【プレスリリース】「お母さんの命を守る」 国連機関の報告書で着実な進展 未だ1時間に33人の妊産婦が死亡
[14/05/09]
提供元:PRTIMES
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【2014年5月6日 ジュネーブ/ニューヨーク発】
国連の最新データによると、妊産婦死亡率が1990年から45%減少したことが明らかに
なりました。妊娠・出産中の合併症が原因で死亡した女性の数は、1990年の約52万
3,000人から、2013年には約28万9,000人に減少しています。
また、妊産婦の死因における新しい事実が、世界保健機関(WHO)による別の研究で
判明し、世界的医学雑誌『ランセットグローバルヘルス』のなかで発表されました。
WHOの体系的な分析によると、世界の妊産婦死亡原因の4分の1が、もともと患って
いた糖尿病、HIV、マラリア、肥満などの病気に起因することが判明しました。これらの
病気をもともと患っていた患者が妊娠すると、症状がさらに悪化する可能性があります。
この数字は、妊娠・出産時に出血多量で死亡する割合に近い値です。
「これらの最新のデータにより、すべての妊産婦への高精度な医療の提供や、病気を
患っている妊婦への特別なケアなど、すでに効果が実証されている解決策に焦点を
当て実施していく必要性が強調されました」と、WHOの家族・女性・子どもの健康事務局
のフラビア・ブストレオ事務局補は述べています。
「1時間あたり33人の妊産婦が亡くなっているというのは、あまりにも多すぎます」と、
世界銀行グループ 健康・栄養・人口局のティム・エヴァンス局長は話します。
「これらの悲劇的な死のひとつひとつを、文書に書きとめ、死因を特定し、緊急に
是正措置を行っていく必要があります」
1990年から2013年の妊産婦死亡率推計には、2012年発表版には含まれていなかった
新しいデータが含まれ、出生数とすべての女性の死亡数を推計するための、改良された
算出方法が用いられました。
1990年に妊産婦死亡率の高かった11カ国(ブータン、カンボジア、カボヴェルデ、
赤道ギニア、エリトリア、ラオス、モルディブ、ネパール、ルーマニア、ルワンダ、
東ティモール)は、2015年までに1990年の死亡率の75%を削減する「国連ミレニアム
開発目標(MDG)」を既に達成しています。しかし、最新のデータによると、多くの
低・中所得国はこの目標を達成することは出来ない見通しです。
サハラ以南のアフリカは、妊娠・出産中の合併症で
死亡するリスクが、依然として世界で最も高い
地域です。
「サハラ以南のアフリカに住む15歳の少女が、
生涯に妊娠・出産で死亡する確率は、
約40分の1です」とユニセフのジータ・ラオ・
グプタ事務局次長は話します。「一方で、
ヨーロッパに住む同年齢の女の子の、生涯に妊娠・
出産で死亡するリスクは、3,300分の1
です。地域や国によって、いかにバラつきが
あるかは明らかです」
過去20年間さまざまな進歩があるなかで、思春期の
妊娠、中絶、妊産婦の死亡、
性的感染症とHIVの予防に関しては、ほとんど改善がみられません。また、特に低所得国
の若者に対する、包括的な性教育やサービスに対する、利便性や品質、アクセスには
大きな格差が存在しています。
「15歳から19歳までの1,500万人以上の女の子が毎年出産しています。女の子の5人に
ひとりは、18歳になる前に出産します。そしてこれらの妊娠の多くは非合意の性行為に
よるものです」と国連人口局(UNFPA)のケイト・ギルモア事務局次長は強調しました。
「助産ケアや性暴力の防止・対処など、比較的難しくなく、すでに実施されている
方法がさらに普及し、特に避妊具などの技術革新が伴えば、大きな変化を生むことが
できます」
115カ国、6万人以上の妊産婦の死因に関するWHOの研究では、妊娠する前から患って
いた病気(糖尿病、マラリア、HIV、肥満など)が、妊娠によって悪化したことに起因
する死亡が、全体の28%を占めていたことを示しています。
その他の妊産婦の死因:
・出血多量(主に出産中および出産後)27%
・妊娠高血圧症14%
・感染症11%
・停止分娩やその他の直接的な原因9%
・中絶による合併症8%
・血栓(塞栓症)3%
適切な医療従事者がいて、適切な機器や医薬品のある施設を持つ、土台がしっかりと
した医療システムは、妊婦と新生児の命を守るための高精度な医療を提供する上で
重要です。
「新しいデータは、妊産婦の死因が変化してきていることを示しています。世界中で
女性の非感染性疾患が増えていることが反映されています。予防可能な妊産婦の死を
なくすためには、妊娠合併症の減少にむけた継続的な取り組みだけでなく、非感染性疾患
そのものや、非感染性疾患が妊娠へ与える影響に焦点をあてることが必要です。糖尿病
や肥満などを患っている女性のための総合的なケアによって、妊産婦の死亡を減少させ、
長期的な健康問題を防ぐことができます」と、WHOの性と生殖にかかわる健康局長であり、
研究の共著者であるマーレーン・テママン医師は述べています。
妊産婦の死亡に対する取り組みを行う上での大きな課題は、正確なデータが欠如している
ことです。死亡する女性の数とその死因についてのデータは、精度が良くなってきている
ものの、まだまだ記録や報告されていないケースも多くあります。多くの低所得国では、
特に女性が自宅で亡くなった場合、妊産婦死亡数に含まれていなかったり、死亡原因が
はっきりしなかったりして、正しく報告されません。世界中をみても、死亡者のうち
記録されているのは、3分の1のみで、WHOの疾病に関する国際的分類を使用して、死因を
記録しているのは、100カ国未満です。
政府が提供する国民健康制度では、最も必要とする人に必要な資源を割り当てることは、
しばしば困難が伴います。「国連女性と子どもの健康のための情報と説明責任委員会」
が、母子死亡に関する正確なデータを求めているのはこのためです。委員会は、
「2015年までに、すべての国が出生登録、死亡および死因を登録するシステムの確立に
向けて、重要な措置を講じる」ことを要求しています。
すべての女性が高精度の医療を利用できるようになれば、予防可能な妊産婦の死亡を
なくすことが出来る、という世界的なコンセンサスが形成されてきています。妊産婦
死亡数減少の進捗状況を追跡することと、妊産婦の健康を守ることが、全世界の開発に
おける優先事項であり続けるために、2015年以降の世界、及び、各国の目標は重要です。
■1990年から2013年の妊産婦死亡率推定の動向
・妊産婦死亡率は減少:世界の妊産婦死亡率
(MMR)は、2013年には、10万人の出生に
対して210人の妊産婦の死亡でした。1990年には
10万人の出生に対して380人の妊産婦の
死亡(45%削減)でした。
・より速い進歩が必要:世界的な妊産婦死亡率の
年間減少率は、1990年から2000年の間の
1.4%と比較して、2000から2013まで3.5%と、
減り続けています。しかしながら、
現在の傾向では、ほとんどの国が、1990年から
2015年の妊産婦死亡率の75%削減という
国連ミレニアム開発目標を達成できない見通しです。期限内に目標を達成するには、
1990年以降、平均で年間5.5%以上の減少が必要です。
・最も多い10カ国:10カ国の妊産婦死亡率の合計が、世界全体の約60%を占めます。
インド(5万人)、ナイジェリア(4万人)、コンゴ民主共和国(2万1,000人)、
エチオピア(1万3,000人)、インドネシア(8,800人)、パキスタン(7,900人)、
タンザニア連合共和国(7,900人)、ケニア(6,300人)、中国(5,900人)、
ウガンダ(5,900人)。
・ソマリア、チャドは最も死亡リスクが高い:生涯に妊娠・出産で死亡するリスクは、
それぞれソマリアで18分の1、チャドで15分の1、と最も高いです。
■妊産婦死亡率推定について
1990年から2013年の妊産婦死亡率推定の推移は、世界保健機関(WHO)、国連児童基金
(UNICEF)、国連人口基金(UNFPA)、国連人口部(UNPD)と世界銀行グループを含む、
国連妊産婦死亡率推定に関する機関間グループ(MMEIG)によって公表されています。
算出は、シンガポール国立大学と米国カリフォルニア大学、バークレー校の大学の
学術チームと共同で行われました。
5月2日に、『ランセット』は、1990年から2013年までの、全世界、地域、国レベルの
妊産婦死亡率と妊産婦の死亡原因を公表しました。2013年の全世界の疾病に関する
体系的分析です。WHOとパートナー団体は、国連の機関間グループの国連ミレニアム
開発目標4と5に関する取り組みが適切に行われていることを確認するため、これらの
報告書を歓迎しています。
■参考情報
妊産婦死亡率に関するWHO概況報告書
www.who.int/mediacentre/factsheets/fs348
全世界の妊産婦の死亡原因:WHOの体系的な分析、『ランセット』
www.thelancet.com/journals/langlo/article/PIIS2214-109X(14)70227-X
1990年から2013年までの妊産婦死亡率推定の推移
www.who.int/reproductivehealth/publications/monitoring/maternal-mortality-2013
■ 本件に関するお問い合わせ
日本ユニセフ協会 広報室
TEL:03-5789-2016 FAX : 03-5789-2036 Eメール:jcuinfo@unicef.or.jp
または
WHO: Glenn Thomas, Communications Officer, WHO, Geneva. Tel: +41 22 791 3983,
Mobile: +41 79 509 0677, Email: thomasg@who.int
UNICEF: Kate Donovan, Deputy, Media Section, UNICEF, New York.Tel: +1 212 326 7452,
Mobile: +1 917 378 2128, Email: kdonovan@unicef.org
UNFPA: Etienne Franca, Coordinator, Sexual and Reproductive Health Communications,
UNFPA, New York. Tel: +1 212 297 5208, Mobile: +1 917 310 8957,
Email: franca@unfpa.org
World Bank Group: Melanie Mayhew, Communications Officer, World Bank Group,
Washington D.C. Tel: +1 202 458 7891, Mobile: +1 202 459 7115,
Email: mmayhew1@worldbank.org
■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進
するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、
その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子ども
たちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのため
に活動しています。(www.unicef.org)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する36の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの
任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国36の国と地域にあるユニセフ国内委員会の
ひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動
の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 (www.unicef.or.jp)