特発性正常圧水頭症 診療ガイドライン 改訂版(第3版)の出版について
[20/03/26]
提供元:PRTIMES
提供元:PRTIMES
〜特発性正常圧水頭症の診断と治療の更なる改善をめざして〜
順天堂大学大学院医学研究科脳神経外科学の新井 一 教授、中島 円 准教授ら(厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業)、および岡山大学大学院脳神経外科学の伊達 勲 教授ら(日本正常圧水頭症学会)の共同研究グループは、特発性正常圧水頭症診療ガイドラインの改訂版(第3版)を出版しました。特発性正常圧水頭症は、高齢者になり脳脊髄液が脳内に貯留し、歩行障害、尿失禁、認知症などの症状が発現する疾患です。余剰な脳脊髄液を体内で吸収できるようにデバイスを留置する脳脊髄液短絡術(シャント手術)で症状が改善することが知られています。この診療ガイドラインは、医師向けの診療ガイドラインであり、診療や治療方針の決定に貢献します。
[画像: https://prtimes.jp/i/21495/160/resize/d21495-160-390263-0.jpg ]
本研究成果のポイント
最新の研究報告を多数盛りこみ、エビデンスに従ったガイドラインを9年ぶりに改訂
18の臨床的に重要な項目に基づいたクリニカルクエスチョンに対する回答と解説を掲載
背景
特発性正常圧水頭症は、高齢者に認知症、歩行障害、尿失禁をもたらす疾患で、脳脊髄液が吸収されにくくなり、脳内に貯留する病態です。余剰な脳脊髄液を体内で吸収できるようにデバイスを留置する脳脊髄液短絡術(シャント手術)で症状が改善することが知られています。わが国では世界に先駆け、2004年に本疾患に関する診断・治療のガイドライン初版、2011年には第2版が刊行されました。ガイドラインの出版により、本疾患は少しずつ認知されるようになったものの、2012年全国疫学調査の結果から、治療の恩恵を受ける患者は予想される対象患者の1割にも満たないことが明らかになりました。わが国から医師主導型多施設共同臨床試験(SINPHONI-2)など大変重要な研究結果が報告され、この疾患をより啓蒙するためにも最新の知見を取り込んだ診療ガイドラインの改訂が急がれていました。
内容
診療ガイドラインの改訂は、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「特発性正常圧水頭症の診療ガイドライン作成に関する研究」班と日本正常圧水頭症学会の共同事業として実施されました。順天堂大学大学院医学研究科脳神経外科学 新井 一 教授を委員長として、全国の医師や研究者30名が委員として作成にあたりました。ガイドライン第3版は2部構成となっており、前半ではEBM(Evidence-Based Medicine/根拠に基づく医療)の考え方に従い、新たな論文報告を加えて特発性正常圧水頭症について説明がなされ、後半には18項目のクリニカルクエスチョンに対する回答と解説が掲載されています。
これまでの特発性正常圧水頭症の診断基準には、日本発のものと国際基準によるものがあり、例えば患者の年齢についてはわが国では60歳以上、国際的にはと40歳以上と差異がありました。しかし、現在作成中の国際ガイドラインは、日本の診断基準に基づいたものになる予定です。したがって、今回改訂された診療ガイドラインは、グローバルスタンダードともいえるものであり、世界基準のより精度の高い診断法が示され、これまで見逃されていた病態も見つけやすくなると考えられます。
2004年のガイドライン初版刊行から15年余りが過ぎようとしていますが、その間にわが国における特発性正常圧水頭症の理解度は格段に高まり、本疾患の診断と治療は新たな局面を迎えるに至ったといっても過言ではありません。ただし、治療の恩恵を受けている患者は決して十分でなく、疾患の存在を見過ごされている方々も少なくないことが判明しております。今回のガイドライン第3版が特発性正常圧水頭症の診断と治療をさらに精緻なものとし、多くの患者とその家族さらに特発性正常圧水頭症の診療に関わる医療従事者に福音をもたらすことが期待されます。
今後の展開
わが国での報告で、特発性正常圧水頭症に対するシャント治療は、介護レベルを改善させることから、手術費を含む医療費と介護費を対比すると、トータルのコストは術後2年では黒字に転じることが示されました。医療経済効果も期待できる治療をより多くの患者さんが受けられるように、一般向けのガイドラインも作成し啓蒙活動するとともに、日本発の知見の普及をめざして、世界に向けた英語版のガイドラインの出版を計画しています。
順天堂大学大学院医学研究科脳神経外科学の新井 一 教授、中島 円 准教授ら(厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業)、および岡山大学大学院脳神経外科学の伊達 勲 教授ら(日本正常圧水頭症学会)の共同研究グループは、特発性正常圧水頭症診療ガイドラインの改訂版(第3版)を出版しました。特発性正常圧水頭症は、高齢者になり脳脊髄液が脳内に貯留し、歩行障害、尿失禁、認知症などの症状が発現する疾患です。余剰な脳脊髄液を体内で吸収できるようにデバイスを留置する脳脊髄液短絡術(シャント手術)で症状が改善することが知られています。この診療ガイドラインは、医師向けの診療ガイドラインであり、診療や治療方針の決定に貢献します。
[画像: https://prtimes.jp/i/21495/160/resize/d21495-160-390263-0.jpg ]
本研究成果のポイント
最新の研究報告を多数盛りこみ、エビデンスに従ったガイドラインを9年ぶりに改訂
18の臨床的に重要な項目に基づいたクリニカルクエスチョンに対する回答と解説を掲載
背景
特発性正常圧水頭症は、高齢者に認知症、歩行障害、尿失禁をもたらす疾患で、脳脊髄液が吸収されにくくなり、脳内に貯留する病態です。余剰な脳脊髄液を体内で吸収できるようにデバイスを留置する脳脊髄液短絡術(シャント手術)で症状が改善することが知られています。わが国では世界に先駆け、2004年に本疾患に関する診断・治療のガイドライン初版、2011年には第2版が刊行されました。ガイドラインの出版により、本疾患は少しずつ認知されるようになったものの、2012年全国疫学調査の結果から、治療の恩恵を受ける患者は予想される対象患者の1割にも満たないことが明らかになりました。わが国から医師主導型多施設共同臨床試験(SINPHONI-2)など大変重要な研究結果が報告され、この疾患をより啓蒙するためにも最新の知見を取り込んだ診療ガイドラインの改訂が急がれていました。
内容
診療ガイドラインの改訂は、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「特発性正常圧水頭症の診療ガイドライン作成に関する研究」班と日本正常圧水頭症学会の共同事業として実施されました。順天堂大学大学院医学研究科脳神経外科学 新井 一 教授を委員長として、全国の医師や研究者30名が委員として作成にあたりました。ガイドライン第3版は2部構成となっており、前半ではEBM(Evidence-Based Medicine/根拠に基づく医療)の考え方に従い、新たな論文報告を加えて特発性正常圧水頭症について説明がなされ、後半には18項目のクリニカルクエスチョンに対する回答と解説が掲載されています。
これまでの特発性正常圧水頭症の診断基準には、日本発のものと国際基準によるものがあり、例えば患者の年齢についてはわが国では60歳以上、国際的にはと40歳以上と差異がありました。しかし、現在作成中の国際ガイドラインは、日本の診断基準に基づいたものになる予定です。したがって、今回改訂された診療ガイドラインは、グローバルスタンダードともいえるものであり、世界基準のより精度の高い診断法が示され、これまで見逃されていた病態も見つけやすくなると考えられます。
2004年のガイドライン初版刊行から15年余りが過ぎようとしていますが、その間にわが国における特発性正常圧水頭症の理解度は格段に高まり、本疾患の診断と治療は新たな局面を迎えるに至ったといっても過言ではありません。ただし、治療の恩恵を受けている患者は決して十分でなく、疾患の存在を見過ごされている方々も少なくないことが判明しております。今回のガイドライン第3版が特発性正常圧水頭症の診断と治療をさらに精緻なものとし、多くの患者とその家族さらに特発性正常圧水頭症の診療に関わる医療従事者に福音をもたらすことが期待されます。
今後の展開
わが国での報告で、特発性正常圧水頭症に対するシャント治療は、介護レベルを改善させることから、手術費を含む医療費と介護費を対比すると、トータルのコストは術後2年では黒字に転じることが示されました。医療経済効果も期待できる治療をより多くの患者さんが受けられるように、一般向けのガイドラインも作成し啓蒙活動するとともに、日本発の知見の普及をめざして、世界に向けた英語版のガイドラインの出版を計画しています。