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JLL 、東京オフィス大規模供給による市場への影響を予測 オフィス賃料、2019年以降下落サイクルへ 長期的には投資機会を創出、東京の魅力と競争力を大幅に向上




2016年12月7日 東京‐総合不動産サービス大手JLL(本社: 東京都千代田区、代表取締役社長 河西利信 )は、東京のオフィス賃貸市場を分析したレポート「東京オフィスルネサンス:大量供給を迎えるオフィス市場と都市の活性化」を発刊いたしました。本レポートでは、現状の低調な賃料成長の理由と、2020年までに予定されるオフィスの大規模供給が市場にもたらす影響、今後の見通しを分析しています。

東京Aグレードオフィスの賃貸市場は、2012年以降「上昇サイクル」にあるものの、賃料上昇率は低水準にとどまっています。2020年に開催されるオリンピック・パラリンピック前後にかけて、東京では多くの不動産開発、都市基盤整備が予定されています。今後予想される記録的なオフィス新規供給は、短期的には空室率の上昇、中期的には賃料下落圧力となる見通しですが、長期的には、世界的なオフィス市場の中で「東京」の魅力を大幅に向上させ、グローバル投資家からの選好性の高さが維持されることが予測されます。

ハイライトは以下の通りです。

【現状の東京オフィス賃貸市場】
・ 東京Aグレードオフィスの賃料上昇率は低位で推移
東京Aグレードオフィス市場は2012年以降 「上昇サイクル」にある。直近は市場空室率が1.7%と極めて低く、リーマンショック前にみられた市場回復期と同程度の水準にあるものの、賃料上昇率は4%程度にとどまっており、2006年の賃料上昇率年間19%と比較すると、低位にとどまっている。

・ 賃料上昇率が低位な理由


優良ビル供給による選択肢の広がり
東京A&Bグレードオフィス※1の総ストック量は直近1,600万m2 で、2006年の同時期と比較して1.4倍、空室率は同水準まで低下しているものの、空室面積をみると、2006年で19万m2 に対し、現在は28万m2 と大きく増加している。テナントからの選好性が高い優良オフィスビルのストックが増加したことにより、テナント側の選択肢が広がった一方、オーナー側にとっては他のビルとの差別化が図りにくく、期待を下回る賃料成長となっている。


図表1 東京A&Bグレードオフィス 空室面積と年間賃料上昇率
[画像1: http://prtimes.jp/i/6263/180/resize/d6263-180-527717-0.jpg ]



ハイグレードオフィスストックの築年経過と賃料水準の平準化
都心部は築年数が経過したオフィスビルも多く、積極的に賃料水準を上昇させることが難しくなっている。また、直近では1坪当り3万円台のミドルレンジのオフィスビルが全体ストックの半数を占める状況にあるが、2007年時点での同じ賃料帯のビルは14%で、1坪当たり5万円を超えるようなビルがストックの多くを占めていた。2005年から2007年頃の賃料高騰現象を牽引したのは、当時高額賃料の負担が可能だった外資系金融機関が中心だったが、現在ほとんど見当たらないのが実状である。
オフィス効率の向上
オフィスでのIT関連技術の進歩により、フリーアドレス制や在宅勤務が可能になり、オフィス効率の向上が図られている。2008年時点で4.02坪(13.9m2 )あった一人当たりのオフィス面積は、2016年に3.80坪(12.6m2 )※2まで縮小している。今後さらに柔軟なオフィス環境づくりが求められ、戦略的なワークプレイス実現に向けたオフィス移転は活発化する可能性はあるものの、オフィスに対する新規需要増には直結しない。
設備投資の減少
アベノミクスが導入された2013年以降多くの企業が過去最高益を達成している一方、いまだコストセンシティブな企業が多い。設備投資額は直近で増加傾向がみられるものの、2007年と比較すると8割以下の水準に留まっており、企業が生み出した利益を投資家の配当や自社株の取得にあてている反面、設備投資向けの支出がわずかなものでしかないことが見て取れる。



【2020年までの東京オフィス大規模供給の市場への影響】
・ 2020年までの記録的なオフィス供給
2016年から2020年までの東京Aグレードオフィスの年間平均供給量は45万m2 で、2006年から2015年までの10年間の年間平均供給量29万m2 と比べ、大規模供給が予定されている。ただし、2016年の新規供給はその約90%でテナントが決定しており、また2017年は供給が少ないことから、短期的な賃料水準への影響は限定的とみている。一方、2018年から2020年までの供給をみると、2018年に65万m2 、2019年および2020年にそれぞれ46万m2 の供給が予定されている。過去の供給データを見ても、今回のような数年間にわたる大規模供給はなく、市場への影響はオフィスオーナーにとって大きな懸念となっている。

図表2 東京Aグレードオフィス供給面積
[画像2: http://prtimes.jp/i/6263/180/resize/d6263-180-645248-1.jpg ]


・ 東京A&Bグレードオフィスビル賃料、2018年にピークアウトし、2019年以降下落サイクルへ
大規模供給の影響により、東京A&Bグレードオフィスビルの賃料水準は2018年にピークアウトし、2019年以降は賃料下落サイクルへとシフトすると予測する。しかし、その下落幅はリーマンショックが起きた2008年以降と比較するとかなり緩やかなものになると考える。


図表3 東京A&Bグレードオフィス 賃料・空室率予測
[画像3: http://prtimes.jp/i/6263/180/resize/d6263-180-916431-2.jpg ]


・? 記録的な供給を消化する要因


経済成長が需要を喚起
GDP成長率と新規需要量(ネット・アブゾープション)には相関関係がある。2001年から2005年のGDP成長率6.1%に対し新規需要は292万m2 、2006年から2010年は1.7%に対し179万m2 、2011年から2015年は3.2%に対し283万m2 を記録している。2016年から2020年は2.7%の経済成長が予測されており、順調に需要が喚起されれば230万m2 程度の需要が見込める。しかし、この新規需要量では新規供給がすべて消化されないことから、2020年末の空室率は5.5%程度まで上昇すると予測される。ただし、今回は大規模な新規供給が要因であり、リーマンショック後に起きた需要減退期とは状況が異なるため、空室率が再び低下すれば市況は安定を取り戻すものと考えられる。


図表4 東京A&Bグレード需給と実質GDP成長率
[画像4: http://prtimes.jp/i/6263/180/resize/d6263-180-830089-3.jpg ]



老朽化オフィスビルの取り壊しによる滅失面積の推移、保有から賃貸へのシフト
オフィスは新規供給だけでなく、老朽化したビルの取り壊しも進んでいる。2011年から2015年では、貸床面積ベースで約100万m2 のスペースが滅失している。また、都心5区※3のすべてのオフィスストックをみると、1970年代以前のオフィスが貸床面積で約1,140万m2 (全体の27%)ある。今後、築年数40年から50年以上経過したビルを取り壊す動きは加速し、滅失面積は増加していくことが予想される。この動きは間接的に新規供給に対する需要をサポートすることになる。
一方、2005年に30%超であったAグレードオフィスにおける自社ビルの割合は、直近では25%程度まで低下しており、入居企業は保有から賃貸へシフトしている。
成長著しいIT系企業による占有面積の増加
Aグレードオフィスのオフィス床面積割合で、IT・情報通信業は2005年時点で16%と3番目に位置していたが、2015年末には18%と占有面積を伸ばし、最大シェアを誇る金融・保険業に並ぶほどに迫っている。また、新宿や渋谷などに多く立地していたIT系企業は、今や大手町・丸の内、六本木エリアといったプライムエリアにオフィスを構えるケースも多くみられる。「Fin-Tech(フィンテック)」や IoTなど、IT・情報通信テクノロジー分野は今後さらに加速度的に拡大していくはずであり、将来のオフィス需要の中心ドライバーになるだろう。
人口の都心集中
ここ数年人口は東京圏への一極集中が顕著に進んでいる。2015年実施の国勢調査の結果によると、日本全体の人口が減少したのに対し、東京都の人口は1,351万人と5年間で2.7%増加している。国立社会保障・人口問題研究所が2013年に実施した人口予測では、2015年時点の東京都の人口は1,335万人となっており、約16万人も上振れしていることがわかる。同様にオフィスワーカー数も予測数値から上振れする可能性は十分にある。


記録的な供給の長期的な市場への影響
・ 新規供給は、テナントにとってはオフィス移転の選択肢をもたらすとともに、潜在的な移転需要を喚起する。  既存のAグレードオフィスから新規供給される同レベルオフィスへの移転、賃料水準の下落によりBグレード
  オフィスや都心5区外から都心へのアップグレード需要もあるだろう。

・ 今回の新規供給によるオフィスストックの増加は、投資家の選択肢を広げることにもなるだろう。
  現在のオフィス投資市場は、供給が限定的な状況が続いており、多くの投資家は物流施設や住宅といった
  他のセクターや地方圏の物件に視野を広げている。長期的にみると、東京都心部における新築オフィスビルの
  供給は、潤沢な資金を運用するコアファンドなどに多くの投資機会を創出すると考えられる。

・ 2030年頃までに計画されている大型オフィスの供給は、オフィス市場としての東京の魅力を高めると
  考えられる。さらに法人減税などの政策を推し進めることにより、他のアジア主要都市に対する競争力が
  高まり、グローバル企業のアジアヘッドクオーター誘致も推進されるであろう。日本政府としても国家戦略
  特区として指定されている計画を推し進めることにより、東京の世界における存在感を高めることを目指して
  いる。

JLLリサーチ事業部 マネージャー 伊藤翔は次のように述べています。
「当レポートでは、これまで取り上げられることが少なかったオフィスに対する需要に着目し、今後のオフィス需要にどのような要因が寄与するかを分析しています。今後の大量供給により、空室率は上昇し、賃料は下落にシフトすることが予測されるものの、それはあくまで供給の影響による一時的な市場調整であり、供給が一服し需給環境が改善すれば、再び市場は落ち着きを取り戻すでしょう。また、長期的にみるとオフィスの供給は東京の都市としての競争力を高めることになり、アジアヘッドクオーター特区に代表されるような海外企業の誘致にも寄与すると予測され、今後の日本の成長を促すと期待されます」

※1 JLLの東京A&Bグレードオフィス定義
[画像5: http://prtimes.jp/i/6263/180/resize/d6263-180-203374-4.jpg ]

※2 ザイマックス不動産総合研究所「1人当たりのオフィス面積調査(2016年)」
※3 都心5区:千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区


JLLについて
JLL(ニューヨーク証券取引所上場:JLL)は、不動産オーナー、テナント、投資家に対し、包括的な不動産サービスをグローバルに提供する総合不動産サービス会社です。フォーチュン500に選出されているJLLは、世界80ヵ国、従業員約60,000名、280超拠点で展開しており、総売上高は60億米ドル、年間の手数料収入は約52億米ドルに上ります(2015年12月31日時点)。2015年度は、プロパティマネジメント及び企業向けファシリティマネジメントにおいて、約3億7,200万m2 (約1億1,200万坪)の不動産ポートフォリオを管理し、1,380億米ドルの取引を完了しました。JLLグループで不動産投資・運用を担当するラサール インベストメント マネジメントは、総額597億米ドルの資産を運用しています。JLLは、ジョーンズ ラング ラサール インコーポレイテッドの企業呼称及び登録商標です。www.jll.com
JLLのアジア太平洋地域での活動は50年以上にわたり、現在16ヵ国、94事業所で36,000名超のスタッフを擁しています。JLLは、2016年インターナショナル・プロパティ・アワード・アジア・パシフィックにて、合計15の賞を受賞しまし、リアル・キャピタル・アナリスティックスより、アジア太平洋地域のトップ投資アドバイザーに選出されています。www.ap.jll.com
JLL日本法人の詳細な情報はホームページをご覧下さい。
www.joneslanglasalle.co.jp
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