イーライリリーとベーリンガーインゲルハイム、第72回米国糖尿病学会で開発中の新規基礎インスリンをインスリン・グラルギンと比較した第2相臨床試験データを発表
[12/06/22]
提供元:PRTIMES
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この資料は、イーライリリー・アンド・カンパニーとベーリンガーインゲルハイムが6月11日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳したものです。尚、日本の法規制などの観点から一部、削除、改変または追記している部分があります。また海外の試験であるため、日本の承認内容と異なることがあります。この資料の内容および解釈についてはオリジナルが優先することをご了承ください。
開発中の基礎インスリン(LY2605541)、1型および2型糖尿病の患者において、体重減少を伴う血糖値低下を示す
2012年6月11日フィラデルフィア発
イーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)およびベーリンガーインゲルハイムは、本日、開発中の新規基礎インスリンアナログLY2605541に関する2件の第2相臨床試験結果を発表しました。1型糖尿病患者を対象とした試験では、LY2605541がインスリン・グラルギンと比べて血糖コントロール(血糖値低下)をより改善することが示されました。2型糖尿病患者を対象とした試験では、LY2605541治療群とインスリン・グラルギン治療群(以下グラルギン治療群)は、主要評価項目において同等の血糖コントロールの改善を示しました。これらのデータおよび追加の評価データは、2012年6月8〜12日にフィラデルフィアで開催された第72回米国糖尿病学会(ADA)の学術セッション(R)において発表されました。
Richard Bergenstal教授(パーク・ニコレット国際糖尿病センター 所長、ミネソタ大学医学部臨床学教授)は次のように述べています。「LY2605541は1型および2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善し、さらに血糖値の日内変動および日間変動が小さく、体重減少効果も示されています。臨床研究者として、この2つの第2相試験の結果には興味をかきたてられます。」
David Kendall医師(リリー 糖尿病領域 特別医学研究員)は次のように述べています。「イーライリリーとベーリンガーインゲルハイムが実施したLY2605541の前臨床試験と臨床試験のデータを発表する機会を得たことを喜ばしく思います。また、この結果が、本剤の継続的な臨床開発を後押しすることを嬉しく思います。前臨床試験の結果によると、LY2605541 は注射による外因性のヒトインスリンと比較して、まるで内因性に分泌されたインスリンのように肝臓で優先的に作用すると考えられます。現在実施されている第3相臨床試験の結果を期待しています」。
血糖コントロール
LY2605541による治療を受けた成人1型糖尿病患者は、グラルギンによる治療を受けた患者よりも、8週後の血糖コントロールが良好でした。LY2605541治療群の1日平均の血糖値(自己測定値)は、グラルギン治療群との差が平均値において-10 mg/dLと有意に低く、HbA1cにおいては、LY2605541治療群がベースラインから-0.6%、グラルギン治療群がベースラインから-0.4%とグラルギン治療群に対して有意な低下を示しました。さらに、LY2605541治療群はグラルギン治療群と比較して、追加インスリンの投与量が統計的に有意に24%低下しました。
また、LY260554による治療を受けた2型糖尿病患者においては、12週間の自己測定による空腹時(朝食前)血糖値の平均値の低下およびHbA1cの低下において、グラルギン治療群と同等の効果を示しました。
体重
いずれの試験でも、LY2605541治療群の体重はベースラインから減少し、グラルギン治療群と比較して統計的有意差が認められました。
・ LY2605541治療群の1型糖尿病患者では体重減少が見られたのに対して、グラルギン治療群では体重増加が見られ(平均体重変化は、LY2605541群で-1.2 kg、グラルギン群で +0.7 kg、体重変化の平均値の差は -1.9 kgとなりました。なお、ベースラインの体重平均値は83 kgでした。
・ 5%以上の体重減少がみられた1型糖尿病患者の割合は、LY2605541治療群において統計的に有意に高くなりました(グラルギン治療群の1%に対して12%)。
・ LY2605541による治療を受けた2型糖尿病患者において、12週目の平均体重変化量-0.58 kgは、グラルギン治療群+0.31 kgと比較して有意に減少し、平均体重変化量の差は-0.84 kgでした。ベースラインの平均体重は、LY2605541治療群で91 kg、グラルギン治療群で90 kgでした。
・ 5%以上の体重減少がみられた2型糖尿病患者の割合は、LY2605541治療群の方が高くなりました(グラルギン治療群の0%に対して5%)。
低血糖
1型糖尿病患者のLY2605541治療群では、低血糖(血糖値70 mg/dL以下)の全発生率が統計的に有意に高くなりました(グラルギン治療群の30日当たり7.4イベントに対して8.7イベント)。本試験では試験開始時に追加インスリン投与量を減らす必要性が予期せず発生したことから、LY2605541治療群で低血糖の全発生率がグラルギン治療群よりわずかに高くなったと考えられます。一方、夜間低血糖の発生率は統計的に有意に低くなりました(グラルギン治療群の30日当たり1.1イベントに対して0.9イベント)。その後の全試験期間にわたって追加インスリン投与量を減らしたにもかかわらず、血糖コントロールの改善は継続的に認められました。
2型糖尿病患者を対象とした試験での低血糖の全発生率はLY2605541治療群とグラルギン治療群で同程度でした。一方、夜間低血糖の発生率はLY2605541治療群ではグラルギン治療群と比べて48%減少しました(ベースラインの低血糖発生数を補正後、患者1人で30日当たり0.25±0.07 vs 0.39±0.12イベント)。
また、2型糖尿病患者の一部を対象に持続血糖モニター(CGM)による低血糖の評価を実施しました。血糖値を5分毎に3日間測定する方法をとりました。CGMによる測定の結果、グラルギン治療群では、患者が低血糖になった累積時間がベースラインと比較して増加しました。対照的に、LY2605541治療群では、低血糖となった時間はベースライン時と差がなく、グラルギン治療群と比較して有意に短くなりました。LY2605541治療群では、低血糖が認められた患者の割合がグラルギン治療群と比べて少なく(50.0% vs 78.3%)、夜間低血糖イベントが認められた患者の割合も少なくなりました(20.5% vs 47.8%)。
血糖値の変動
1型糖尿病患者を対象とした試験では、LY2605541治療群において、治療後8週時の血糖値の日間変動が少ない(すなわち、血糖値の日間差が狭い範囲に収まっている)ことが、自己血糖測定の結果、示されました(標準偏差で49 vs 57mg/dL)。
2型糖尿病患者を対象とした試験では、血糖値の日内変動が、LY2605541治療群ではグラルギン治療群と比較して有意な減少がみられました(標準偏差で34 vs 39 mg/dL)。2型糖尿病患者の一部を対象としたCGMによる血糖評価において、LY2605541治療群では、血糖値の日内変動が夜間(標準偏差で18 vs 24 mg/dL)および日中(標準偏差で37 vs 45 mg/dL)のいずれにおいても、グラルギン治療群と比べて統計的に有意に減少しました。
追加安全性評価結果
LY2605541治療群における、肝機能血液検査のALTとASTの平均値は、いずれの試験でも、ベースラインよりも統計的に有意に上昇し、グラルギン治療群よりも高くなりました。この2つの肝酵素の平均値は、LY2605541治療群およびグラルギン治療群ともに試験期間中は正常範囲内を推移しました。
1型糖尿病患者を対象とした試験では、LY2605541治療群のトリグリセリド(91 mg/dLから113 mg/dLへ)とLDL-C(96 mg/dLから102 mg/dLへ)にベースラインと比較してわずかな上昇がみられ、HDL-Cは試験最終時点でわずかに減少しました(60 mg/dLから54 mg/dLへ)。これらは、ベースラインおよび試験最終時点でグラルギン治療群と比較しても統計的に有意な変化でした。2型糖尿病患者を対象とした試験では、LY2605541治療群のトリグリセリド値は、ベースラインから有意な差はみられませんでしたが(163 mg/dLから172 mg/dLへ)、グラルギン治療群と比較すると統計的に有意に高くなりました(172mg/dL vs 147 mg/dL)。LY2605541治療群のLDL-CまたはHDL-Cでは、ベースラインからも、グラルギン治療群と比較しても有意な差は認められませんでした。
1型糖尿病患者において、重度の低血糖を含む有害事象は、いずれの治療群でも同程度でした。LY2605541治療群では、消化器症状(消化不良、悪心、腹部膨満)に統計的に有意な増加がみられました(15% vs 4%)。この増加は、2型糖尿病患者では認められず、消化器症状を報告した患者は、LY2605541治療群の10%に対してグラルギン治療群で14%であり、統計的に有意な差ではありませんでした。2型糖尿病患者における他の有害事象は、いずれの治療群でも同程度でした。
第2相臨床試験について
1型糖尿病患者を対象とした試験
第2相無作為化非盲検クロスオーバー試験です。成人1型糖尿病患者を対象にLY2605541が、標準治療(この場合インスリン・グラルギン)に対して、1日平均の血糖値の低下作用において、10.8 mg/dLのマージンで非劣性(同等)であるかを評価しました。137人の患者を対象に、LY2605541またはグラルギンが1日1回、追加インスリンとともに、8週間投与され、その後8週間は、同様に追加インスリンとともに、両剤を入れ替えて投与しました。1日平均の血糖値は、来院の前の週の自己血糖測定のプロファイル(食事前、食後2時間、就寝時、午前3時の血糖測定)から計算されました。
2型糖尿病患者を対象とした試験
第2相無作為化非盲検並行試験です。成人2型糖尿病患者を対象にLY2605541とインスリン・グラルギンを比較して自己血糖測定による空腹時血糖値の低下を評価しました。患者は4週間の導入期間で基礎インスリン投与を朝に実施するよう変更したうえで、その後、2:1の割合で無作為にLY2605541(195人)治療群またはグラルギン(93人)群に割り付けられ、12週間にわたり投与されました。
一部の患者において(LY2605541治療群が51人、グラルギン治療群が25人)、自己血糖測定に加えて、持続血糖モニター(CGM)を3日間連続して使用し、低血糖イベントと血糖値の変動を測定しました。間質組織液の血糖値(皮下組織液中のグルコース濃度)が70 mg/dL以下で15分間持続した場合(または3回の連続した測定で)を低血糖とみなしました。
糖尿病について
糖尿病患者は1型と2型を合わせて米国で約2,580万人1、世界で3億6,600万人2と推定されています。大半が2型糖尿病で、糖尿病全体のおよそ90〜95%を占めます。糖尿病は、インスリンというホルモンを生体が適切に生成、利用できなくなった場合に発症する慢性疾患です3。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、糖尿病領域において大型製品に育成されることが期待される4つの治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者のケアにおけるコミットメントを示し、患者のニーズに応えるべく協力しています。この提携に関する詳しい情報についてはwww.boehringer-ingelheim.comまたはwww.lilly.comをご覧ください。
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
1876年創業のイーライリリーは130年の歴史ある研究開発主導型の先進企業であり、世界140カ国以上、約38,000人の社員が自社の研究施設の最新の成果を応用するとともに、社外の研究機関との提携を通じて医薬品のポートフォリオを拡大しています。米インディアナ州インディアナポリスに本社を置くリリーは、医薬品と情報を通じて「こたえ」を提供し、世界で最も急を要する医療ニーズを満たしています。リリーについての詳細は以下のウェブサイトをご覧ください。 www.lilly.com
リリーの糖尿病事業について
リリーは85年以上にわたり、糖尿病の患者さんの生命ならびに治療を支援する先駆的企業として、常に世界をリードしてきました。リリーは世界初の商業用インスリンを1923年に開発した企業であり、今日も糖尿病を管理するための医薬品ならびに投与システム分野で最先端を走り続けています。また、リリーは、実用的なツール、教育、支援プログラムなど、治療以外のソリューションの提供にも注力しており、こうしたプログラムは長期にわたる糖尿病治療における障壁の克服に寄与しています。糖尿病と共に生き、治療を続ける患者さん一人ひとりの道のりが、リリーの活動の原動力となっています。詳細は以下のウェブサイトをご覧ください。 www.lillydiabetes.com
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムグループは、世界でトップ20の製薬企業のひとつです。ドイツのインゲルハイムを本拠とし、世界で145の関連会社と44,000人以上の社員が、事業を展開しています。1885年の設立以来、株式公開をしない企業形態の特色を生かしながら、臨床的価値の高いヒト用医薬品および動物薬の研究開発、製造、販売に注力してきました。2011年度は132億ユーロ(約1兆4,624億円)の売上を示しました。革新的な医薬品を世に送り出すべく、医療用医薬品事業の売上の23.5%相当額を研究開発に投資しました。詳細は下記をご参照ください。http://www.boehringer-ingelheim.co.jp
このプレスリリースには、リリーの現在の予測に基づく将来予想に関する記述が含まれていますが、様々な要因により実際の結果が異なる場合があります。医薬品の研究開発プロセスおよび商品化には常に多大なリスクと不確実性が伴います。新規基礎インスリンが必要な臨床、製造承認を規制当局から受ける、もしくは商業的に成功を収めるという保証もありません。また、両社が、この提携により期待される財務的及び 商業的な結果を実現するという保証はありません。リリー社の結果に影響する可能性がある他のリスク要因については、米国証券取引委員会に提出されたリリーの最新のフォーム10-Kおよび10-Qに記載されています。なお、両社は将来予想に関する記述を更新する義務を負いません。
REFERENCES
1. Centers for Disease Control. National Diabetes Fact Sheet-2011. Available at: http://www.cdc.gov/diabetes/pubs/pdf/ndfs_2011.pdf. Accessed on: February 22, 2012.
2. International Diabetes Federation. Diabetes Atlas, 5th Edition: Fact Sheet. 2011.
3. International Diabetes Federation. Diabetes Atlas, 5th Edition: What is Diabetes? http://www.idf.org/diabetesatlas/5e/what-is-diabetes. Accessed on: February 22, 2012.
開発中の基礎インスリン(LY2605541)、1型および2型糖尿病の患者において、体重減少を伴う血糖値低下を示す
2012年6月11日フィラデルフィア発
イーライリリー・アンド・カンパニー(NYSE:LLY)およびベーリンガーインゲルハイムは、本日、開発中の新規基礎インスリンアナログLY2605541に関する2件の第2相臨床試験結果を発表しました。1型糖尿病患者を対象とした試験では、LY2605541がインスリン・グラルギンと比べて血糖コントロール(血糖値低下)をより改善することが示されました。2型糖尿病患者を対象とした試験では、LY2605541治療群とインスリン・グラルギン治療群(以下グラルギン治療群)は、主要評価項目において同等の血糖コントロールの改善を示しました。これらのデータおよび追加の評価データは、2012年6月8〜12日にフィラデルフィアで開催された第72回米国糖尿病学会(ADA)の学術セッション(R)において発表されました。
Richard Bergenstal教授(パーク・ニコレット国際糖尿病センター 所長、ミネソタ大学医学部臨床学教授)は次のように述べています。「LY2605541は1型および2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善し、さらに血糖値の日内変動および日間変動が小さく、体重減少効果も示されています。臨床研究者として、この2つの第2相試験の結果には興味をかきたてられます。」
David Kendall医師(リリー 糖尿病領域 特別医学研究員)は次のように述べています。「イーライリリーとベーリンガーインゲルハイムが実施したLY2605541の前臨床試験と臨床試験のデータを発表する機会を得たことを喜ばしく思います。また、この結果が、本剤の継続的な臨床開発を後押しすることを嬉しく思います。前臨床試験の結果によると、LY2605541 は注射による外因性のヒトインスリンと比較して、まるで内因性に分泌されたインスリンのように肝臓で優先的に作用すると考えられます。現在実施されている第3相臨床試験の結果を期待しています」。
血糖コントロール
LY2605541による治療を受けた成人1型糖尿病患者は、グラルギンによる治療を受けた患者よりも、8週後の血糖コントロールが良好でした。LY2605541治療群の1日平均の血糖値(自己測定値)は、グラルギン治療群との差が平均値において-10 mg/dLと有意に低く、HbA1cにおいては、LY2605541治療群がベースラインから-0.6%、グラルギン治療群がベースラインから-0.4%とグラルギン治療群に対して有意な低下を示しました。さらに、LY2605541治療群はグラルギン治療群と比較して、追加インスリンの投与量が統計的に有意に24%低下しました。
また、LY260554による治療を受けた2型糖尿病患者においては、12週間の自己測定による空腹時(朝食前)血糖値の平均値の低下およびHbA1cの低下において、グラルギン治療群と同等の効果を示しました。
体重
いずれの試験でも、LY2605541治療群の体重はベースラインから減少し、グラルギン治療群と比較して統計的有意差が認められました。
・ LY2605541治療群の1型糖尿病患者では体重減少が見られたのに対して、グラルギン治療群では体重増加が見られ(平均体重変化は、LY2605541群で-1.2 kg、グラルギン群で +0.7 kg、体重変化の平均値の差は -1.9 kgとなりました。なお、ベースラインの体重平均値は83 kgでした。
・ 5%以上の体重減少がみられた1型糖尿病患者の割合は、LY2605541治療群において統計的に有意に高くなりました(グラルギン治療群の1%に対して12%)。
・ LY2605541による治療を受けた2型糖尿病患者において、12週目の平均体重変化量-0.58 kgは、グラルギン治療群+0.31 kgと比較して有意に減少し、平均体重変化量の差は-0.84 kgでした。ベースラインの平均体重は、LY2605541治療群で91 kg、グラルギン治療群で90 kgでした。
・ 5%以上の体重減少がみられた2型糖尿病患者の割合は、LY2605541治療群の方が高くなりました(グラルギン治療群の0%に対して5%)。
低血糖
1型糖尿病患者のLY2605541治療群では、低血糖(血糖値70 mg/dL以下)の全発生率が統計的に有意に高くなりました(グラルギン治療群の30日当たり7.4イベントに対して8.7イベント)。本試験では試験開始時に追加インスリン投与量を減らす必要性が予期せず発生したことから、LY2605541治療群で低血糖の全発生率がグラルギン治療群よりわずかに高くなったと考えられます。一方、夜間低血糖の発生率は統計的に有意に低くなりました(グラルギン治療群の30日当たり1.1イベントに対して0.9イベント)。その後の全試験期間にわたって追加インスリン投与量を減らしたにもかかわらず、血糖コントロールの改善は継続的に認められました。
2型糖尿病患者を対象とした試験での低血糖の全発生率はLY2605541治療群とグラルギン治療群で同程度でした。一方、夜間低血糖の発生率はLY2605541治療群ではグラルギン治療群と比べて48%減少しました(ベースラインの低血糖発生数を補正後、患者1人で30日当たり0.25±0.07 vs 0.39±0.12イベント)。
また、2型糖尿病患者の一部を対象に持続血糖モニター(CGM)による低血糖の評価を実施しました。血糖値を5分毎に3日間測定する方法をとりました。CGMによる測定の結果、グラルギン治療群では、患者が低血糖になった累積時間がベースラインと比較して増加しました。対照的に、LY2605541治療群では、低血糖となった時間はベースライン時と差がなく、グラルギン治療群と比較して有意に短くなりました。LY2605541治療群では、低血糖が認められた患者の割合がグラルギン治療群と比べて少なく(50.0% vs 78.3%)、夜間低血糖イベントが認められた患者の割合も少なくなりました(20.5% vs 47.8%)。
血糖値の変動
1型糖尿病患者を対象とした試験では、LY2605541治療群において、治療後8週時の血糖値の日間変動が少ない(すなわち、血糖値の日間差が狭い範囲に収まっている)ことが、自己血糖測定の結果、示されました(標準偏差で49 vs 57mg/dL)。
2型糖尿病患者を対象とした試験では、血糖値の日内変動が、LY2605541治療群ではグラルギン治療群と比較して有意な減少がみられました(標準偏差で34 vs 39 mg/dL)。2型糖尿病患者の一部を対象としたCGMによる血糖評価において、LY2605541治療群では、血糖値の日内変動が夜間(標準偏差で18 vs 24 mg/dL)および日中(標準偏差で37 vs 45 mg/dL)のいずれにおいても、グラルギン治療群と比べて統計的に有意に減少しました。
追加安全性評価結果
LY2605541治療群における、肝機能血液検査のALTとASTの平均値は、いずれの試験でも、ベースラインよりも統計的に有意に上昇し、グラルギン治療群よりも高くなりました。この2つの肝酵素の平均値は、LY2605541治療群およびグラルギン治療群ともに試験期間中は正常範囲内を推移しました。
1型糖尿病患者を対象とした試験では、LY2605541治療群のトリグリセリド(91 mg/dLから113 mg/dLへ)とLDL-C(96 mg/dLから102 mg/dLへ)にベースラインと比較してわずかな上昇がみられ、HDL-Cは試験最終時点でわずかに減少しました(60 mg/dLから54 mg/dLへ)。これらは、ベースラインおよび試験最終時点でグラルギン治療群と比較しても統計的に有意な変化でした。2型糖尿病患者を対象とした試験では、LY2605541治療群のトリグリセリド値は、ベースラインから有意な差はみられませんでしたが(163 mg/dLから172 mg/dLへ)、グラルギン治療群と比較すると統計的に有意に高くなりました(172mg/dL vs 147 mg/dL)。LY2605541治療群のLDL-CまたはHDL-Cでは、ベースラインからも、グラルギン治療群と比較しても有意な差は認められませんでした。
1型糖尿病患者において、重度の低血糖を含む有害事象は、いずれの治療群でも同程度でした。LY2605541治療群では、消化器症状(消化不良、悪心、腹部膨満)に統計的に有意な増加がみられました(15% vs 4%)。この増加は、2型糖尿病患者では認められず、消化器症状を報告した患者は、LY2605541治療群の10%に対してグラルギン治療群で14%であり、統計的に有意な差ではありませんでした。2型糖尿病患者における他の有害事象は、いずれの治療群でも同程度でした。
第2相臨床試験について
1型糖尿病患者を対象とした試験
第2相無作為化非盲検クロスオーバー試験です。成人1型糖尿病患者を対象にLY2605541が、標準治療(この場合インスリン・グラルギン)に対して、1日平均の血糖値の低下作用において、10.8 mg/dLのマージンで非劣性(同等)であるかを評価しました。137人の患者を対象に、LY2605541またはグラルギンが1日1回、追加インスリンとともに、8週間投与され、その後8週間は、同様に追加インスリンとともに、両剤を入れ替えて投与しました。1日平均の血糖値は、来院の前の週の自己血糖測定のプロファイル(食事前、食後2時間、就寝時、午前3時の血糖測定)から計算されました。
2型糖尿病患者を対象とした試験
第2相無作為化非盲検並行試験です。成人2型糖尿病患者を対象にLY2605541とインスリン・グラルギンを比較して自己血糖測定による空腹時血糖値の低下を評価しました。患者は4週間の導入期間で基礎インスリン投与を朝に実施するよう変更したうえで、その後、2:1の割合で無作為にLY2605541(195人)治療群またはグラルギン(93人)群に割り付けられ、12週間にわたり投与されました。
一部の患者において(LY2605541治療群が51人、グラルギン治療群が25人)、自己血糖測定に加えて、持続血糖モニター(CGM)を3日間連続して使用し、低血糖イベントと血糖値の変動を測定しました。間質組織液の血糖値(皮下組織液中のグルコース濃度)が70 mg/dL以下で15分間持続した場合(または3回の連続した測定で)を低血糖とみなしました。
糖尿病について
糖尿病患者は1型と2型を合わせて米国で約2,580万人1、世界で3億6,600万人2と推定されています。大半が2型糖尿病で、糖尿病全体のおよそ90〜95%を占めます。糖尿病は、インスリンというホルモンを生体が適切に生成、利用できなくなった場合に発症する慢性疾患です3。
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーの提携について
2011年1月、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、糖尿病領域におけるアライアンスを結び、糖尿病領域において大型製品に育成されることが期待される4つの治療薬候補化合物を中心に協働していくことを発表しました。同アライアンスは、ベーリンガーインゲルハイムが持つ研究開発主導型イノベーションの確かな実績とイーライリリーが持つ糖尿病領域での革新的な研究、経験、先駆的実績を合わせ、世界的製薬企業である両社の強みを最大限に活用するものです。この提携によって両社は、糖尿病患者のケアにおけるコミットメントを示し、患者のニーズに応えるべく協力しています。この提携に関する詳しい情報についてはwww.boehringer-ingelheim.comまたはwww.lilly.comをご覧ください。
イーライリリー・アンド・カンパニーについて
1876年創業のイーライリリーは130年の歴史ある研究開発主導型の先進企業であり、世界140カ国以上、約38,000人の社員が自社の研究施設の最新の成果を応用するとともに、社外の研究機関との提携を通じて医薬品のポートフォリオを拡大しています。米インディアナ州インディアナポリスに本社を置くリリーは、医薬品と情報を通じて「こたえ」を提供し、世界で最も急を要する医療ニーズを満たしています。リリーについての詳細は以下のウェブサイトをご覧ください。 www.lilly.com
リリーの糖尿病事業について
リリーは85年以上にわたり、糖尿病の患者さんの生命ならびに治療を支援する先駆的企業として、常に世界をリードしてきました。リリーは世界初の商業用インスリンを1923年に開発した企業であり、今日も糖尿病を管理するための医薬品ならびに投与システム分野で最先端を走り続けています。また、リリーは、実用的なツール、教育、支援プログラムなど、治療以外のソリューションの提供にも注力しており、こうしたプログラムは長期にわたる糖尿病治療における障壁の克服に寄与しています。糖尿病と共に生き、治療を続ける患者さん一人ひとりの道のりが、リリーの活動の原動力となっています。詳細は以下のウェブサイトをご覧ください。 www.lillydiabetes.com
ベーリンガーインゲルハイムについて
ベーリンガーインゲルハイムグループは、世界でトップ20の製薬企業のひとつです。ドイツのインゲルハイムを本拠とし、世界で145の関連会社と44,000人以上の社員が、事業を展開しています。1885年の設立以来、株式公開をしない企業形態の特色を生かしながら、臨床的価値の高いヒト用医薬品および動物薬の研究開発、製造、販売に注力してきました。2011年度は132億ユーロ(約1兆4,624億円)の売上を示しました。革新的な医薬品を世に送り出すべく、医療用医薬品事業の売上の23.5%相当額を研究開発に投資しました。詳細は下記をご参照ください。http://www.boehringer-ingelheim.co.jp
このプレスリリースには、リリーの現在の予測に基づく将来予想に関する記述が含まれていますが、様々な要因により実際の結果が異なる場合があります。医薬品の研究開発プロセスおよび商品化には常に多大なリスクと不確実性が伴います。新規基礎インスリンが必要な臨床、製造承認を規制当局から受ける、もしくは商業的に成功を収めるという保証もありません。また、両社が、この提携により期待される財務的及び 商業的な結果を実現するという保証はありません。リリー社の結果に影響する可能性がある他のリスク要因については、米国証券取引委員会に提出されたリリーの最新のフォーム10-Kおよび10-Qに記載されています。なお、両社は将来予想に関する記述を更新する義務を負いません。
REFERENCES
1. Centers for Disease Control. National Diabetes Fact Sheet-2011. Available at: http://www.cdc.gov/diabetes/pubs/pdf/ndfs_2011.pdf. Accessed on: February 22, 2012.
2. International Diabetes Federation. Diabetes Atlas, 5th Edition: Fact Sheet. 2011.
3. International Diabetes Federation. Diabetes Atlas, 5th Edition: What is Diabetes? http://www.idf.org/diabetesatlas/5e/what-is-diabetes. Accessed on: February 22, 2012.