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第55回文藝賞 受賞作決定

東北出身の2名、同時受賞!

去る8月23日(木)山の上ホテルにて、選考委員・磯崎憲一郎氏、斎藤美奈子氏、町田康氏、村田沙耶香氏により、第55回文藝賞の選考会がおこなわれました。

受賞作は下記の2作に決定いたしました。
受賞作・選評・受賞の言葉は、10月6日(土)発売の「文藝」冬号に掲載されます。

尚、授賞式につきましては、10月中旬、山の上ホテルにて執りおこないます(受賞者には、正賞として記念品、副賞として賞金50万円が贈られます)。


受賞作「はんぷくするもの」日上秀之(400字×132枚)

日上秀之(ひかみ・ひでゆき)/男性
1981年、岩手県生まれ。36歳。
秋田大学工学資源学部卒。現在、フリーター。岩手県在住。

【内容紹介】
僅かタタミ十畳――プレハブの仮設店舗で問われる“生の倫理”
彼は言った。「あなたは津波に家を流されたじゃないですか。我が家はね、全く無事だったんですよ。波の飛沫すら一滴もかかりはしなかった」と――。
被災地の仮設店舗で、病気の母とともに今にも潰れそうな商店を続ける毅(つよし)。訪れる客といえば、近所に住む腰の曲がった老婆の風峰さんと、支離滅裂な万引き論を熱く繰り広げる同級生の武田、そしてツケで買い物をする古木さん。古木さんはツケの3,413円を、電話では何度も払うと言いながらいっこうに払いに来ない。そんな中、母の体調が悪化し、その原因は古木さんにあると考えた毅は取り立てを決意する。しかし毅が古木さんの家へ向かおうとする度に、カラス、猫、石、そして街が突然不吉な気配を放ち、彼を止めてしまう。ある日、常連客の風峰さんの身体に突然の不調が訪れ、毅はその責任が自分にあると考え始めるが……。
被災地の日常の中、時に笑いにまで昇華される底知れぬ畏れ――生の倫理を根源的に問う、驚異の新人登場。


受賞作「いつか深い穴に落ちるまで」山野辺太郎(400字×213枚)

山野辺太郎(やまのべ・たろう)/男性
1975年、福島県生まれ。宮城県育ち。42歳。
東京大学文学部卒業、同大学院人文社会系研究科修士課程修了。現在、会社員。東京都在住。


【内容紹介】
日本社会のシステムを戦後史とともに“真顔のユーモア”で描きつくす!
戦後から現在まで続く「秘密プロジェクト」があった。発案者は、運輸省の若手官僚・山本清晴。敗戦から数年たったある時、新橋の闇市でカストリを飲みながら彼は思いつく。「底のない穴を空けよう、そしてそれを国の新事業にしよう」。かくして「日本ブラジル間・直線ルート開発計画」が「温泉を掘る」という名目の元、立ち上がった。その意志を引き継いだのは建設会社の子会社の広報係・鈴木一夫。彼は来たるべき事業成功の際のプレスリリースを記すために、この謎めいた事業の存在理由について調査を開始する。ポーランドからの諜報員、作業員としてやってくる日系移民やアジアからの技能実習生、ディズニーランドで待ち合わせた海外の要人、ブラジルの広報係・ルイーザへの想い、そしてついに穴が開通したとき、鈴木は……。
様々な人間・国の思惑が交差する中、日本社会のシステムを戦後史とともに真顔のユーモアで描きつくす、大型新人登場。
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