太陽最古の謎 解決に王手!スーパーコンピュータ「京」による世界最高解像度計算で太陽の磁場生成メカニズムを世界で初めて解明
[16/03/25]
提供元:PRTIMES
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千葉大学大学院理学研究科の堀田英之特任助教らの国際チームは、スーパーコンピュータ「京」で可能になった超高解像度計算により、太陽活動11年周期を作るような大規模な磁場構造を生成・維持するメカニズムを世界で初めて解明しました。本研究成果は、米科学誌『Science』(25 March 2016, VOL. 351)で発表しました。
【研究の背景 〜地球環境に大きな影響を及ぼす黒点の11年周期の謎】
太陽には黒点という強磁場領域があり、その科学的観測はガリレオ=ガリレイが400年以上前に始めて以来、現在に至るまで継続されています。この黒点数は11年の周期で変動していますが、そのメカニズムは未だ明らかになっておらず「太陽最古の謎」と呼ばれます。また、1600年代中頃から70年程度黒点がなかった時期があり、その期間には地球が寒冷化していたことが示唆されています。謎の解明は地球環境を考える上でも急務だと考えられています。
太陽内部は乱流で占められており、この乱流運動が磁場を生成していると考えられています。太陽内部に存在する高度なカオス的運動をする小スケールの乱流の中から、11年の周期を生み出す秩序立った大規模磁場を生み出す過程が大きな謎でした。ここで高度な乱流とはより小さなスケールまで乱れた流れが混在する状態をあらわします。
【研究の成果 〜スーパーコンピュータ「京」を用いた超高解像度計算】
[画像1: http://prtimes.jp/i/15177/68/resize/d15177-68-932676-5.jpg ]
スーパーコンピュータ「京」のような大規模計算機を効率的に扱うために、研究チームが独自に開発した計算法「音速抑制法」※を用いることで可能になった超高解像度計算により、カオス的小スケールの乱流から大規模な磁場を生成するメカニズムが明らかになりました。
計算では、カオス的状況を維持しながらも10年スケールの磁場活動の周期を再現しました。超高解像度計算では小スケールの磁場生成が活発になることで流れ場を強く抑制し、秩序立った大スケールの流れのみが許されるようになります。その結果、カオス的な状況の中でも秩序立った磁場が生成されることが明らかになりました。
※音速抑制法とは、計算負荷軽減のために実効的な音速を遅くする方法である。これまでの手法に比べて大規模計算機を効率的に使える。
【研究詳細】
■背景
[画像2: http://prtimes.jp/i/15177/68/resize/d15177-68-719159-1.jpg ]
太陽は、その中心で核融合によりエネルギーを生成し続けており、そのため太陽内部の外側30%はお湯を沸かしたように熱対流で埋め尽くされています。駆動された熱対流は、非常に小さい粘性のために地球上では存在しえない非常に高度な乱流状態になっています。
太陽活動周期を駆動する磁場は、この乱流的なプラズマの運動による引き伸ばしによって生成されると考えられています。しかし、乱流による磁場生成は、カオス的状況が発達すればするほど小さいスケールが支配的となり、太陽周期を駆動するような大きなスケールの磁場構造が作られなくなっていくことが知られていました。実際の太陽では、乱流は非常に高度にカオス的になっており、このような状況下でどうやって周期活動を駆動するかが大きな問題となっていました。
■結果
[画像3: http://prtimes.jp/i/15177/68/resize/d15177-68-561315-2.jpg ]
本研究では、スーパーコンピュータ「京」を用いることで初めて可能になった超高解像度計算で、上記の謎に迫りました。太陽のように高度に発達した乱流状況を調査するには、非常に多くの計算コストを必要とします。
計算の結果、ある程度の解像度まではこれまでの予測の通り、乱流が高度になればなるほど小さいスケールの磁場が支配的となり、大規模な磁場は作られなくなりました。しかし、今回可能になった超高解像度では、小スケールの磁場生成が非常に活発になり、小さいスケールの乱流運動のエネルギーを上回りました。その結果、小さいスケールでの乱流運動は強く制限されて、あたかも低解像度で計算をしているような状況が実現しました。つまり、高解像度であるにもかかわらず、乱流が高度でなくなったのです。その結果、太陽のような高度に乱流が発達した状況でも大スケールの磁場が発達することができました。
このメカニズムは、これまで誰も考えすらしていませんでしたが、実際の太陽でも働くはずであり、太陽活動周期の問題解決のための基本的で重要な機構を明らかにしたといえます。
【研究者情報】
■研究者の想い(千葉大学 大学院理学研究科 堀田英之 特任助教)
この成果により、太陽磁場生成メカニズムの重要な部分が明らかになりました。これからは衛星を中心とする観測によって、今回発見した理論の詳細を確かめることで、太陽最古の謎の本格解決を目指したいと思います。
■研究チーム
・千葉大学 大学院理学研究科 堀田英之 特任助教
・米国HAO/NCAR Matthias Rempel博士 Senior Scientist(主任科学者)
・東京大学 大学院理学系研究科 横山央明 准教授
■論文情報
掲載誌:Science
論文タイトル:Large-scale magnetic fields at high Reynolds numbers in magnetohydrodynamic simulations
著者:H. Hotta, M. Rempel, T. Yokoyama
DOI:10.1126/science.aad1893
※本研究は、文部科学省HPCI戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」における「ダークマターの密度ゆらぎから生まれる第1世代天体形成」(課題番号hp140212、hp150226課題代表者:牧野淳一郎)の計算資源を利用して実施したものです。
また、新学術領域「太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成」の支援を受けました。
本件に関するお問い合わせ
[画像4: http://prtimes.jp/i/15177/68/resize/d15177-68-836467-3.jpg ]
千葉大学 大学院 理学研究科 堀田英之 特任助教
TEL: 043-290-2749
【研究の背景 〜地球環境に大きな影響を及ぼす黒点の11年周期の謎】
太陽には黒点という強磁場領域があり、その科学的観測はガリレオ=ガリレイが400年以上前に始めて以来、現在に至るまで継続されています。この黒点数は11年の周期で変動していますが、そのメカニズムは未だ明らかになっておらず「太陽最古の謎」と呼ばれます。また、1600年代中頃から70年程度黒点がなかった時期があり、その期間には地球が寒冷化していたことが示唆されています。謎の解明は地球環境を考える上でも急務だと考えられています。
太陽内部は乱流で占められており、この乱流運動が磁場を生成していると考えられています。太陽内部に存在する高度なカオス的運動をする小スケールの乱流の中から、11年の周期を生み出す秩序立った大規模磁場を生み出す過程が大きな謎でした。ここで高度な乱流とはより小さなスケールまで乱れた流れが混在する状態をあらわします。
【研究の成果 〜スーパーコンピュータ「京」を用いた超高解像度計算】
[画像1: http://prtimes.jp/i/15177/68/resize/d15177-68-932676-5.jpg ]
スーパーコンピュータ「京」のような大規模計算機を効率的に扱うために、研究チームが独自に開発した計算法「音速抑制法」※を用いることで可能になった超高解像度計算により、カオス的小スケールの乱流から大規模な磁場を生成するメカニズムが明らかになりました。
計算では、カオス的状況を維持しながらも10年スケールの磁場活動の周期を再現しました。超高解像度計算では小スケールの磁場生成が活発になることで流れ場を強く抑制し、秩序立った大スケールの流れのみが許されるようになります。その結果、カオス的な状況の中でも秩序立った磁場が生成されることが明らかになりました。
※音速抑制法とは、計算負荷軽減のために実効的な音速を遅くする方法である。これまでの手法に比べて大規模計算機を効率的に使える。
【研究詳細】
■背景
[画像2: http://prtimes.jp/i/15177/68/resize/d15177-68-719159-1.jpg ]
太陽は、その中心で核融合によりエネルギーを生成し続けており、そのため太陽内部の外側30%はお湯を沸かしたように熱対流で埋め尽くされています。駆動された熱対流は、非常に小さい粘性のために地球上では存在しえない非常に高度な乱流状態になっています。
太陽活動周期を駆動する磁場は、この乱流的なプラズマの運動による引き伸ばしによって生成されると考えられています。しかし、乱流による磁場生成は、カオス的状況が発達すればするほど小さいスケールが支配的となり、太陽周期を駆動するような大きなスケールの磁場構造が作られなくなっていくことが知られていました。実際の太陽では、乱流は非常に高度にカオス的になっており、このような状況下でどうやって周期活動を駆動するかが大きな問題となっていました。
■結果
[画像3: http://prtimes.jp/i/15177/68/resize/d15177-68-561315-2.jpg ]
本研究では、スーパーコンピュータ「京」を用いることで初めて可能になった超高解像度計算で、上記の謎に迫りました。太陽のように高度に発達した乱流状況を調査するには、非常に多くの計算コストを必要とします。
計算の結果、ある程度の解像度まではこれまでの予測の通り、乱流が高度になればなるほど小さいスケールの磁場が支配的となり、大規模な磁場は作られなくなりました。しかし、今回可能になった超高解像度では、小スケールの磁場生成が非常に活発になり、小さいスケールの乱流運動のエネルギーを上回りました。その結果、小さいスケールでの乱流運動は強く制限されて、あたかも低解像度で計算をしているような状況が実現しました。つまり、高解像度であるにもかかわらず、乱流が高度でなくなったのです。その結果、太陽のような高度に乱流が発達した状況でも大スケールの磁場が発達することができました。
このメカニズムは、これまで誰も考えすらしていませんでしたが、実際の太陽でも働くはずであり、太陽活動周期の問題解決のための基本的で重要な機構を明らかにしたといえます。
【研究者情報】
■研究者の想い(千葉大学 大学院理学研究科 堀田英之 特任助教)
この成果により、太陽磁場生成メカニズムの重要な部分が明らかになりました。これからは衛星を中心とする観測によって、今回発見した理論の詳細を確かめることで、太陽最古の謎の本格解決を目指したいと思います。
■研究チーム
・千葉大学 大学院理学研究科 堀田英之 特任助教
・米国HAO/NCAR Matthias Rempel博士 Senior Scientist(主任科学者)
・東京大学 大学院理学系研究科 横山央明 准教授
■論文情報
掲載誌:Science
論文タイトル:Large-scale magnetic fields at high Reynolds numbers in magnetohydrodynamic simulations
著者:H. Hotta, M. Rempel, T. Yokoyama
DOI:10.1126/science.aad1893
※本研究は、文部科学省HPCI戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」における「ダークマターの密度ゆらぎから生まれる第1世代天体形成」(課題番号hp140212、hp150226課題代表者:牧野淳一郎)の計算資源を利用して実施したものです。
また、新学術領域「太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成」の支援を受けました。
本件に関するお問い合わせ
[画像4: http://prtimes.jp/i/15177/68/resize/d15177-68-836467-3.jpg ]
千葉大学 大学院 理学研究科 堀田英之 特任助教
TEL: 043-290-2749