10年計画で通信の中継ネットワークを再設計、区間別に総コスト約10〜50%削減余地【A.T. カーニー】
[26/07/21]
提供元:PRTIMES
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既存の光ファイバーを活かし、不要な拠点・設備を集約―短期の継ぎ足し改修から、将来需要を起点とする全体設計へ
A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、通信事業者のネットワークコストと将来設計を分析した論考「簡素化による抜本的コスト削減――未来の通信ネットワークをどう設計するか」(英題:Radical cost reduction through simplification: designing the telecom network of the future)を公開しました。
本稿では、モバイル・固定通信のデータ量が増える一方、通信サービスの違いが見えにくくなり、多くの通信事業者で収益性が低下していると指摘しています。Kearney分析では、世界の大手通信事業者10社の投下資本利益率(ROIC)は、2020年の9.7%に対し、2024年推計では5.8%です。人員やサプライチェーンの見直しなど、取り組みやすいコスト削減はすでに進んでおり、今後はネットワークの構造そのものを見直す必要があります。
本稿が焦点を当てるのは、利用者側のアクセス網と、大規模データセンターや基幹網を結ぶ「輸送ネットワーク」です。典型的な大手(ティア1)総合通信事業者では、総営業費用の20〜30%を占めます。短期的なつぎはぎではなく、10年後の目標像を定め、耐用年数の長い既存の光ファイバーと管路は残しながら、拠点と機器を白紙から見直すことを提言しています。将来残す拠点にだけ新設備を入れ、不要拠点は売却・転用することで、総保有コスト(TCO)の削減と資産価値の収益化を目指します。
世界の大手通信10社、投下資本利益率は9.7%から2024年推計5.8%へ
大規模な法人事業と、ユニバーサルサービス義務を伴う固定回線事業を抱える既存通信事業者では、通信量とコストが収益より速く増えています。輸送ネットワークには1960〜70年代に設けられた拠点・設備が多く、企業買収や、モバイル網と固定網を別々に整備してきたことで、重複した設備も残っています。
通信の流れも変わり、利用者から都市郊外の少数の大規模データセンターへ向かう通信が増え、従来の輸送ネットワークの多くを通らなくなっています。一方、最新の光通信技術は、加入者と中央局(通信局舎)の距離を最大30kmまで延ばせます。長距離光伝送では、輸送拠点間の距離を従来技術の80kmから最大200kmへ延ばせるため、中継拠点と関連コストを減らせます。
図表1 既存の光ファイバーを残し、拠点・設備を白紙から見直す設計
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/46861/119/46861-119-49ce9ef5224ec246e2fe78fdf70c7fdb-1954x2700.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
3つの区間で総保有コスト約50%・30%・10%の削減余地
利用者側のアクセス網から、通信をまとめる集約網までの中継区間(バックホール)では、既存の携帯電話基地局を活用するか、電源を必要としない光通信技術を使って中継拠点を無給電キャビネットへ縮小します。電力、賃料、運用・保守費を抑えることで、この区間の総保有コスト(TCO)を約50%削減できる余地があるとしています。
通信をまとめる集約区間では、長距離光伝送と、リング型や馬蹄型など階層を減らした構成を採用し、拠点数と必要な機器を減らします。障害への耐性を保ちながら、TCOを約30%削減できる余地があります。基幹部分では、旧式の基盤を廃止し、認証や音声通信などの機能を仮想化・クラウド化することで、TCOを約10%削減できる余地があるとしています。
多くの事業者は、大きな先行投資を避けるため、3年程度の計画に合わせて部分改修を重ねてきました。しかし、古いネットワークへのつぎ足しでは不要な拠点や機器が残り、コストも下がりにくくなります。本稿は、10年先の需要を基準に全体を設計し直すべきだとしています。
図表2 高密度地域と低密度地域に合わせた、簡素な通信網の設計例
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/46861/119/46861-119-f1a83cf49b7c2a10dd39802ecadc7ec2-2015x1290.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
将来残す拠点だけに新設備を入れ、既存の光ファイバーは活用
10年後の目標像では、将来の通信の流れに最も効率よく対応できるよう、拠点、接続点、機器を設計し直します。制約は既存のケーブルルートだけとし、耐用年数の長い光ファイバーと管路は活用します。ネットワーク機器の減価償却期間は通常10年未満、拠点インフラは10年超ですが、光ファイバー資産はさらに長く使えるためです。拠点には継続的な保有コストがかかる一方、不動産として売却・転用できる価値もあります。
将来の目標像を定めた後は「キャップ・アンド・グロー」を進めます。将来残さない拠点では、設備が寿命を迎えた時点で撤去するか増設を止め、残す拠点にだけ、将来のネットワークへ段階的に移行できる新設備を導入します。
設計は、1.最新技術を使い、拠点・接続点・機器をできるだけ少なくする技術設計、2.今後10年の需要と成長地域を基準に拠点を選ぶ配置設計、3.光ファイバー経路の二重化や衛星通信などを組み込み、障害に耐える力を確保する設計、の3点で具体化します。高密度地域では電源を必要としない光技術とモバイル網を分け、低密度地域では既存の携帯電話基地局を通信の集約拠点として活用する例を示しています。
不要拠点は売却・転用し、将来の固定費を減らす
ネットワークの簡素化と並行し、各拠点を「残す」「改修する」「小型化する」「退出する」のどれにするかを一つずつ判断します。退出には、設備の撤去、顧客回線の切り替え、新しい設備の構築などの一時費用がかかります。一方、不動産・設備の売却や転用による収入に加え、運営拠点の減少、省エネ技術、無人拠点の活用によって、設備投資と運用費を継続的に減らせます。
報告書は、不要資産の主な選択肢として、1.個別売却、2.複数資産の一括売却、3.REIT(不動産投資信託)への売却、4.不動産信託、5.特別目的ビークルを使うユニット・トラストの5つを挙げています。残す中央局、通信塔、データセンターも、外部向けに活用することで、通信事業者全体より高い投下資本利益率を得られる可能性があります。短期的なつぎはぎではなく、残す・廃止する・収益化する資産を10年単位で選ぶことが、コスト削減と障害耐性の両立につながります。
論考について
- 論考名:「簡素化による抜本的コスト削減――未来の通信ネットワークをどう設計するか」(英題:Radical cost reduction through simplification: designing the telecom network of the future)
- URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/radical-cost-reduction-through-simplification-designing-the-telecom-network-of-the-future
監修者
- 針ヶ谷 武文 日本代表 マネージングディレクタージャパン/シニアパートナー
東京大学教養学部卒業。大手通信会社で営業企画・事業企画・サービス開発を経て、A.T. カーニーに入社。通信・ハイテク・メディア企業を中心に、約20年の超えるコンサルティング経験を有する。事業会社における様々な組織横断での事業推進の経験を下敷きに、デジタルを始めとするトランスフォーメーション、海外事業戦略、新規事業戦略、事業ポートフォリオの再構築、事業ターンアラウンドのテーマを中心に地の足の付いた実効性の高いコンサルティングサービスを提供。
- 滝 健太郎 シニアパートナー
東京大学経済学部経済学科を卒業後、A.T. カーニーに入社。約10年のコンサルティング経験を有する。通信・金融機関・消費財を中心に、戦略〜新規事業・R&D〜M&A〜マーケ・営業〜オペレーション〜コスト〜人事・組織など、経営に係わる幅広いテーマを手掛け、特に、全社レベルでの大規模デジタルトランスフォーメーションを得意とする。
A.T. カーニーについて
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、あらゆる主要産業のリーディングカンパニーに対し、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。www.jp.kearney.com
A.T. カーニー株式会社(東京都港区、日本代表:針ヶ谷 武文)は、通信事業者のネットワークコストと将来設計を分析した論考「簡素化による抜本的コスト削減――未来の通信ネットワークをどう設計するか」(英題:Radical cost reduction through simplification: designing the telecom network of the future)を公開しました。
本稿では、モバイル・固定通信のデータ量が増える一方、通信サービスの違いが見えにくくなり、多くの通信事業者で収益性が低下していると指摘しています。Kearney分析では、世界の大手通信事業者10社の投下資本利益率(ROIC)は、2020年の9.7%に対し、2024年推計では5.8%です。人員やサプライチェーンの見直しなど、取り組みやすいコスト削減はすでに進んでおり、今後はネットワークの構造そのものを見直す必要があります。
本稿が焦点を当てるのは、利用者側のアクセス網と、大規模データセンターや基幹網を結ぶ「輸送ネットワーク」です。典型的な大手(ティア1)総合通信事業者では、総営業費用の20〜30%を占めます。短期的なつぎはぎではなく、10年後の目標像を定め、耐用年数の長い既存の光ファイバーと管路は残しながら、拠点と機器を白紙から見直すことを提言しています。将来残す拠点にだけ新設備を入れ、不要拠点は売却・転用することで、総保有コスト(TCO)の削減と資産価値の収益化を目指します。
世界の大手通信10社、投下資本利益率は9.7%から2024年推計5.8%へ
大規模な法人事業と、ユニバーサルサービス義務を伴う固定回線事業を抱える既存通信事業者では、通信量とコストが収益より速く増えています。輸送ネットワークには1960〜70年代に設けられた拠点・設備が多く、企業買収や、モバイル網と固定網を別々に整備してきたことで、重複した設備も残っています。
通信の流れも変わり、利用者から都市郊外の少数の大規模データセンターへ向かう通信が増え、従来の輸送ネットワークの多くを通らなくなっています。一方、最新の光通信技術は、加入者と中央局(通信局舎)の距離を最大30kmまで延ばせます。長距離光伝送では、輸送拠点間の距離を従来技術の80kmから最大200kmへ延ばせるため、中継拠点と関連コストを減らせます。
図表1 既存の光ファイバーを残し、拠点・設備を白紙から見直す設計
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/46861/119/46861-119-49ce9ef5224ec246e2fe78fdf70c7fdb-1954x2700.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
3つの区間で総保有コスト約50%・30%・10%の削減余地
利用者側のアクセス網から、通信をまとめる集約網までの中継区間(バックホール)では、既存の携帯電話基地局を活用するか、電源を必要としない光通信技術を使って中継拠点を無給電キャビネットへ縮小します。電力、賃料、運用・保守費を抑えることで、この区間の総保有コスト(TCO)を約50%削減できる余地があるとしています。
通信をまとめる集約区間では、長距離光伝送と、リング型や馬蹄型など階層を減らした構成を採用し、拠点数と必要な機器を減らします。障害への耐性を保ちながら、TCOを約30%削減できる余地があります。基幹部分では、旧式の基盤を廃止し、認証や音声通信などの機能を仮想化・クラウド化することで、TCOを約10%削減できる余地があるとしています。
多くの事業者は、大きな先行投資を避けるため、3年程度の計画に合わせて部分改修を重ねてきました。しかし、古いネットワークへのつぎ足しでは不要な拠点や機器が残り、コストも下がりにくくなります。本稿は、10年先の需要を基準に全体を設計し直すべきだとしています。
図表2 高密度地域と低密度地域に合わせた、簡素な通信網の設計例
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/46861/119/46861-119-f1a83cf49b7c2a10dd39802ecadc7ec2-2015x1290.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
将来残す拠点だけに新設備を入れ、既存の光ファイバーは活用
10年後の目標像では、将来の通信の流れに最も効率よく対応できるよう、拠点、接続点、機器を設計し直します。制約は既存のケーブルルートだけとし、耐用年数の長い光ファイバーと管路は活用します。ネットワーク機器の減価償却期間は通常10年未満、拠点インフラは10年超ですが、光ファイバー資産はさらに長く使えるためです。拠点には継続的な保有コストがかかる一方、不動産として売却・転用できる価値もあります。
将来の目標像を定めた後は「キャップ・アンド・グロー」を進めます。将来残さない拠点では、設備が寿命を迎えた時点で撤去するか増設を止め、残す拠点にだけ、将来のネットワークへ段階的に移行できる新設備を導入します。
設計は、1.最新技術を使い、拠点・接続点・機器をできるだけ少なくする技術設計、2.今後10年の需要と成長地域を基準に拠点を選ぶ配置設計、3.光ファイバー経路の二重化や衛星通信などを組み込み、障害に耐える力を確保する設計、の3点で具体化します。高密度地域では電源を必要としない光技術とモバイル網を分け、低密度地域では既存の携帯電話基地局を通信の集約拠点として活用する例を示しています。
不要拠点は売却・転用し、将来の固定費を減らす
ネットワークの簡素化と並行し、各拠点を「残す」「改修する」「小型化する」「退出する」のどれにするかを一つずつ判断します。退出には、設備の撤去、顧客回線の切り替え、新しい設備の構築などの一時費用がかかります。一方、不動産・設備の売却や転用による収入に加え、運営拠点の減少、省エネ技術、無人拠点の活用によって、設備投資と運用費を継続的に減らせます。
報告書は、不要資産の主な選択肢として、1.個別売却、2.複数資産の一括売却、3.REIT(不動産投資信託)への売却、4.不動産信託、5.特別目的ビークルを使うユニット・トラストの5つを挙げています。残す中央局、通信塔、データセンターも、外部向けに活用することで、通信事業者全体より高い投下資本利益率を得られる可能性があります。短期的なつぎはぎではなく、残す・廃止する・収益化する資産を10年単位で選ぶことが、コスト削減と障害耐性の両立につながります。
論考について
- 論考名:「簡素化による抜本的コスト削減――未来の通信ネットワークをどう設計するか」(英題:Radical cost reduction through simplification: designing the telecom network of the future)
- URL:https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/radical-cost-reduction-through-simplification-designing-the-telecom-network-of-the-future
監修者
- 針ヶ谷 武文 日本代表 マネージングディレクタージャパン/シニアパートナー
東京大学教養学部卒業。大手通信会社で営業企画・事業企画・サービス開発を経て、A.T. カーニーに入社。通信・ハイテク・メディア企業を中心に、約20年の超えるコンサルティング経験を有する。事業会社における様々な組織横断での事業推進の経験を下敷きに、デジタルを始めとするトランスフォーメーション、海外事業戦略、新規事業戦略、事業ポートフォリオの再構築、事業ターンアラウンドのテーマを中心に地の足の付いた実効性の高いコンサルティングサービスを提供。
- 滝 健太郎 シニアパートナー
東京大学経済学部経済学科を卒業後、A.T. カーニーに入社。約10年のコンサルティング経験を有する。通信・金融機関・消費財を中心に、戦略〜新規事業・R&D〜M&A〜マーケ・営業〜オペレーション〜コスト〜人事・組織など、経営に係わる幅広いテーマを手掛け、特に、全社レベルでの大規模デジタルトランスフォーメーションを得意とする。
A.T. カーニーについて
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年にわたり世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の4分の3以上をはじめ、世界各国の政府機関に信頼されるパートナーであり続けてきました。40カ国以上に拠点を展開し、私たちの最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力をもって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現をともに推進します。日本には1972年に進出し、あらゆる主要産業のリーディングカンパニーに対し、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。www.jp.kearney.com










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