FIF主催セミナー「Connected Industries〜第四次産業革命のその先へ」開催報告
[18/03/20]
提供元:PRTIMES
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フューチャー イノベーション フォーラム(代表:牛尾治朗・ウシオ電機株式会社会長、金丸恭文・フューチャー株式会社会長兼社長、以下FIF)は、2018年2月22日に「イノベーションセミナー」を開催しました。FIFは企業と連携し社会貢献活動を行う団体として2006年に発足し、次世代リーダーの育成と交流を目的としたセミナーやワークショップを開催しています。
今回のセミナーは「Connected Industries〜第四次産業革命のその先へ」をテーマに、東京大学大学院の森川博之教授に講演いただいたあと、ウシオ電機株式会社の煎谷輝伸執行役員、株式会社TrexEdgeの池田博樹社長、およびフューチャーアーキテクト株式会社の貞光九月から各社の事例を紹介しました。
[画像: https://prtimes.jp/i/4374/260/resize/d4374-260-471760-1.jpg ]
【講演概要】(敬称略)
◆ 特別講演「リアルデータの威力〜Connected Industriesが実現する日本の未来予想図」
東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻 教授 森川 博之
IoTやAI(人工知能)などの技術を活用したデジタル変革が、いま社会の様々な分野で進んでいる。デジタル変革とは一言でいうと、仕事や生活の中にある「アナログプロセスのデジタル化」だ。これまで人が行ってきたことや物的資産をデータ化することで、生産性の向上を図るだけでなく、新しい付加価値をも生み出している。
最も顕著なのが、欧米のスポーツ業界だ。NBA(全米プロバスケットボール協会)は、コートの天井に設置した複数のカメラで全選手の動きを記録してデータ化し、選手へのフィードバックや試合分析に活用している。そのデータをインターネット上に公開したところ、特定の選手やチームのアプリが次々に作られ、若年層にファンが広がった結果、視聴率が上がり放映権料が高騰するという経済効果をもたらした。またスペインのあるコメディ劇場は、笑った回数に応じて課金するシステムを導入し、売上高が20%アップした。しくみは簡単で、座席に取り付けたタブレットのカメラで顔認識を行い、観客が笑った回数をカウントする。入場無料、笑った分だけ払うというわかりやすさが受け、観客の満足度も非常に高い。
身近なところでは、愛媛県で実施されている古紙回収システムがあげられる。これは、スーパーの駐車場に重量センサーつきの古紙回収箱を設置し、箱が満杯になったら回収業者に自動通知される一方、古紙を持ち込んだ人には、重さに応じてスーパーのポイントがもらえるというしくみだ。回収箱をスマート化したことで回収コストを大幅に削減でき、来店客の増加にもつながった。
これらの事例から学べるのは、まず一歩を踏み出してみることの大切さだ。私が劇場の支配人だったら、笑いに課金するという従業員のアイデアを「面白いがリスクが高い」と躊躇し、チャンスを逃していたかもしれない。デジタル化によって、どのような付加価値が生まれるかを予測するのは難しい。しかし、アナログで行っているプロセスが膨大にある今だからこそ、いたるところにビジネスチャンスが転がっている。どんな価値が創造できるかを楽しみながら、デジタル化を着実に進めてほしい。
インターネットの世界では、FacebookやGoogleのようにコンテンツや行動情報を集めるしくみを作った企業が、プラットフォーマーとして覇権を握ってきた。競争の舞台がリアルな世界に移りつつある中、今後はリアルなモノのデータをいかに集めるかが鍵となる。これは日本にとって、非常に有利だといえる。なぜなら製造業が強い日本はリアルデータを豊富に持ち、また労働人口が減っていくことへの懸念から業務のIT化に対する反発が少ないからだ。ではデジタル変革時代において、日本企業が世界と戦っていくには何が必要なのか。
まず重要なのは、すべてを再定義することだ。今ある事業が未来も続くかどうかわからないという視点で、従来の枠組みや既成概念にとらわれず柔軟に考えてほしい。たとえば独メルセデス・ベンツは新しいビジネスを模索する中で、商用バンの購入者に着目した。調べてみると購入者の多くが修理工で、バンに積んでいる工具や部品をタイミングよく交換・補充するサービスを望んでいることがわかった。そこで、修理工が必要な工具や部品をスマートフォンで知らせると、メルセデスのスタッフが深夜に車まで届けるというサービスを実験的に始めた。利用者には好評だという。このように車の製造販売からサービスへと事業分野を広げているのは、大きなヒントになるだろう。
次に、強い想いで新しいことに取り組む「海兵隊」のような組織が必要なことを理解してほしい。海兵隊はコンパクトで機動力が高く、危険な地帯に赴くため死亡率が高い。そういう意味で世の中のスタートアップは、すべて「海兵隊」といえる。私が応援しているGateBox株式会社は、3Dホログラムのロボット開発を手掛けるベンチャー企業で、生活をサポートしてくれるバーチャルの“理想のお嫁さん”を制作している。若い技術者たちが人生をかけて開発に打ち込む姿に、何かすごいことをしてくれるはずだと期待が膨らむ。世間の注目度も高く、2016年末に約30万円するプロトタイプを300台限定で予約販売したところ、世界中から予定数を超える注文があった。また日本の自動車業界で最もデジタル化が進んでいるマツダ株式会社は、1996年にデジタル化推進プロジェクトを立ち上げたが、成果が出るまでに10年以上かかった。その間、現場から何度も反発の声が上がったが、その度に社長が強い意志で対応したという。このように収益の柱である主力事業を深掘りする一方で、海兵隊のような組織を動かして新しい知の探索を行い、たとえ失敗してもその挑戦をたたえて守ることも、経営者の重要な役割だと思う。仕事の現場や日常生活にある無数のアナログプロセスのデジタル化は、事業リーチを無限に広げる可能性を秘めている。デジタル化によって集めたデータを効果的に活用し、日本、特に地方の経済が元気になることを期待している。私も企業と連携を強めながら研究活動を通じてサポートしていきたい。
◆ 事例紹介
事例1「スマートファクトリー化への取り組み〜人とロボットとの共創、経営への寄与」
ウシオ電機株式会社 執行役員 光源事業部次長 煎谷 輝伸
事例2「LoRaWANを活用した地方創生」
株式会社TrexEdge 代表取締役社長CEO 池田 博樹
事例3「Connected Industries〜人とAIの共創」
フューチャーアーキテクト株式会社
Technology Innovation Group Cognitive AI Lab.リーダー 貞光 九月
【実施概要】
テーマ:Connected Industries〜第四次産業革命のその先へ
日 時:2018年2月22日(木)15:30〜18:00
会 場:グランドハイアット東京(東京都港区)
参加者:100名
【本セミナーに関するお問い合わせ】
FIF事務局 TEL:03‐5740‐5817