環境対策とコストが調和した製品をライフサイクルの視点から設計するための新規のデータベースを開発【産技助成Vol.57】
[08/11/04]
提供元:PRTIMES
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独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
武蔵工業大学環境情報学部
電気電子機器を対象にした環境対策を
最も費用対効果の高いものから選択できる評価手法とデータベースを開発。
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、武蔵工業大学環境情報学部の准教授、伊坪徳宏氏は、電気電子機器を対象にした環境対策をもっとも費用対効果の高いものから選択できる評価手法とデータベースの開発をしました。
日本のメーカーがこれまで、環境管理活動のために使用してきた環境評価(注1)用のツール(LCA(注2)やLCC(注3))は、最近EUが強化している環境対策に対して十分に対応できなくなりつつあります。とくに電気電子機器は、温暖化、有害化学物質、廃棄物、希少資源消費など、さまざまな環境問題と深く関係しています。
本技術は、電気電子機器より排出される化学物質(重金属を含む)の量、これに伴って生じる環境影響を定量的に測ることができるツールとしてLCCBA(注4)を開発し、その手順や事例をまとめたガイドラインを作成しました。
LCCBAは、化学物質に限らず、省エネ、省資源、温暖化、廃棄物対策などの環境対策を比較評価するだけでなく、今後の対応を費用との関係で分析できます。環境とコストの両側面を捉えた分析により最適な環境対策の選択を可能とする評価ツールは、国際的な動向に先んじた先駆的内容であり、海外でも高く評価され、当分野で世界をリードする研究です。
(注1)環境評価には、LCA(ライフサイクルアセスメント) 、LCC、環境会計などがあります。LCAは製品のライフサイクルにわたる環境負荷量を定量的に測る方法です。最近ではCO2に注目したLCA結果を環境ラベルとして表示するカーボンフットプリントが注目されています。
(注2)LCAはLife Cycle Assessmentの略。製品システムのライフサイクルを通した入力、出力、及び潜在的な環境影響のまとめと評価。ISO14040/44ではLCAを、(1) 目的・評価範囲の設定、(2)インベントリ分析、(3)影響評価解釈、から構成されると規定している。
(注3)LCCはLife-Cycle Costingの略。製品の企画・開発から生産、使用、廃棄までのライフサイクルで発生するコストを集計する手法。ライフサイクルアセスメントに費用の要素を加えたもの。
(注4)LCCBAはLife Cycle Cost Benefit Analysisの略。ライフサイクル費用対便益分析のこと。
1.研究成果概要
EUは近年、電気・電子製品中の特定有害物質使用制限指令(RoHS)、廃電気・電子製品リサイクル指令(WEEE)、環境設計指針案(EuP)、新化学物質規則案(REACH)といった各種指令を出し、環境に対する規制を強めています。日本の電気・電子機器産業も、これに対応した対策をとらなければ、今後、欧州への製品輸出や現地での生産活動に大きな支障が発生すると考えられます。
しかし、これまでのLCAやLCCといった手法体系では国内のLCAはCO2に限られ、インベントリ分析、影響評価を行うためのデータやツールがない、費用対効果の観点から戦略的に環境配慮設計を行うための手引きがない等の問題が浮かび上がってきました。これらを解決するために本研究では、(1)化学物質(特に規制対象物質を対象とした環境リスク評価手法の開発)、(2)電気・電子機器からの化学物質排出リスク評価手法の開発、(3)経済指標に基づく電気・電子製品の費用対効果、費用対便益分析を行う、という、3つの検討を行いました。
評価手法とデータベースの作成を進めるとともに、LCCBA実施上のガイドラインの作成を行い、同時に、事例研究を通じてその有効性について検証しました。既に、富士通、日立製作所、サムスン、NEC、キャノン、リコー等の企業と連携して、洗濯機、ノートパソコン、液晶プロジェクタ、液晶ディスプレイパネルについて評価を実施した結果、本研究を利用した評価の有用性について確認することができました。
2.競合技術への強み
1.電気電子機器で利用される重金属を網羅:化学物質のインベントリ分析や、影響評価を行うためのデータやツールを整備しているので化学物質による環境影響を総合的に評価する事ができます。
2.環境負荷と費用対効果を推計:多岐にわたる環境影響削減策の中から、費用対効果の観点により戦略的な環境配慮設計を行うための分析を可能とします。また使い方の手引きも準備し、使いやすさに配慮しています。
3.EUの新規制案に準拠:電気・電子製品中の特定有害物質使用制限指令(RoHS)等に代表されるEUの環境に対する各種指令に対応し、日本の電機・電子機器産業の海外での生産活動をサポートします。
3.今後の展望
本研究では電気電子機器を対象にした研究を進めましたが、自動車(塗装、接着剤など)、建材(シックハウス)、農業(農薬)など、化学物質の管理が重要な分野での応用が可能だと思います。
また、現在はRoHS適用除外の化学物質であっても、今後の技術開発や社会の変化に応じて規制対象になる可能性がありますので、これらの化学物質をも含められるようにモデルの網羅性を高めていくことが課題になります。
4.参考
成果プレスダイジェスト:武蔵工業大学准教授 伊坪 徳宏氏
武蔵工業大学環境情報学部
電気電子機器を対象にした環境対策を
最も費用対効果の高いものから選択できる評価手法とデータベースを開発。
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、武蔵工業大学環境情報学部の准教授、伊坪徳宏氏は、電気電子機器を対象にした環境対策をもっとも費用対効果の高いものから選択できる評価手法とデータベースの開発をしました。
日本のメーカーがこれまで、環境管理活動のために使用してきた環境評価(注1)用のツール(LCA(注2)やLCC(注3))は、最近EUが強化している環境対策に対して十分に対応できなくなりつつあります。とくに電気電子機器は、温暖化、有害化学物質、廃棄物、希少資源消費など、さまざまな環境問題と深く関係しています。
本技術は、電気電子機器より排出される化学物質(重金属を含む)の量、これに伴って生じる環境影響を定量的に測ることができるツールとしてLCCBA(注4)を開発し、その手順や事例をまとめたガイドラインを作成しました。
LCCBAは、化学物質に限らず、省エネ、省資源、温暖化、廃棄物対策などの環境対策を比較評価するだけでなく、今後の対応を費用との関係で分析できます。環境とコストの両側面を捉えた分析により最適な環境対策の選択を可能とする評価ツールは、国際的な動向に先んじた先駆的内容であり、海外でも高く評価され、当分野で世界をリードする研究です。
(注1)環境評価には、LCA(ライフサイクルアセスメント) 、LCC、環境会計などがあります。LCAは製品のライフサイクルにわたる環境負荷量を定量的に測る方法です。最近ではCO2に注目したLCA結果を環境ラベルとして表示するカーボンフットプリントが注目されています。
(注2)LCAはLife Cycle Assessmentの略。製品システムのライフサイクルを通した入力、出力、及び潜在的な環境影響のまとめと評価。ISO14040/44ではLCAを、(1) 目的・評価範囲の設定、(2)インベントリ分析、(3)影響評価解釈、から構成されると規定している。
(注3)LCCはLife-Cycle Costingの略。製品の企画・開発から生産、使用、廃棄までのライフサイクルで発生するコストを集計する手法。ライフサイクルアセスメントに費用の要素を加えたもの。
(注4)LCCBAはLife Cycle Cost Benefit Analysisの略。ライフサイクル費用対便益分析のこと。
1.研究成果概要
EUは近年、電気・電子製品中の特定有害物質使用制限指令(RoHS)、廃電気・電子製品リサイクル指令(WEEE)、環境設計指針案(EuP)、新化学物質規則案(REACH)といった各種指令を出し、環境に対する規制を強めています。日本の電気・電子機器産業も、これに対応した対策をとらなければ、今後、欧州への製品輸出や現地での生産活動に大きな支障が発生すると考えられます。
しかし、これまでのLCAやLCCといった手法体系では国内のLCAはCO2に限られ、インベントリ分析、影響評価を行うためのデータやツールがない、費用対効果の観点から戦略的に環境配慮設計を行うための手引きがない等の問題が浮かび上がってきました。これらを解決するために本研究では、(1)化学物質(特に規制対象物質を対象とした環境リスク評価手法の開発)、(2)電気・電子機器からの化学物質排出リスク評価手法の開発、(3)経済指標に基づく電気・電子製品の費用対効果、費用対便益分析を行う、という、3つの検討を行いました。
評価手法とデータベースの作成を進めるとともに、LCCBA実施上のガイドラインの作成を行い、同時に、事例研究を通じてその有効性について検証しました。既に、富士通、日立製作所、サムスン、NEC、キャノン、リコー等の企業と連携して、洗濯機、ノートパソコン、液晶プロジェクタ、液晶ディスプレイパネルについて評価を実施した結果、本研究を利用した評価の有用性について確認することができました。
2.競合技術への強み
1.電気電子機器で利用される重金属を網羅:化学物質のインベントリ分析や、影響評価を行うためのデータやツールを整備しているので化学物質による環境影響を総合的に評価する事ができます。
2.環境負荷と費用対効果を推計:多岐にわたる環境影響削減策の中から、費用対効果の観点により戦略的な環境配慮設計を行うための分析を可能とします。また使い方の手引きも準備し、使いやすさに配慮しています。
3.EUの新規制案に準拠:電気・電子製品中の特定有害物質使用制限指令(RoHS)等に代表されるEUの環境に対する各種指令に対応し、日本の電機・電子機器産業の海外での生産活動をサポートします。
3.今後の展望
本研究では電気電子機器を対象にした研究を進めましたが、自動車(塗装、接着剤など)、建材(シックハウス)、農業(農薬)など、化学物質の管理が重要な分野での応用が可能だと思います。
また、現在はRoHS適用除外の化学物質であっても、今後の技術開発や社会の変化に応じて規制対象になる可能性がありますので、これらの化学物質をも含められるようにモデルの網羅性を高めていくことが課題になります。
4.参考
成果プレスダイジェスト:武蔵工業大学准教授 伊坪 徳宏氏