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今からでも遅くない!各産業のゲームチェンジャーとなりえる量子技術の導入・R&D投資は最新萌芽技術の選択が決め手8.前編(全8回)〜世界の研究開発動向と有望技術解説〜

第8回 量子材料・量子派生技術のこれまでとこれからのプレイヤー(前編)




[表: https://prtimes.jp/data/corp/7141/table/128_1.jpg ]



量子材料・量子科学理論・量子生命科学・量子派生技術による量子技術と異分野の融合技術の動向と活用
量子材料(Quantum materials)とは、量子状態を精密制御することで機能を発現する物性・材料であり、メタマテリアルも含む広義の「材料」を示す言葉として使われます。量子材料は将来の産業波及効果が高い技術領域であり、新たな量子物質の探索や位相幾何学(トポロジー)の数学的概念の導入による現象理解が急速に進んできたことで、先進国を中心として国際競争が激化しています。量子材料の中でも注目される量子材料の具体例として、グラフェン等のトポロジカル量子物質は、高効率なスピン・電荷変換等の実現を通じて、省エネデバイスや新物性材料等への応用が期待される物質材料であり、超低消費電力デバイスや、新方式の量子コンピュータの実現への応用研究が進められています。また、炭素が抜けてできた空孔(V)と窒素(N)の対からなるNV中心と呼ばれる不純物欠陥をもつ人工欠陥ダイヤモンド(NV中心)は、一つ一つのNV中心がスピンを生成室温で保持・操作・検出できるなどの特性から、磁場などの超高空間分解・超高感度センサー,量子情報素子、バイオマーカー等への応用も期待されています。このような量子状態が安定化する特性を利用した応用分野としては、量子メモリ、量子中継器などがあり、量子暗号通信の課題の一つである通信距離の短さを、安定した量子ビット中継器として活用し、大規模量子ネットワークの実現を目指した研究開発が進められています。量子派生技術とは、この量子基盤技術と既存の様々な技術とを融合・連携させた技術領域であり、派生技術の例としては、量子アルゴリズムに着想を得て古典アルゴリズムの高速化に応用した量子派生アルゴリズム技術や、量子通信ネットワーク構築のために量子情報を記録させる量子メモリ(Quantum Memory)・量子中継器(Quantum Repeaters)、微弱な環境要因により量子の変化を計測する量子センサー(Quantum Sensor)、量子技術を生命・医療等とを融合し革新へつなげることを目指した「量子生命技術」(Quantum Life Science)、などが挙げられます。他にも、活性層にナノメートルサイズの半導体量子ドットを用いた「量子ドットレーザー」(Quantum Dot Laser)は従来半導体レーザーを凌駕する特性を有し、これまで想定できなかった新市場の開拓に向けた量子技術の開発が進んでおり新たなイノベーションが見込まれます。具体的なアプリケーションの例としては、光量子である単一光子の生成とその検出技術の応用による高精度のイメージング技術や、単一の量子状態の生成とその磁性の検出により、地磁気や生体の微小磁気を解析して地球活動や生命活動に対する知見を得ることなどが可能となります。この磁場を検出する機構の超小型化によるハンディなMRIやNMRなどの応用可能性についても議論されています。また、これらの量子論・量子センシングにより生命現象を解明しようとする量子生命技術においては、高感度・高精細で毛細血管や細胞レベルの観察を行ったり、MRI感度の大幅な向上・小型化により、眼科疾患や動脈硬化など様々な疾患における超早期診断の可能性も提案されており、健康長寿社会の実現につながる技術が開発されています。量子材料の要素技術から量子派生技術まで、幅広い研究投資が各国の国家プロジェクトとして、研究開発の投資が拡大しています。

量子材料・量子派生技術研究開発動向
量子材料・量子派生技術の近年の動きとしては、数学的な概念を用いて、超電導や層状磁石の電子の振る舞いを統一的に説明する理論を構築した功績から2016年に「物質のトポロジカル相とトポロジカル相転移の理論的発見」でノーベル物理学賞を米ワシントン大学のデビット・サウレス氏など米国の3氏が受賞し、量子材料の理論面での進展に伴い、超伝導や層状磁石などの材料や応用面での研究が加速し始め、2017年に米マイクロソフトが「トポロジカル物質」をプロセッサーに使った量子コンピュータ技術を発表するなど、原理からアプリケーションまでトポロジカル材料の研究が急速に加速しました。日本でも2019年に理研と東京大学らがトポロジカル絶縁体と超伝導体を接合したトポロジカル超伝導体の界面における整流効果に関する発表を行うなど、研究が活発に行われています。またダイヤモンド材料に関しては、2015年のNTT物性科学基礎研究所がピンクダイヤ(NV中心)で、生体分子など様々な物質の構造や磁気的性質が観察できる可能性を理論計算で求め発表したのに続き、欧米、豪州、中国など世界各国でもダイヤNVセンタの注目が高まり、様々な大型研究プロジェクトが発足し、基礎研究からセンシング応用まで研究が活発化し、最近では2019年には京都大学、産総研、量子科学技術研究開発機構(量研)などでダイヤモンド量子センサー開発に関する発表が相次ぐなど、これら材料分野での基盤技術の革新が共にコンピューティングなど量子応用技術全般へつながっていくものと考えられます。

世界の量子材料・量子科学理論・量子生命科学・量子派生技術に関連する研究投資(グラント)は、2009年以降の積算値で順調に伸びており、量子物理・理論や量子材料の基盤技術投資を軸としながら、コンピューティングやセンシング・イメージングなど、各国の大企業とシナジーが比較的強い応用領域へも研究投資が増えてきています。米国では量子コンピュータや量子ネットワークの研究で先行するMITに加え、UC群においてはトポロジカル材料、磁性体、スピン流、センシングなど、基礎から応用まで量子技術の幅広いテーマに渡って研究開発への投資がなされています。中国では中国科学技術大や?旦大を中心にスピントロ二クス材料を利用したイメージング応用技術開発や、上海交通大学においてトポロジカル量子材料などへの大型研究投資が国家戦略として進められています。
米国、欧州、中国においても研究開発が活発化する中、量子材料・量子派生技術領域においては、日本国内の大学・研究機関で質の高い研究がおこなわれており、人材層の厚みもあり、国際競争力を保持していると評価されています。こうした、日本の強みを持つ技術領域を基盤として、量子技術の中でも比較的実用化の早い技術とされている量子センシング領域や、これを応用した量子生命技術などへ先駆けて取り組み、高齢化の進展や医療費の高騰といった日本の社会問題の解決につなげていくことができれば、同様の社会課題をもつ他国にビジネス展開できる可能性もあり、企業の積極的な参入と産・官・学の協業がより増えることが重要であると考えられます。

技術領域別グラント額(推計)の年推移
[画像1: https://prtimes.jp/i/7141/128/resize/d7141-128-505355-0.png ]


技術領域別世界研究費推計ランキング

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用途にとらわれない新規量子材料の幅広い開発と量子物理・理論の深化の両面による量子技術領域の拡張と異分野との融合がキー
世界の研究資金(グラント)において、量子材料・量子派生技術全体6700研究テーマでは、量子コンピュータ同様、英国が領域毎に研究センターを主要大学に設置して包括的な量子技術研究を行い、応用展開までを見据えた産学連携のための研究ハブを設置し、上位研究費テーマに並んでいます。英国では量子コンピューティング含めた量子技術の応用を視野に入れたダイヤモンドNVやトポロジカル材料などの研究センターをオックスフォード大、バース大、ケンブリッジ大に設置し、量子センサーや量子イメージングに特化した研究センターはバーミンガム大、グラスゴー大に設置するなど、10年以上を見据えた研究ソサイエティの形成が行われています。一方、米国でも基礎研究・応用研究含め幅広い投資が、この量子材料・量子派生技術領域においてもバランスよく進められています。中国では中国科学技術大や?旦大を中心にスピントロ二クス材料を利用したイメージング応用技術開発や、上海交通大学においてトポロジカル量子材料や、フェムト秒・アト秒などの極短パルスを応用したイメージングなどへの大型研究投資が国家戦略として進められています。

一方、日本の研究1500テーマを対象にした科研費の上位は、比較的大きな研究費を量子基盤技術に投資しており、特に東京大、理研や、京都大などを中心に、量子ドット/スピントロ二クスの要素技術や、フェムト秒アト秒レーザー開発と応用、トポロジカル絶縁体・超伝導体に関する基盤技術などに大きな投資を行っている他、日本の世界をリードする光格子時計やセンサー用途のダイヤモンド材料に関するセンシング技術など、これらが日本の量子基盤技術の強みになっています。一方で、具体的なセンサー用途や生命科学への応用に特化した研究はやや少ない状況であり、異分野を含めた幅広い応用に関して、具体的な用途展開案と市場をもつ企業との共同研究がより促進される研究体制の整備が重要と考えられます。

量子材料・量子科学理論・量子生命科学・量子派生技術全体のグラント資金流入額機関 世界上位5大学

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日本国内のグラント資金流入額上位5研究
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量子材料・量子派生技術分野別研究開発動向

量子材料・量子派生技術領域の主要2領域である、(1)量子材料、(2)量子物理・理論についてのグローバルでの投資額上位の研究課題を示しています。既に、上記の研究センター・研究ハブの設置の中には、網羅的にこれらの課題を包括しているものがおおく、上位としてリストアップされているものについては課題の内容は割愛しているが、これらから各領域における規模の大きな研究領域が把握できます。

(1)「量子材料」グラント資金流入上位5研究内容
[画像5: https://prtimes.jp/i/7141/128/resize/d7141-128-453051-4.png ]

量子材料・量子派生技術に関連した世界全体での720研究テーマにおいては、スピン量子を生成する系として超電導材料以外にも半導体量子ドットなどの量子のデバイス実装が可能な系の提案を目指す研究や、新規の磁性材料における量子状態の観測と制御技術の確立に関する研究が多く、日本が従来から先進的な技術を持つ磁性材料や超電導材料技術、計測・センシングさらには半導体デバイス技術での活用が期待でき、これまでの材料・半導体・センシング関連のプレイヤーが貢献できる領域と考えられます。

(2)「量子物理・理論」グラント資金流入上位5研究内容
[画像6: https://prtimes.jp/i/7141/128/resize/d7141-128-936025-5.png ]

量子物理・理論においては、光量子のもつれや量子自体の計測、フォトニクス結晶、強磁場・磁性材料など量子技術の基盤にかかわる大型研究施設の整備や研究所の設立など、研究基盤環境の構築に関する大型投資が各国で進んでいます。光学的なイメージング・センシングは日本がもともと保有する強い技術のため、量子材料の応用・派生技術として日本のオプティクス・イメージングデバイス技術やセンシング技術を保有するプレイヤーが主要プレイヤーになりうる可能性を十分に秘めた領域で、積極的な企業からの研究投資と用途開発により技術の急速な進歩と実用化が期待されます。
量子物理・理論領域は量子計算科学や計測・センシング応用全般に波及する可能性のある基盤的な技術領域であり、高度な計測機器・装置を要する大規模設備が必要な基礎研究領域です。したがって、大規模な研究投資を基礎研究に対して行っている米国での投資が優位にあります。また、量子材料や量子センシングに関する研究に関しては日本にも比較的強みがあることから、基礎研究での共同研究に企業も参入して新奇の量子材料の特性を早い段階から把握して自社技術化できれば、用途開発を世界に先駆けて取り組むことができるため、企業とアカデミアの共同開発が重要な領域でもあります。
(アスタミューゼ(株)テクノロジーインテリジェンス部 川口伸明、米谷真人、*福永元)

【本件に対する問い合わせ】
アスタミューゼ社 経営企画室 広報担当 E-Mail: press@astamuse.co.jp
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