画像4: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-27e63dc9a802bdd6466b-1.png ]
経済的負担軽減と医療サービスの質の標準化が進むのはポジティブですが、治療と就労との両立のサポートが十分行き届いていないことは依然課題です。厚生労働省の調査によると、実に67%の企業が「不妊治療を行っている従業員がいるかいないかを把握していない」と回答していて、これは心配な数字です。不妊治療が社会全体に浸透し徐々に市民権を得てきましたが、「不妊治療をしているが職場には明かしていない」と答えた人が58%もおり、まだまだ周囲に共有しにくい状況にあるかと思います。また製薬会社が行った調査では、「制度があるけど利用しなかった」という人が43%もおり、支援の制度はあるものの利用されていない背景があります。クリニックサイドで出来ることもまだまだあると思いますし、企業がスタッフを理解して利用しやすい制度設計を進めていただくことも必要かなと思います。
(黒田院長)
保険適用拡大する前の2018年のアンケート調査では、不妊治療をしながら仕事をされている方が約8割で、不妊治療と仕事の両立を困難と感じている方が87%と非常に多く、離職率が16.7%でした。不妊治療は急な休みを取らないといけなかったりして、そうすると不妊治療のことを理解していない方からは心無いことなどを言われてしまうことがあるようです。
当院としてできることとして、土日祝関係なく毎日診療を行なって、遅い日は19時まで開院しています。丸の内という場所柄か、思ったよりも仕事の後に来院される方は少なめで、むしろ朝採血をして仕事をした後、昼前や午後に来院し採血結果をもとに診療する方が多いです。そのため、昼休みを短めにして診療をするなど対応していますが、今後どの時間にニーズがあるかをアンケート調査したいと考えています。
(市山院長)
不妊治療は、通院の頻度が高く、突然受診日が決まり、受診あたりの時間もかかることが大きな負担になっており、クリニックサイドはより患者様が通院しやすい環境を整えていくべきだと思います。
当院ではこの時間的制約を減らせるように工夫しております。具体的には黒田院長の杉山産婦人科と同様、土日祝や平日夜間の診療はもちろん、診療以外の滞在時間を極力減らすために、自社開発アプリで事前問診や、完全キャッシュレス事後決済を導入しています。アプリ上で後日会計ができるので、診察・治療が終わればそのままご帰宅も可能です。加えて、院内処方にも応じているので薬局で薬を受け取る時間も省略できます。当院に通う患者様にアンケート調査を行ったところ、離職を選択した方は5.7%と、先行研究の16%を大きく下回ることができています。
一方で、医療サービスの質を落とさず広い診療時間に対応するには、優秀なスタッフの確保は必須です。全国的に生殖医療に従事するスタッフ不足は深刻な問題で、今後は生殖領域の魅力を広く伝えていってリソースを確保する必要があると考えています。特に現在体外受精で出生する子供が11%になっているにも関わらず、現行の医学部・研修医教育では、生殖領域にしっかり関われるカリキュラムは組まれていません。出来るだけ早くから生殖医療に触れる機会が必要と考えます。
第二部
約10年前から不妊治療の支援制度の導入をしている株式会社エムティーアイ 岩渕様、現在支援制度を導入検討しているSTORES株式会社 高橋様とトーチクリニック市山院長のトークセッション。「企業が従業員向けに取り組んでいる不妊治療に関する支援制度の実態と利用について」
(岩渕氏)
2013年から導入している不妊治療の休暇制度を利用した従業員はこれまで2名おり、どちらも治療に集中できてよかったと話しています。一方で制度ができる前はフレックスをうまく使って通院をしていましたが、薬の副作用による体の不調や心の負担が仕事に影響していたという従業員もいました。現在は長期休職制度の他にも、1日単位で治療のための休暇が取れる制度も導入しています。現在はスーパーフレックスやテレワークという働き方が標準化しているため、あえて制度を利用しない人もいて利用率が上がっていない部分もありますが、制度自体があることが「会社としてバックアップするよ」というメッセージにもなるので、従業員の心理的な安全性につながっていると思います。
[画像5: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-a890ba4b957dedfe3f7f-3.png ]
課題は不妊治療の基礎知識を理解してもらうためにセミナーや研修は行なっていますが、知識や理解は人によって差があるのが実態です。制度を利用しやすく、周囲も受け入れやすくできる、歩み寄りの機会を創出していきたいと考えています。また、制度をどこまで充実させるかという方向性は、今後議論していく必要があります。不妊治療は、病院に行ったら「明日来てください」と言われるなど、自分で時間のコントロールできない問題があり、待ち時間の目安がわかる仕組みなどがあればそれだけで安心感があると思います。
(高橋氏)
2023年8月に「STORES ダイバーシティ方針」を掲げており、この方針の実現に向けて2024年中を目処に福利厚生の見直しを行う予定です。「STORES のバリューを体現する人が、STORES で働く時に壁になること」に対して、それを乗り越えるためのサポートを行うための制度をつくる想定です。
[画像6: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-4002ae316d4a69f05185-4.png ]
すでに「Fun for Family」というパートナーや家族を持つ人をサポートする休暇制度は導入しています。また、女性の育休取得率は100%、パートナーの育休取得率も85〜100%と非常に高く、多様な働き方を支える土台は現状も一定あります。その上で、追加で不妊治療専門のサポートを検討したいと考えています。不妊治療をしている従業員は、有給休暇等を活用して仕事と両立している実態がありますが、名前のついた制度があることで「会社から両立を支援してもらっている」と安心してほしいと考えています。ダイバーシティ方針を掲げる段階で、多様な人々が働くことができる組織をつくっていくことについては経営陣も含め目線が合っています。ただ休暇制度を目的ごとに作ると際限がないので、一人一人のライフスタイルに合わせて柔軟に選択できるように、全体のパッケージとして総合的に見直していきたいと考えています。また、福利厚生や休暇制度をつくるということは、「企業として、そのことを応援している」というメッセージにもなりうると思っています。生き方や働き方が多様になる中で、企業としては社会的な文脈も捉えながら制度を検討していく必要があると考えています。
(市山院長)
ご登壇いただいた2社様のように、意識高く不妊治療の制度設計に向き合っている企業はそんなに多くないように感じていたので、大変素晴らしい企業様だなと感じました。実際、全体の97%の企業が、「不妊治療の休暇制度はあっても周知を進める活動はしていない」というデータもあります。一方で企業側の努力もありますが、医療者サイドもやらなければいけないことが多くあると考えています。不妊治療中は、受診が頻回かつ突然のため、急に業務調整が必要になったり、受診あたりの平均滞在時間は2-3時間と皆さんの想像以上に長いです。かつ治療の終わり(妊娠)の確約もなく、時期も見えないため、治療スケジュールの可視化と事前の調整は大変重要だと切に感じています。当院でも行なっている事後決済やオンライン診療は導入ハードル低いので、今後広く不妊クリニックで導入を検討していただき、業界全体でこの社会課題を解決していきたいものです。
トーチクリニック開院2年の活動報告
トーチクリニックは2022年5月に開院し、2024年現在月間に通院される患者様の数は1000名を超えてきました。施設規模を表す指標として、年間採卵術の件数が用いられることが多いですが、現在当院は年間に1300-1400件程度の採卵術を実施しており、体外受精を実施する全国600施設の中でも、50-120番目(※1)の中規模クリニックに成長しました。
[画像7: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-751749e69bcffacbdcdb-6.png ]
2023年5月〜2024年4月の1年間での妊娠例は人工授精で177件、体外受精で439件でした。国内で凍結胚移植による妊娠数は約8万件強(※2)であり、200件に1件程度が当院での妊娠例と推計されます。
不妊治療を理由に仕事をやめる選択をする人は全体の16%(※3)に上り、「通院回数が多い」「時間的な制約と心理的な負担」といった理由が多いです。
一方、当院で実施したアンケート調査では、土日や夜間の開院、院内処方、事後決済などによって、当院の患者様で通院を理由に仕事をやめた人は5.2%と先行研究よりも低く、85.2%の方が「周囲の治療に悩んでる人に当院を進めたい」とお答えをいただけています。
[画像8: https://prtimes.jp/i/100852/27/resize/d100852-27-d2b4f5f370ccb96af2cf-7.png ]
(参考)
※1ARTデータブック2020年 体外受精・胚移植等治療周期数からみた施設数の分布
※2ARTデータブック2021凍結融解胚移植による妊娠数より
※3厚生労働省福井労働局「不妊治療と仕事との両立支援のお取組みのご案内」2022
就労との両立を叶えるためのトーチクリニックの5つの施策
1.受診日・手術日の選択肢の拡充
これまで月曜日と金曜日の午後を休診としておりましたが、休診日を撤廃し、週7日を開院・一部平日に20時までの診療日を設定致しました。仕事帰りに通院しやすいように、またカップル揃って受診しやすい環境を整えております。
体外受精や卵子凍結にむけた採卵術も休日に実施することが出来ますので、卵子にとってのベストタイミングと仕事のタイミングも合わせやすくなります。
2.アクセスの良い立地
当院はJR恵比寿駅から徒歩1分に位置しています。恵比寿駅からは4つの路線が利用可能で、都心で働く患者様の通院しやすさを重視しております。
3.専用アプリ導入による在院時間の短縮
自社開発の患者様専用アプリを導入し、予約、事前問診、完全後日キャッシュレス決済をアプリで完結でき、在院時間の短縮および患者様の受診体験の向上につながっています。
予約機能はオンタイムにスムーズに予約ができるだけでなく、予約データを元に、診療項目ごとの待ち時間の原因分析や、混雑時間帯の予約枠調整等も行うことが可能です。
問診をあらかじめアプリで行うことで、院内で問診にかかる時間の15分を削減だけでなく、事前に情報が得られるため患者様に合わせた治療を行うための薬剤やオペレーションの準備が出来、スムーズな診療提供に寄与しています。
不妊治療においてカップルの知識とモチベーションを合わせせることが大変重要ですが、生殖領域は難しい言葉や、内容が多いため、診察室内での説明を帰宅後にパートナーへ説明することは難しいです。そのため電子カルテに記載した説明内容をアプリで閲覧できる文書作成機能を開発し、好評をいただいています。
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4.治療計画の提案
当院では、年齢と妊娠率・流産率について説明を初診の段階で行い、自身の妊孕性の理解を深めてもらった上で、タイミング法、人工授精、体外受精の妊娠率について説明を行うことで、患者様が自身の治療方針を決定する時間を短縮することができます。
また、いつ、何人授かりたいか(家族計画)をヒアリングして可視化し、2人以上の挙児希望がある場合、より多くの受精卵を獲得し、将来の妊娠に向け凍結もできる体外受精も提案します。
身体や家族状況、ご本人同士の希望に応じた効率的・効果的な治療を提案することで、結果的に治療期間の短縮につながります。
5.オンライン診療の導入
当院にてブライダルチェックや不妊症検査をご希望の方を対象にオンライン診療を導入致しました。院内にいらっしゃらなくとも、初回の予診、結果説明及び今後の治療プランの相談をいただけます。
またオンラインを併用した遠隔診療を開始致しました。遠隔地にお住まいの患者様を対象に、当院で体外受精をはじめとした高度生殖医療を提供するための施策で、手術や注射指導など、当院でしか行えない診察や手技以外は、オンラインを利用してご自宅近くのクリニックもしくは提携院様と連携して実施します。診察毎に結果を当院にご報告いただくことで、当院へのご来院回数を最小限に、治療を受けていただけます。
現在はまだ対象を限定しておりますが、今後効果を確認しながら対象範囲も拡大していく予定です。
医療法人トーチクリニック理事長・恵比寿院院長 市山卓彦のご紹介
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2010年 順天堂大学卒。国内に約1,000名程の生殖医療専門医。年間7000周期の高度生殖医療を行う西日本最大の不妊治療施設セントマザー産婦人科を経て、前職の順天堂大学浦安病院では不妊センターの副センター長を務める。2019年には国際学会で日本人唯一の表彰を受け、2021年の同学会で世界的な権威と共に招待公演に登壇するなど研究の分野でも注目されている。2022年5月 torch clinicを開院。2023年10月医療法人torch clinicを設立し、理事長に就任。
【資格】
日本生殖医学会生殖医療専門医
日本産科婦人科学会専門医
日本産科婦人科学会専門医指導医
臨床研修指導医
日本生殖心理学会評議院
<クリニック概要>
クリニック名:torch clinic(トーチクリニック)
所在地:東京都渋谷区恵比寿4-3-14 恵比寿SSビル8階
電話:03-6447-7910
アクセス: JR『恵比寿』駅 東口徒歩1分、 日比谷線『恵比寿』駅 徒歩3分
URL: https://torch.clinic/