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「事業と組織の関係」に関する研究結果を公開

〜従業員エンゲージメント向上には事業特性に合わせた期待形成が重要〜

 株式会社リンクアンドモチベーション(本社:東京都中央区、代表:小笹芳央、証券コード:2170、以下当社)の研究機関モチベーションエンジニアリング研究所は「事業と組織の関係」に関する調査を行いましたので、結果を報告いたします。




[画像1: https://prtimes.jp/i/6682/239/resize/d6682-239-949067-0.jpg ]

■調査背景
 事業と組織は表裏一体であり、相互影響関係にある。この影響関係は定性的には語られてきたが、定量的に示されたケースは少ないのが現状である。そこでエンプロイーエンゲージメントサーベイ(※1)のデータを元に、日本企業の全体傾向と、業界ごとに組織の強み・弱みの違いを分析し、その結果から従業員エンゲージメント向上に必要な要件を考察した。

(※1)社会心理学を背景に、人が組織に帰属する要因をエンゲージメントファクターとして分類し(図1) 、従業員が会社に「何をどの程度期待しているのか(=期待度)」、「何にどの程度満足しているのか(=満足度)」の2つの観点で質問を行うサーベイ。回答者はそれぞれの期待度、満足度を5段階で回答する。その回答結果から「従業員エンゲージメントの偏差値」であるエンゲージメントスコア(以下ES)を算出し、エンゲージメント・レーティング(ER)として整理している。 (図2)


■調査概要
【調査対象】
2015年1月〜2019年7月にエンプロイーエンゲージメントサーベイを実施した757社(回答人数30人以上の企業)

【調査方法】
帝国データバンクの業界分類に基づき企業を分類し、うち分析が有意となるデータ数を確保できた業界を抽出し、サーベイの回答結果を4eyes(R)Windows(※2)で分析した。

(※2)縦軸に期待度、横軸に満足度をとり、それぞれのエンゲージメントファクターのスコア(期待度,満足度)をプロットしたもの。(図3)プロットの中心点座標は全エンゲージメントファクターの平均値であり、中心線によりプロットを4象限に分割している。各エンゲージメントファクターがどの象限に出現するかによって、組織にどのような強み・弱みがあるのかを考察する。
[画像2: https://prtimes.jp/i/6682/239/resize/d6682-239-734945-1.jpg ]

[画像3: https://prtimes.jp/i/6682/239/resize/d6682-239-335931-2.jpg ]

[画像4: https://prtimes.jp/i/6682/239/resize/d6682-239-576561-3.jpg ]



■調査結果
1.全体では、職場が個別最適化しやすく、ともすると他責的傾向に陥りやすい可能性がある。
全体4eyes(R)Windows傾向
 エンプロイーエンゲージメントサーベイを実施した全企業のデータを総計し、エンゲージメントファクターの各象限での出現率を算出した。出現率が40%を超えたものを図4に示した。
例)全100社のうち、40社で「会社基盤」がINTER LINK(強み)に出現すれば出現率は40%
[画像5: https://prtimes.jp/i/6682/239/resize/d6682-239-774871-4.jpg ]


図4から、以下の考察が得られた。
・INTER LINK(強み)として出現しやすいエンゲージメントファクターは、「内部統合」「人的資源」「仕事内容」であった。また、全ての直属上司項目はIDLE LINE(充足)の象限に出現していた。これより、目の前の仕事や上司、同僚を含めた共に働く人に対しての満足度は高く、職場としての一体感が醸成されていると考えられる。

・ICE BLOCK(弱み)として出現しやすいエンゲージメントファクターは、「組織風土」「制度待遇」「施設環境」「外部適応」であった。また、 「継承活動」 「会社基盤」はINK BLOT(無関心)の象限に出現していた。これより、全社の一体感、顧客への貢献実感に乏しく、設備や待遇にも満足していないと考えられる。

・総じて、職場の一体感は高いものの、全社顧客への意識が乏しいことから、職場が個別最適化し、ともすると他責的傾向に陥りやすい可能性がある。


2.業界ごとに組織の強み・弱みは異なり、価値発揮単位が個人、企業のどちらかで傾向は分かれる。
業界別4eyes(R)Windows傾向
 帝国データバンクの業界分類に基づき企業を分類。そのうち、分析が有意となるデータ数を確保できた業界について、 4eyes(R)Windows内での出現象限とその出現率を算出した。全体傾向と比較した際に、出現率が10%以上高いエンゲージメントファクターを抽出し、特徴として考察を行い、その結果を図5に示した。

図5から、以下の考察が得られた。
・個の裁量権や影響度が大きい業界においては「仕事内容」が強みとして出現する一方で、「会社基盤」へは無関心傾向になる。

・企業規模が優位性につながりやすい業界では、「会社基盤」が比較的強みとして出現する一方で、「仕事内容」の期待度は低位に留まる傾向にある。
[画像6: https://prtimes.jp/i/6682/239/resize/d6682-239-756279-5.jpg ]



3.従業員エンゲージメント向上には、満足度を高めつつ「動機づけ要因」の期待度を上げていくことが重要である。
高エンゲージメント企業と低エンゲージメント企業の比較
 エンプロイーエンゲージメントサーベイを実施した企業を、高エンゲージメント企業(ER=A~AAA)と低エンゲージメント企業(ER=DD〜DDD)に分類し、エンゲージメントファクターの期待度・満足度の差を算出した。その結果を差分が大きい順に図6に示した。


[画像7: https://prtimes.jp/i/6682/239/resize/d6682-239-421859-9.jpg ]


図6から、以下の考察が得られた。
・高エンゲージメント企業の期待度が高く、差分が大きいエンゲージメントファクターは「事業内容」「仕事内容」といった「動機づけ要因」であり、低エンゲージメント企業の方が高いのは「制度待遇」「施設環境」といった「衛生要因」であった。

・満足度は総じて高エンゲージメント企業が低エンゲージメント企業よりも高く、特に差分が大きいエンゲージメントファクターは、「理念戦略」「人的資源」「事業内容」であった。

・以上の結果より、高エンゲージメント企業は低エンゲージメント企業と比較すると、満足度は総じて高い。一方で、「動機づけ要因」の期待度は差が大きく、「衛生要因」の期待度はあまり差がないことが分かった。従業員エンゲージメント向上には、満足度を高めつつ、「動機づけ要因」の期待度を上げていくことが重要である。

▼参考:ハーズバーグの二要因理論
動機づけ要因:満たされると仕事における「満足感」を引き出すもので、仕事そのものや仕事における達成感、貢献感などを指す
衛生要因 :満たされないと仕事における「不満足感」を引き出すもので、会社の管理方式や労働環境、待遇などを指す


■結論
 業界ごとに組織の強み・弱みは異なり、価値発揮単位が個人、企業のどちらかで傾向は分かれる。
従業員エンゲージメント向上にはこうした傾向を把握した上で、満足度を高めつつ、「動機づけ要因」の期待度を上げていくことが重要である。

 事業と組織は表裏一体であり、相互影響関係にある。この影響関係は定性的には語られてきたが、定量的に示されたケースは少ないのが現状である。そこでエンプロイーエンゲージメントサーベイのデータを元に、日本企業の全体傾向と、業界ごとに組織の強み・弱みの違いを分析し、その結果から従業員エンゲージメント向上に必要な要件を考察した。
 今回の調査結果から見えてきたことは、業界により組織の強み・弱みは異なるということである。あくまで傾向ではあるものの、個の裁量権や影響度が大きい業界では、「仕事内容」が強みとして出現する一方で、「会社基盤」へは無関心傾向になることが分かった。また、企業規模が優位性につながりやすい業界では、「会社基盤」が強みとして出現する一方で、「仕事内容」の期待度は低位に留まる傾向にあることが分かった。
また、高エンゲージメント企業と低エンゲージメント企業の比較から、従業員エンゲージメントの向上には二つの共通要件が見られた。
 一つ目は、特定の項目に絞らず、全ての項目に対する従業員の満足度を向上させることである。従業員が十分な満足を得ていない項目の中には、設備や制度といったすぐに着手することが難しいもの、単一の組織だけでは改善は難しいものも存在する。しかしそういった項目に対しても、企業は変革の意志を示し、改善していくことが求められる。
 二つ目は、「動機づけ要因」の期待度を上げていくことである。「衛生要因」を満たすこと、言い換えれば従業員の不満を解消するだけでなく、仕事そのものや仕事を通した達成感、貢献感といった「動機づけ要因」の期待度を上げていかない限りは、高エンゲージメント企業への発展は望めないということだ。
 昨今の「働き方改革」の流れを受けて、様々な組織施策が各企業で行われている。他社で効果があった組織施策を、自社に取り入れることを検討している企業も多いのではないだろうか。しかし、考慮しなければならないのは、業界、もっと言えば個社によって何に不満を感じているか、何を求めているかに違いがあるということである。そういった業界、個社ごとの特性を把握しないまま、一律に施策を行ったとしても期待する効果は得られない。従業員エンゲージメント向上の第一歩として、まずは従業員の声に耳を傾けること、そして「衛生要因」への不満解消のみならず、「動機づけ要因」への期待を創り上げていくことが重要ではないだろうか。


■発行責任者のコメント
 「従業員エンゲージメント」に対する注目が高まる中、「どのようにしたら従業員エンゲージメントを高められるのか?」という改善や変革の方法論にも「実効性」が求められています。
 同時に、医療に例えるならば、どれだけ医師が経験豊富で腕が良くてもそもそもの診断結果が間違っていたりすると、望む結果は得られません。
 今回のレポートは、これまで「サーベイ実施企業全体」として捉えていた診断結果を「業界」ごとに分け、「同じ」なのか「違う」のかを明らかにしようと試みました。結果、業界ごとに従業員エンゲージメントの状態には違いがありました。またその違いは業界特性等で、ある程度説明できることもわかりました。
 加えて、従業員エンゲージメントスコアが高い企業と低い企業を比較した結果からは「従業員満足度を高めよう」「動機づけ要因の期待度を高めよう」という示唆が得られています。この示唆自体は目新しくない話ですが、ポイントは「自社の診断結果を踏まえて適切に改善・変革を図る」ということです。
 私自身も苦い思い出がありますが、痩せたいあまり、流行のダイエット方法に次々と飛びついて全然痩せない、という話にならないよう、自社の現状を的確に認識し、ありたい姿の実現に向けて従業員エンゲージメント向上を図ることが重要なのではないでしょうか。

<プロフィール>

[画像8: https://prtimes.jp/i/6682/239/resize/d6682-239-595984-7.jpg ]


大島 崇(おおしま たかし)
株式会社リンクアンドモチベーション
モチベーションエンジニアリング研究所 所長

2000年 京都大学大学院エネルギー科学研究科卒業
2005年 住商情報システム株式会社を経て株式会社リンクアンドモチベーションに入社
2010年 モチベーションマネジメントカンパニー 執行役部長に就任
大手企業向けの組織変革や人材開発で多くのクライアントを担当
同時に商品統括ユニット、モチベーションエンジニアリング研究所を兼任し、新商品を開発
2015年 モチベーションエンジニアリング研究所 所長に就任


■リンクアンドモチベーションについて
・代表取締役会長:小笹 芳央
・資本金:13億8,061万円
・証券コード:2170(東証一部)
・本社:東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 12階
・創業:2000年4月
・リンクアンドモチベーショングループの事業構造
組織開発ディビジョン(コンサル・アウトソース事業、イベント・メディア事業)
個人開発ディビジョン(キャリアスクール事業、学習塾事業)
マッチングディビジョン(ALT配置事業、人材紹介・派遣事業)
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