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いま再注目の文筆家が、資本主義を支える〈神話〉を解体する! (木澤佐登志『失われた未来を求めて』1/27発売)

『ダークウェブ・アンダーグラウンド』『ニックランドと新反動主義』『闇の自己啓発』の著者が、思想、文学、映画、音楽、サブカルチャーを横断し、資本主義の外部を構想する。

株式会社大和書房(本社:東京都文京区、代表取締役:佐藤 靖)は『失われた未来を求めて』(木澤佐登志 著)を2022年1月27日に発売いたします。





話題のWEB連載に約7万字の加筆を加えて書籍化!

不断に適応を求め続ける現代のシステムは、人びとに憂鬱症と無力感をもたらしながら、揺るぎなく存在するように思える。本書の試みは、カウンターカルチャーやヒッピームーブメントなど、60年代に宿っていた可能性を中心に光を当てながら、資本主義を支える神話を解体し、〈世界〉の可塑性を示すものである。

本書「はじめに」 より
〈未来〉は失われている。〈未来〉は私たちの手からこぼれ落ちている。グローバリゼーションの加速と金融危機がもたらした経済格差は拡大の一途をたどっている。富は上位1%に集中し、中間層の没落はトランプ大統領の誕生に象徴されるように、アメリカ社会の深刻な分断を招いた。地球環境の破壊はすでに無視しえないレベルに差し掛かっている。そしてコロナ禍は、こうした世界を覆う閉塞感に拍車をかけた。観光業や飲食業は壊滅的な打撃を被り、非正規雇用者の大量解雇など、富裕層と貧困層の二極化はとどまるところを知らない。人々は、この出口の見えない鬱屈とした閉塞感の中で、疲弊し、精神を病んでいく。
(中略)
現在を特徴づけるノー・フューチャーな閉塞感は、取りも直さず「資本主義の〈外部〉を想像することができない」という閉塞感でもある。疎外されていない世界、言い換えれば資本に汚染されていない原始的な楽園と、その場所への単純な回帰をファンタジーとして退けるのであれば、私たちは抜き差しならない袋小路に閉じ込められることになる。〈外部〉へと通じる出口の不在。「別の世界が可能である」という信念の失効は、資本主義が要請する酷薄な現実へのニヒリスティックな適応以外に何ももたらさない。
(中略)
過去の記憶の――あるいは存在しない記憶の亡霊が私たちを呼んでいる。だがその顔は見えない。かくして、私たちは正体のわからない亡霊に誘われて、マーク・フィッシャーとルイス・キャロルを導きの糸としながら、記憶のジャンクヤードへと赴く。堆積した歴史と記憶と夢の残骸、その中から断片を慎重に拾い上げる作業。それらを再配置することで、記憶の諸断片が新たな星座=布置(コンステレーション)を描き出す。願わくば、そこに失われた〈未来〉の痕跡が見出されんことを。

【デザイン】
装丁:原条令子デザイン室
挿画:鐘本幸穂(GREEN-EYED CREATION)

【フェア】
ブックファースト新宿店にて
選書フェア「木澤佐登志 書架記」が開催中!
(*冊数限定サイン本、付録の小冊子あり)

【目次】

Chapter1 資本主義リアリズムと失われた未来

1 未来の誕生と喪失
*ルイス・キャロルは黄金色の午後の夢を見たか
*カール・マルクスと胎動する〈革命〉
*虚構としての未来
*〈未来=子ども〉の光と闇
*エーデルマンと致死的な〈未来〉

2 資本主義リアリズムの起源
*チリ・クーデターが崩壊させたもの
*サイバネティクスと恒常性
*サイバーシン計画――テクノロジーによる社会民主主義
*新自由主義の実験場

3 未来を幻視する――失われた連帯のために
*シティズンシップの崩壊
*道化と超人――ジョーカーの虚ろな哄笑
*持たざる者たちの連帯と叛乱?
*ポピュリズムは「解放」か「抑圧」か
*人びとを繫ぐ共同体を求めて
*タランティーノと失われた未来――ヒッピーの死、テト攻勢、シャロン・テート

4 カウンターカルチャーの亡霊――祓われた六〇年代
*濁りきったサイケデリア
*憑在論的メランコリー
*保守化したカウンターカルチャーの担い手たち
*反体制と消費資本主義――ジョセフ・ヒース
*ユートピアの再構築――ヘルベルト・マルクーゼ
*意識変革に対するシニシズム
*資本主義リアリズムに罹患した世界

Chapter2 アシッド・コミュニズム――再魔術化と反脱魔術化

1 マーク・フィッシャーと再魔術化する世界
*アシッド・コミュニズムとは何か
*脱魔術化――世界からの疎外、生の意味の喪失
*再魔術化――ニューエイジ運動、あるいは世界変革という名の自己変容
*反脱魔術化――カウンターカルチャーと消費文化の断絶

2 近代からの逃走――スイスに胚胎したカウンター思想の源流
*マックス・ウェーバーの死
*脱魔術化への疑義
*異端者たちの狂騒――キャバレー・ヴォルテール
*「真理の山」と「魔の山」――カウンター思想の結節点
*ダレスとユングの邂逅

3 LSDと知覚の扉―― 帰郷、あるいは自己変容による革命
*LSDの誕生
*ホフマンとユンガーのトリップ・セッション
*現実の複数性と超越的現実
*MKウルトラ計画
*再プログラミングとしてのLSD
*LSDから除かれた近代批判

4 霊的資本主義――スピリチュアル、自己啓発、スマートドラッグ
*世界に纏わせたフィルターを払う
*エサレン研究所とアブラハム・マズロー
*サイケデリクスからニューエイジへ
*ハイパフォーマンスのためのスマートドラッグ
*一八世紀の「大覚醒」、六〇年代の「トリップフェスティバル」
*ドラッグによるインナートリップから、サイバー空間へのジャックインへ


Chapter3 変性する世界

1 反知性主義の起源を求めて――大覚醒、食物中毒、集団幻想
*知の奪還――大衆に開かれたLSD
*反知性主義はアメリカ史に通底する
*信仰復興運動と反知性主義
*ピューリタニズムと民主主義を結ぶもの

2 蜂起を生きる――カント、フーコー、フィッシャー
*世界という不条理の〈外部〉
*フーコー 、ドラッグ、快楽
*イグジットとしての「啓蒙」
*批判――境界の恣意性を示す
*不服従と霊性

3 議事堂の中のシャーマン――虚構の時代の陰謀論
*世界のディズニーランド化
*代替現実ゲーム
*大きな物語との一体化
*Qアノンの論理システム
*瞬間のシナリオを生きるポストモダン
*自己啓発としての陰謀論
*マルチビジネスを彩るパステルQアノン
*議事堂の中のシャーマン

4 可塑的な〈世界〉へ――資本主義リアリズムからの解放
*能力主義社会が追いやる人びと
*自己責任のメンタルヘルス――マネジメントとレジリエンス
*鬱は資本主義に固有の病である
*魔術的自立主義と自己啓発
*世界の可塑性――反脱魔術化としてのスピノザ主義


Chapter4 共同体と陶酔――反脱魔術化の身体に星が降るとき

1 否定と治癒 ――逸脱者たちの目覚め
*資本主義はなぜ健常でいられるか
*幻想となった〈外部〉
*生権力 ――規律から生政治へ
*規範というファクター
*異常と正常の連続性
*精神疾患をラベリングする感情管理社会
*包摂は誰のためか
*治癒としての否定性

2 痙攣する身体
*魔女狩りと資本主義
*搾取される身体――生殖機械と労働機械
*生産性――現代社会に通底する優生思想
*抵抗と痙攣――身体の反脱魔術化
*適応不全を知らせるもの

3 鏡の牢獄――既知と自己の乱反射
*個人を規定するアーキテクチャ
*ナッジは自由を制約するのか
*最適化する環境、偶然性の喪失
*自由意志と責任

4 それでも未来は長く続く
*当事者研究――現代社会へのアンチ・テーゼ
*障害学とクィア理論――異なる未来を構想する
*共に在る意味
*公的空間の再構築
*新たな始まり――見せかけの必然性を解体する
*照応し合う身体と宇宙
[画像: https://prtimes.jp/i/33602/339/resize/d33602-339-e48e912228d418cad9ef-0.jpg ]


【著者略歴】
木澤 佐登志(きざわ・さとし)
1988年生まれ。文筆家。思想、ポップカルチャー、アングラカルチャーの諸相を領域横断的に分析、執筆する。 著書に『ダークウェブ・アンダーグラウンド――社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』(イースト・プレス)、『ニック・ランドと新反動主義――現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』(星海社新書)、共著に『闇の自己啓発』(早川書房)、『異常論文』(ハヤカワ文庫)がある。『SFマガジン』にて「さようなら、世界――〈外部〉への遁走論」を連載する。

【書籍概要】
書名:失われた未来を求めて
著者:木澤 佐登志 著
出版年月日:2022/1/27
判型・ページ数: 四六判・344ページ
定価:2200円(税込)
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