【共同声明】虐待や体罰等の子どもに対する暴力のない社会を実現するために
[19/06/19]
提供元:PRTIMES
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公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン/NPO法人子どもすこやかサポートネット/認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク
子どもの虐待防止強化に向けて、体罰禁止を明記した児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律(以下、児童虐待防止法)などの改正案が6月19日に参議院本会議にて可決され、改正法が成立しました。
今回の改正では、児童虐待防止法14条1項において、親権者による体罰の禁止が新たに規定されました。また児童福祉法33条の2の2項及び47条3項のそれぞれにおいて、児童相談所長、児童福祉施設の長、ファミリーホーム養育者、里親による体罰禁止が盛り込まれました。
さらに、子どもの権利条約を参考に具体的な例示を示したガイドライン等を早期に作成し、体罰の影響に関する啓発活動に努めること、保護者を追い込むのではなく、適切な子育ての方法や相談窓口について周知し、支援すること、子ども自身が教職員等に適切に相談することができるよう、学校教育の場において児童虐待に対する正しい知識を提供できる取組を推進すること、学校・教育委員会の教職員等に対し、子どもの権利条約の周知も含めて必要な研修を実施すること等も求める衆議院及び参議院の附帯決議も出されました。
私たちは、子どもへの体罰は許されないというメッセージを日本社会に明確に打ち出す一歩として、今回の改正法を歓迎します。体罰が広く容認されている日本社会において、法律により明示的に禁止された意義は大きいと考えます(注1)。
他方で、体罰やその他の子どもの品位を傷つける行為(以下、体罰等)をなくすためには、今後、下記の立法上残された課題、施行上の課題に取り組む必要があります(注2)。
1.国連子どもの権利委員会は、子どもの権利条約締約国に「あらゆる場面におけるあらゆる形態の子どもに対する暴力の絶対的禁止」(一般的意見13号パラ41(d))を求めていますが、今回の体罰禁止の名宛人は懲戒権を行使する親権者等だけであり、かつ、暴言等の体罰以外の子どもの品位を傷つける行為は明示的に禁止されていません。同委員会が要請している、社会に明確なメッセージを発信し人々の意識や行動の変革を促す体罰等の法的・明示的禁止という趣旨からは、全ての人を名宛人として、体罰以外の子どもの品位を傷つける行為も明示的に禁止する必要があります(日本に対する同委員会総括所見勧告参照)。
2.法改正とセットで体罰等によらないしつけ、子育て、教育の社会啓発活動を徹底することにより体罰等の減少につながることが他国の事例から報告されており、わが国でも大規模で継続的な啓発活動が求められます。その際には以下の点が特に重要です。
今回の親権者等の体罰禁止により法的には全ての人による体罰が許されなくなる(今国会での政府答弁)ことを社会全体に明確に周知すること
ガイドライン等では、禁止される体罰には軽微な体罰も含まれることを明確にし周知すること(同委員会による一般的意見8号パラ11、及び日本に対する同委員会2019年の総括所見勧告参照)
暴言等の体罰以外の子どもの品位を傷つける行為も子どもの権利を侵害する許容されない行為(子どもの権利条約19条、児童福祉法1条、児童虐待防止法2条4号、改正児童虐待防止法14条1項(「その他民法820条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為」に該当)等)であることをガイドライン等により明確にし周知すること
啓発の対象には、子ども自身も含み、子どもたち自身が「体罰等によらない養育・教育を受ける権利があること」を理解し、実現していくこと
3.民法の懲戒権規定については、子どもを虐待する親の弁解に利用されたり、適切かつ迅速な子どもの保護を妨げたりすることが指摘されています。すでに法務大臣が懲戒権について法制審議会に諮問することを表明していることから、早急に検討を開始し、削除するべきです。
4.虐待・体罰等防止のための啓発・支援等の諸施策の実施に必要な予算を確保するとともに、定期的に国が状況の調査を実施し施策へ反映するべきです。
私たちは今後も、虐待・体罰等の暴力の被害に遭う子どもをなくし、子育てに困難を抱える親をサポートするために、必要な規模の諸施策が迅速に実施されるよう力を尽くしていきます。
注1)公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが2017年に実施した調査において、日本に住む大人2万人のうち、約6割が子どもに対する体罰を容認している実態があった。
注2)体罰等の禁止の法定化を実効性のあるものとするための提言(2019年5月)(NPO法人子どもすこやかサポートネットHP掲載)https://www.kodomosukoyaka.net/report/20190510.html