子どもコミッションイニシアティブ構想に基づく「子どもESGレポート2024」を発表
[24/10/18]
提供元:PRTIMES
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〜子どもの権利の尊重が、ビジネスを進化させる可能性〜
株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教、以下「日本総研」)は、子どもの権利とビジネスの接点を探る「子どもESG調査2024」(以下「本調査」)を実施し、その結果を踏まえた報告書として「子どもESGレポート2024」(以下「本レポート」)を取りまとめました。
これは、少子化が急速に進む日本において、子どもの権利の尊重が社会・経済にもたらす影響などを調査し提言および普及啓発を行う、日本総研の「子どもコミッションイニシアティブ構想」(注1)の活動の一環として実施されたものです。
本レポートは、以下のリンクからご覧になれます。 https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/2024/241015_kodomoesgreport2024.pdf
■本レポート作成の背景と目的
わが国では2023年4月に「こども基本法」が施行され、同時にこども政策の司令塔として「こども家庭庁」が創設されました。その後さまざまな政策が進展する中、企業の間でも男性の育児休業制度の整備のほか、野外活動や芸術鑑賞といった体験機会の創出など、子どもに関連する支援の取り組みが増加しています。しかし、子どもの権利の尊重を意識して本業のビジネスに取り入れる企業は、ほとんど見られないのが実態です。
こうした企業の実態を明らかにすることを目的に、日本総研では「子どもESG調査」を2023年から開始しました(注2)。調査は、サプライチェーン全体における子どもの人権の尊重や国内外の社会貢献活動に加え、企業が事業活動の全体を通じて子どもの権利を尊重するべきである、という視点から実施しています。本年は、本調査のほか、「子どもの権利とビジネスを巡る動き」「デジタル社会における子ども」の章なども加えた「子どもESGレポート2024」として発表します。
■本調査の概要
子どもが接触することが多い8種類の製品・サービスに関連するセクター(建設、住宅、電気機器、輸送用機器、空運、陸運(鉄道)、小売、マスコミ(テレビ))のうち、各業界をけん引していると考えられる企業を東証プライム上場企業からそれぞれ複数選定した計43社を調査対象としました。また、調査は、2024年8月末までの有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書、統合報告書などの公表資料を利用して行いました。
■調査項目
本調査は、製品・サービスおよび組織について、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の面から調査を行い、それぞれ子どもの権利に及ぼしている影響や今後期待すべき点について分析しました。
製品・サービスを通じた子どもの権利への影響については、「子どもの権利の4つの原則」(差別の禁止、子どもの最善の利益、生命・生存および発達に対する権利、子どもの意見の尊重)に沿って分析しました。環境(E)の面では生活環境や気候変動について、社会(S)の面では購買行動や消費者安全などについて、それぞれの業種特性に応じた内容としています。
ガバナンス(G)面では、組織としての子どもの権利をどの程度尊重しているかを分析しました。事業活動を通じた人権侵害のリスクを特定・評価し、予防や低減などの対策を講じる人権デューディリジェンスに子どもを含めて分析できているか、子どもが意見を言いやすい窓口を設置しているかなどに力点を置いています。
■本調査の主な結果と着眼点
○顧客や地域住民などのステークホルダーに子どもを含める視点が必要
子どもの権利の4原則のうち、環境(E)および社会(S)の両面に関わる「生命、生存および発達の権利」については、幅広いセクターで製品・サービスを通じた貢献が行われていました。例えば建設では、学校や病院などの公的な建築物の設計を工夫し、子どもの学びや医療サービスの環境の向上に役立てていました。輸送用機器や空運、陸運(鉄道)では、安全性のほか、子どもの移動の可能性や体験機会を広げる取り組みが見られました。
建築物や交通に関する気候変動対策の実効性を求める声は、世界的にみても子ども世代から多く上がるなど、子どもの権利への意識は強まっています。上記のような接点を企業が子どもの権利の観点から常に意識しながら、他の接点での活動への展開を図っていくことが重要です。つまり企業には、顧客や地域住民などのステークホルダーに子どもを含める視点や、経営に子ども世代の意見を生かすという視点が一層求められることになると考えられます。
○「デジタル社会」における子どもと企業の関係性の変化
社会(S)の面では、子どもたちが置かれる変化として、「デジタル社会」の到来に着目しました。「子どもは遠い存在」とこれまで考えてきた企業にとっても、通信環境と機器さえあれば誰でもインターネットで接続できるデジタル社会においては、企業と子どもが直結できるようになるからです。
デジタル社会には、情報漏洩や健康、ネットいじめなどのリスクだけではなく、学習機会や社会性を育成するといった子どもの発達段階におけるチャンスも存在します。つまり、児童労働のような、解消だけを目指せばよい従来からの課題とは異なる性格があります。
デジタル社会を牽引する電気機器のセクターでは、小学生〜高校生・保護者・教職員を対象にしたインターネット利用に関する啓発・ガイダンス講座の開催や、小学生向けのAIリテラシー教育支援プログラムを提供するなどの取り組みが見られました。また、陸運(鉄道)ではICタグを活用した子どもの登下校確認ツールを提供するなど、デジタル技術を活用して新たなビジネスを創出している企業もありました。
インターネットによる情報提供やオンライン販売、新サービスの開発などに取り組む企業には、今後、子どもがどのようにその情報を受け止め、それが「子どもの権利の4つの原則」にどう影響しうるのか、事前のアセスメントやモニタリングが求められます。また、小売など子どもを自社の顧客として捉えやすいセクターにおいても、決済手段のキャッシュレス化など消費行動を取り巻く環境が大きく変化しており、社会の変化と子どもの権利双方を踏まえて自社の事業や取り組みを見直し、常にアップデートしていくことが必要と考えられます。
○人権デューディリジェンスでの子どもへの言及や子どもの声を聴く窓口の設置は道半ば
ガバナンス(G)面から組織の在り方を見ると、一社を除き全企業が人権方針を策定し、そのうち3割以上で「子どもの権利とビジネス原則」を掲げていました。さらに、独自の人権レポートで子どもに言及する企業も見られました。
一方、人権デューディリジェンスを実施する企業は多かったものの、子どもに言及している企業はわずかでした。また、言及されていてもサプライチェーン上における児童労働に関するリスクの特定・評価が中心で、子どもを顧客として捉え明示的に評価しているのは小売1社のみでした。
子どもの声を聴く機会や窓口を設けることについては、電気機器や輸送用機器などの一部の企業のみにとどまりました。ただし、例えば通学や日常生活で利用される陸運(鉄道)のように、子どもとの接点をもともと多く有しているセクターでは、新たに機会や窓口を設ける必要がないと考え、本調査で利用した公表資料には特に記載しなかった可能性もあります。
■企業が子どもの権利に取り組む意義と目的の確認、企業価値向上への経路
2023年からの2回の調査および複数の企業との意見交換を通じ、企業にとって子どもの権利とは、サプライチェーン上の児童労働対策か社会貢献活動が中心となっていることが分かりました。
そこで、本レポートでは、子どもの権利に基づく取り組みが、企業のステークホルダー(顧客、従業員、取引先、地域社会・行政、求職者など)との関係性をよりよいものにし、よって企業価値向上への道筋を描けるように、経路の例を提示しています。例えば、「製品・サービスや相談窓口が子どもの視点から改善され、顧客満足が向上する」「人権研修を活用して体罰禁止や子どものプライバシーについて周知し従業員個人による人権侵害を回避する」といったガバナンスの強化を通して、リスクの低減や機会獲得を図るというものです。さらに、子どもの意見の尊重は、自己肯定感や社会への関心の高まりにつながり、社会全体での人材育成にも資すると考えます。
(注1)日本総研では、多様な個と社会が共に育ち、幸せになる「共育ち社会」を掲げ、その一環として「子どもコミッションイニシアティブ構想」を推進しています。
https://www.jri.co.jp/service/special/content31/
(注2)2023年に実施した第1回の調査結果については、子どもESGレポート第3章を参照。第1回では、食品(チョコレートを中心に)、日用品(生理用品)、医薬品、スポーツ用品、不動産開発、通信、保育所、学習塾のセクターを調査しました。
子どもESGレポート(2024年4月16日発表)
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=107752
◆日本総合研究所
日本総合研究所は、生活者、民間企業、行政を含む多様なステークホルダーとの対話を深めながら、社会的価値の共創を目指しています。シンクタンク・コンサルティング事業では、パーパス「次世代起点でありたい未来をつくる。傾聴と対話で、多様な個をつなぎ、共にあらたな価値をつむいでいく。」を掲げ、次世代経済・政策を研究・提言する「リサーチ」、次世代経営・公共を構想・支援する「コンサルティング」、次世代社会・市場を創発・実装する「インキュベーション」を、個人間や組織間で掛け合わせることで、次世代へ向けた価値創造を強力に推進しています。
■本件に関するお問い合わせ先
【報道関係者様】 広報部 山口 電話: 080-7154-5017
【一般のお客様】 創発戦略センター 村上 メール: murakami.megumuatjri.co.jp
(メール送付の際はatを@と書き換えて送信してください)
株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教、以下「日本総研」)は、子どもの権利とビジネスの接点を探る「子どもESG調査2024」(以下「本調査」)を実施し、その結果を踏まえた報告書として「子どもESGレポート2024」(以下「本レポート」)を取りまとめました。
これは、少子化が急速に進む日本において、子どもの権利の尊重が社会・経済にもたらす影響などを調査し提言および普及啓発を行う、日本総研の「子どもコミッションイニシアティブ構想」(注1)の活動の一環として実施されたものです。
本レポートは、以下のリンクからご覧になれます。 https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/2024/241015_kodomoesgreport2024.pdf
■本レポート作成の背景と目的
わが国では2023年4月に「こども基本法」が施行され、同時にこども政策の司令塔として「こども家庭庁」が創設されました。その後さまざまな政策が進展する中、企業の間でも男性の育児休業制度の整備のほか、野外活動や芸術鑑賞といった体験機会の創出など、子どもに関連する支援の取り組みが増加しています。しかし、子どもの権利の尊重を意識して本業のビジネスに取り入れる企業は、ほとんど見られないのが実態です。
こうした企業の実態を明らかにすることを目的に、日本総研では「子どもESG調査」を2023年から開始しました(注2)。調査は、サプライチェーン全体における子どもの人権の尊重や国内外の社会貢献活動に加え、企業が事業活動の全体を通じて子どもの権利を尊重するべきである、という視点から実施しています。本年は、本調査のほか、「子どもの権利とビジネスを巡る動き」「デジタル社会における子ども」の章なども加えた「子どもESGレポート2024」として発表します。
■本調査の概要
子どもが接触することが多い8種類の製品・サービスに関連するセクター(建設、住宅、電気機器、輸送用機器、空運、陸運(鉄道)、小売、マスコミ(テレビ))のうち、各業界をけん引していると考えられる企業を東証プライム上場企業からそれぞれ複数選定した計43社を調査対象としました。また、調査は、2024年8月末までの有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書、統合報告書などの公表資料を利用して行いました。
■調査項目
本調査は、製品・サービスおよび組織について、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の面から調査を行い、それぞれ子どもの権利に及ぼしている影響や今後期待すべき点について分析しました。
製品・サービスを通じた子どもの権利への影響については、「子どもの権利の4つの原則」(差別の禁止、子どもの最善の利益、生命・生存および発達に対する権利、子どもの意見の尊重)に沿って分析しました。環境(E)の面では生活環境や気候変動について、社会(S)の面では購買行動や消費者安全などについて、それぞれの業種特性に応じた内容としています。
ガバナンス(G)面では、組織としての子どもの権利をどの程度尊重しているかを分析しました。事業活動を通じた人権侵害のリスクを特定・評価し、予防や低減などの対策を講じる人権デューディリジェンスに子どもを含めて分析できているか、子どもが意見を言いやすい窓口を設置しているかなどに力点を置いています。
■本調査の主な結果と着眼点
○顧客や地域住民などのステークホルダーに子どもを含める視点が必要
子どもの権利の4原則のうち、環境(E)および社会(S)の両面に関わる「生命、生存および発達の権利」については、幅広いセクターで製品・サービスを通じた貢献が行われていました。例えば建設では、学校や病院などの公的な建築物の設計を工夫し、子どもの学びや医療サービスの環境の向上に役立てていました。輸送用機器や空運、陸運(鉄道)では、安全性のほか、子どもの移動の可能性や体験機会を広げる取り組みが見られました。
建築物や交通に関する気候変動対策の実効性を求める声は、世界的にみても子ども世代から多く上がるなど、子どもの権利への意識は強まっています。上記のような接点を企業が子どもの権利の観点から常に意識しながら、他の接点での活動への展開を図っていくことが重要です。つまり企業には、顧客や地域住民などのステークホルダーに子どもを含める視点や、経営に子ども世代の意見を生かすという視点が一層求められることになると考えられます。
○「デジタル社会」における子どもと企業の関係性の変化
社会(S)の面では、子どもたちが置かれる変化として、「デジタル社会」の到来に着目しました。「子どもは遠い存在」とこれまで考えてきた企業にとっても、通信環境と機器さえあれば誰でもインターネットで接続できるデジタル社会においては、企業と子どもが直結できるようになるからです。
デジタル社会には、情報漏洩や健康、ネットいじめなどのリスクだけではなく、学習機会や社会性を育成するといった子どもの発達段階におけるチャンスも存在します。つまり、児童労働のような、解消だけを目指せばよい従来からの課題とは異なる性格があります。
デジタル社会を牽引する電気機器のセクターでは、小学生〜高校生・保護者・教職員を対象にしたインターネット利用に関する啓発・ガイダンス講座の開催や、小学生向けのAIリテラシー教育支援プログラムを提供するなどの取り組みが見られました。また、陸運(鉄道)ではICタグを活用した子どもの登下校確認ツールを提供するなど、デジタル技術を活用して新たなビジネスを創出している企業もありました。
インターネットによる情報提供やオンライン販売、新サービスの開発などに取り組む企業には、今後、子どもがどのようにその情報を受け止め、それが「子どもの権利の4つの原則」にどう影響しうるのか、事前のアセスメントやモニタリングが求められます。また、小売など子どもを自社の顧客として捉えやすいセクターにおいても、決済手段のキャッシュレス化など消費行動を取り巻く環境が大きく変化しており、社会の変化と子どもの権利双方を踏まえて自社の事業や取り組みを見直し、常にアップデートしていくことが必要と考えられます。
○人権デューディリジェンスでの子どもへの言及や子どもの声を聴く窓口の設置は道半ば
ガバナンス(G)面から組織の在り方を見ると、一社を除き全企業が人権方針を策定し、そのうち3割以上で「子どもの権利とビジネス原則」を掲げていました。さらに、独自の人権レポートで子どもに言及する企業も見られました。
一方、人権デューディリジェンスを実施する企業は多かったものの、子どもに言及している企業はわずかでした。また、言及されていてもサプライチェーン上における児童労働に関するリスクの特定・評価が中心で、子どもを顧客として捉え明示的に評価しているのは小売1社のみでした。
子どもの声を聴く機会や窓口を設けることについては、電気機器や輸送用機器などの一部の企業のみにとどまりました。ただし、例えば通学や日常生活で利用される陸運(鉄道)のように、子どもとの接点をもともと多く有しているセクターでは、新たに機会や窓口を設ける必要がないと考え、本調査で利用した公表資料には特に記載しなかった可能性もあります。
■企業が子どもの権利に取り組む意義と目的の確認、企業価値向上への経路
2023年からの2回の調査および複数の企業との意見交換を通じ、企業にとって子どもの権利とは、サプライチェーン上の児童労働対策か社会貢献活動が中心となっていることが分かりました。
そこで、本レポートでは、子どもの権利に基づく取り組みが、企業のステークホルダー(顧客、従業員、取引先、地域社会・行政、求職者など)との関係性をよりよいものにし、よって企業価値向上への道筋を描けるように、経路の例を提示しています。例えば、「製品・サービスや相談窓口が子どもの視点から改善され、顧客満足が向上する」「人権研修を活用して体罰禁止や子どものプライバシーについて周知し従業員個人による人権侵害を回避する」といったガバナンスの強化を通して、リスクの低減や機会獲得を図るというものです。さらに、子どもの意見の尊重は、自己肯定感や社会への関心の高まりにつながり、社会全体での人材育成にも資すると考えます。
(注1)日本総研では、多様な個と社会が共に育ち、幸せになる「共育ち社会」を掲げ、その一環として「子どもコミッションイニシアティブ構想」を推進しています。
https://www.jri.co.jp/service/special/content31/
(注2)2023年に実施した第1回の調査結果については、子どもESGレポート第3章を参照。第1回では、食品(チョコレートを中心に)、日用品(生理用品)、医薬品、スポーツ用品、不動産開発、通信、保育所、学習塾のセクターを調査しました。
子どもESGレポート(2024年4月16日発表)
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=107752
◆日本総合研究所
日本総合研究所は、生活者、民間企業、行政を含む多様なステークホルダーとの対話を深めながら、社会的価値の共創を目指しています。シンクタンク・コンサルティング事業では、パーパス「次世代起点でありたい未来をつくる。傾聴と対話で、多様な個をつなぎ、共にあらたな価値をつむいでいく。」を掲げ、次世代経済・政策を研究・提言する「リサーチ」、次世代経営・公共を構想・支援する「コンサルティング」、次世代社会・市場を創発・実装する「インキュベーション」を、個人間や組織間で掛け合わせることで、次世代へ向けた価値創造を強力に推進しています。
■本件に関するお問い合わせ先
【報道関係者様】 広報部 山口 電話: 080-7154-5017
【一般のお客様】 創発戦略センター 村上 メール: murakami.megumuatjri.co.jp
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