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多剤耐性結核:国際保健医療団体が協力し3000人余りに新薬を提供

国際保健医療団体であるパートナーズ・イン・ヘルス(Partners in Health:PIH)、国境なき医師団(MSF)、Interactive Research and Development(IRD)は4月、国際医薬品購入ファシリティ(UNITAID)資金援助を受け、「endTB」プロジェクトを開始する。この協力は、多剤耐性結核(MDR-TB)に対する、新薬の普及を後押しと、対処の根本的な変革を目指す。




[画像: http://prtimes.jp/i/4782/251/resize/d4782-251-658581-0.jpg ]



新薬を届けるための基礎固め

endTBは2019年までに、新しい2つの抗結核薬ベダキリン(※)とデラマニド(※)を、16ヵ国2600人のMDR-TB患者に提供する。これらの薬は50余年ぶりに開発された結核新薬で、MDR-TBに苦しむ人びとに新たな希望をもたらすものと期待されており、endTBでは、世界保健機関(WHO)の勧告にしたがい、厳密な経過観察のもとで患者に用いる。また、同プロジェクトの一環として、全く新しいMDR-TB治療法を600人の被験者にテストする革新的な臨床試験も行う。治療の短期化と患者の負担減をもたらすこの治療法の安全性と有効性が確認されれば、革命的といっても過言ではない。

※ベダキリン(商標名Sirturo)は米ヤンセンファーマ社が製造する。米国食品医薬品局(FDA)が2012年末に、成人のMDR-TB感染者の治療薬として条件付きで承認。
※デラマニド(商標名Deltyba)は日本の大塚製薬が製造する。2013年11月、欧州医薬品庁(EMA)から条件付きの販売承認を受けている。

2つの新薬はMDR-TB治療への適用が認められて1年余りが経過したが、ほとんど実用されていない。MDR-TBの疾病負荷の高い国では、ほぼコンパッショネート・ユース(※)に限った入手しかできず、この場合、製薬企業がほかに治療の選択肢のない患者に対して、個別に使用を許諾することが求められる。

※人道的配慮から、生死に関わる病気の患者に対し、販売承認に先立って未認可薬の使用を認める制度

これまでにベダキリンを処方された患者は推計で1000人に満たず、デラマニドの提供を受けた患者は数人にとどまる。そこでendTBは、2つの薬を多数のMDR-TB患者に適切に届けるための基礎固めを目指す。

IRDのendTBプロジェクト責任者アーミル・カーン医師は「現在の主な問題は、2つの薬の情報が限られていることです。薬の必要な人の住む国の多くが、実用化の前提となる厳密な安全性監督を行える状態にありません。また、そうした国の大半が、デラマニドとベダキリンの使用を認可していないのです。薬事登録済みの国であっても、今のところ、調達の仕組みが極めて時間を要するもので複雑なのです」と説明する。

副作用が強く成功率の低い従来の治療法

従来の結核治療は、さまざまな抗生物質の合剤を6ヵ月にわたり用いる。MDR-TBとは、最も有効な第1選択薬であるリファンピシンとイソニアジドという2つの抗生物質に耐性を持つ結核だ。MDR-TBのさらに進んだ形態は、超多剤耐性結核(XDR-TB)と呼ばれ、第2選択薬にも耐性が見られる場合を指す。

MDR-TBを発症する人は年間で推計50万人と推計され、そのうち、約10%がXDR-TBまで進行している。現在、MDR-TBとXDR-TBの患者に有効な薬はごくわずかで、複数の薬を併用しなければならない。最長2年の治療は副作用が強く、成功率はMDR-TBでは症例全体のわずか50%。XDR-TBでは20%を下回る。

PIHのendTBプロジェクト責任者、マイケル・リッチ医師は「私たちは現行のDR-TB治療が、患者にとってどれほど長く苦痛で、有効性の低いものかを日ごろから目にしています。何十年もの間、結核と闘う新たな手段を求めながら、その後塵を拝してきました。今、形成を逆転する好機が訪れています。ただしそのためには、迅速な行動と、新薬を最大限活用するための枠組み作りが必要です」と述べている。

ベダキリンがコンパッショネート・ユースによりXDR-TB患者に提供された国の経過は極めて有望だ。その一例として、アルメニアでMSFが支援するプログラムの治療を半年間受けた患者の85%は、喀痰において結核菌が駆逐されていた。

MSFのendTBプロジェクト責任者、フランシス・ヴァレーヌ医師は「2つの薬は患者にとっても、治療提供者にとっても新たな希望です。ただし、薬だけでは完勝とはいきません。安全性と有効性、そしてほかの薬と併用した場合の効果、最適な治療期間、副作用などに関する科学的根拠をそろえる必要があります。そうして初めて、MDR-TBとの闘いの流れを本格的に変えることができるでしょう」と話す。

UNITAIDのレリオ・マルモラ事務局長は。「endTBはMDR-TB治療の効果を高め、負担を減らし、流行抑止の一助となるでしょう。今回の新たな融資は、世界の結核対策の効果向上に有益な革新を導入するUNITAIDの広範な活動の一環です。2つのDR-TB新治療薬が切望されている理由として、2009年から3倍に増加した昨今の症例発見数もあげられます」と述べている。

【補足情報】

endTBプロジェクトについて
4ヵ年プロジェクトとして、4月1日より開始される。UNITAIDが助成しており、助成額は最大6040万米ドル(約73億1300万円)に上る。少なくとも2600人のMDR-TB患者に、結核新薬ベダキリンまたはデラマニドを用いた治療を行う。対象国はアルメニア、バングラデシュ、ベラルーシ、北朝鮮、エチオピア、グルジア、カザフスタン、ケニア、キルギスタン、インド、インドネシア、レソト、ミャンマー、ネパール、パキスタン、ペルーの16ヵ国。各患者の治療への反応と、必要に応じて副作用を詳細に観察する。

本プロジェクトは、結核新薬導入を阻む国レベルの障壁の緩和にもつながる見込み。各国の薬事登録を促す科学的根拠を提示し、簡素で迅速な調達の仕組みを呼び掛けていく。さらに、結核新薬の使用に関するWHO勧告に沿った、より広範な科学的根拠を固めるものとなるだろう。

UNITAIDについて
UNITAIDはHIV/エイズ、結核、マラリアへの国際的な対応における革新のための融資を行い、効率的で有効な施策を促す世界的な保健医療団体。2006年の創設以来、合計2億6000万米ドル(約314億8100万円)をDR-TB対策に投じてきた。

PIHについて
PIHは、貧困層や社会の片隅に追いやられた人の健康改善にまい進する世界的な保健団体。地域社会の能力育成、質の高い保健医療提供のための貧困社会との密接な連携、疾病の原因への対応を行い、国際政治の変化を呼び掛ける。MDR-TBの治療には1995年に着手し、以後、ペルー、ロシア、ハイチ、レソト、カザフスタンなど複数の国で地域密着型の治療プログラムを実践している。

IRDについて
IRDは保健医療の提供と研究を行う世界的な団体。アラブ首長国連邦のひとつドバイを拠点に、MDR-TBの疾病負荷の高いパキスタン、インドネシア、バングラデシュをはじめ合計15ヵ国で活動している。肺の健康や糖尿病ケアの民間事業者を巻き込むソーシャルビジネスのような保健医療市場の革新、地域調査員や治療支援者を対象とした実績に基づくインセンティブ、患者の治療の順守を促すインセンティブ、治療とプログラムの質を詳細に観察するためのオープンソースの情報技術プラットフォームなどに取り組む。

MSFの結核対策について

MSFの結核対策は30年に及び、1999年よりMDR-TB治療プログラムに着手。NGOとしては最大規模のDR-TB治療提供者の1つだ。2013年に治療した結核患者は全世界で2万9900人に達し、そのうち、1950人がDR-TB患者だった。現在はアルメニア、グルジア、ケニアで合計75人にベダキリンとデラマニドを提供している。
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