結核:有望な新薬も高価格設定に――途上国での普及困難
[16/02/29]
提供元:PRTIMES
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大塚製薬は、新しい抗結核薬「デラマニド」を一部途上国向けに1治療期間あたり1700米ドル(約19万円)で流通させると発表した。デラマニドは、約50年ぶりに開発された2種類の抗結核薬の1つで、最も致死率が高く、他の薬の多くに耐性を持つ多剤耐性結核と(MDR-TB)と超多剤耐性結核(XDR-TB)に対して有効な、期待の新薬だ。国境なき医師団(MSF)はデラマニドの価格が高価格帯に設定された今回の発表に対し、深い懸念を表明。デラマニドは現在日本を含む4カ国でのみ登録されているため、MSFは価格の引き下げとともに、結核の高まん延国での登録を速やかに行うべきだと主張している。
[画像: http://prtimes.jp/i/4782/318/resize/d4782-318-572086-1.jpg ]
1治療期間あたり500ドルを提唱
薬剤耐性結核(DR-TB)を適切に治療するにあたっては、デラマニドを他の治療薬と併用して服用する必要がある。この治療の費用は、デラマニドを除いても1治療期間あたり1000ドル-4500ドル(約11万円-51万円)もかかるのが現状だ(※)。これは途上国向けの最低価格帯だが、それでも途上国政府には購入できない額と言える。DR-TB治療を広域に拡大するにあたって、MSFは1治療期間あたり500米ドル(約6万円弱)を提唱している。
※DR-TB治療薬のレジメン価格は2016年3月に発表予定の報告書『薬剤耐性結核:治療を阻む薬の価格と限られた供給』第4版から転載。
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の資金援助対象国は、その国でデラマニドの使用登録がされているか、必要な関税放棄措置を導入していれば、国連内に設置された抗結核薬購入機構である世界結核薬基金(GDF)を通じて、デラマニドを1治療期間あたり1700米ドル(19万円)で購入できるようになる。
有望な新薬も利用されなければ価値はない
現在のところ、大塚製薬がデラマニドを登録した国は4ヵ国(ドイツ、日本、韓国、英国)にとどまっており、これらはすべてDR-TBの高まん延国ではない。
MSF必須医薬品キャンペーン結核アドバイザーのグラニア・ブリグデン医師は次のように話す。「各国はDR-TB感染者を対象に、流通しているなかで最も有効性が高い薬を用いて治療を拡大し始めるべきです。しかしデラマニドは現在、値段が高くて手に入れにくいか、入手自体ができない状態です。大塚製薬は、価格を購入しやすい水準にまで下げるとともに、デラマニドを臨床試験にかけた国全てと、結核の高まん延国で速やかに登録すべきです。もし人びとがデラマニドを手に入れられなければ、この有望な新薬も実質的には無価値となります」
これまで実際に受け取ったのは世界で180人だけ
推定によると、毎年新たにDR-TBに進行する人びとの3分の2にあたる50万人弱の患者が、デラマニド投与の基準を満たしており、よい効果を期待できる。だが、承認取得から2年経過した今も、この新薬を使った治療を受けられた人は180人にとどまる。
ブリグデン医師は「大塚製薬は、デラマニドによって命が救われる人びとにこの薬が行きわたることを優先すべきです。あらゆる努力によってできるだけ多くの人がこの有望な新規治療薬の恩恵を受けられるようにすべきですが、残念ながら現在の状況はそのようになっていません」と話す。
MSFは結核治療に30年間携わり、MDR-TB治療は1999年に開始。DR-TB治療を行うNGOとしては最も大きな団体の1つ。MSFは2014年、2万3000人以上の結核患者を治療し、このうちDR-TB感染患者は1800人にのぼった。MSFの活動の中でデラマニドの使用を拡大することを目指しており、2015年12月にはMSFの活動と合同プロジェクト「endTB partnership」用にデラマニドの寄贈を受けた(http://www.msf.or.jp/information/detail/info_2768.html)。
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1治療期間あたり500ドルを提唱
薬剤耐性結核(DR-TB)を適切に治療するにあたっては、デラマニドを他の治療薬と併用して服用する必要がある。この治療の費用は、デラマニドを除いても1治療期間あたり1000ドル-4500ドル(約11万円-51万円)もかかるのが現状だ(※)。これは途上国向けの最低価格帯だが、それでも途上国政府には購入できない額と言える。DR-TB治療を広域に拡大するにあたって、MSFは1治療期間あたり500米ドル(約6万円弱)を提唱している。
※DR-TB治療薬のレジメン価格は2016年3月に発表予定の報告書『薬剤耐性結核:治療を阻む薬の価格と限られた供給』第4版から転載。
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の資金援助対象国は、その国でデラマニドの使用登録がされているか、必要な関税放棄措置を導入していれば、国連内に設置された抗結核薬購入機構である世界結核薬基金(GDF)を通じて、デラマニドを1治療期間あたり1700米ドル(19万円)で購入できるようになる。
有望な新薬も利用されなければ価値はない
現在のところ、大塚製薬がデラマニドを登録した国は4ヵ国(ドイツ、日本、韓国、英国)にとどまっており、これらはすべてDR-TBの高まん延国ではない。
MSF必須医薬品キャンペーン結核アドバイザーのグラニア・ブリグデン医師は次のように話す。「各国はDR-TB感染者を対象に、流通しているなかで最も有効性が高い薬を用いて治療を拡大し始めるべきです。しかしデラマニドは現在、値段が高くて手に入れにくいか、入手自体ができない状態です。大塚製薬は、価格を購入しやすい水準にまで下げるとともに、デラマニドを臨床試験にかけた国全てと、結核の高まん延国で速やかに登録すべきです。もし人びとがデラマニドを手に入れられなければ、この有望な新薬も実質的には無価値となります」
これまで実際に受け取ったのは世界で180人だけ
推定によると、毎年新たにDR-TBに進行する人びとの3分の2にあたる50万人弱の患者が、デラマニド投与の基準を満たしており、よい効果を期待できる。だが、承認取得から2年経過した今も、この新薬を使った治療を受けられた人は180人にとどまる。
ブリグデン医師は「大塚製薬は、デラマニドによって命が救われる人びとにこの薬が行きわたることを優先すべきです。あらゆる努力によってできるだけ多くの人がこの有望な新規治療薬の恩恵を受けられるようにすべきですが、残念ながら現在の状況はそのようになっていません」と話す。
MSFは結核治療に30年間携わり、MDR-TB治療は1999年に開始。DR-TB治療を行うNGOとしては最も大きな団体の1つ。MSFは2014年、2万3000人以上の結核患者を治療し、このうちDR-TB感染患者は1800人にのぼった。MSFの活動の中でデラマニドの使用を拡大することを目指しており、2015年12月にはMSFの活動と合同プロジェクト「endTB partnership」用にデラマニドの寄贈を受けた(http://www.msf.or.jp/information/detail/info_2768.html)。