第10回世界毛髪研究会議「World Congress for Hair Research(WCHR2017)」においてアデランスが3つのセミナーと企業展示を共催
[17/12/21]
提供元:PRTIMES
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期間:2017年10月31日(火)〜11月3日(金) 場所:国立京都国際会館
総合毛髪関連企業・株式会社アデランス(本社:東京都新宿区、代表取締役社長 津村 佳宏)は、2017年10月31日(火)〜11月3日(金・祝)、国立京都国際会館(京都府京都市)において開催された第10回世界毛髪研究会議「World Congress for Hair Research (WCHR 2017)」で、アデランスがスポンサーシップをとるセミナーを3件と、企業展示を共催しました。
会期中の11月1日(水)に2件、2日(木)に1件アデランス共催で演題が異なるセミナーを実施致しました。アデランスと寄附講座を開く大阪大学の板見教授が座長となるランチョンセミナー、同じく大阪大学の乾教授が座長と演者を務めるスポンサードセミナー、当社のメディカルアドバイザーである倉田先生と米国ボズレーメディカルグループ社の社長兼チーフメディカルオフィサー ケン・ワシニック医学博士が座長となるコンカレントセッションを行い、コンカレントセッションには再び乾教授と当社と共同研究を進める大分大学の猪股教授が演者となり、当社と関連の深い研究者が集結したことで、アデランスの学術的な側面を世界に向けて発信することとなりました。
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世界毛髪研究会議は世界中の毛髪・皮膚分野の医師や研究者が一堂に会し、講演やポスターセッションによりその研究成果を発表する、毛髪研究の世界最先端の学会です。隔年開催で第10回を迎える今回は、「Visiting old, find new(温故知新)」をテーマに秋の色づく京都で開催され、アデランスが本学会でスポンサーシップをとるのは3回連続となります。また、会期中には学術的な見地を背景に開発された商品を参考出展する企業展示も行われ、世界中の来訪者から視線を集めました。
3つのセミナーのうち、ランチョンセミナーでの登壇者は板見教授をはじめ、座長にヴァレリー・ランダル教授(英)、演者にジョージ・コトサレリス教授(米)とマイク・フィルポット教授(英)といった、毛髪研究会のビッグネームが名を連ね、最先端の毛髪研究の発表が行われました。
11月1日に開催されたもう一つのセミナーであるスポンサードセミナーは、「ウィッグ サービス イン ジャパン」として乾教授によるウィッグ使用におけるQOLの向上についての演題と、アデランス研究開発部長の平原裕治執行役員も演者として登壇し、当社オリジナル技術である人工毛髪サイバーヘア、バイタルヘアの先進性についての発表がおこなわれました。
11月2日のコンカレントセッションは毛髪研究界から広く募集された7つの演題で構成され、乾教授からは赤色LEDの毛髪成長に対する有用性、猪股教授からは新規αリポ酸誘導体による抗癌剤治療の副作用脱毛抑制についての発表がおこなわれました。
また、このコンカレントセッションの冒頭にはスポンサー企業スピーチとしてアデランス津村社長からのスピーチがあり、その中では本学会に参加していた元ARI(アデランス リサーチ インスティチュート)のカート・ステン博士が学会主催者より毛髪研究の長年の功績をたたえられる場面もありました。
アデランスはトータルヘアソリューションにおけるリーディング企業の使命として、経営理念の一つである「最高の商品」の開発および毛髪関連業界の発展を目指し、機能性人工毛髪や医療向ウィッグの研究開発、育毛・スカルプケア関連研究、抗がん剤脱毛抑制研究など、産学連携にて毛髪関連の研究を積極的に取り組んでおります。
その産学共同研究の成果を国内外の学会を通じて発信し、また、世界の研究者に研究成果を発表いただくことは、毛髪界の更なる進展となり、ひいては多くの方の髪の悩みの解消に寄与し、当社のCSR(企業の社会的責任)であると考えております。
■アデランスランチョンセミナー 講演概要
コトサレリス教授によるセミナーの様子
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フィルポット教授によるセミナーの様子
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座長
第10回世界毛髪研究会議共同議長
大阪大学大学院医学系研究科 皮膚・毛髪再生医学寄附講座 教授
板見 智先生
ブラッドフォード大学皮膚科学センター 教授
ヴァレリー・ランダル先生
演題1:
「プロスタグランジンとアンドロゲン性脱毛症」
原題:Prostaglandins and androgenetic alopecia.
演者
ペンシルベニア大学医学部皮膚科 教授
ジョージ・コトサレリス先生
プロスタグランジン経路は、マウスおよびヒトの毛成長に対して重大な影響を及ぼす。
プロスタグランジンD2(PGD2)およびその合成酵素、PGD2シンターゼは、男性型脱毛症を持つ男性の、脱毛したまたは脱毛していない頭皮に高水準で存在する。マウスモデルでは、2つのPGD2受容体のうちのひとつであるCRTH2/PTGDR2経由の毛の成長をPGD2が抑制しているため、PTGDR2はヒトの毛包中のPGD2の毛成長抑制活動を仲介する主要受容体であるという仮説が立てられる。
複数の薬理学的なPTGDR2拮抗薬について、ヒトの毛成長に関する反PGD2作用を試験管内でテストした結果、PTGDR2拮抗薬は、用量依存的な方法により、PGD2が誘因となるアポトーシスを減らし、ケラチン生成細胞の増殖を維持することで、PGD2が仲介する成長抑制に拮抗するということが分かった。マウスへのPGD2の局所投与では、成長期が短縮し、休止期への移行が加速された一方、PTGDR2拮抗薬を投与した場合には成長期が延長された結果、毛が長くなった。
培養ヒト毛包に対するRNA-Seq分析によれば、PGD2投与グループではCD34やK19といった毛包前駆細胞マーカーの発現が減少している。マウスの皮膚細胞のFACS分析によれば、PGD2投与マウスでは、成長期再開前の二次性毛芽中のKi67-ポジティブ細胞の減少が見られた。これらの結果は、PGD2が二次性毛芽/毛前駆細胞の活性化を抑制するということを示している。
我々の発見はさらに、毛の成長調整におけるPGD2の重要な役割を明確に示すものであり、PGD2に対して感受性のある患者の脱毛症予防または治療においてはPTGDR2の薬理学的拮抗作用が有効な方法になり得るということが分かった。
演題2:
「ワールブルク効果の再考と、健康と病気における毛包代謝の重要性」
原題:Revisiting the Warburg effect and the importance of hair follicle metabolism in health and disease.
演者
ロンドン大学クイーン・メアリー、ブリザードインスティテュート細胞生物学・皮膚研究センター
教授 マイク・フィルポット先生
毛包(HF)は動的な微小器官であり、エネルギーおよび生合成前駆細胞に対する需要が高い。
HFはワールブルク効果として知られるとおり、酸素の存在にも関わらず、主に好気的解糖およびグルタミン代謝を行って乳酸を生成する。しかし、HFはまた、酸化的リン酸化も可能である。我々は、好気的解糖およびグルタミン代謝によって、同化作用および毛髪繊維生成のための代謝物が多量に流出すること、そのため、HFはおそらく、好気的解糖、グルタミン代謝および酸化的リン酸化をバランスさせているということ、毛包の高い増殖性と組織区画の分化間の好気的解糖および酸化的リン酸化の違いが、毛包機能の重要な調節役であり得るということを提示する。
我々はまた、脱毛した頭皮の毛乳頭細胞の方が、脱毛していない頭皮のDPよりも酸化ストレスおよびROSに対してずっと敏感であるということを突き止め、好気的解糖と酸化的リン酸化のアンバランスが、脱毛症における重要な要素となり得るということを提示した。
最後に、近年、外毛根鞘が実は毛包の「発電所」であり得るという証拠が増えており、我々は、ORS内のグリコーゲン代謝が毛包内の高水準の細胞増殖を維持している可能性があるということを提示した。
■スポンサードセミナー「Wig Service in Japan」 講演概要
乾教授によるセミナーの様子
[画像6: https://prtimes.jp/i/10292/276/resize/d10292-276-944159-5.jpg ]
[画像7: https://prtimes.jp/i/10292/276/resize/d10292-276-592508-6.jpg ]
平原執行役員によるセミナーの様子
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[画像9: https://prtimes.jp/i/10292/276/resize/d10292-276-346952-8.jpg ]
座長
大阪大学大学院医学系研究科 皮膚科学講座
招聘教授
心斎橋いぬい皮フ科
院長
乾 重樹先生
佐賀大学 皮膚科学教室
教授
成澤 寛先生
演題1:
「脱毛患者の生活の質を向上させるためのウィッグ:医学的な根拠」
原題:Wig for better quality of life of hair loss patients: questionnaire-based evidence
演者
大阪大学大学院医学系研究科 皮膚科学講座
招聘教授
心斎橋いぬい皮フ科
院長
乾 重樹先生
脱毛は命にかかわるものではないが、その外観的変化は、患者の社会的な心理状況に重大な影響を及ぼす。
ウィッグは脱毛を隠すために広く使われており、生活の質(QOL)の向上に効果をもたらすことが期待されている。このため我々は、QOLに対する福祉用具の効果を評価するために作成された、26項目の自己評価アンケートからなる福祉用具利用者の心理的効果を評価するスケール(PIADS)を使用して、ウィッグの効果を調査した。
調査には、ウィッグまたはヘアーピースを使用している49名の女性円形脱毛症(AA)患者が参加した。年齢層は14〜75歳(中央値36歳)。 PIADSの26項目の質問は、効力感(物事を行う能力)、適応性(様々な仕事に対する適応力)、そして自尊感(自分の行動における自信)といった3つのQOL指標に対応するものである。アンケートは無変化を0とし、-3 から+3までの評価で回答し、+回答はQOLの改善が見られたことを表す。また、ウィッグまたはヘアーピースを使用した場合の自身の見た目の満足度を、0〜10cmの視覚的評価スケール(VAS)で測った。PIADSの総得点は0点から有意に増加し、効果感、適応性、自尊感といったQOL指標も0から大幅に改善された(p<0.001、マンホイットニ検定)。従って、 ウィッグまたはヘアーピースは、女性AA患者の心理的QOLを改善することが分かった。次に、PIADSの総得点および効果感、適応性、自尊感の指標が、満足に対するVASと相関しているかどうかを調べた。その結果、これらのPIADS得点はVAS得点(p<0.05、スピアマンの順位相関係数)と正の相関関係を持つことが分かり、ウィッグまたはヘアーピースによる見た目の満足が、患者を支える重要な要素となっていることが分かった。同様の結果が、男性型脱毛症および 女性型脱毛症でも得られている。
英国皮膚科医協会によるAAのための最近のガイドラインでは、ウィッグまたはヘアーピースが良好な実践ポイントとして推奨されてはいるが、そのエビデンスは専門家の意見または総意によるものであって、臨床データに裏付けられたものではない。そこでこの調査ではPIADSを利用し、ウィッグまたはヘアーピースが福祉用具として有用であるか否かを量的、統計的に調査した。
その結果、ウィッグまたはヘアーピースが効力感、積極的適応性、自尊感を改善し、その効果はウィッグを装着したときの見た目の満足度と相関することが分かった。
演題2:
「フルオーダーウイッグのテクノロジー」
原題:Technologies of totally custom made wigs
演者
株式会社アデランス 執行役員
事業開発統括部長
兼)研究開発部長
兼)ビューティー&ヘルス事業開発室長
平原 裕治
我々は脱毛の悩みを解消する手段としてウィッグが有効であると認識している。ウィッグは治療ではないが、形容的な変化による満足を確実に提供することができる。しかし、使用者が不便や不快を感じないでいるためには、高品質であり自然であることが要求される
我々は長年の取り組みの中で、独自の人工毛髪を開発した。このことにより、より自然で取り扱いが容易なウィッグを提供することができている。この人工毛は求めに応じて色や太さなども選ぶことができる。もちろんベースと呼ばれる毛を植える土台も自然なものである。
さらには投薬治療の副作用による脱毛への対応として、頭皮への負担が少ない医療用のウィッグも開発された。
このセッションでは毛髪までもオーダーメイドする最新技術について紹介する。
■コンカレントセッション「New Horizon of Hair Disease Management and Research」講演概要
乾教授によるセミナーの様子
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[画像11: https://prtimes.jp/i/10292/276/resize/d10292-276-757731-10.jpg ]
猪股教授によるセミナーの様子
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[画像13: https://prtimes.jp/i/10292/276/resize/d10292-276-377690-12.jpg ]
津村社長による企業スピーチの様子
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座長
別府ガーデンヒルクリニック くらた医院
院長
倉田 荘太郎先生
ニューヨーク大学医学部皮膚科
医学博士
ケン・ワシニック先生
V. N.カラジンハリコフ国立大学臨床免疫アレルギー学部
教授
ユリヤ・オフチャレンコ先生
演題1:
「毛乳頭からのパラクラインメディエータ―誘導による赤色LEDでの毛成長の促進」
原題:Elongation of anagen by red LED possiblly through paracrine mediators for dermal papilla
演者
大阪大学大学院医学系研究科 皮膚科学講座
招聘教授
心斎橋いぬい皮フ科
院長
乾 重樹先生
毛成長に対するLEDの効果およびメカニズムを検証するため、 我々は赤色LED (638nm)を使用し、マウスの毛成長に対してその効果を検証した。
まず、毛成長に対するLED 光の効果を調べるため、7週齢の雌BL-6マウスの背部を剃毛した。次の日(day1)から、5cmの距離で20分間、赤色LED (638nm /1.0J/cm2)の照射を始め、2日または3日おき(週に3回)に照射を続けた。 day1、11、18、22、27に背部の写真を撮影し、毛再生面積の割合を計算した。その結果、プラセボと比較し、LED照射郡でday18、22において有意に毛成長が促進された。また、LEDには7週齢の雌BL-6マウスの背部の剃毛による休止期誘導を遅らせる効果があることも分かった。
次に、毛成長に対するLED刺激の分子レベルのメカニズムを調べるため、培養ヒト毛乳頭細胞に赤色LEDを、培養皿から3cmの高さから20分間照射した。LED光による刺激効果の伝達物質の可能性を調べるため、 照射から0、4、8および24時間後に細胞からRNAサンプルを抽出し、半定量的RT-PCRを行い、 毛乳頭細胞から分泌される毛成長の促進に重要な役割を果たしていると考えられる増殖因子およびサイトカインを調べた。その結果、対照群と比較して、HGF、Leptin、VEGF-A mRNAが増加していた。同様に、LED照射後のヒト毛乳頭細胞の培養上清を使用したELISA法の結果、照射後にHGF、Leptin、VEGF-Aといった物質の濃度が有意に上昇していることが分かった。
赤色LEDは毛乳頭からのHGF、Leptin、VEGF-Aなど伝達物質誘導により、毛成長促進の可能性が高い。
演題2:
「化学療法誘発性脱毛症の新治療法の開発-基礎と臨床」
原題:Development of new treatment for chemotherapy induced alopecia- basic and clinical study-
演者:
大分大学医学部 消化器・小児外科学講座 教授
猪股 雅史先生
猪股雅史1) 、佐川倫子1) 、河野洋平1) 、平塚孝宏1)、麻生結子1)、後藤瑞生2)、
波多野豊2) 、濱中良治3)、倉田荘太郎4)、北野正剛5)
1)大分大学 医学部 消化器・小児外科学講座 2)大分大学 医学部 皮膚科学講座
3)大分県立看護科学大学 4)別府ガーデンヒルクリニック くらた医院 5)大分大学
化学療法誘発性脱毛症(Chemotherapy induced alopecia :CIA)は、抗がん剤の重大な有害事象である。しかし、効果的な治療法は未だ開発されていない。我々は、ラットモデルを使用し、CIAに対して新たに合成された抗酸化物質、α-リポ酸誘導体(ALAD)の評価を行った。
腹腔内投与により、シトシンアラビノシド(Ara-C)誘発脱毛症のSDラットモデルを作成した。ALAD を経皮に12日間塗布した後、脱毛の度合いを評価した。目視結果では、Ara-C グループに比較して、特に1%濃度を塗布されたALADグループで脱毛が軽減した。組織学的な結果としては、対照群と比較してAra-C グループでは毛幹および毛根が激減し、炎症細胞湿潤が観察された。それに比べ、ALADグループではこれらの変化が有意に改善された。各グループの皮膚組織を調べると、カスパーゼ活性およびマロンジアルデヒドの水準が、Ara-C グループに比較してALADグループでは激減していた。これらの結果から、脱毛症に対するALADの予防効果には、毛の周囲の皮膚組織に対するアポトーシスおよび酸化ストレスの抑制が関与していることが考えられる。
この後我々は、乳癌の手術後の術後補助化学療法中の19名の患者を対象とする臨床予備研究でCIAに対するALADの予防効果を解明し、また2013年から2017年にかけて、100名の乳癌患者を募り、複数機関によるフェーズIII治験(UMIN-CTR)(UMIN000014840)を行った。これらの結果は、CIA患者に対する新しい治療薬の開発に役立つものと思われる。
学会概要
学会名称 :第10回世界毛髪研究会議 「World Congress for Hair Research(WCHR2017)」
名誉会長 :学校法人順天堂 理事長 小川 秀興 先生
会 長 :東京医科大学皮膚科学分野 主任教授 坪井 良治 先生
大阪大学大学院医学系研究科皮膚・毛髪再生医学寄附講座 教授 板見 智 先生
会 期 :2017年10月31日(火)〜11月3日(金)
会 場 :国立京都国際会館
※アデランス共催のランチョンセミナーとスポンサーセミナーは11月1日(水)、コンカレントセッションは11月2日(木)に開催しました。
※各セミナーの演題数はスポンサーセミナーが3演題、コンカレントセッションは7演題でしたが、当社と関連のある演題のみ紹介しています。
総合毛髪関連企業・株式会社アデランス(本社:東京都新宿区、代表取締役社長 津村 佳宏)は、2017年10月31日(火)〜11月3日(金・祝)、国立京都国際会館(京都府京都市)において開催された第10回世界毛髪研究会議「World Congress for Hair Research (WCHR 2017)」で、アデランスがスポンサーシップをとるセミナーを3件と、企業展示を共催しました。
会期中の11月1日(水)に2件、2日(木)に1件アデランス共催で演題が異なるセミナーを実施致しました。アデランスと寄附講座を開く大阪大学の板見教授が座長となるランチョンセミナー、同じく大阪大学の乾教授が座長と演者を務めるスポンサードセミナー、当社のメディカルアドバイザーである倉田先生と米国ボズレーメディカルグループ社の社長兼チーフメディカルオフィサー ケン・ワシニック医学博士が座長となるコンカレントセッションを行い、コンカレントセッションには再び乾教授と当社と共同研究を進める大分大学の猪股教授が演者となり、当社と関連の深い研究者が集結したことで、アデランスの学術的な側面を世界に向けて発信することとなりました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/10292/276/resize/d10292-276-659949-0.jpg ]
世界毛髪研究会議は世界中の毛髪・皮膚分野の医師や研究者が一堂に会し、講演やポスターセッションによりその研究成果を発表する、毛髪研究の世界最先端の学会です。隔年開催で第10回を迎える今回は、「Visiting old, find new(温故知新)」をテーマに秋の色づく京都で開催され、アデランスが本学会でスポンサーシップをとるのは3回連続となります。また、会期中には学術的な見地を背景に開発された商品を参考出展する企業展示も行われ、世界中の来訪者から視線を集めました。
3つのセミナーのうち、ランチョンセミナーでの登壇者は板見教授をはじめ、座長にヴァレリー・ランダル教授(英)、演者にジョージ・コトサレリス教授(米)とマイク・フィルポット教授(英)といった、毛髪研究会のビッグネームが名を連ね、最先端の毛髪研究の発表が行われました。
11月1日に開催されたもう一つのセミナーであるスポンサードセミナーは、「ウィッグ サービス イン ジャパン」として乾教授によるウィッグ使用におけるQOLの向上についての演題と、アデランス研究開発部長の平原裕治執行役員も演者として登壇し、当社オリジナル技術である人工毛髪サイバーヘア、バイタルヘアの先進性についての発表がおこなわれました。
11月2日のコンカレントセッションは毛髪研究界から広く募集された7つの演題で構成され、乾教授からは赤色LEDの毛髪成長に対する有用性、猪股教授からは新規αリポ酸誘導体による抗癌剤治療の副作用脱毛抑制についての発表がおこなわれました。
また、このコンカレントセッションの冒頭にはスポンサー企業スピーチとしてアデランス津村社長からのスピーチがあり、その中では本学会に参加していた元ARI(アデランス リサーチ インスティチュート)のカート・ステン博士が学会主催者より毛髪研究の長年の功績をたたえられる場面もありました。
アデランスはトータルヘアソリューションにおけるリーディング企業の使命として、経営理念の一つである「最高の商品」の開発および毛髪関連業界の発展を目指し、機能性人工毛髪や医療向ウィッグの研究開発、育毛・スカルプケア関連研究、抗がん剤脱毛抑制研究など、産学連携にて毛髪関連の研究を積極的に取り組んでおります。
その産学共同研究の成果を国内外の学会を通じて発信し、また、世界の研究者に研究成果を発表いただくことは、毛髪界の更なる進展となり、ひいては多くの方の髪の悩みの解消に寄与し、当社のCSR(企業の社会的責任)であると考えております。
■アデランスランチョンセミナー 講演概要
コトサレリス教授によるセミナーの様子
[画像2: https://prtimes.jp/i/10292/276/resize/d10292-276-135261-1.jpg ]
[画像3: https://prtimes.jp/i/10292/276/resize/d10292-276-433540-2.jpg ]
フィルポット教授によるセミナーの様子
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座長
第10回世界毛髪研究会議共同議長
大阪大学大学院医学系研究科 皮膚・毛髪再生医学寄附講座 教授
板見 智先生
ブラッドフォード大学皮膚科学センター 教授
ヴァレリー・ランダル先生
演題1:
「プロスタグランジンとアンドロゲン性脱毛症」
原題:Prostaglandins and androgenetic alopecia.
演者
ペンシルベニア大学医学部皮膚科 教授
ジョージ・コトサレリス先生
プロスタグランジン経路は、マウスおよびヒトの毛成長に対して重大な影響を及ぼす。
プロスタグランジンD2(PGD2)およびその合成酵素、PGD2シンターゼは、男性型脱毛症を持つ男性の、脱毛したまたは脱毛していない頭皮に高水準で存在する。マウスモデルでは、2つのPGD2受容体のうちのひとつであるCRTH2/PTGDR2経由の毛の成長をPGD2が抑制しているため、PTGDR2はヒトの毛包中のPGD2の毛成長抑制活動を仲介する主要受容体であるという仮説が立てられる。
複数の薬理学的なPTGDR2拮抗薬について、ヒトの毛成長に関する反PGD2作用を試験管内でテストした結果、PTGDR2拮抗薬は、用量依存的な方法により、PGD2が誘因となるアポトーシスを減らし、ケラチン生成細胞の増殖を維持することで、PGD2が仲介する成長抑制に拮抗するということが分かった。マウスへのPGD2の局所投与では、成長期が短縮し、休止期への移行が加速された一方、PTGDR2拮抗薬を投与した場合には成長期が延長された結果、毛が長くなった。
培養ヒト毛包に対するRNA-Seq分析によれば、PGD2投与グループではCD34やK19といった毛包前駆細胞マーカーの発現が減少している。マウスの皮膚細胞のFACS分析によれば、PGD2投与マウスでは、成長期再開前の二次性毛芽中のKi67-ポジティブ細胞の減少が見られた。これらの結果は、PGD2が二次性毛芽/毛前駆細胞の活性化を抑制するということを示している。
我々の発見はさらに、毛の成長調整におけるPGD2の重要な役割を明確に示すものであり、PGD2に対して感受性のある患者の脱毛症予防または治療においてはPTGDR2の薬理学的拮抗作用が有効な方法になり得るということが分かった。
演題2:
「ワールブルク効果の再考と、健康と病気における毛包代謝の重要性」
原題:Revisiting the Warburg effect and the importance of hair follicle metabolism in health and disease.
演者
ロンドン大学クイーン・メアリー、ブリザードインスティテュート細胞生物学・皮膚研究センター
教授 マイク・フィルポット先生
毛包(HF)は動的な微小器官であり、エネルギーおよび生合成前駆細胞に対する需要が高い。
HFはワールブルク効果として知られるとおり、酸素の存在にも関わらず、主に好気的解糖およびグルタミン代謝を行って乳酸を生成する。しかし、HFはまた、酸化的リン酸化も可能である。我々は、好気的解糖およびグルタミン代謝によって、同化作用および毛髪繊維生成のための代謝物が多量に流出すること、そのため、HFはおそらく、好気的解糖、グルタミン代謝および酸化的リン酸化をバランスさせているということ、毛包の高い増殖性と組織区画の分化間の好気的解糖および酸化的リン酸化の違いが、毛包機能の重要な調節役であり得るということを提示する。
我々はまた、脱毛した頭皮の毛乳頭細胞の方が、脱毛していない頭皮のDPよりも酸化ストレスおよびROSに対してずっと敏感であるということを突き止め、好気的解糖と酸化的リン酸化のアンバランスが、脱毛症における重要な要素となり得るということを提示した。
最後に、近年、外毛根鞘が実は毛包の「発電所」であり得るという証拠が増えており、我々は、ORS内のグリコーゲン代謝が毛包内の高水準の細胞増殖を維持している可能性があるということを提示した。
■スポンサードセミナー「Wig Service in Japan」 講演概要
乾教授によるセミナーの様子
[画像6: https://prtimes.jp/i/10292/276/resize/d10292-276-944159-5.jpg ]
[画像7: https://prtimes.jp/i/10292/276/resize/d10292-276-592508-6.jpg ]
平原執行役員によるセミナーの様子
[画像8: https://prtimes.jp/i/10292/276/resize/d10292-276-894663-7.jpg ]
[画像9: https://prtimes.jp/i/10292/276/resize/d10292-276-346952-8.jpg ]
座長
大阪大学大学院医学系研究科 皮膚科学講座
招聘教授
心斎橋いぬい皮フ科
院長
乾 重樹先生
佐賀大学 皮膚科学教室
教授
成澤 寛先生
演題1:
「脱毛患者の生活の質を向上させるためのウィッグ:医学的な根拠」
原題:Wig for better quality of life of hair loss patients: questionnaire-based evidence
演者
大阪大学大学院医学系研究科 皮膚科学講座
招聘教授
心斎橋いぬい皮フ科
院長
乾 重樹先生
脱毛は命にかかわるものではないが、その外観的変化は、患者の社会的な心理状況に重大な影響を及ぼす。
ウィッグは脱毛を隠すために広く使われており、生活の質(QOL)の向上に効果をもたらすことが期待されている。このため我々は、QOLに対する福祉用具の効果を評価するために作成された、26項目の自己評価アンケートからなる福祉用具利用者の心理的効果を評価するスケール(PIADS)を使用して、ウィッグの効果を調査した。
調査には、ウィッグまたはヘアーピースを使用している49名の女性円形脱毛症(AA)患者が参加した。年齢層は14〜75歳(中央値36歳)。 PIADSの26項目の質問は、効力感(物事を行う能力)、適応性(様々な仕事に対する適応力)、そして自尊感(自分の行動における自信)といった3つのQOL指標に対応するものである。アンケートは無変化を0とし、-3 から+3までの評価で回答し、+回答はQOLの改善が見られたことを表す。また、ウィッグまたはヘアーピースを使用した場合の自身の見た目の満足度を、0〜10cmの視覚的評価スケール(VAS)で測った。PIADSの総得点は0点から有意に増加し、効果感、適応性、自尊感といったQOL指標も0から大幅に改善された(p<0.001、マンホイットニ検定)。従って、 ウィッグまたはヘアーピースは、女性AA患者の心理的QOLを改善することが分かった。次に、PIADSの総得点および効果感、適応性、自尊感の指標が、満足に対するVASと相関しているかどうかを調べた。その結果、これらのPIADS得点はVAS得点(p<0.05、スピアマンの順位相関係数)と正の相関関係を持つことが分かり、ウィッグまたはヘアーピースによる見た目の満足が、患者を支える重要な要素となっていることが分かった。同様の結果が、男性型脱毛症および 女性型脱毛症でも得られている。
英国皮膚科医協会によるAAのための最近のガイドラインでは、ウィッグまたはヘアーピースが良好な実践ポイントとして推奨されてはいるが、そのエビデンスは専門家の意見または総意によるものであって、臨床データに裏付けられたものではない。そこでこの調査ではPIADSを利用し、ウィッグまたはヘアーピースが福祉用具として有用であるか否かを量的、統計的に調査した。
その結果、ウィッグまたはヘアーピースが効力感、積極的適応性、自尊感を改善し、その効果はウィッグを装着したときの見た目の満足度と相関することが分かった。
演題2:
「フルオーダーウイッグのテクノロジー」
原題:Technologies of totally custom made wigs
演者
株式会社アデランス 執行役員
事業開発統括部長
兼)研究開発部長
兼)ビューティー&ヘルス事業開発室長
平原 裕治
我々は脱毛の悩みを解消する手段としてウィッグが有効であると認識している。ウィッグは治療ではないが、形容的な変化による満足を確実に提供することができる。しかし、使用者が不便や不快を感じないでいるためには、高品質であり自然であることが要求される
我々は長年の取り組みの中で、独自の人工毛髪を開発した。このことにより、より自然で取り扱いが容易なウィッグを提供することができている。この人工毛は求めに応じて色や太さなども選ぶことができる。もちろんベースと呼ばれる毛を植える土台も自然なものである。
さらには投薬治療の副作用による脱毛への対応として、頭皮への負担が少ない医療用のウィッグも開発された。
このセッションでは毛髪までもオーダーメイドする最新技術について紹介する。
■コンカレントセッション「New Horizon of Hair Disease Management and Research」講演概要
乾教授によるセミナーの様子
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猪股教授によるセミナーの様子
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津村社長による企業スピーチの様子
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座長
別府ガーデンヒルクリニック くらた医院
院長
倉田 荘太郎先生
ニューヨーク大学医学部皮膚科
医学博士
ケン・ワシニック先生
V. N.カラジンハリコフ国立大学臨床免疫アレルギー学部
教授
ユリヤ・オフチャレンコ先生
演題1:
「毛乳頭からのパラクラインメディエータ―誘導による赤色LEDでの毛成長の促進」
原題:Elongation of anagen by red LED possiblly through paracrine mediators for dermal papilla
演者
大阪大学大学院医学系研究科 皮膚科学講座
招聘教授
心斎橋いぬい皮フ科
院長
乾 重樹先生
毛成長に対するLEDの効果およびメカニズムを検証するため、 我々は赤色LED (638nm)を使用し、マウスの毛成長に対してその効果を検証した。
まず、毛成長に対するLED 光の効果を調べるため、7週齢の雌BL-6マウスの背部を剃毛した。次の日(day1)から、5cmの距離で20分間、赤色LED (638nm /1.0J/cm2)の照射を始め、2日または3日おき(週に3回)に照射を続けた。 day1、11、18、22、27に背部の写真を撮影し、毛再生面積の割合を計算した。その結果、プラセボと比較し、LED照射郡でday18、22において有意に毛成長が促進された。また、LEDには7週齢の雌BL-6マウスの背部の剃毛による休止期誘導を遅らせる効果があることも分かった。
次に、毛成長に対するLED刺激の分子レベルのメカニズムを調べるため、培養ヒト毛乳頭細胞に赤色LEDを、培養皿から3cmの高さから20分間照射した。LED光による刺激効果の伝達物質の可能性を調べるため、 照射から0、4、8および24時間後に細胞からRNAサンプルを抽出し、半定量的RT-PCRを行い、 毛乳頭細胞から分泌される毛成長の促進に重要な役割を果たしていると考えられる増殖因子およびサイトカインを調べた。その結果、対照群と比較して、HGF、Leptin、VEGF-A mRNAが増加していた。同様に、LED照射後のヒト毛乳頭細胞の培養上清を使用したELISA法の結果、照射後にHGF、Leptin、VEGF-Aといった物質の濃度が有意に上昇していることが分かった。
赤色LEDは毛乳頭からのHGF、Leptin、VEGF-Aなど伝達物質誘導により、毛成長促進の可能性が高い。
演題2:
「化学療法誘発性脱毛症の新治療法の開発-基礎と臨床」
原題:Development of new treatment for chemotherapy induced alopecia- basic and clinical study-
演者:
大分大学医学部 消化器・小児外科学講座 教授
猪股 雅史先生
猪股雅史1) 、佐川倫子1) 、河野洋平1) 、平塚孝宏1)、麻生結子1)、後藤瑞生2)、
波多野豊2) 、濱中良治3)、倉田荘太郎4)、北野正剛5)
1)大分大学 医学部 消化器・小児外科学講座 2)大分大学 医学部 皮膚科学講座
3)大分県立看護科学大学 4)別府ガーデンヒルクリニック くらた医院 5)大分大学
化学療法誘発性脱毛症(Chemotherapy induced alopecia :CIA)は、抗がん剤の重大な有害事象である。しかし、効果的な治療法は未だ開発されていない。我々は、ラットモデルを使用し、CIAに対して新たに合成された抗酸化物質、α-リポ酸誘導体(ALAD)の評価を行った。
腹腔内投与により、シトシンアラビノシド(Ara-C)誘発脱毛症のSDラットモデルを作成した。ALAD を経皮に12日間塗布した後、脱毛の度合いを評価した。目視結果では、Ara-C グループに比較して、特に1%濃度を塗布されたALADグループで脱毛が軽減した。組織学的な結果としては、対照群と比較してAra-C グループでは毛幹および毛根が激減し、炎症細胞湿潤が観察された。それに比べ、ALADグループではこれらの変化が有意に改善された。各グループの皮膚組織を調べると、カスパーゼ活性およびマロンジアルデヒドの水準が、Ara-C グループに比較してALADグループでは激減していた。これらの結果から、脱毛症に対するALADの予防効果には、毛の周囲の皮膚組織に対するアポトーシスおよび酸化ストレスの抑制が関与していることが考えられる。
この後我々は、乳癌の手術後の術後補助化学療法中の19名の患者を対象とする臨床予備研究でCIAに対するALADの予防効果を解明し、また2013年から2017年にかけて、100名の乳癌患者を募り、複数機関によるフェーズIII治験(UMIN-CTR)(UMIN000014840)を行った。これらの結果は、CIA患者に対する新しい治療薬の開発に役立つものと思われる。
学会概要
学会名称 :第10回世界毛髪研究会議 「World Congress for Hair Research(WCHR2017)」
名誉会長 :学校法人順天堂 理事長 小川 秀興 先生
会 長 :東京医科大学皮膚科学分野 主任教授 坪井 良治 先生
大阪大学大学院医学系研究科皮膚・毛髪再生医学寄附講座 教授 板見 智 先生
会 期 :2017年10月31日(火)〜11月3日(金)
会 場 :国立京都国際会館
※アデランス共催のランチョンセミナーとスポンサーセミナーは11月1日(水)、コンカレントセッションは11月2日(木)に開催しました。
※各セミナーの演題数はスポンサーセミナーが3演題、コンカレントセッションは7演題でしたが、当社と関連のある演題のみ紹介しています。