「浪曲は無責任でいいかげん。でも、そこが魅力なんです」 どこまでも自由な浪曲師、国本武春が自らの芸を語る
[09/07/02]
提供元:PRTIMES
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三味線をギターのように爪弾き、骨太のリズムに合わせて物語を歌い上げる。その魅力的なライブで着実に観客を増やし、浪曲界でひとり気を吐いている国本武春が、WOWOWオリジナル・ドキュメンタリー「クエスト-探求者たち-」に登場。「浪曲」とは、明治時代から始まった、三味線を伴奏に物語を節とセリフで演じる語り芸。戦前まで庶民の娯楽として流行したが、戦後衰退し、現在では東京に定席をひとつ残すだけとなってしまった。国本武春は約30年前、浪曲のカセットテープに刺激を受け、関東の浪曲界で実に15年ぶりの新人となった。それから、三味線の腕を磨き、アメリカでの音楽留学を経て、三味線にギターのフレーズを取り入れた独自の奏法を開発。従来型の浪曲にとどまらずロック、R&B、ブルーグラス等様々な音楽ジャンルを取り入れて活動している。現在48歳。いまや、浪曲師の代表的存在となった彼が、浪曲というジャンルの魅力を語ってくれた。
「浪曲の魅力とは、責任のないところ。そもそもお経から発展したようなもので、基本的にはお説教くさいんです。だから、友達を大事にしろとか、人間はこうじゃなきゃいけない、みたいなことを言っちゃう。じゃないと、締まらないというか、すわりが悪いから。でも、その言ったことに関してはまったく責任を取らない(笑)。単なる芸能でございます、まじめにとらないでくださいというスタンスが底に流れていて、そこが素敵だなと、自分では思いますね。いいかげんなところが楽しいんです」
三味線はもちろん、語りや歌にも完成された実力を持ちながら、浪曲のもつある種の“いかがわしさ”を大事にしたいと、国本は語る。
「浪曲を文化教養にしたくないんです。あくまで娯楽。楽しいから聴きに行くというスタイルを残していきたい。浪曲は落語講談にはない、歌えるという点が強みで、古典だけではなく新作もできるという自由さもある。今は、私が浪曲はこのままでいいのかという思いで始めたことが、うまいぐあいに楽しいほうに進んで、やればやるほど面白がってもらえている。好きなことを本当に好きにやらしてもらっているうちに今日があるみたいな感じですね」
アメリカではブルーグラスに傾倒し、20代のバンドメンバーとツアーを組んで各地をめぐる。かつては、ナレーターとしてブロードウェイ進出を果たしたことも。国本は、浪曲というジャンルにとどまらず、まさに「好きなことを好きなように」活動しているように見える。その生き方に憧れを抱く人も多いだろう。だが、彼が30年も“うなり”続けているのは、やはりベースに浪曲という芸の存在があるからこそのようだ。
「新作の浪曲を作り、ライブで歌って試していく。そうすると、3回目とか5回目の上演で、それがいきなり自分のものになる瞬間がある。理屈では説明できない。なんかの拍子に、自分じゃなくて登場人物が勝手にしゃべり始めるんです。それがうまくハマったときは、思いますね。こんなに楽しいことはないって」
番組では、迫力あるステージ映像を交えながら、米・テネシーでのブルーグラスツアー、京都清水寺での演奏などに密着取材。類まれな才能とどこまでも自由な精神をもつ浪曲師、国本武春の生き様を追っていく。
▼「クエスト-探求者たち-」スペシャルサイトはこちら!
http://www.wowow.co.jp/documentary/quest/