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薬剤耐性結核:50年ぶりの新薬を活かすための研究推進と価格戦略を




「第44回世界肺の健康会議」が本日からパリで開催されるにあたり、国境なき医師団(MSF)は、世界的な薬剤耐性結核(DR-TB)治療の取り組みに、革新的な多剤併用療法を導入するには、新しい結核薬の開発と価格設定の新たなアプローチが不可欠だと訴えている。

<新たな治療法確立に向けた研究を>

2012年12月、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)グループ傘下のヤンセンファーマ社が商品化した結核薬「ベダキリン」が米国で承認され、50年ぶりの新しい結核薬の登場となった。MSFで結核アドバイザーを務めるキャシー・ヒューイソン医師は「臨床医と患者双方にとって重要な出来事」としながらも、「喜ぶには時期尚早、真に必要なのはDR-TB治療のための全く新しい多剤併用療法です。患者の負担が少なく、効果の高い新しい治療法を数年のうちに導入できなければ、DR-TB治療の大きな前進の機会を逃してしまいます」と話す。

米国食品医薬品局(FDA)がベダキリンを優先的に承認し、世界保健機関(WHO)がその使用に関する暫定ガイドラインを発表、J&Jグループも広い地域で医薬品登録を推し進めて来た。こうした動きは、新薬を速やかに導入する環境が整いつつあるという喜ばしい兆しだが、革新的な治療法の確立という最終目標の達成には、結核薬の研究と商品化の手法において、より根本的な変革が求められる。

MSF必須医薬品キャンペーン政策顧問のシャロナン・リンチは、「研究は、製薬企業の単独ではなく、早い段階から共同体制で行うべきです。そして、それには世界の研究開発業界からの多大な協力と、相応の資金注入が求められるでしょう。結核関連の研究開発への投資は現在、世界的に減少しています」と懸念を示す。

<治療費を抑える仕組み必要>

WHOの推計によると、世界のDR-TB症例のうち、検査や診療を受けられるのは20%に満たない。しかも治療は長期にわたり、つらく、費用が高く、効果は薄いため、治癒率も世界平均で50%前後にとどまっており、診療の普及拡大は極めて難しい。しかしながら結核まん延国は、いまのうちから診療の推進にいっそう注力していくことが望まれる。それにより、新たな多剤併用療法が実用化され次第、的確かつ有効に用いるための効果的なプログラム実施が可能になる。その実現に向けて、各当時国への支援もさることながら、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)が資金を満額調達することが鍵となる。

J&Jグループのベダキリン価格の構成は、DR-TBの高まん延国を含む中所得国でさえ6ヵ月の治療コースに3000米ドルが必要だが、これはベダキリンのみの費用であり、効果的な治療には複数の薬が必要となる。現在でも治療にかかる高額な費用は貧しい国々での結核治療の普及拡大に大きな障壁となっているが、将来、新しい多剤併用療法の費用が高騰しないよう地固めが求められている。

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MSFはDR-TB治療を提供する主要なNGOの1つ。2012年は30ヵ国で2万9000人の結核患者を、18ヵ国で1780人のDR-TB患者を治療している。10月30日、国際肺疾患予防連合(IUATLD)と共同で、DR-TB治療薬の価格、製造元、入手環境、研究開発の展望に関する調査報告書『薬剤耐性結核 第3版(英文)』を発行した。
http://www.msfaccess.org/content/dr-tb-drugs-under-microscope3rd-edition
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