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世界の低炭素エネルギー技術への投資額、初めて1兆ドル突破

サプライチェーンの混乱やマクロ経済の逆風をものともせず、2022年のエネルギー移行投資は31%増と飛躍的に伸び、化石燃料への投資額と同等に:ブルームバーグNEF

【ロンドン、2023年1月26日】ブルームバーグNEF(BNEF)のリポート「エネルギー移行投資トレンド」によると、2022年は低炭素エネルギー移行に対する世界の投資総額が1兆1,000億ドルという記録的水準に達し、前年から成長ペースが大きく加速しました。その背景には、エネルギー危機と各国政府の政策がクリーンエネルギー技術のより迅速な導入を促したことがあります。さらに、低炭素技術への投資額が初めて、化石燃料供給に対する投資額と同水準になりました。




エネルギー移行投資トレンドは、BNEFが毎年発表しているリポートで、企業、金融機関、政府、エンドユーザーによる低炭素エネルギー移行への投資規模をまとめています。再生可能エネルギー、蓄電池、運輸分野の電化、熱分野の電化、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)、水素、持続可能な材料など、同リポートが対象とするほぼすべての分野で、2022年は過去最高水準となる投資額となりました。原子力発電への投資のみ記録更新せず、投資額はほぼ横ばいでした。

投資額でトップの座を維持したのは、風力・太陽光発電、バイオ燃料などの再生可能エネルギーの分野で、2022年には前年比17%増の4,950億ドルの投資となり、過去最高となりました。しかし、電気自動車(EV)や関連インフラを含む運輸部門の電化も、再生可能エネルギー分野を追い越すところまで来ており、2022年には4,660億ドルと、前年比54%増という驚異的な伸びを示しました。

水素は、民間企業からの強い関心と政策的支援の拡大にもかかわらず、2022年の投資額はわずか11億ドル(全体の0.1%)と最も少ない分野となりました。しかし、水素は最も成長率が高く、投資額は前年の3倍以上となっています。

図1:(セクター別)エネルギー移行に対する世界の投資額

[画像1: https://prtimes.jp/i/12467/149/resize/d12467-149-f9905a492983b0244a3f-0.png ]

出所:ブルームバーグNEF

BNEFのデータによると、中国でのエネルギー移行への投資は5,460億ドルと群を抜いて最大で、世界全体のほぼ半分を占めました。米国は大幅に差を付けられて1,410億ドルで2位となりましたが、欧州連合(EU)をひとくくりにすると、EUが1,800億ドルで2位となります。ドイツは3位を維持し、英国は一つ順位を下げて5位、フランスは4位に順位を上げました。

移行への投資額が初めて化石燃料投資と同額に-ネットゼロ投資の拡大が必要
また、BNEFは同リポートの中で、世界の化石燃料投資についてトップダウン分析による予想を行っており、これには、上流、中流、下流、そして排出削減対策が講じられていない化石燃料発電が含まれます。この数字は、比較のためだけに算出されたもので、2022年にはエネルギー移行への投資総額と同じ1兆1,000億ドルになると試算されています。これは、昨年のエネルギー危機により化石燃料にむけた投資が増加したにもかかわらず、世界のエネルギー転換への投資額がそれと初めて並んだことを示します。

ブルームバーグNEFのグローバル分析部門長のアルバート・チャンは、「今回の分析結果は、エネルギー危機がクリーンエネルギー導入にどのような影響を与えるかという議論に決着をつけるでしょう」と述べています。「エネルギー移行への投資は、減速するどころか急増し、国や企業が移行に向けた動きを実行に移し続けることで、記録的な投資額となっています。クリーンエネルギー技術への投資は化石燃料投資を追い越す勢いで、今後この流れが後戻りすることはないでしょう。これらの投資は、短期的な雇用創出を促進し、中期的にはエネルギー安全保障に寄与します。しかし、長期的にネットゼロの軌道に乗るためには、より多くの投資が必要です」と指摘しています。

2022年の目覚ましい記録にもかかわらず、低炭素技術への世界の投資額は、気候変動に向けた必要額には、依然としてはるかに及びません。世界が2050年までにCO2排出量を「ネットゼロ」とする軌道に乗るためには、これらの投資額が直ちに現在の3倍になる必要があるとBNEFでは推定しています。電力系統網への投資額2,740億ドルを追加で含めると、エネルギー移行への投資額は2022年に1兆3,800億ドルとなります。これに対し、BNEFの「ネットゼロ・シナリオ」によると、ネッドゼロの軌道に乗せるには2030年までに年平均4兆5,500億ドルの投資が必要となります。

気候関連技術の企業による資金調達額は減少
同リポートによると、2022年に気候関連技術を提供する企業の調達資金は合計1,190億ドルでした。この投資カテゴリーには、前述の1兆1,000万ドルには含まれず、気候関連技術を持つ企業が公開市場や民間投資を通じ調達した新規エクイティファイナンスを示します。この金額は前年比29%減となりましたが、これは世界的な株価低迷により株式の募集・売り出しが減少したことによります。ベンチャーキャピタルとプライベートエクイティからこれらの企業への資金流入は、市場の混乱にもかかわらず堅調さを保ち、前年比3%増となりました。

サプライチェーンと製造業への投資額は790億ドルに増加-中国の席巻
またBNEFは、クリーンエネルギー工場投資(クリーンエネルギー技術の製造設備への投資)が、2021年の526億ドルから2022年には787億ドルに拡大したと報告しています。このうち、蓄電池および関連部品の製造設備が454億ドルと最も大きな割合を占めており、太陽光発電のための工場が239億ドルとなっています。中国以外の各国が世界クリーンエネルギー市場でより多くの機会獲得も取り組んでいるにもかかわらず、中国は2022年のその製造設備投資の91%を占めました。

BNEFの試算では、ネットゼロ・シナリオの軌道に乗るためには、2023年から2026年の間に、クリーンエネルギー設備の製造工場への投資が年平均350億ドルである必要があります。BNEFの貿易・サプライチェーン分析部門長のアントワン・ヴァニャー・ジョンズは、「クリーンエネルギー技術の製造能力が、ネットゼロ達成の大きな障壁になるとは思いません」と述べています。「しかし、サプライチェーンの分散化という観点では、状況はあまり変わっていません。中国はクリーンエネルギーのサプライチェーン構築に他国よりはるかに多く投資を行っており、他の地域が大きな市場シェアを獲得できるかどうかは未知数のままです」との見解を示しています。

米国では、ここ数カ月でクリーンエネルギー技術の製造工場の新設や増設が相次いで発表されています。ただし、これらの案件はBNEFの数字にはまだ反映されておらず、分析には完工した工場のみを含みます。

図2: クリーンエネルギー設備の製造工場への投資

[画像2: https://prtimes.jp/i/12467/149/resize/d12467-149-7d9b0f5311952cec0374-1.jpg ]

出所:ブルームバーグNEF 注:セクターには、太陽光発電のポリシリコンや蓄電池のアノードなど、上流の原材料や部品が含まれます。2022年以前の電解槽投資は含まれておりません。2022年の太陽光発電投資には、同年後半に追加された新規設備分が含まれない可能性があります。右図には風力発電は含みません。

「2023年版エネルギー移行投資トレンド」の要約版は、こちらのページ( https://about.bnef.com/energy-transition-investment/ )からダウンロードできます。BNEFサービスへご登録済みのお客さまは、BNEFウェブサイトおよびブルームバーグ端末でリポート全文を閲覧いただけます。

ブルームバーグNEFについて
ブルームバーグNEF(BNEF https://about.bnef.com/japan/ )は、世界の脱炭素化についての戦略的な分析を提供する、ブルームバーグのリサーチ部門です。各国のアナリストが、脱炭素社会の実現に向けての鍵となる最先端の技術、政策、金融動向を追い、排出量の多いセクターを中心にデータやリサーチを日々配信。政府・金融・企業の戦略立案者を中心とする幅広いユーザー層にご活用いただいております。

ブルームバーグについて
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詳細については、こちら( https://about.bloomberg.co.jp/corporate-profile/ )をご覧いただくか、デモをリクエスト( https://about.bloomberg.co.jp/request-demo/ )してください。
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