平成29年度東京都委託事業「行動科学を活用した家庭部門における省エネルギー対策に資する実証実験」の結果について
[18/08/22]
提供元:PRTIMES
提供元:PRTIMES
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(本社:東京都千代田区、代表執行役社長:宋 修永)は、東京都による平成29年度委託事業「行動科学を活用した家庭部門における省エネルギー対策に資する実証実験」を受託し、株式会社住環境計画研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長:中上 英俊)、凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子 眞吾)及び株式会社早稲田環境研究所(本社:東京都新宿区、代表取締役:大村 健太)の3社の協力事業者とともに、2017年11月から12月にかけて3件の実証を実施しました。
実証の結果、行動科学(以下、ナッジ)を活用した情報提供によって省エネ行動が促進されうるとの結果を確認しました。
ナッジ(nudge)は、英語で「そっと後押しする」という意味を持つ言葉であり 、2017年ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学の行動経済学者リチャード・セイラー氏と、ハーバード大学の法学者キャス・サンスティーン氏が提唱した行動変容を促すための方法論です。欧米では省エネ政策の立案や改善にナッジが反映されつつあり、日本においても環境省が主体となり行動科学的アプローチの普及を目指す「ナッジ・ユニット」を発足するなど、国内外でナッジを活用した取り組みが広がっています。
今回の実証は、行動科学を活用した有益な既存の研究結果や事例があったとしても、それが都民の行動特性を踏まえた際に同様の効果が得られるかは不明であることから、都民の行動特性に合ったアプローチの方法を実証実験等により検証することを目的としています。実証は、東京都内の家庭部門におけるCO2排出量について、世帯類型別に推計した際、比較的多く排出する単身若年世帯と家族世帯を対象として実施しました。
今回の実証における各社の主な役割は次の通りとなっています。
・ 株式会社住環境計画研究所:実証の設計・検証の実施
・ デロイト トーマツ コンサルティング合同会社:実証の設計・検証と成果の施策への展開可能性の検討
・ 凸版印刷株式会社:実証のモニター募集から効果検証のためのデータ取得
・ 株式会社早稲田環境研究所:省エネポテンシャルの高い省エネ行動の抽出、実証の検証
【各実証ならびに結果の概要】
実証は、単身若年世帯向けの実証(2件)と家族世帯向けの実証(1件)を実施しました。各実証の結果及び概要は、次の通りとなります。
1. 大学新入生向け省エネ家電の購入促進実証 (単身若年世帯向け実証)
■実証概要:一人暮らしをする大学生の子を持つ親を対象に、大学新入生向けの家電案内チラシ(大学生協が発行すると想定)において、省エネ型冷蔵庫を含むセットをデフォルトとして提示するグループ(介入群)と、非省エネ型冷蔵庫を含むセットをデフォルトで提示するグループ(対照群)に分け、それぞれオプションで変更可能な状態でWEBアンケートを行い、省エネ型冷蔵庫の選択率を比較※
※本実証はあくまで仮想シナリオを用いたアンケート上での結果であり、回答者に実際に商品の購買をさせていない点には注意が必要である。また、調査では、チラシの中から必ず商品を選ぶことを求めており、「商品を購入しない」や「他の購入先」という選択肢がある場合は想定していない。そのため、調査状況の違いや実際の購買場面においては、結果が異なる可能性がある。
[画像1: https://prtimes.jp/i/33034/70/resize/d33034-70-593289-0.jpg ]
■対象とした省エネ行動:省エネ型冷蔵庫の購入
■ 実証結果:介入群の省エネ型冷蔵庫の選択率が対照群を46%上回った
●省エネ型冷蔵庫の選択率は介入群(76%)で対照群(30%)を約46%ポイント上回り、統計的にも有意な差がみられた
●実際の購買場面とは異なる状況における結果ではあるものの、デフォルトを活用した手法が効果的であることを確認できた
■ 実証期間:2017年12月13日〜18日
■ 実験手法:ランダム化比較試験(省エネ情報を提示する介入群Aと提示しない対照群Bを無作為にグルーピングし、実証後の両群の差を介入効果とする実験方法)
2. ソーシャルメディアによる単身若年世帯向け省エネ情報配信実証 (単身若年世帯向け実証)
■ 実証概要:都内在住のInstagramユーザーからモニターを募集し、職業とエンゲージメント率が同様の3組(各2名)のインフルエンサー※1を選定し、インフルエンサーから節水シャワーヘッドやLED照明等に関して、ナッジを活用し対象者の共感を呼ぶ内容に書き換えた情報発信を行うグループ(介入群A)、ナッジを活用せず、省エネ情報を単に紹介する情報発信を行うグループ(介入群B)及び省エネ情報を発信しないグループ(対照群)の3つのグループに分け、WEBアンケートを行い、省エネ情報の配信前後における省エネ行動の実施率の変化を比較※2
※1 インフルエンサーへの協力依頼は株式会社KIDS-COASTERを通じて実施
※2 本実証は可能な範囲で実証条件(情報提供者の属性や配信内容等)を統一しているが、Instagramユーザーに対して一人のインフルエンサーから同時に異なる内容を投稿することができないため、各グループの実証条件を同一にすることは一定の限界があったことを留意する必要がある。
[画像2: https://prtimes.jp/i/33034/70/resize/d33034-70-883652-1.jpg ]
* Affect:共感を得られるよう工夫すること
■ 対象とした省エネ行動:節水シャワーヘッドの購入、エアコンと扇風機の併用利用、LED照明の購入
■ 実証結果:節水シャワーヘッドの購入について、情報発信後に介入群Aの実施率が向上
●節水シャワーヘッドの購入については、情報発信後に介入群Aの実施率が向上し、対照群との有意差が認められた。一方で、LED照明の購入やエアコンと扇風機の併用利用は、対照群と介入群の有意差は認められなかった
■ 実証期間:2017年12月7日〜20日(情報配信期間)
■ 実験手法:傾向スコアマッチング手法(省エネ情報を提示する介入群を先にグルーピングした上で、同グループの省エネ意識に合わせて対照群をグルーピングし、実験後の両群の差を介入効果とする実験方法)
3. 電子チラシサービスによる家族世帯向け省エネ情報発信実証 (家族世帯向け)
■ 実証概要:家族世帯の中でも子育て世帯に親和性の高い電子チラシサービス(Shufoo! (R) ※1)を通じて、30代〜40代の子育て女性を対象に、ナッジを活用し「損失回避性や機会費用を強調したり、比較情報、社会規範を活用したりしたパターン」の情報発信を行うグループ(介入群)と、ナッジを活用せず「単に省エネ行動の方法を紹介するパターン」の情報を発信するグループ(対照群)とに分け、WEBアンケートにより、省エネ情報配信後における省エネ行動の実施回答率の差を比較※2
※1 凸版印刷が提供する国内最大級の電子チラシサービス
※2 本実証は特定の電子チラシサービスのユーザーを用いた実証結果であるため、東京都の世帯全体に一般化して適用できない可能性がある。また、冬季期間に限定した実証であったため、本実証の成果を他の期間における成果として適用できない点に注意が必要である。
[画像3: https://prtimes.jp/i/33034/70/resize/d33034-70-969491-2.jpg ]
* 損失回避性:損をするということを強調すること *Opportunity Cost Salience:機会費用を強調すること
* 社会規範:他人の行動を示すこと *マッピング:選択とその結果をわかりやすく示すこと
[画像4: https://prtimes.jp/i/33034/70/resize/d33034-70-830977-3.jpg ]
■ 対象とした省エネ行動:A.冷蔵庫の設定温度調整、B.お風呂は家族で続けて入る、C.LED照明の購入、D.節水シャワーヘッドの購入
■ 実証結果:対象世帯全体でみると、A〜Dのいずれにおいても、ナッジ要素を用いたチラシによる省エネ行動の実施率の向上効果は確認できなかった。一方で、個別属性の詳細分析では、冷蔵庫の設定温度調整を実施したとアンケートに回答した割合は、共働きかつ子供2人以上の世帯では、介入群が対照群を12%ポイント上回り、ナッジを用いた介入効果が部分的に確認された。以上より、本実証の結果、一部の属性(世帯構成等)では、ナッジの理論を適用した電子チラシの効果が確認されたことから、より個人の属性に基づいた情報提供が重要であることが示唆された
■ 実証期間:2017年11月21日〜12月13日(チラシ配信期間)
■ 実験手法:ランダム化比較試験(省エネ情報を提示する介入群と提示しない対照群を無作為にグルーピングし、実証後の両群の差を介入効果とする実験方法)
※ 「Shufoo! (R)」は凸版印刷株式会社の登録商標です。
以 上
実証の結果、行動科学(以下、ナッジ)を活用した情報提供によって省エネ行動が促進されうるとの結果を確認しました。
ナッジ(nudge)は、英語で「そっと後押しする」という意味を持つ言葉であり 、2017年ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学の行動経済学者リチャード・セイラー氏と、ハーバード大学の法学者キャス・サンスティーン氏が提唱した行動変容を促すための方法論です。欧米では省エネ政策の立案や改善にナッジが反映されつつあり、日本においても環境省が主体となり行動科学的アプローチの普及を目指す「ナッジ・ユニット」を発足するなど、国内外でナッジを活用した取り組みが広がっています。
今回の実証は、行動科学を活用した有益な既存の研究結果や事例があったとしても、それが都民の行動特性を踏まえた際に同様の効果が得られるかは不明であることから、都民の行動特性に合ったアプローチの方法を実証実験等により検証することを目的としています。実証は、東京都内の家庭部門におけるCO2排出量について、世帯類型別に推計した際、比較的多く排出する単身若年世帯と家族世帯を対象として実施しました。
今回の実証における各社の主な役割は次の通りとなっています。
・ 株式会社住環境計画研究所:実証の設計・検証の実施
・ デロイト トーマツ コンサルティング合同会社:実証の設計・検証と成果の施策への展開可能性の検討
・ 凸版印刷株式会社:実証のモニター募集から効果検証のためのデータ取得
・ 株式会社早稲田環境研究所:省エネポテンシャルの高い省エネ行動の抽出、実証の検証
【各実証ならびに結果の概要】
実証は、単身若年世帯向けの実証(2件)と家族世帯向けの実証(1件)を実施しました。各実証の結果及び概要は、次の通りとなります。
1. 大学新入生向け省エネ家電の購入促進実証 (単身若年世帯向け実証)
■実証概要:一人暮らしをする大学生の子を持つ親を対象に、大学新入生向けの家電案内チラシ(大学生協が発行すると想定)において、省エネ型冷蔵庫を含むセットをデフォルトとして提示するグループ(介入群)と、非省エネ型冷蔵庫を含むセットをデフォルトで提示するグループ(対照群)に分け、それぞれオプションで変更可能な状態でWEBアンケートを行い、省エネ型冷蔵庫の選択率を比較※
※本実証はあくまで仮想シナリオを用いたアンケート上での結果であり、回答者に実際に商品の購買をさせていない点には注意が必要である。また、調査では、チラシの中から必ず商品を選ぶことを求めており、「商品を購入しない」や「他の購入先」という選択肢がある場合は想定していない。そのため、調査状況の違いや実際の購買場面においては、結果が異なる可能性がある。
[画像1: https://prtimes.jp/i/33034/70/resize/d33034-70-593289-0.jpg ]
■対象とした省エネ行動:省エネ型冷蔵庫の購入
■ 実証結果:介入群の省エネ型冷蔵庫の選択率が対照群を46%上回った
●省エネ型冷蔵庫の選択率は介入群(76%)で対照群(30%)を約46%ポイント上回り、統計的にも有意な差がみられた
●実際の購買場面とは異なる状況における結果ではあるものの、デフォルトを活用した手法が効果的であることを確認できた
■ 実証期間:2017年12月13日〜18日
■ 実験手法:ランダム化比較試験(省エネ情報を提示する介入群Aと提示しない対照群Bを無作為にグルーピングし、実証後の両群の差を介入効果とする実験方法)
2. ソーシャルメディアによる単身若年世帯向け省エネ情報配信実証 (単身若年世帯向け実証)
■ 実証概要:都内在住のInstagramユーザーからモニターを募集し、職業とエンゲージメント率が同様の3組(各2名)のインフルエンサー※1を選定し、インフルエンサーから節水シャワーヘッドやLED照明等に関して、ナッジを活用し対象者の共感を呼ぶ内容に書き換えた情報発信を行うグループ(介入群A)、ナッジを活用せず、省エネ情報を単に紹介する情報発信を行うグループ(介入群B)及び省エネ情報を発信しないグループ(対照群)の3つのグループに分け、WEBアンケートを行い、省エネ情報の配信前後における省エネ行動の実施率の変化を比較※2
※1 インフルエンサーへの協力依頼は株式会社KIDS-COASTERを通じて実施
※2 本実証は可能な範囲で実証条件(情報提供者の属性や配信内容等)を統一しているが、Instagramユーザーに対して一人のインフルエンサーから同時に異なる内容を投稿することができないため、各グループの実証条件を同一にすることは一定の限界があったことを留意する必要がある。
[画像2: https://prtimes.jp/i/33034/70/resize/d33034-70-883652-1.jpg ]
* Affect:共感を得られるよう工夫すること
■ 対象とした省エネ行動:節水シャワーヘッドの購入、エアコンと扇風機の併用利用、LED照明の購入
■ 実証結果:節水シャワーヘッドの購入について、情報発信後に介入群Aの実施率が向上
●節水シャワーヘッドの購入については、情報発信後に介入群Aの実施率が向上し、対照群との有意差が認められた。一方で、LED照明の購入やエアコンと扇風機の併用利用は、対照群と介入群の有意差は認められなかった
■ 実証期間:2017年12月7日〜20日(情報配信期間)
■ 実験手法:傾向スコアマッチング手法(省エネ情報を提示する介入群を先にグルーピングした上で、同グループの省エネ意識に合わせて対照群をグルーピングし、実験後の両群の差を介入効果とする実験方法)
3. 電子チラシサービスによる家族世帯向け省エネ情報発信実証 (家族世帯向け)
■ 実証概要:家族世帯の中でも子育て世帯に親和性の高い電子チラシサービス(Shufoo! (R) ※1)を通じて、30代〜40代の子育て女性を対象に、ナッジを活用し「損失回避性や機会費用を強調したり、比較情報、社会規範を活用したりしたパターン」の情報発信を行うグループ(介入群)と、ナッジを活用せず「単に省エネ行動の方法を紹介するパターン」の情報を発信するグループ(対照群)とに分け、WEBアンケートにより、省エネ情報配信後における省エネ行動の実施回答率の差を比較※2
※1 凸版印刷が提供する国内最大級の電子チラシサービス
※2 本実証は特定の電子チラシサービスのユーザーを用いた実証結果であるため、東京都の世帯全体に一般化して適用できない可能性がある。また、冬季期間に限定した実証であったため、本実証の成果を他の期間における成果として適用できない点に注意が必要である。
[画像3: https://prtimes.jp/i/33034/70/resize/d33034-70-969491-2.jpg ]
* 損失回避性:損をするということを強調すること *Opportunity Cost Salience:機会費用を強調すること
* 社会規範:他人の行動を示すこと *マッピング:選択とその結果をわかりやすく示すこと
[画像4: https://prtimes.jp/i/33034/70/resize/d33034-70-830977-3.jpg ]
■ 対象とした省エネ行動:A.冷蔵庫の設定温度調整、B.お風呂は家族で続けて入る、C.LED照明の購入、D.節水シャワーヘッドの購入
■ 実証結果:対象世帯全体でみると、A〜Dのいずれにおいても、ナッジ要素を用いたチラシによる省エネ行動の実施率の向上効果は確認できなかった。一方で、個別属性の詳細分析では、冷蔵庫の設定温度調整を実施したとアンケートに回答した割合は、共働きかつ子供2人以上の世帯では、介入群が対照群を12%ポイント上回り、ナッジを用いた介入効果が部分的に確認された。以上より、本実証の結果、一部の属性(世帯構成等)では、ナッジの理論を適用した電子チラシの効果が確認されたことから、より個人の属性に基づいた情報提供が重要であることが示唆された
■ 実証期間:2017年11月21日〜12月13日(チラシ配信期間)
■ 実験手法:ランダム化比較試験(省エネ情報を提示する介入群と提示しない対照群を無作為にグルーピングし、実証後の両群の差を介入効果とする実験方法)
※ 「Shufoo! (R)」は凸版印刷株式会社の登録商標です。
以 上