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富士通とデルフト工科大学、量子技術を基盤とする先端コンピューティング技術の発展に向けた産学連携拠点を設置

富士通株式会社(注1)(以下、富士通)とオランダのDelft University of Technology(注2)(以下、デルフト工科大学)は、量子技術を基盤とする先端コンピューティング技術の発展に向けた産学連携拠点として「Fujitsu Advanced Computing Lab Delft」をデルフト工科大学に設立し、両者の連携を一層強化していくことで2024年1月25日に合意しました。本連携拠点は、国内外の大学の中に研究拠点を設け、富士通の研究員が大学内に常駐または長期的に滞在しながら産学連携の活動を行う「富士通スモールリサーチラボ」(注3)の取り組みの一環として設立するものです。




「Fujitsu Advanced Computing Lab Delft」は、デルフト工科大学とオランダ応用科学研究機構(TNO)が共同で設立した世界有数の量子技術研究機関QuTech(注4)内に設置され、2020年10月から共同で研究を進めてきたダイヤモンドスピン量子コンピューティングの研究開発を加速することを目的としています。

加えて、実世界の問題への応用を目指した量子アプリケーションの開発を進め、計算が大規模かつ複雑で課題が多い流体計算分野に量子コンピューティングを適用する革新的な流体シミュレーション技術の実現を目指します。

両者は、様々な社会課題解決を可能とする量子技術を基盤とした先端コンピューティング技術の発展に向けた研究を強力に推進していきます。

【背景】
富士通は、量子コンピューティングの実現に向けたグローバルでのオープンイノベーションによる最先端研究機関との共同研究の強化施策の一環として、2020年10月からダイヤモンド中のスピン状態を利用した量子ビット技術に強みを持つデルフト工科大学と、スピン量子ビットを利用した量子コンピュータの基礎研究と開発に取り組んできました。

両者はこれまで、1,000量子ビット超級のスケーラビリティをもたらすモジュール型量子コンピュータのブループリント構築に向けて、ダイヤモンドスピン方式の量子コンピューティングの研究開発を進めています。量子ビットのデバイスレベルからその方式に適した量子制御やアルゴリズムに渡る全レイヤーについて共同研究しています。その成果として、量子制御においては、ダイヤモンドNVセンター(注5)を用いて、世界初となるダイヤモンド中スピン量子ビットの誤り耐性操作に成功(注6)しています。また、高性能なダイヤモンドスピンとして注目されているSnVセンター(注7)を光導波路の中に形成し、その光結合の確認を単一光子レベルの応答により実証(注8)するなど、量子ビットの性能向上への取り組みも進めています。

両者はこのような緊密な協力関係を一段と強化し、量子技術を基盤とする先端コンピューティング技術の発展に向けた連携や研究体制をより高次なものとするために、このたび「Fujitsu Advanced Computing Lab Delft」を設立することで合意しました。今後、日蘭を代表する産学連携研究開発拠点として確立させるとともに、先端コンピューティング技術を活用した社会課題解決をリードする人材育成を始めとするより拡大的な協業にも強力に取り組んでいきます。

【本連携拠点の概要】
1. 設置期間:
2024年1月25日(木曜日)から2028年9月30日(土曜日)まで

2. 設置場所:
デルフト工科大学(QuTech) 応用科学学部(所在地:オランダ・デルフト市)
[画像1: https://prtimes.jp/i/93942/242/resize/d93942-242-6dc8728f64d664b201da-0.jpg ]


3. 研究内容:
(1) ダイヤモンドスピン量子ビットを利用した、量子コンピューティングの基礎研究と開発
安定性と光接続性を兼ね備えたダイヤモンドスピン量子ビットを用いることで、高いスケーラビリティをもたらすモジュール型量子コンピューティングのブループリントを構築します。特に、少数のダイヤモンドスピン量子ビットを用いた量子アルゴリズム動作実証や、オンチップ化に必要なデバイスや集積プロセス技術の確立を通じて、本方式の有効性を示していきます。

(2) 量子コンピューティング技術の流体力学分野への応用に関する研究
膨大な計算量と高速・大容量メモリの必要性から、従来技術では実現が困難であった数値流体力学を可能とするアプリケーションを開発し、様々な条件下での流体力学シミュレーション向けの量子アルゴリズムを構築することで、モビリティ分野における空力設計などの実問題を用いた実証実験を通じて有効性を示していきます。 特に、計算が大規模かつ複雑で課題が多い流体計算の分野に量子のアプローチを適用することで、将来的には、誤り耐性量子計算(FTQC、注9)向けに、実問題の解決に必要とされる広い空間領域に対して粒子の動きを高精度に予測可能にする革新的な流体シミュレーション技術の実現を目指します。加えて、実用化に必要な周辺技術の強化に向けて、研究対象の拡充も視野に取り組みを進めていきます。

4. 両者の役割:
(1) ダイヤモンドスピン量子ビットを利用した、量子コンピューティングの基礎研究と開発
・富士通:本方式による量子コンピューティングシステム構築に必要となる実装技術の研究開発
・デルフト工科大学:量子ビットデバイスの原理実証および量子制御プロトコルの研究開発

(2) 量子コンピューティング技術の流体力学分野への応用に関する研究
・富士通:量子コンピュータおよび量子シミュレータを活用した性能評価およびお客様との連携による実問題に関する実証実験
・デルフト工科大学:基本量子アルゴリズムの拡張および実装、計算フレームワークの構築

[画像2: https://prtimes.jp/i/93942/242/resize/d93942-242-7feac9e983387c49c0e8-1.png ]


5. 体制:
本連携拠点の主要メンバーは以下の通りで、そのほか、両者から多数の研究者が参加予定。
・佐藤 信太郎 (富士通株式会社 富士通研究所フェロー兼量子研究所長)
・河口 研一 (富士通株式会社 富士通研究所 量子研究所 量子ハードウェアコアプロジェクト リサーチディレクター)
・菊池 慎司 (富士通株式会社 富士通研究所 量子研究所 量子アプリケーションコアプロジェクト シニアプロジェクトディレクター)
・マティアス・ミュラー(デルフト工科大学 准教授)
・ロナルド・ハンソン (デルフト工科大学・QuTech 教授)
・ティム・タミニアウ (デルフト工科大学・QuTech グループリーダー)
・石原 良一 (デルフト工科大学・QuTech EEMCS学部 准教授)

【富士通株式会社 執行役員SEVP CTO、CPO ヴィヴェック マハジャンのコメント】
今回、デルフト工科大学との協業を強化することで、量子コンピューティングの新たな可能性を引き出すことを目指します。量子コンピューティングの分野において、富士通のトップクラスの技術と世界有数の研究機関の優秀な研究者により、量子ハードウェア開発のブレークスルーに向けてさらに取り組むほか、次の世代の人材育成にも取り組んでいきます。

【Delft University of Technology 学長 ティム ファンデルハーゲンのコメント】
デルフト工科大学では、社会問題に対する革新的なソリューションとなる技術を開発して提供し、量子コンピュータの幅広い分野での応用の可能性を探求しています。デルフト工科大学は、産業と科学が協力して量子コンピュータの重要な技術を発展させる上で理想的な場所です。富士通が、QuTechとの既存の協力を基に、オランダのデルフト工科大学を選んで「Fujitsu Advanced Computing Lab Delft」を設立したことを誇りに思います。

【富士通株式会社 富士通研究所フェロー兼量子研究所長 佐藤信太郎のコメント】
デルフト工科大学とは、過去約3年間ダイヤモンドスピン量子ビット技術の研究に共同で取り組み、エラー訂正が可能な量子ビット動作の基礎となる重要な成果を挙げてきました。今回この協力関係を量子アプリケーションの領域まで拡大できることを大変喜ばしく思います。今後、世界を驚かせるような成果を、共に挙げていきます。

【Delft University of Technology QuTechビジネス開発担当 ディレクター キース エイケルのコメント】
QuTechでは、量子コンピューティングと量子インターネットのためのスケーラブルな技術を構築に取り組んでいます。QuTechは、量子コンピューティングにおいて、富士通との戦略的パートナーシップを重視しています。今回の拠点設立は、我々の強みを互いに補完し、共通のビジョンに基づいて経済的なインパクトをもたらすためのパートナーシップです。富士通が高度に発展したコンピューティングの研究所として、また量子に携わる人材が集中する拠点としてデルフト工科大学を選んだことを、私たちは誇りに思っています。これまでの強い協力関係を発展させ、デルフト工科大学が新たな可能性を提供できることを喜ばしく思います。

【商標について】
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

【注釈】
注1
富士通株式会社:
本社 東京都港区、代表取締役社長 時田 隆仁

注2
Delft University of Technology:
オランダ王国南ホラント州、学長 ティム ファンデルハーゲン

注3
富士通スモールリサーチラボ:
富士通の研究員が大学内に設置された富士通の研究拠点(スモールリサーチラボ)に常駐または長期的に滞在し、共同研究の加速、新規テーマの発掘、人材育成および大学との中長期的な関係構築を進めながら、社会課題の解決など、通常の共同研究の成果に留まらないより大きなブレークスルーを目指す取り組み

注4
QuTech:
デルフト工科大学 とオランダ応用科学研究機構(TNO)によって 2015 年に正式に設立。量子力学の基本法則に基づいて、量子コンピュータと本質的に安全な量子インターネットのスケーラブルなプロトタイプを開発することをミッションとしている。富士通とデルフト工科大学は、2020年10月から実施してきたスピン量子ビットを利用した量子コンピュータの基礎研究と開発をQuTechで実施してきた。

注5
ダイヤモンドNVセンター:
ダイヤモンドの結晶中、本来は炭素があるべきところに窒素が置換され、その隣接する位置に空孔がある複合欠陥

注6
世界初となるダイヤモンド中スピン量子ビットの誤り耐性操作に成功:
2022年5月5日QuTechプレスリリース(https://qutech.nl/2022/05/05/QuTech-and-fujitsu-realise-fault-tolerant-operation-of-qubit/)、Abobeih et al. (2022), Fault-tolerant operation of a logical qubit in a diamond quantum processor, Nature, DOI: 10.1038/s41586-022-04819-6

注7
SnVセンター:
ダイヤモンドの結晶中、本来は炭素があるべきところにスズ(Sn)が置換され、その隣接する位置に空孔がある複合欠陥

注8
SnVセンターを光導波路の中に形成し、その光結合の確認を単一光子レベルの応答により実証:
M. Pasini et al., "Nonlinear Quantum Photonics with a Tin-Vacancy Center Coupled to a One-Dimensional Diamond Waveguide", arXiv:2311.12927.

注9
FTQC:
Fault-Tolerant Quantum Computationの略語で、量子エラーを訂正しながら誤りなく量子計算を実行すること

【関連リンク】
・富士通スモールリサーチラボ
https://www.fujitsu.com/jp/about/research/srl/
・量子コンピューティングの実現に向け、グローバルでのオープンイノベーションにより最先端研究機関と共同研究を開始(2020年10月13日株式会社富士通研究所プレスリリース)
https://pr.fujitsu.com/jp/news/2020/10/13-1.html
※株式会社富士通研究所は、2021年4月1日付で富士通株式会社に統合。
・QuTech
https://qutech.nl/
・Fujitsu Quantum
https://www.fujitsu.com/jp/about/research/technology/quantum/

【本件に関するお問い合わせ】
富士通コンタクトライン(総合窓口)
電話:0120-933-200(通話無料)
受付時間: 9:00〜12:00および13:00〜17:30(土・日・祝日・当社指定の休業日を除く)
お問い合わせフォーム(https://contactline.jp.fujitsu.com/customform/csque04802/873532/

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