マインドフルネス状態を脳波計測から推定する技術を開発
[23/06/29]
提供元:PRTIMES
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心理状態をリアルタイムに正確に把握し、化粧品の感性価値を理解
ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:釘丸和也)は、ヒトのマインドフルネス状態を脳波計測データから推定する技術を開発しました。本技術によって、さまざまなシチュエーションにおいて客観的なヒトの心理状態をリアルタイムに分析できるようになりました。
● 心理状態の変化を反映する脳波に着目
化粧品の開発において、ヒトの心理状態を把握することは使い心地といった商品ベネフィットを向上させる上で重要です。従来、ヒトの心理状態を調べるには、質問票やヒアリングによる調査が一般的でした。そのような調査では、化粧品容器を手に取り、肌に塗って感触や香りを楽しむまでの一連の動作中や、使用後の心理状態の変化を自由なタイミングで分析することは困難でした。
そこで、ヒトの心理状態の変化に応じて、すぐに反応が現れる「脳波」に着目しました。脳波をモニタリングすることで、逐一ユーザーにヒアリングすることなく特定のヒトの心理状態を正確に把握することが出来ると考えられます。特に今回は言葉では表現しづらく、従来の方法では調査しづらいマインドフルネス状態(一例として、深くリラックスをして、周りで起きていることに気づき受け入れているような状態)を研究対象としました。
● 小型脳波計から得られる脳波を使い、マインドフルネス状態を推定する学習器を構築
本検討では対象者から脳波を測定する方法として、小型でありながら精度よく脳波の計測を行うことができる、イヤホン型の簡易脳波計を使用しました。
脳波には個人による特性があると言われており、脳波を用いた推定を精度よく行うためには、その個人差を考慮する必要があります。そこで、マインドフルネス状態を誘発した際の脳波を対象者・実施回ごとに計測し、時間により変化する波形データを特徴量として、対象者ごとにパーソナライズした学習器を構築したところ、脳波データからマインドフルネス状態を精度よく推定できることが確認されました。
(本研究は株式会社NTTデータ経営研究所・VIE STYLE株式会社の技術支援のもと実施しています。)
[画像: https://prtimes.jp/i/92303/37/resize/d92303-37-9ce3b5d0d6b9d3624471-0.jpg ]
● 構築した学習器を化粧品の感性価値の理解・設計に活用
脳波計測および構築した学習器によって、ヒトが化粧品の使用によりどの程度マインドフルネス状態になっているかを評価することができるようになりました(図1)。そこで、本技術を用いて、処方設計や香料、容器形態などが異なる化粧品使用時のマインドフルネスの度合いを評価したところ、違いを捉えることが出来ました。このことから、構築した評価技術で得られた知見は化粧品の感性価値の理解向上や設計に役立つと考えられます。
本技術は、これまで簡便に捉えることが難しかったヒトの心理状態を、脳波を用いることで被験者に直接聞くことなく正確に推定できる有用な方法であると考えます。今後もポーラ化成工業では、ヒトを見つめる感性研究のパイオニアとしてさまざまな角度から研究を続けていきます。
【補足資料1】 マインドフルネス状態とは
マインドフルネス状態とは、一例として、次々と生じている今この瞬間の出来事や経験に対し、受容的な注意によってありのままに気づいている状態のことを指します。
マインドフルネス状態を高める方法(マインドフルネス実践法)には、瞑想法から、病院や企業、学校などで実施されるマインドフルネス心理療法やマインドフルネス訓練法までさまざまなものが知られています。これらのマインドフルネス実践法によって、身心の健康増進や、ストレスや鬱、不安といった精神症状が改善することが示されています(※1)。
※1 Masahiro Fujino, et al., Japanese Journal of Mindfulness, 2019, Vol. 4, No. 1
杉浦義典 "マインドフルネスにみる情動制御と心理的治療の研究の新しい方向性." 感情心理学研究 16.2 (2008): 167-177
【補足資料2】 学習器とは
学習器とは、機械学習において与えられたデータをもとに「予測した結果」と、正答となる「実際の結果」を比較し、各種調整することで実際の結果に、より近い予測した結果を計算により導く学習システムのことを言います。この学習器は目的やデータの特性に合わせて、最適なものを構築する必要があります。
本検討では、脳波データから特徴量を抽出する部分(エンコーダ)と、必要な特徴量を用いて目的の値(今回の検討では心理状態)を推定する部分(デコーダ)を組み合わせた学習器を構築しました。
従来、脳波データから心理状態を推定するためには、特定の脳波成分(例えばα波やθ波)のみを使うシンプルな方法を用いることが一般的でした。しかしそれら脳波成分は、脳波に含まれるごく一部の特徴を使用しているに過ぎず、マインドフルネス状態を推定するための特徴量情報としては不十分でした。今回の検討では、機械学習法を用いた学習器を構築することで数理統計的に様々な特徴量を抽出し、用いることで精度の高い心理状態の推定が行えるようになりました。
ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:釘丸和也)は、ヒトのマインドフルネス状態を脳波計測データから推定する技術を開発しました。本技術によって、さまざまなシチュエーションにおいて客観的なヒトの心理状態をリアルタイムに分析できるようになりました。
● 心理状態の変化を反映する脳波に着目
化粧品の開発において、ヒトの心理状態を把握することは使い心地といった商品ベネフィットを向上させる上で重要です。従来、ヒトの心理状態を調べるには、質問票やヒアリングによる調査が一般的でした。そのような調査では、化粧品容器を手に取り、肌に塗って感触や香りを楽しむまでの一連の動作中や、使用後の心理状態の変化を自由なタイミングで分析することは困難でした。
そこで、ヒトの心理状態の変化に応じて、すぐに反応が現れる「脳波」に着目しました。脳波をモニタリングすることで、逐一ユーザーにヒアリングすることなく特定のヒトの心理状態を正確に把握することが出来ると考えられます。特に今回は言葉では表現しづらく、従来の方法では調査しづらいマインドフルネス状態(一例として、深くリラックスをして、周りで起きていることに気づき受け入れているような状態)を研究対象としました。
● 小型脳波計から得られる脳波を使い、マインドフルネス状態を推定する学習器を構築
本検討では対象者から脳波を測定する方法として、小型でありながら精度よく脳波の計測を行うことができる、イヤホン型の簡易脳波計を使用しました。
脳波には個人による特性があると言われており、脳波を用いた推定を精度よく行うためには、その個人差を考慮する必要があります。そこで、マインドフルネス状態を誘発した際の脳波を対象者・実施回ごとに計測し、時間により変化する波形データを特徴量として、対象者ごとにパーソナライズした学習器を構築したところ、脳波データからマインドフルネス状態を精度よく推定できることが確認されました。
(本研究は株式会社NTTデータ経営研究所・VIE STYLE株式会社の技術支援のもと実施しています。)
[画像: https://prtimes.jp/i/92303/37/resize/d92303-37-9ce3b5d0d6b9d3624471-0.jpg ]
● 構築した学習器を化粧品の感性価値の理解・設計に活用
脳波計測および構築した学習器によって、ヒトが化粧品の使用によりどの程度マインドフルネス状態になっているかを評価することができるようになりました(図1)。そこで、本技術を用いて、処方設計や香料、容器形態などが異なる化粧品使用時のマインドフルネスの度合いを評価したところ、違いを捉えることが出来ました。このことから、構築した評価技術で得られた知見は化粧品の感性価値の理解向上や設計に役立つと考えられます。
本技術は、これまで簡便に捉えることが難しかったヒトの心理状態を、脳波を用いることで被験者に直接聞くことなく正確に推定できる有用な方法であると考えます。今後もポーラ化成工業では、ヒトを見つめる感性研究のパイオニアとしてさまざまな角度から研究を続けていきます。
【補足資料1】 マインドフルネス状態とは
マインドフルネス状態とは、一例として、次々と生じている今この瞬間の出来事や経験に対し、受容的な注意によってありのままに気づいている状態のことを指します。
マインドフルネス状態を高める方法(マインドフルネス実践法)には、瞑想法から、病院や企業、学校などで実施されるマインドフルネス心理療法やマインドフルネス訓練法までさまざまなものが知られています。これらのマインドフルネス実践法によって、身心の健康増進や、ストレスや鬱、不安といった精神症状が改善することが示されています(※1)。
※1 Masahiro Fujino, et al., Japanese Journal of Mindfulness, 2019, Vol. 4, No. 1
杉浦義典 "マインドフルネスにみる情動制御と心理的治療の研究の新しい方向性." 感情心理学研究 16.2 (2008): 167-177
【補足資料2】 学習器とは
学習器とは、機械学習において与えられたデータをもとに「予測した結果」と、正答となる「実際の結果」を比較し、各種調整することで実際の結果に、より近い予測した結果を計算により導く学習システムのことを言います。この学習器は目的やデータの特性に合わせて、最適なものを構築する必要があります。
本検討では、脳波データから特徴量を抽出する部分(エンコーダ)と、必要な特徴量を用いて目的の値(今回の検討では心理状態)を推定する部分(デコーダ)を組み合わせた学習器を構築しました。
従来、脳波データから心理状態を推定するためには、特定の脳波成分(例えばα波やθ波)のみを使うシンプルな方法を用いることが一般的でした。しかしそれら脳波成分は、脳波に含まれるごく一部の特徴を使用しているに過ぎず、マインドフルネス状態を推定するための特徴量情報としては不十分でした。今回の検討では、機械学習法を用いた学習器を構築することで数理統計的に様々な特徴量を抽出し、用いることで精度の高い心理状態の推定が行えるようになりました。