物流改革はモビリティのエネルギー効率化がカギ 〜物流の進化を目指すスタートアップ企業と研究プロジェクト〜
[23/11/24]
提供元:PRTIMES
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アスタミューゼ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 永井歩)は、物流のエネルギー効率化、脱炭素化に関する技術領域において、弊社の所有するイノベーションデータベース(論文・特許・スタートアップ・グラントなどのイノベーション・研究開発情報)を網羅的に分析し、動向をレポートとしてまとめました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/7141/438/resize/d7141-438-455a6697b37dbe447aa5-4.jpg ]
はじめに
物流業界は、重要な変革期を迎えています。EUのグリーンディール(注1)や、日本のカーボンニュートラル宣言(注2)など、世界各国の政策に後押しされ、エネルギー効率の向上と環境影響の低減、低炭素化への対応が必須となっています。
注1:https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_19_6691
注2:https://logiiiii.f-logi.com/series/basiclogi/carbonneutral/
多くの企業が電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)を導入し、物流車両の電動化を急速に進めています。自動運転技術の研究開発にあわせて、効率的なルート選定による燃料消費の削減も期待されています。
エネルギー管理システム(EMS)やスマートグリッド技術の導入により、エネルギー使用の最適化とコスト削減が進んでいます。機械学習をはじめとしたAI技術やIoT技術とビッグデータ分析を活用することで、物流プロセス全体の可視化と効率化も実現します。サプライチェーン全体の環境影響を把握し改善することが、持続可能な物流を実現するために重要です。ブロックチェーン技術の活用することで、サプライチェーンのより精密な解析が可能となり、共有過程や管理を最適化し、より効率的な物流システムの構築が期待されます。
物流業界におけるエネルギー効率化と脱炭素化の取り組みについて、アスタミューゼ独自のデータベースを活用し、スタートアップ企業と研究プロジェクトの動向をレポートします。
物流に関するスタートアップ企業の動向
スタートアップ企業は、新しい技術で社会や既存プレイヤーにインパクトを与える企業であり、その資金調達額は社会の期待値を反映していると考えることができます。
図1は2012年から2020年の10年間における、スタートアップ企業設立件数と資金調達額の推移です。
[画像2: https://prtimes.jp/i/7141/438/resize/d7141-438-8713ad45da3034c0a32c-0.png ]
資金調達額は2013年以降上昇を続けており、設立数に関しては2017年以降から急増し、2020年にピークを迎えています。
図2は同時期の国別でのスタートアップ企業設立件数です。
[画像3: https://prtimes.jp/i/7141/438/resize/d7141-438-e02ff79869cf1db120a5-1.png ]
米国がトップ(92社)であり、次に英国、中国の順で並んでいます。事業概要として、モビリティの電動化に関する事例が多く、中でも大型車両の電動化が目立ちます。
以下に、資金調達額上位のスタートアップ企業の一部を紹介いたします。
企業名:Inceptio Technology
http://www.inceptio.ai/
所在国/創業年:中国/2018年
資金調達状況:約1億米ドル
事業概要:自動運転トラックを使用した全国規模の貨物ネットワークを構築。人工知能、新エネルギー技術、物流ビックデータ技術を活用し、物流会社に効率的で安全なソリューションを提供する
企業名:Esmito
https://esmito.com/
所在国/創業年:インド/2019年
資金調達状況:約120万米ドル
事業概要:物流とラストマイルモビリティ業界向けの多様なソリューションを提供。独自のバッテリー分析プラットフォーム、バッテリー管理システム(BMS)を搭載したスマートバッテリー、スワップステーション、車両用のIoT技術等を含み、業界の効率化に貢献する
企業名:AVEVAI(TM)
https://www.avevai.com/
所在国/創業年:シンガポール/2018年
資金調達状況:約100万米ドル
事業概要:自動車、航空、流通業界出身のチームメンバーを持つB2B企業。自社ブランドの商用電気自動車(EV)を製造している。eコマースの急増に対応し、世界中の中小企業に対して、低コスト、高エネルギー効率のコネクティッドの商用電気自動車(CEV)を提供する
物流に関する研究プロジェクトの動向
つぎに物流に関する研究プロジェクトに対するグラント(科研費など競争的研究資金)の動向を示します。グラントのデータには、まだ論文として発表されていない問題や課題にむけた、新しいアプローチ手法や研究事例が記されています。
図3は、2012年以降10年間における物流関連のグラントの、件数上位5か国の動向を示します。ただし、中国はグラントデータの情報開示が不十分なため、今回は集計から除外しています。
[画像4: https://prtimes.jp/i/7141/438/resize/d7141-438-fd3ab42007d070d62ac2-2.png ]
グラントの内容としては大型車両の電動化や自動運転とAIによるルート最適化による物流の高効率化に関する研究が多く見られました。日本は、2012年前後では上位を維持しておりましたが、2020年から減少しています。一方、英国と米国の件数が上昇しています。
図4は各国の年次の研究配布額の推移です。
[画像5: https://prtimes.jp/i/7141/438/resize/d7141-438-8ae857ef0fb769203528-3.png ]
EU、英国、米国の配賦額が近年、上昇しています。欧州は2019年に欧州グリーンディール政策を掲げました。その達成のために関連研究への配布額が上昇していると考えられます。また、米国でも、クリーンエネルギーの移行を強く推進する動きがあり、特にEV・自動運転技術への関心が高く、物流に強く関連しているため、配布額が集まっていると推測できます。日本は配賦額が少なく、小規模な研究プロジェクトが多い印象です。
以下にグラント事例の一部を紹介いたします。
タイトル:SusTainable AiRports, the Green heArT of Europe
機関/企業:IES R&D
グラント名/国:CORDIS/EU
採択年:2021年
配賦額:約2,935万米ドル
概要:スマートモビリティのための多様なハブとして機能する緑の空港を目指し、欧州の航空輸送エコシステムの強化を目的とする。空港のデジタルツインエコシステム、輸送フロー・エネルギー生産、ターミナルの最適化、循環資源管理等の空港全体のシステムの脱炭素化・効率化に関する研究
タイトル:Trident
機関/企業:University of Bath 他
グラント名/国:UKRI/英国
採択年:2021年
配賦額:約1,300万米ドル
概要:トラック・バス等を含む大型車両の脱炭素化技術の開発。燃料電池、代替燃料、車両の内燃機関のパワートレインシステム効率化等の車両コンポーネントの改善技術研究
タイトル:Skyway
機関/企業:Coventry City Council 他
グラント名/国:UKRI/英国
採択年:2022年
配賦額:1,000万米ドル
概要:ドローン等のeVTOL車両を用いた都市間での空輸ハイウェイネットワークの構築。有人・無人航空機が存在する中での安全に都市を横断できる衝突回避技術を活用し、ハードウェアを追加することなく目視外飛行(BVLOS)による完全自動運航を目指した研究
まとめ
物流に関連するスタートアップ企業は、2017年以降に社数・調達資金額が大きく増加しました。モビリティの電動化に関する事例が多く、特に大型車両の電動化に集中しています。
グラントでは大型車両の電動化や自動運転による輸送効率化に関する研究プロジェクトが多く見られます。EVのエネルギー効率化、ドローンを用いた物流システムの構築等の研究も目立ちます。グラントの年次推移からは、脱炭素型の政策がとられているヨーロッパと米国に件数・配賦額の増加が見られます。今後もその傾向が続くでしょう。
物流のエネルギー効率化に関わるEVや自動運転、AI関連技術の研究はこれからも進むと予想され、将来的には、ドローンをはじめとした空輸ネットワークや再生可能エネルギーのみで駆動する物流システムが構築されるかもしれません。
著者:アスタミューゼ株式会社 琴岡匠 博士(工学)
さらなる分析は……
アスタミューゼでは「物流のエネルギー効率化」技術に限らず、様々な先端技術/先進領域における分析を日々おこない、さまざまな企業や投資家にご提供しております。
本レポートでは分析結果の一部を公表しました。分析にもちいるデータソースとしては、最新の政府動向から先端的な研究動向を掴むための各国の研究開発グラントデータをはじめ、最新のビジネスモデルを把握するためのスタートアップ/ベンチャーデータ、そういった最新トレンドを裏付けるための特許/論文データなどがあります。
それら分析結果にもとづき、さまざまな時間軸とプレイヤーの視点から俯瞰的・複合的に組合せて深掘った分析をすることで、R&D戦略、M&A戦略、事業戦略を構築するために必要な、精度の高い中長期の将来予測や、それが自社にもたらす機会と脅威をバックキャストで把握する事が可能です。
また、各領域/テーマ単位で、技術単位や課題/価値単位の分析だけではなく、企業レベルでのプレイヤー分析、さらに具体的かつ現場で活用しやすいアウトプットとしてイノベータとしてのキーパーソン/Key Opinion Leader(KOL)をグローバルで分析・探索することも可能です。ご興味、関心を持っていただいたかたは、お問い合わせ下さい。
コーポレートサイト:https://www.astamuse.co.jp/
お問合せフォーム:https://www.astamuse.co.jp/contact/
お問合せメール:inquiry@astamuse.co.jp
[画像1: https://prtimes.jp/i/7141/438/resize/d7141-438-455a6697b37dbe447aa5-4.jpg ]
はじめに
物流業界は、重要な変革期を迎えています。EUのグリーンディール(注1)や、日本のカーボンニュートラル宣言(注2)など、世界各国の政策に後押しされ、エネルギー効率の向上と環境影響の低減、低炭素化への対応が必須となっています。
注1:https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_19_6691
注2:https://logiiiii.f-logi.com/series/basiclogi/carbonneutral/
多くの企業が電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)を導入し、物流車両の電動化を急速に進めています。自動運転技術の研究開発にあわせて、効率的なルート選定による燃料消費の削減も期待されています。
エネルギー管理システム(EMS)やスマートグリッド技術の導入により、エネルギー使用の最適化とコスト削減が進んでいます。機械学習をはじめとしたAI技術やIoT技術とビッグデータ分析を活用することで、物流プロセス全体の可視化と効率化も実現します。サプライチェーン全体の環境影響を把握し改善することが、持続可能な物流を実現するために重要です。ブロックチェーン技術の活用することで、サプライチェーンのより精密な解析が可能となり、共有過程や管理を最適化し、より効率的な物流システムの構築が期待されます。
物流業界におけるエネルギー効率化と脱炭素化の取り組みについて、アスタミューゼ独自のデータベースを活用し、スタートアップ企業と研究プロジェクトの動向をレポートします。
物流に関するスタートアップ企業の動向
スタートアップ企業は、新しい技術で社会や既存プレイヤーにインパクトを与える企業であり、その資金調達額は社会の期待値を反映していると考えることができます。
図1は2012年から2020年の10年間における、スタートアップ企業設立件数と資金調達額の推移です。
[画像2: https://prtimes.jp/i/7141/438/resize/d7141-438-8713ad45da3034c0a32c-0.png ]
資金調達額は2013年以降上昇を続けており、設立数に関しては2017年以降から急増し、2020年にピークを迎えています。
図2は同時期の国別でのスタートアップ企業設立件数です。
[画像3: https://prtimes.jp/i/7141/438/resize/d7141-438-e02ff79869cf1db120a5-1.png ]
米国がトップ(92社)であり、次に英国、中国の順で並んでいます。事業概要として、モビリティの電動化に関する事例が多く、中でも大型車両の電動化が目立ちます。
以下に、資金調達額上位のスタートアップ企業の一部を紹介いたします。
企業名:Inceptio Technology
http://www.inceptio.ai/
所在国/創業年:中国/2018年
資金調達状況:約1億米ドル
事業概要:自動運転トラックを使用した全国規模の貨物ネットワークを構築。人工知能、新エネルギー技術、物流ビックデータ技術を活用し、物流会社に効率的で安全なソリューションを提供する
企業名:Esmito
https://esmito.com/
所在国/創業年:インド/2019年
資金調達状況:約120万米ドル
事業概要:物流とラストマイルモビリティ業界向けの多様なソリューションを提供。独自のバッテリー分析プラットフォーム、バッテリー管理システム(BMS)を搭載したスマートバッテリー、スワップステーション、車両用のIoT技術等を含み、業界の効率化に貢献する
企業名:AVEVAI(TM)
https://www.avevai.com/
所在国/創業年:シンガポール/2018年
資金調達状況:約100万米ドル
事業概要:自動車、航空、流通業界出身のチームメンバーを持つB2B企業。自社ブランドの商用電気自動車(EV)を製造している。eコマースの急増に対応し、世界中の中小企業に対して、低コスト、高エネルギー効率のコネクティッドの商用電気自動車(CEV)を提供する
物流に関する研究プロジェクトの動向
つぎに物流に関する研究プロジェクトに対するグラント(科研費など競争的研究資金)の動向を示します。グラントのデータには、まだ論文として発表されていない問題や課題にむけた、新しいアプローチ手法や研究事例が記されています。
図3は、2012年以降10年間における物流関連のグラントの、件数上位5か国の動向を示します。ただし、中国はグラントデータの情報開示が不十分なため、今回は集計から除外しています。
[画像4: https://prtimes.jp/i/7141/438/resize/d7141-438-fd3ab42007d070d62ac2-2.png ]
グラントの内容としては大型車両の電動化や自動運転とAIによるルート最適化による物流の高効率化に関する研究が多く見られました。日本は、2012年前後では上位を維持しておりましたが、2020年から減少しています。一方、英国と米国の件数が上昇しています。
図4は各国の年次の研究配布額の推移です。
[画像5: https://prtimes.jp/i/7141/438/resize/d7141-438-8ae857ef0fb769203528-3.png ]
EU、英国、米国の配賦額が近年、上昇しています。欧州は2019年に欧州グリーンディール政策を掲げました。その達成のために関連研究への配布額が上昇していると考えられます。また、米国でも、クリーンエネルギーの移行を強く推進する動きがあり、特にEV・自動運転技術への関心が高く、物流に強く関連しているため、配布額が集まっていると推測できます。日本は配賦額が少なく、小規模な研究プロジェクトが多い印象です。
以下にグラント事例の一部を紹介いたします。
タイトル:SusTainable AiRports, the Green heArT of Europe
機関/企業:IES R&D
グラント名/国:CORDIS/EU
採択年:2021年
配賦額:約2,935万米ドル
概要:スマートモビリティのための多様なハブとして機能する緑の空港を目指し、欧州の航空輸送エコシステムの強化を目的とする。空港のデジタルツインエコシステム、輸送フロー・エネルギー生産、ターミナルの最適化、循環資源管理等の空港全体のシステムの脱炭素化・効率化に関する研究
タイトル:Trident
機関/企業:University of Bath 他
グラント名/国:UKRI/英国
採択年:2021年
配賦額:約1,300万米ドル
概要:トラック・バス等を含む大型車両の脱炭素化技術の開発。燃料電池、代替燃料、車両の内燃機関のパワートレインシステム効率化等の車両コンポーネントの改善技術研究
タイトル:Skyway
機関/企業:Coventry City Council 他
グラント名/国:UKRI/英国
採択年:2022年
配賦額:1,000万米ドル
概要:ドローン等のeVTOL車両を用いた都市間での空輸ハイウェイネットワークの構築。有人・無人航空機が存在する中での安全に都市を横断できる衝突回避技術を活用し、ハードウェアを追加することなく目視外飛行(BVLOS)による完全自動運航を目指した研究
まとめ
物流に関連するスタートアップ企業は、2017年以降に社数・調達資金額が大きく増加しました。モビリティの電動化に関する事例が多く、特に大型車両の電動化に集中しています。
グラントでは大型車両の電動化や自動運転による輸送効率化に関する研究プロジェクトが多く見られます。EVのエネルギー効率化、ドローンを用いた物流システムの構築等の研究も目立ちます。グラントの年次推移からは、脱炭素型の政策がとられているヨーロッパと米国に件数・配賦額の増加が見られます。今後もその傾向が続くでしょう。
物流のエネルギー効率化に関わるEVや自動運転、AI関連技術の研究はこれからも進むと予想され、将来的には、ドローンをはじめとした空輸ネットワークや再生可能エネルギーのみで駆動する物流システムが構築されるかもしれません。
著者:アスタミューゼ株式会社 琴岡匠 博士(工学)
さらなる分析は……
アスタミューゼでは「物流のエネルギー効率化」技術に限らず、様々な先端技術/先進領域における分析を日々おこない、さまざまな企業や投資家にご提供しております。
本レポートでは分析結果の一部を公表しました。分析にもちいるデータソースとしては、最新の政府動向から先端的な研究動向を掴むための各国の研究開発グラントデータをはじめ、最新のビジネスモデルを把握するためのスタートアップ/ベンチャーデータ、そういった最新トレンドを裏付けるための特許/論文データなどがあります。
それら分析結果にもとづき、さまざまな時間軸とプレイヤーの視点から俯瞰的・複合的に組合せて深掘った分析をすることで、R&D戦略、M&A戦略、事業戦略を構築するために必要な、精度の高い中長期の将来予測や、それが自社にもたらす機会と脅威をバックキャストで把握する事が可能です。
また、各領域/テーマ単位で、技術単位や課題/価値単位の分析だけではなく、企業レベルでのプレイヤー分析、さらに具体的かつ現場で活用しやすいアウトプットとしてイノベータとしてのキーパーソン/Key Opinion Leader(KOL)をグローバルで分析・探索することも可能です。ご興味、関心を持っていただいたかたは、お問い合わせ下さい。
コーポレートサイト:https://www.astamuse.co.jp/
お問合せフォーム:https://www.astamuse.co.jp/contact/
お問合せメール:inquiry@astamuse.co.jp