螺旋偏平形ウェアラブルアクチュエータ群の開発とその廃用症候群予防療法への適用【産技助成Vol.66】
[08/11/17]
提供元:PRTIMES
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独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
東京工業大学機械制御システム専攻
在宅中の患者が1人でも簡便に行える装着型リハビリ支援機を開発
軽量・高出力の螺旋偏平形チューブアクチュエータと自動装着バンドの開発により初めて実現
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、東京工業大学の准教授、塚越秀行氏は、在宅中の患者が1人でも簡便に行える自動装着型リハビリ支援機の開発をしました。
本装置は、脳卒中などで片麻痺状態になった患者の拘縮(注1)を予防する装置、あるいは高齢者の廃用症候群予防装置であり、健常側でジョイスティックを操作することで螺旋偏平構造のチューブ内の空圧を調整し、麻痺側に装着したアクチュエータユニットで関節運動を促進でき、患者の意見に応じた自動介助運動ができるため、大きなリハビリ効果が期待できるものです。
従来病院で使われてきた電気モータ駆動のCPM装置は整形外科疾患患者にしか適用できなかったのに対し、開発したユニットは、チューブ材による空圧駆動のため、構造上も動作上も柔軟性を有します。また、本装置は意図しない方向に関節を動かしかねない脳疾患患者に適用しても、装置の動きに対して反発しようとする患者の力を吸収するため関節を痛める危険がありません。片麻痺患者でも簡便に装着できるようにするため、自動的に手首周部に装着されるバンドも開発し、関節運動中に手首の太さが変化しても適切な把持力に制御される機能も搭載しました。
(注1)寝たきり、あるいは長期間体を動かさないでいると筋肉や皮膚など関節周囲の軟部組織が伸縮性を失って固くなり、その結果関節の動きが悪くなること。
1.研究成果概要
片麻痺患者や寝たきり生活者など、関節を思い通りに動かせない高齢者が過度な安静状態を続けると、筋力の拘縮やエコノミークラス症候群などの2次的障害(総称して廃用症候群)を引き起こします。その予防策として、現在病院内では理学療法士による関節可動域訓練や、電気モータ駆動のCPM装置による持続的他動運動が行われています。しかし、通院自体が負担となるケースもあり、またCPM装置は「重い、高価、人体と装置間の可動域のずれ、取付けが煩雑、位置制御駆動のため脳疾患患者に適さない場合もある」、などの理由により家庭内への導入は困難でした。そのため、患者にとって退院後のケアが大きな課題となっていました。
そこで、家庭内でも持続して関節運動を提供することを目指し、構造的・動作的柔軟性を有したアクチュエータで構成され、衣服のように気軽に装着可能な、螺旋扁平型ウェアラブルアクチュエータ(WTA)の開発を行いました。本開発装置のポイントは可動範囲の大きさと着脱の簡便性にあります。可動範囲は、WTAの伸長動作にともない内側に紐を手繰り寄せる機構の導入により、背屈側に100度近くの可動範囲を生成することができました。
また、着脱の簡便性に関しては、押しボタン動作で自動的に装置と身体とを把持固定する「Fit-band」という能動装着バンドを開発しました。これは、内部を空圧で加圧すると断面が丸くなろうとする偏平チューブをバンド上の一定方向に複数本配置し、帯状から円筒形状に変形させる構造です。また、バンドの内部には、把持力を一定にするセンサ機能つき柔軟バルブ(Λ(ラムダ)−バルブと名づけたもの)も内蔵されているため、関節動作中に体の位置を変化させても把持力を制御することができます。これらの機能の付加により、患者にとって家庭内で気軽に関節運動をしやすい装置に近づいたシステムとなりました。
2.競合技術への強み
(1)軽量、移動の容易さ 樹脂製チューブを材料として使用することにより、従来装置で使われていた金属等の構造部材の重量を削減し、病院外での使用も可能です。
(2)装着の容易さ 能動装着バンドを開発し、理学療法士の手助けがなくてもアクチュエータを患者自らが装着できます。
(3)可動域制御の容易さ 従来装置ではできなかった背屈側(手の甲側の方向)にも100度近くの可動域を設定できる他、健常側の手により動作方向を自分で制御できます。
3.今後の展望
手首関節に加えて、下肢関節にも同様の駆動原理を発展させて、従来のCPM装置に代わる家庭用リハビリ運動支援機として開発を進めて行きます。病院との連携を保ち、臨床実験等も随時行いながら、商品化を目指します。また、状況に応じてリハビリセンターなどへの無償提供も行っていきます。
さらに、インターネットを通じた病院との通信によるマスタースレーブ遠隔操作を組み合わせ、在宅でリハビリ治療が受けられる技術として発展させる予定です。
4.参考
成果プレスダイジェスト:東京工業大学准教授 塚越 秀行氏
東京工業大学機械制御システム専攻
在宅中の患者が1人でも簡便に行える装着型リハビリ支援機を開発
軽量・高出力の螺旋偏平形チューブアクチュエータと自動装着バンドの開発により初めて実現
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、東京工業大学の准教授、塚越秀行氏は、在宅中の患者が1人でも簡便に行える自動装着型リハビリ支援機の開発をしました。
本装置は、脳卒中などで片麻痺状態になった患者の拘縮(注1)を予防する装置、あるいは高齢者の廃用症候群予防装置であり、健常側でジョイスティックを操作することで螺旋偏平構造のチューブ内の空圧を調整し、麻痺側に装着したアクチュエータユニットで関節運動を促進でき、患者の意見に応じた自動介助運動ができるため、大きなリハビリ効果が期待できるものです。
従来病院で使われてきた電気モータ駆動のCPM装置は整形外科疾患患者にしか適用できなかったのに対し、開発したユニットは、チューブ材による空圧駆動のため、構造上も動作上も柔軟性を有します。また、本装置は意図しない方向に関節を動かしかねない脳疾患患者に適用しても、装置の動きに対して反発しようとする患者の力を吸収するため関節を痛める危険がありません。片麻痺患者でも簡便に装着できるようにするため、自動的に手首周部に装着されるバンドも開発し、関節運動中に手首の太さが変化しても適切な把持力に制御される機能も搭載しました。
(注1)寝たきり、あるいは長期間体を動かさないでいると筋肉や皮膚など関節周囲の軟部組織が伸縮性を失って固くなり、その結果関節の動きが悪くなること。
1.研究成果概要
片麻痺患者や寝たきり生活者など、関節を思い通りに動かせない高齢者が過度な安静状態を続けると、筋力の拘縮やエコノミークラス症候群などの2次的障害(総称して廃用症候群)を引き起こします。その予防策として、現在病院内では理学療法士による関節可動域訓練や、電気モータ駆動のCPM装置による持続的他動運動が行われています。しかし、通院自体が負担となるケースもあり、またCPM装置は「重い、高価、人体と装置間の可動域のずれ、取付けが煩雑、位置制御駆動のため脳疾患患者に適さない場合もある」、などの理由により家庭内への導入は困難でした。そのため、患者にとって退院後のケアが大きな課題となっていました。
そこで、家庭内でも持続して関節運動を提供することを目指し、構造的・動作的柔軟性を有したアクチュエータで構成され、衣服のように気軽に装着可能な、螺旋扁平型ウェアラブルアクチュエータ(WTA)の開発を行いました。本開発装置のポイントは可動範囲の大きさと着脱の簡便性にあります。可動範囲は、WTAの伸長動作にともない内側に紐を手繰り寄せる機構の導入により、背屈側に100度近くの可動範囲を生成することができました。
また、着脱の簡便性に関しては、押しボタン動作で自動的に装置と身体とを把持固定する「Fit-band」という能動装着バンドを開発しました。これは、内部を空圧で加圧すると断面が丸くなろうとする偏平チューブをバンド上の一定方向に複数本配置し、帯状から円筒形状に変形させる構造です。また、バンドの内部には、把持力を一定にするセンサ機能つき柔軟バルブ(Λ(ラムダ)−バルブと名づけたもの)も内蔵されているため、関節動作中に体の位置を変化させても把持力を制御することができます。これらの機能の付加により、患者にとって家庭内で気軽に関節運動をしやすい装置に近づいたシステムとなりました。
2.競合技術への強み
(1)軽量、移動の容易さ 樹脂製チューブを材料として使用することにより、従来装置で使われていた金属等の構造部材の重量を削減し、病院外での使用も可能です。
(2)装着の容易さ 能動装着バンドを開発し、理学療法士の手助けがなくてもアクチュエータを患者自らが装着できます。
(3)可動域制御の容易さ 従来装置ではできなかった背屈側(手の甲側の方向)にも100度近くの可動域を設定できる他、健常側の手により動作方向を自分で制御できます。
3.今後の展望
手首関節に加えて、下肢関節にも同様の駆動原理を発展させて、従来のCPM装置に代わる家庭用リハビリ運動支援機として開発を進めて行きます。病院との連携を保ち、臨床実験等も随時行いながら、商品化を目指します。また、状況に応じてリハビリセンターなどへの無償提供も行っていきます。
さらに、インターネットを通じた病院との通信によるマスタースレーブ遠隔操作を組み合わせ、在宅でリハビリ治療が受けられる技術として発展させる予定です。
4.参考
成果プレスダイジェスト:東京工業大学准教授 塚越 秀行氏