深刻さ増す企業の過剰債務、有利子負債月商倍率は30.13倍まで増加 倒産件数減少も高まる倒産リスク
[22/01/31]
提供元:PRTIMES
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旅館・ホテル経営業者の動向調査 (2021)
新型コロナウイルスの感染拡大が本格化してからもうすぐ丸2年を迎えようとしている。2年目を迎えた昨年は、1年の半分以上が緊急事態宣言下となったが、年の後半からは、ワクチンの普及、感染者数の減少もあり旅行や帰省する人が増えた。
2022年、足元の状況は国内でオミクロン株の感染拡大が本格化しており、一日あたりの感染者数が過去最多を更新している状況が続いている。旅館・ホテル業者にとって一縷の望みであった「Go To トラベル」再開への機運も高まっていたが、再開時期が未定となるなど、コロナの直接的な影響を受けてしまう旅館・ホテル経営業者にとって再び厳しい局面を迎える状況だ。
帝国データバンクは、旅館・ホテル業者の倒産および、業界動向について分析を行った。
<調査結果(要旨)>
倒産件数は70件で、前年比40.7%減。休廃業・解散は174件で、過去5年で最多
事業者別収入高は2.9兆円。損益は6028億円の大幅赤字
有利子負債月商倍率は30.13倍に増加。年商規模1億円未満は55.59倍と企業の過剰債務の深刻さが顕著に
景況感は緩やかな回復基調も、オミクロン株の動向で先行き懸念
旅館・ホテルの倒産は2000年来最大の下げ幅も休廃業・解散は過去5年で最多
2021年(1〜12月)の旅館・ホテル業の倒産件数は70件。前年の118件から40.7%減少となった。対前年比でみると、2000年以来最大の下げ幅となった。金融機関によるコロナ融資や雇用調整助成金など各種支援策で持ちこたえている格好だ。また、2020年後半の「Go To トラベル」による一時的な需要回復も倒産減少に寄与した。
[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/415/resize/d43465-415-9c47e9043c27fbf80520-0.png ]
一方、休廃業・解散の件数は174件と前年から43件(32.8%)増加、過去5年で最多となった。新型コロナウイルス感染収束が見通せないなかで、事業継続を断念する企業が多くみられる。
[画像2: https://prtimes.jp/i/43465/415/resize/d43465-415-716066f6a0392f2f8bb0-1.png ]
収入高・損益ともに大幅悪化
2020年度(2020年4月〜2021年3月)までの旅館・ホテル業者の市場動向(事業者収入高、当期純利益ベース)をみると、2020年度の収入高は約2.9兆円となった。2018年度の約5.1兆円との比較では、43.1%減と大幅に減収。新型コロナウイルス感染拡大の影響でインバウンド需要は喪失し、国内においても緊急事態宣言などの外出自粛が大打撃となった。また、損益動向をみると営業段階で赤字となる企業が80%を超え、2020年度は最終で6028億円の赤字となり、雇用調整助成金などの支援効果も薄く、業界の苦境が鮮明になった。
[画像3: https://prtimes.jp/i/43465/415/resize/d43465-415-e95659dde015e289215f-6.png ]
業績改善は2割と増加傾向も、半数以上の企業が横ばい以下
旅館・ホテル運営業者の業況(収入高)動向をみると、2021年12月時点では改善とする企業が26.8%と同年3月時点と比較して増加傾向にある。改善要因として、「Go Toトラベル」ほか、ワクチン接種後の感染者数の減少による旅行需要の回復が寄与した。
[画像4: https://prtimes.jp/i/43465/415/resize/d43465-415-6a8f62b5c5a534631a96-7.png ]
一方、減少企業は23.6%と構成比としては大幅に減少しているものの、横ばいが約半数に上り、業界全体として本格的な改善には至っていない。
有利子負債月商倍率は年々増加。年商1億円未満は驚異の55.56倍
旅館・ホテル業者の財務内容において、月商に対し、有利子負債(借入金など)が何倍にあたるのかを示す有利子負債月商倍率は、コロナ前の2019年度は全体平均で12.45倍となっていたが、2020年度はコロナ融資など借入金増加により、同倍率は21.65倍と大きく増加。また、2021年12月時点では30.13倍と30倍を超えた。業態別内訳をみると、旅館は30.46倍とビジネスホテル、リゾートホテルなどと比べて過剰債務が顕著となった。
もともと旅館・ホテル業は装置産業であり、他業種と比べて有利子負債月商倍率は高い傾向にあるが、規模別にみたとき年商1億円未満企業の有利子負債月商倍率が55.56倍と年商規模が小さい企業ほど過剰債務感を抱えている常に厳しい状況だ。2021年3月に民事再生法の適用を申請した(株)ビスタホテルマネジメントの倒産時の有利子負債月商倍率は、前年に比べて8倍に増加していたように急速な借入金増加が倒産に至るケースもある。
[画像5: https://prtimes.jp/i/43465/415/resize/d43465-415-1bfc05bfc312e9267d1e-8.png ]
有利子負債月商倍率を地域別にみると、観光地として人気がある地方において倍率は高い傾向にある。特にインバウンド需要が旺盛であった京都府、奈良県が位置する「近畿」が52.85倍とトップ。次いで「九州・沖縄」(32.23倍)、「中国・四国」(29.23倍)と続く。人気スポットの多い西日本、九州・沖縄の過剰債務が顕著となった。
[画像6: https://prtimes.jp/i/43465/415/resize/d43465-415-6b2ba5e9308b39002b71-9.png ]
「Go To トラベル」で景況感は回復を見込むも、オミクロン株の感染拡大を警戒
旅館・ホテル業の景況は緩やかな回復基調にある。1月発表の景気動向調査(12月)で、1年後の先行きは基準となる50を超える見通しだ。しかし、これには「Go Toトラベル」などへの期待感の要素が含まれている。オミクロン株など感染状況次第では再び景気の悪化局面へとつながっていく可能性があるため、楽観視はできない。
本調査では、倒産件数が前年比から大きく減少している一方、かねてから業界の課題といわれる過剰債務の深刻さがより一層浮き彫りとなった。設備投資意欲DIも景況感と同様に回復傾向にあるが、過剰債務がさらに経営を圧迫することになると、施設の改修など設備投資資金を調達できない状況となるため、今年の動向に注視すべきだ。
旅館・ホテル業界は、経済を支える観光資源といわれる。しかし、休廃業・解散件数が増加している状況に鑑みれば、今後、過剰債務問題に苦しむ企業の淘汰が進む可能性が考えられる。
新型コロナウイルスの感染拡大が本格化してからもうすぐ丸2年を迎えようとしている。2年目を迎えた昨年は、1年の半分以上が緊急事態宣言下となったが、年の後半からは、ワクチンの普及、感染者数の減少もあり旅行や帰省する人が増えた。
2022年、足元の状況は国内でオミクロン株の感染拡大が本格化しており、一日あたりの感染者数が過去最多を更新している状況が続いている。旅館・ホテル業者にとって一縷の望みであった「Go To トラベル」再開への機運も高まっていたが、再開時期が未定となるなど、コロナの直接的な影響を受けてしまう旅館・ホテル経営業者にとって再び厳しい局面を迎える状況だ。
帝国データバンクは、旅館・ホテル業者の倒産および、業界動向について分析を行った。
<調査結果(要旨)>
倒産件数は70件で、前年比40.7%減。休廃業・解散は174件で、過去5年で最多
事業者別収入高は2.9兆円。損益は6028億円の大幅赤字
有利子負債月商倍率は30.13倍に増加。年商規模1億円未満は55.59倍と企業の過剰債務の深刻さが顕著に
景況感は緩やかな回復基調も、オミクロン株の動向で先行き懸念
旅館・ホテルの倒産は2000年来最大の下げ幅も休廃業・解散は過去5年で最多
2021年(1〜12月)の旅館・ホテル業の倒産件数は70件。前年の118件から40.7%減少となった。対前年比でみると、2000年以来最大の下げ幅となった。金融機関によるコロナ融資や雇用調整助成金など各種支援策で持ちこたえている格好だ。また、2020年後半の「Go To トラベル」による一時的な需要回復も倒産減少に寄与した。
[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/415/resize/d43465-415-9c47e9043c27fbf80520-0.png ]
一方、休廃業・解散の件数は174件と前年から43件(32.8%)増加、過去5年で最多となった。新型コロナウイルス感染収束が見通せないなかで、事業継続を断念する企業が多くみられる。
[画像2: https://prtimes.jp/i/43465/415/resize/d43465-415-716066f6a0392f2f8bb0-1.png ]
収入高・損益ともに大幅悪化
2020年度(2020年4月〜2021年3月)までの旅館・ホテル業者の市場動向(事業者収入高、当期純利益ベース)をみると、2020年度の収入高は約2.9兆円となった。2018年度の約5.1兆円との比較では、43.1%減と大幅に減収。新型コロナウイルス感染拡大の影響でインバウンド需要は喪失し、国内においても緊急事態宣言などの外出自粛が大打撃となった。また、損益動向をみると営業段階で赤字となる企業が80%を超え、2020年度は最終で6028億円の赤字となり、雇用調整助成金などの支援効果も薄く、業界の苦境が鮮明になった。
[画像3: https://prtimes.jp/i/43465/415/resize/d43465-415-e95659dde015e289215f-6.png ]
業績改善は2割と増加傾向も、半数以上の企業が横ばい以下
旅館・ホテル運営業者の業況(収入高)動向をみると、2021年12月時点では改善とする企業が26.8%と同年3月時点と比較して増加傾向にある。改善要因として、「Go Toトラベル」ほか、ワクチン接種後の感染者数の減少による旅行需要の回復が寄与した。
[画像4: https://prtimes.jp/i/43465/415/resize/d43465-415-6a8f62b5c5a534631a96-7.png ]
一方、減少企業は23.6%と構成比としては大幅に減少しているものの、横ばいが約半数に上り、業界全体として本格的な改善には至っていない。
有利子負債月商倍率は年々増加。年商1億円未満は驚異の55.56倍
旅館・ホテル業者の財務内容において、月商に対し、有利子負債(借入金など)が何倍にあたるのかを示す有利子負債月商倍率は、コロナ前の2019年度は全体平均で12.45倍となっていたが、2020年度はコロナ融資など借入金増加により、同倍率は21.65倍と大きく増加。また、2021年12月時点では30.13倍と30倍を超えた。業態別内訳をみると、旅館は30.46倍とビジネスホテル、リゾートホテルなどと比べて過剰債務が顕著となった。
もともと旅館・ホテル業は装置産業であり、他業種と比べて有利子負債月商倍率は高い傾向にあるが、規模別にみたとき年商1億円未満企業の有利子負債月商倍率が55.56倍と年商規模が小さい企業ほど過剰債務感を抱えている常に厳しい状況だ。2021年3月に民事再生法の適用を申請した(株)ビスタホテルマネジメントの倒産時の有利子負債月商倍率は、前年に比べて8倍に増加していたように急速な借入金増加が倒産に至るケースもある。
[画像5: https://prtimes.jp/i/43465/415/resize/d43465-415-1bfc05bfc312e9267d1e-8.png ]
有利子負債月商倍率を地域別にみると、観光地として人気がある地方において倍率は高い傾向にある。特にインバウンド需要が旺盛であった京都府、奈良県が位置する「近畿」が52.85倍とトップ。次いで「九州・沖縄」(32.23倍)、「中国・四国」(29.23倍)と続く。人気スポットの多い西日本、九州・沖縄の過剰債務が顕著となった。
[画像6: https://prtimes.jp/i/43465/415/resize/d43465-415-6b2ba5e9308b39002b71-9.png ]
「Go To トラベル」で景況感は回復を見込むも、オミクロン株の感染拡大を警戒
旅館・ホテル業の景況は緩やかな回復基調にある。1月発表の景気動向調査(12月)で、1年後の先行きは基準となる50を超える見通しだ。しかし、これには「Go Toトラベル」などへの期待感の要素が含まれている。オミクロン株など感染状況次第では再び景気の悪化局面へとつながっていく可能性があるため、楽観視はできない。
本調査では、倒産件数が前年比から大きく減少している一方、かねてから業界の課題といわれる過剰債務の深刻さがより一層浮き彫りとなった。設備投資意欲DIも景況感と同様に回復傾向にあるが、過剰債務がさらに経営を圧迫することになると、施設の改修など設備投資資金を調達できない状況となるため、今年の動向に注視すべきだ。
旅館・ホテル業界は、経済を支える観光資源といわれる。しかし、休廃業・解散件数が増加している状況に鑑みれば、今後、過剰債務問題に苦しむ企業の淘汰が進む可能性が考えられる。