特定秘密保護法案、日本政府は法案を全面的に見直せ
[13/11/28]
提供元:PRTIMES
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アムネスティ日本支部声明
11月26日、継続審議を求める国会内外の声を押し切る形で、特定秘密保護法案の修正案が衆議院で可決され、翌27日から参議院で審議入りした。アムネスティ・インターナショナル日本は、この修正案が、依然として「表現の自由」や「知る権利(情報へのアクセス権)」を根底から脅かすものであり、国際的な人権基準から程遠い内容であることを懸念する。アムネスティ日本は、日本政府に対し、国内外からの懸念や反対の声を真摯に受け止め、採択を見送り、同法案を全面的に見直すよう強く要請する。
臨時国会における審議が始まる直前に、アムネスティ日本は声明を発表し、同法案が自由権規約第19条(表現の自由)、17条(プライバシーの保護)、第14条(公正な裁判を受ける権利)をはじめ複数の国際人権基準に違反している恐れがあるとして、深刻な懸念を表明した。(注1)。26日に衆議院で可決された同修正案では、こうした懸念点がまったく解消されていない。
第一に、特定秘密の指定の範囲は依然として曖昧なままである。自由権規約が認める制限の範囲を超え、政府の恣意によって公開されるべき多くの公的情報が特定秘密にされる恐れが強い。さらに、秘密指定の有効期間が、「やむを得ない場合」には30年を超えて最長60年まで延長可能とされた。「やむを得ない場合」か否かを審査する基準も透明な手続きも存在しないため、60年が原則となってしまう恐れが強い。それに加えて、指定期間が60年を超える場合の7項目の適用例外が設けられた。例外項目の規定もまた曖昧であり、政府の裁量によって例外対象範囲の拡大を許し、それらの「秘密」は永続的に情報が開示されなくなる恐れがある。
第二に、特定秘密の指定、解除、秘密を取り扱う者とその家族・関係者の適性評価について、その実施状況の「適正を確保する」ために内閣総理大臣が指揮監督権を持つとした。その一方、独立した立場で検証・監視する新たな機関の設置については、法案の付則において、設置を検討し措置を講ずると規定するにとどまっている。これでは、秘密の指定、解除、運用についての独立した評価・監視は、到底、期待できない。
第三に、適性評価制度がそのまま維持されており、評価対象者とその家族、関係者の思想信条に関する調査が行われる点や、適性評価の評価対象者以外の家族や関係者に対して同意なく調査が行われる点、不服申し立ての手続きがまったく規定されていない点など、問題は残されたままである。政府は国会審議において、「下請け業者や孫請け業者等の従業者についても適性評価の対象となる」と答弁しており、膨大な数の民間人が制度の対象となり、プライバシーを侵害される恐れがある。
第四に、政府による人権侵害行為や市民の健康、環境に関する情報などを調査し告発した人びとを刑事処罰から保護する規定は設けられず、「漏えい行為」の未遂や共謀、教唆、扇動といった広範かつ曖昧な行為を処罰する規定のままとなっている。そのため、NGO・NPOやジャーナリスト、研究者、労働組合が政府の行動を監視・調査し、情報公開を求めるといった、社会において重要な活動が「特定秘密」漏えいの処罰対象となる危険は、まったく払拭できていない。
政府は、一般の人びとも処罰対象になりうると答弁しており、「何が秘密なのかも秘密」という同法案の下で、「表現の自由」や「情報へのアクセス権」を行使する市民が罪に問われる危険性が高まっているといえる。
今回の法案に対しては、弁護士、新聞・ジャーナリスト、文筆家、演劇人、学者・研究者、NPO・NGO、労働組合、宗教者など、表現の自由にかかわるさまざまな個人や団体から深刻な懸念と反対の声が挙げられている。また、国連人権理事会の、言論および表現の自由の権利の保護・促進に関する特別報告者、および健康の権利に関する特別報告者も、内部告発者やジャーナリストを脅かす法案であるとして、強い懸念を表明している(注2)。
修正法案は、情報へのアクセス権の制限について、表現の自由そのものを危うくするものであってはならないという重要な国際人権基準の視点が著しく欠落している。アムネスティ日本は、日本政府に対し、人びとの情報へのアクセス権を明確に保障し、同法案のあらゆる規定を国際人権基準に合致させるよう、同法案を全面的に見直すことを要請する。そして、懸念点や問題点を完全に払拭する修正がなされなければ、本臨時国会での採択を見送るよう求める。
注1)2013年10月23日 アムネスティ日本支部声明:
日本:特定秘密保護法案、表現の自由の侵害に対する深刻な懸念
http://www.amnesty.or.jp/news/2013/1023_4249.html
注2)言論および表現の自由の権利の保護・促進に関する特別報告者であるフランク・ラ・ルーは、同法案について、「情報を秘密と特定する根拠として、法案は極めて広範囲で曖昧のようである。その上、内部告発者、そして秘密を報道するジャーナリストにさえにも重大な脅威をはらんでいる」と指摘し、「違法行為や、公的機関による不正行為に関する情報を、公務員が正当な目的で機密情報を公開した場合、法的制裁から守られなければならない」、「ジャーナリストや市民社会の代表などを含むそのほかの個人が、公益のためと信じて機密情報を受け取り、または流布しても、他の個人を重大な危険の差し迫った状況に追いやることがない限り、いかなる処罰も受けてはならない」と述べている。
*国連人権理事会特別報告者の声明文(和訳)
http://freedexjapan.files.wordpress.com/2013/11/e59bbde980a3e789b9e588a5e5a0b1e5918ae88085e5a3b0e6988ee3808ce7a798e5af86e4bf9de8adb7e6b395e3808d.pdf
▽アムネスティ日本ホームページ
www.amnesty.or.jp
11月26日、継続審議を求める国会内外の声を押し切る形で、特定秘密保護法案の修正案が衆議院で可決され、翌27日から参議院で審議入りした。アムネスティ・インターナショナル日本は、この修正案が、依然として「表現の自由」や「知る権利(情報へのアクセス権)」を根底から脅かすものであり、国際的な人権基準から程遠い内容であることを懸念する。アムネスティ日本は、日本政府に対し、国内外からの懸念や反対の声を真摯に受け止め、採択を見送り、同法案を全面的に見直すよう強く要請する。
臨時国会における審議が始まる直前に、アムネスティ日本は声明を発表し、同法案が自由権規約第19条(表現の自由)、17条(プライバシーの保護)、第14条(公正な裁判を受ける権利)をはじめ複数の国際人権基準に違反している恐れがあるとして、深刻な懸念を表明した。(注1)。26日に衆議院で可決された同修正案では、こうした懸念点がまったく解消されていない。
第一に、特定秘密の指定の範囲は依然として曖昧なままである。自由権規約が認める制限の範囲を超え、政府の恣意によって公開されるべき多くの公的情報が特定秘密にされる恐れが強い。さらに、秘密指定の有効期間が、「やむを得ない場合」には30年を超えて最長60年まで延長可能とされた。「やむを得ない場合」か否かを審査する基準も透明な手続きも存在しないため、60年が原則となってしまう恐れが強い。それに加えて、指定期間が60年を超える場合の7項目の適用例外が設けられた。例外項目の規定もまた曖昧であり、政府の裁量によって例外対象範囲の拡大を許し、それらの「秘密」は永続的に情報が開示されなくなる恐れがある。
第二に、特定秘密の指定、解除、秘密を取り扱う者とその家族・関係者の適性評価について、その実施状況の「適正を確保する」ために内閣総理大臣が指揮監督権を持つとした。その一方、独立した立場で検証・監視する新たな機関の設置については、法案の付則において、設置を検討し措置を講ずると規定するにとどまっている。これでは、秘密の指定、解除、運用についての独立した評価・監視は、到底、期待できない。
第三に、適性評価制度がそのまま維持されており、評価対象者とその家族、関係者の思想信条に関する調査が行われる点や、適性評価の評価対象者以外の家族や関係者に対して同意なく調査が行われる点、不服申し立ての手続きがまったく規定されていない点など、問題は残されたままである。政府は国会審議において、「下請け業者や孫請け業者等の従業者についても適性評価の対象となる」と答弁しており、膨大な数の民間人が制度の対象となり、プライバシーを侵害される恐れがある。
第四に、政府による人権侵害行為や市民の健康、環境に関する情報などを調査し告発した人びとを刑事処罰から保護する規定は設けられず、「漏えい行為」の未遂や共謀、教唆、扇動といった広範かつ曖昧な行為を処罰する規定のままとなっている。そのため、NGO・NPOやジャーナリスト、研究者、労働組合が政府の行動を監視・調査し、情報公開を求めるといった、社会において重要な活動が「特定秘密」漏えいの処罰対象となる危険は、まったく払拭できていない。
政府は、一般の人びとも処罰対象になりうると答弁しており、「何が秘密なのかも秘密」という同法案の下で、「表現の自由」や「情報へのアクセス権」を行使する市民が罪に問われる危険性が高まっているといえる。
今回の法案に対しては、弁護士、新聞・ジャーナリスト、文筆家、演劇人、学者・研究者、NPO・NGO、労働組合、宗教者など、表現の自由にかかわるさまざまな個人や団体から深刻な懸念と反対の声が挙げられている。また、国連人権理事会の、言論および表現の自由の権利の保護・促進に関する特別報告者、および健康の権利に関する特別報告者も、内部告発者やジャーナリストを脅かす法案であるとして、強い懸念を表明している(注2)。
修正法案は、情報へのアクセス権の制限について、表現の自由そのものを危うくするものであってはならないという重要な国際人権基準の視点が著しく欠落している。アムネスティ日本は、日本政府に対し、人びとの情報へのアクセス権を明確に保障し、同法案のあらゆる規定を国際人権基準に合致させるよう、同法案を全面的に見直すことを要請する。そして、懸念点や問題点を完全に払拭する修正がなされなければ、本臨時国会での採択を見送るよう求める。
注1)2013年10月23日 アムネスティ日本支部声明:
日本:特定秘密保護法案、表現の自由の侵害に対する深刻な懸念
http://www.amnesty.or.jp/news/2013/1023_4249.html
注2)言論および表現の自由の権利の保護・促進に関する特別報告者であるフランク・ラ・ルーは、同法案について、「情報を秘密と特定する根拠として、法案は極めて広範囲で曖昧のようである。その上、内部告発者、そして秘密を報道するジャーナリストにさえにも重大な脅威をはらんでいる」と指摘し、「違法行為や、公的機関による不正行為に関する情報を、公務員が正当な目的で機密情報を公開した場合、法的制裁から守られなければならない」、「ジャーナリストや市民社会の代表などを含むそのほかの個人が、公益のためと信じて機密情報を受け取り、または流布しても、他の個人を重大な危険の差し迫った状況に追いやることがない限り、いかなる処罰も受けてはならない」と述べている。
*国連人権理事会特別報告者の声明文(和訳)
http://freedexjapan.files.wordpress.com/2013/11/e59bbde980a3e789b9e588a5e5a0b1e5918ae88085e5a3b0e6988ee3808ce7a798e5af86e4bf9de8adb7e6b395e3808d.pdf
▽アムネスティ日本ホームページ
www.amnesty.or.jp