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フォルクマル・デナーが 第14回シュトゥットガルト国際シンポジウムで講演 ボッシュでオートパイロットの実用化研究が進展

・自動運転で道路交通の安全性と効率性を向上
・ドイツ国内の交通事故の90%はドライバーが原因
・2016年までにドライバー アシスタンス システムで10億ユーロの売上高達成を目指す
・高度な自動運転の時代の幕開けは2020年以降
・自動化とコネクティビティにより車両アーキテクチャを全面的に刷新




シュトゥットガルト - 今後数年間で自動車は大きく変わっていくと考えられています。ボッシュ取締役会会長のフォルクマル・デナーは3月18日、第14回シュトゥットガルト国際シンポジウム「自動車とエンジン技術」で講演し、こう述べました。「未来の自動車交通のキーワードは、電気駆動、自動運転、コネクティビティです。自動運転により、交通安全は大幅に向上し、事故件数は減少していくでしょう。また、交通の流れも改善され、燃費の向上にも寄与することになります」。今日のアシスタンス機能はすでに運転に関係する多くの機能を担っていますが、将来は一段と高性能化が進んだシステムがドライバーをより広範にサポートするようになり、完全自動運転が次第に現実のものとなっていく見込みです。

デナーは自動運転の利点を強調するとともに、今後解決しなくてはならない問題点を指摘しました。デナーは全世界で交通事故のために失われている人命の数に言及し、「120万人の命を救えるという見通しは私たちに大きな力を与えます」と述べました。ドイツ国内では、交通事故全体のほぼ90%について、ドライバーに原因があるとされています。危機的な状況で大きな力となる広範なサポートと、単調な運転状況下でドライバーの負担を軽減するシステムがあれば、交通安全を大幅に向上できるでしょう。また、自動運転はモビリティの経済性向上にもつながります。最新の交通情報を利用することで、交通の流れが改善し、あらゆる車両で燃費を向上させることも可能になるからです。そして、もう1つ忘れてならないことがあります。それは、「自動運転が高齢者のモビリティを助け、社会福祉の向上に貢献することにもなる」という点です(デナー)。

自動運転時代が徐々に到来
アダプティブ クルーズ コントロールにより前走車との車間距離と車速の自動制御が実現して10年以上になります。また、渋滞の中、車速60km/h以下のときに車両を車線内に保ちながら走行する渋滞アシスタントも市場に投入されます。こうしたドライバー アシスタンス システムの機能は徐々に高度化し、ラインナップも多彩になりつつあります。「遅くとも2020年には、高度な自動運転に必要な技術が成熟期を迎えることになるでしょう。それに続く10年の間に、完全な自動運転が実現すると私たちは予測しています」(デナー)。高度に自動化された車両では、ドライバーは発進後、しばらくの間は車両を自分の手でコントロールする必要がありますが、少なくとも高速道路と幹線道路では完全自動運転システムに車両を委ね、車中でゆったりと過ごすことができます。そして、ボッシュはパーキング時の操車を自動的に行うアシスタンスシステムの開発も進めており、近々実用化できる見通しです。ボッシュの現在の技術は、スマートフォンアプリを使い、車両を自動的に空きスペースに誘導するものですが、数年後には車両が自分で空き駐車スペースを探し出せるようになっていきます。

技術上の制約があるため、開発のスピードは段階的なものになりますが、これにはこれでメリットがあります。「ドライバーが新しい技術に慣れるまでに要する時間を確保できるからです」(デナー)。今日のドライバーはすでに、この種の技術革新の受入れに前向きな姿勢を示しています。欧州6カ国でボッシュが実施した調査では、自動運転が良いものだと考える人が回答者の59%に達しました。とはいえ、自動運転をスイッチオフできる仕組みも欲しいという声が大半を占めていることも事実です。経済的な観点からすると、ドライバーアシスタンス技術は今日すでに魅力的な市場に成長し、将来の成長にも大きな期待が持てます。「2016年までにボッシュでは、ドライバーアシスタンス システムで10億ユーロの売上高達成を見込んでいます」(デナー)。

ボッシュの「自動運転」プロジェクトチームは2011年の発足以来、ドイツのシュトゥットガルトと米国のパロアルトで未来の運転技術の開発に取り組んできました。そして2013年初めに、ボッシュは幹線道路で自動運転技術を路上でテストする許可を得ることができました。ドイツの公道でこの種のシステムのテストが行われるのは初めてのことです。「実際の交通条件下でテストを行ったことで、開発プロセスが大幅に加速化しました」(デナー)。

自動運転の実現には広範なシステムに関する専門知識が必要
自動運転はあらゆる車両システムに関係します。そのため、ボッシュの技術陣は今後数年、さまざまな課題に取り組んでゆかなくてはなりません。デナーは、今後成功していくのは、多様なシステムに関して膨大な専門知識を擁する自動車メーカーとサプライヤーだけなのではないかという見解を明らかにしたほか、5つの開発優先目標を以下のようにまとめました。

1.周囲360°の状況を認識できるセンサーコンセプト:
車両の周囲の状況を把握し、正しいアクションを推論できるようにするには、どのようなタイプのセンサー技術が必要になるのでしょうか?ボッシュはこれまでに100万台を超えるレーダーとビデオセンサーを出荷しました。ボッシュはこの経験を活かし、自動運転の要求を満たすような、高性能で経済的な環境認識技術の開発に取り組んでいます。
2.冗長性のあるシステムアーキテクチャ:
いずれかのコンポーネントが故障した場合でも最大限の可用性を確保するために、車両アーキテクチャを変えていく必要があります。そうした中で、ボッシュではすでにブレーキなどに必要な冗長性を持たせることに成功しています。現在の電動ブレーキブースターのiBoosterとESCシステムは、それぞれ独立して自動でブレーキを作動させる機能を備えています。
3.機能異常が発生した場合やハッキングを受けた場合の信頼性:
機能的な信頼性をチェックするために、ボッシュは高度な手法を用いています。ただし、オートパイロットシステムの信頼性の評価のために今日と同等の検証レベルを保証するには、信頼性の検証に新しいアプローチを開発する必要があります。現在の手法を用いたのでは、信頼性を確認するために延べ2億5,000万km以上の試走を行う必要があるからです。また、車両システムをハッキングから保護するために、ボッシュはすでに車両電気システムのインフォテインメント機能を、運転に欠かせないシステムと分離するデュアルアーキテクチャを確立しました。このほかにも、エレクトロニクス技術のエキスパートたちはデータのセキュリティとアクセスを保護するために、ハードウェア、ソフトウェアをベースとした最新のソリューションを提案しています。「自動車業界は明確で一貫性のあるデータ保護/データセキュリティに関する規則を必要としています」とデナーは強調しました。
4.高精度マップデータ:
現在のナビゲーションシステムでは、1 m前後の精度が確保されていれば十分ですが、完全自動運転では10 cm単位の精度が必要になってきます。さらに、車両を正しいルート、正しいコースに維持するために、マップを全面的にアップデートしていかなくてはなりません。
5.法的要求事項:
世界の多くの国々で交通法規の根拠として用いられている1968年のウィーン条約には、部分的な自動運転に限って合法とみなすという規定があります。「認可制度と製造物責任に関連した問題をめぐり、業界団体と政府、保険会社の間で目下、さまざまな議論が繰り広げられています」(デナー)。

コネクティビティが車両の安全性、効率性&快適性の向上に寄与
車両のコネクティビティは自動運転に必ず必要というわけではありませんが、コネクティビティは安全性と効率性の向上をもたらします。インターネット接続を通じて、交通状況と工事区間に関する最新情報を入手できるからです。他の車両が捉えた道路標識関連の情報を受け取ることができるほか、こうした情報をナビゲーションシステムのルート選定の最適化に役立てることも可能です。また、車両間のコミュニケーションにより、たとえば前方で渋滞が起きている、緊急車両が接近しているなど、潜在的に厄介な状況を早期に知ることができます。さらに、車両コネクティビティはモニタリングセンターや保険会社、フリート運用者などとのデータ交換を含む新しいサービスに道を拓きます。ボッシュのコミュニケーションセンターのeCallソリューションはすでに数多くの自動車メーカーのモデルに取り入れられているほか、ボッシュの子会社のBosch Software InnovationsはLeasePlanと提携し、前例のない斬新なフリート管理コンセプトの導入を計画しています。「将来、コネクティビティ機能は車両アーキテクチャの基本的な構成要素となり、ドライブの快適性、効率性、そして安全性の向上に寄与することになるでしょう」。デナーはこのように結びました。
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