「社長の後継ぎが見つからない…」後継者がおらず倒産した企業、2021年は過去最多を更新
[22/01/19]
提供元:PRTIMES
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事業承継の「2025年問題」を前に課題は一段と鮮明に
帝国データバンクは2021年に発生した「後継者難倒産」の件数を集計し、分析を行った。
ポイント
2021年の倒産件数は「歴史的低水準」となった一方で、後継者難倒産は過去最多を更新
業種別では製造業・サービス業が過去最多 「後継者難倒産率」は製造業が唯一の1割超
事業承継における「2025年問題」は目前、経営者の不測の事態にも耐えうる早期の準備がカギに
後継者の不在や事業承継の失敗などが主な原因となり、事業の継続見込みが立たなくなったことによって生じる「後継者難倒産」。帝国データバンクの調査では、2021年に発生した後継者難倒産は466件となり、調査を開始した2013年以降で過去最多を更新した。3年連続で450件を上回り、高水準での推移が続いている。
[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/404/resize/d43465-404-e55c0e405d24bb3cd722-0.jpg ]
コロナ禍2年目となった2021年における倒産件数は、前年比23.0pt減少の6015件となった。いわゆる「ゼロゼロ融資」に代表される官民金融機関による積極的な資金供給策やコロナ対応の補助金などがさまざまに講じられたこともあり、1966年に次いで過去3番目に少ない半世紀ぶりの「歴史的低水準」を記録した。そうした現状にも関わらず後継者難倒産はハイペースで発生し続けており、全体の倒産件数に占める割合を表す「後継者難倒産率」は7.7%と前年から1.9pt増加。従来から抱える後継者問題による倒産リスクは、これまで以上に浮き彫りとなっている。
業種別では製造業・サービス業が過去最多「後継者難倒産率」は製造業が唯一の1割超
業種別でみると、製造業(83件、前年比20.3pt増)とサービス業(84件、同33.3pt増)がそれぞれ過去最多となった。特に製造業では、後継者難倒産率が12.6%と全業種中で唯一の1割台となった。製造業は元来より工場や設備への投資負担が大きく、借入金などが増えることで有利子負債月商倍率が高くなる傾向がある。そこへ新型コロナによる業績低迷によってさらに厳しい資金繰りを強いられ、後継者難の解決も見込めないことが重なり事業を畳む決断に至る「あきらめ型倒産」のケースが散見される。実際に福井県の化学繊維機械製造業者は、設備投資などに必要な資金を借入金に依存していたなかで新型コロナの影響で受注キャンセルが生じるなど業績不振に陥り、後継者不在が追い打ちとなり事業継続を断念した。
[画像2: https://prtimes.jp/i/43465/404/resize/d43465-404-b1ca3cc49087bedc0b1e-1.jpg ]
また、他業種より後継者不在率が高く深刻な後継者不足に陥っている建設業は106件発生し、件数としては業種中で最も多く3年連続で増加している。特徴として、建設業許可の取得や更新、引継ぎをする際に経営業務管理責任者と専任技術者の在籍という要件を満たす必要があり、これらに該当する者と認められるためには一定の経験年数を有することが条件となっている。建設業は事業承継を行う際の後継者への移行期間が他業種より長期を要する傾向がみられるが、こうした制度がその遠因となっている可能性も考えられる。
事業承継における「2025年問題」は目前、経営者の不測の事態にも耐えうる早期の準備がカギに
いわゆる団塊の世代が後期高齢者である75歳以上となり日本に超高齢化社会が訪れるタイミングを指し、雇用や医療、福祉などさまざまな分野に影響を及ぼすとされる「2025年問題」。社長の高齢化も進行し続けていることもあり事業承継の側面でも例外ではなく、実際に2017年12月には経済産業省と中小企業庁が、社長の高齢化や後継者難の現状を放置した場合には2025年までに雇用やGDPなど多大な経済損失が発生すると試算。区切りの年まで残り3年となるなかで後継者難倒産件数が過去最多となったことは、こうした問題が今後一段と深刻になりかねないことを示唆している。
一方で、明るい兆しも見え始めている。帝国データバンクの調査では2021年の後継者不在率は61.5%となり、依然として6割台と高水準にあるものの4年連続で低下し、調査を開始した2011年以降で最低となった。改善幅も3.6ptと大きく改善し、後継者不在の状況は徐々に快方に向かっている結果が表れた。
[画像3: https://prtimes.jp/i/43465/404/resize/d43465-404-b41b2100c2bcc675261e-2.jpg ]
また、国内企業のM&A実施件数は増加傾向にある。(株)日本M&Aセンター、(株)ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ(株)の中小企業M&A仲介大手3社による国内M&A実施件数は、2013年の182社から2020年には760社まで増加。また、事業承継・引継ぎ支援センターにおける件数も同33件から1379件となり、右肩上がりで増加している。
[画像4: https://prtimes.jp/i/43465/404/resize/d43465-404-dc3cd5f069c3dfa6fa87-3.jpg ]
このように後継者不在率の低下やM&A実施件数の増加など、官民ともに進めている事業承継に対するアプローチが着実に奏功し始めているなかで、後継者難倒産は過去最多という明暗の両面が同時に表れている。今後も事業承継に対する引き合いは強いと予想されるが、無事に引継ぎが完了する企業は増える一方で、代表者の病気・死亡や後継者候補などの退職といった「不測の事態」に対応しきれず事業破綻に追い込まれる後継者難倒産は、高水準で推移する可能性が高い。
事業承継をする際に引き継がれる項目は経営権や財産のみならず、ノウハウや許認可、取引先との信頼関係など多岐にわたる。そうした背景もあり、帝国データバンクが企業約1万社を対象に実施したアンケート調査では、後継者への移行期間としては企業の半数以上が「3年以上」と回答。後継者不在のみならず、十分な引継ぎや育成には相応の期間がともなうことにも留意が必要だ。そうした部分に焦ることなく時間をかけられるよう、可能な限り早期から準備を講じることが後継者難倒産を防ぐための第一歩となる。
帝国データバンクは2021年に発生した「後継者難倒産」の件数を集計し、分析を行った。
ポイント
2021年の倒産件数は「歴史的低水準」となった一方で、後継者難倒産は過去最多を更新
業種別では製造業・サービス業が過去最多 「後継者難倒産率」は製造業が唯一の1割超
事業承継における「2025年問題」は目前、経営者の不測の事態にも耐えうる早期の準備がカギに
後継者の不在や事業承継の失敗などが主な原因となり、事業の継続見込みが立たなくなったことによって生じる「後継者難倒産」。帝国データバンクの調査では、2021年に発生した後継者難倒産は466件となり、調査を開始した2013年以降で過去最多を更新した。3年連続で450件を上回り、高水準での推移が続いている。
[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/404/resize/d43465-404-e55c0e405d24bb3cd722-0.jpg ]
コロナ禍2年目となった2021年における倒産件数は、前年比23.0pt減少の6015件となった。いわゆる「ゼロゼロ融資」に代表される官民金融機関による積極的な資金供給策やコロナ対応の補助金などがさまざまに講じられたこともあり、1966年に次いで過去3番目に少ない半世紀ぶりの「歴史的低水準」を記録した。そうした現状にも関わらず後継者難倒産はハイペースで発生し続けており、全体の倒産件数に占める割合を表す「後継者難倒産率」は7.7%と前年から1.9pt増加。従来から抱える後継者問題による倒産リスクは、これまで以上に浮き彫りとなっている。
業種別では製造業・サービス業が過去最多「後継者難倒産率」は製造業が唯一の1割超
業種別でみると、製造業(83件、前年比20.3pt増)とサービス業(84件、同33.3pt増)がそれぞれ過去最多となった。特に製造業では、後継者難倒産率が12.6%と全業種中で唯一の1割台となった。製造業は元来より工場や設備への投資負担が大きく、借入金などが増えることで有利子負債月商倍率が高くなる傾向がある。そこへ新型コロナによる業績低迷によってさらに厳しい資金繰りを強いられ、後継者難の解決も見込めないことが重なり事業を畳む決断に至る「あきらめ型倒産」のケースが散見される。実際に福井県の化学繊維機械製造業者は、設備投資などに必要な資金を借入金に依存していたなかで新型コロナの影響で受注キャンセルが生じるなど業績不振に陥り、後継者不在が追い打ちとなり事業継続を断念した。
[画像2: https://prtimes.jp/i/43465/404/resize/d43465-404-b1ca3cc49087bedc0b1e-1.jpg ]
また、他業種より後継者不在率が高く深刻な後継者不足に陥っている建設業は106件発生し、件数としては業種中で最も多く3年連続で増加している。特徴として、建設業許可の取得や更新、引継ぎをする際に経営業務管理責任者と専任技術者の在籍という要件を満たす必要があり、これらに該当する者と認められるためには一定の経験年数を有することが条件となっている。建設業は事業承継を行う際の後継者への移行期間が他業種より長期を要する傾向がみられるが、こうした制度がその遠因となっている可能性も考えられる。
事業承継における「2025年問題」は目前、経営者の不測の事態にも耐えうる早期の準備がカギに
いわゆる団塊の世代が後期高齢者である75歳以上となり日本に超高齢化社会が訪れるタイミングを指し、雇用や医療、福祉などさまざまな分野に影響を及ぼすとされる「2025年問題」。社長の高齢化も進行し続けていることもあり事業承継の側面でも例外ではなく、実際に2017年12月には経済産業省と中小企業庁が、社長の高齢化や後継者難の現状を放置した場合には2025年までに雇用やGDPなど多大な経済損失が発生すると試算。区切りの年まで残り3年となるなかで後継者難倒産件数が過去最多となったことは、こうした問題が今後一段と深刻になりかねないことを示唆している。
一方で、明るい兆しも見え始めている。帝国データバンクの調査では2021年の後継者不在率は61.5%となり、依然として6割台と高水準にあるものの4年連続で低下し、調査を開始した2011年以降で最低となった。改善幅も3.6ptと大きく改善し、後継者不在の状況は徐々に快方に向かっている結果が表れた。
[画像3: https://prtimes.jp/i/43465/404/resize/d43465-404-b41b2100c2bcc675261e-2.jpg ]
また、国内企業のM&A実施件数は増加傾向にある。(株)日本M&Aセンター、(株)ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ(株)の中小企業M&A仲介大手3社による国内M&A実施件数は、2013年の182社から2020年には760社まで増加。また、事業承継・引継ぎ支援センターにおける件数も同33件から1379件となり、右肩上がりで増加している。
[画像4: https://prtimes.jp/i/43465/404/resize/d43465-404-dc3cd5f069c3dfa6fa87-3.jpg ]
このように後継者不在率の低下やM&A実施件数の増加など、官民ともに進めている事業承継に対するアプローチが着実に奏功し始めているなかで、後継者難倒産は過去最多という明暗の両面が同時に表れている。今後も事業承継に対する引き合いは強いと予想されるが、無事に引継ぎが完了する企業は増える一方で、代表者の病気・死亡や後継者候補などの退職といった「不測の事態」に対応しきれず事業破綻に追い込まれる後継者難倒産は、高水準で推移する可能性が高い。
事業承継をする際に引き継がれる項目は経営権や財産のみならず、ノウハウや許認可、取引先との信頼関係など多岐にわたる。そうした背景もあり、帝国データバンクが企業約1万社を対象に実施したアンケート調査では、後継者への移行期間としては企業の半数以上が「3年以上」と回答。後継者不在のみならず、十分な引継ぎや育成には相応の期間がともなうことにも留意が必要だ。そうした部分に焦ることなく時間をかけられるよう、可能な限り早期から準備を講じることが後継者難倒産を防ぐための第一歩となる。