ゾンビ企業25万1000社に急増、2011年度に次ぐ2番目の多さ ゾンビ企業率は17.1%に急上昇、前年度比3.6pt増は過去最大
[24/01/27]
提供元:PRTIMES
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「ゾンビ企業」の現状分析(2023年11月末時点の最新動向)
コロナ禍以降、ゾンビ企業が増加している。企業倒産(2023年=8497件)の約30倍まで膨れ上がった企業の“ゾンビ化”が進んだ要因のひとつに、実質無利子・無担保のゼロゼロ融資が挙げられる。2022年9月末時点で約245万件、実行額約43兆円にのぼる資金がコロナ禍で中小企業の資金繰りを支えた半面、足元ではコロナ支援策の反動が顕在化しつつある。なかには、業績改善できないまま事業継続を断念する企業も目立つ。
帝国データバンクでは、これまで2022年7月、8月、12月、2023年1月と、ゾンビ企業(※)の実態をレポートしてきた。今回は2022年度のデータをもとに、最新動向をまとめた。
※ ゾンビ企業の定義は、国際決済銀行(BIS)が定める「ゾンビ企業」の基準に準拠
<調査結果(要旨)>
ゾンビ企業率17.1%に急上昇、過去最大の上昇率
業種別では「小売」、地域別では「東北」がゾンビ企業率トップ
収益力、借り入れ負担は依然厳しく、自己資本比率がさらに悪化
ゾンビ企業数は25万1000社、2011年度(27万4000社)に次ぐ2番目の社数
「経常赤字」かつ「過剰債務」かつ「債務超過」企業、4万1000社
※調査対象:3年連続でICRが1未満、かつ設立10年以上の企業(ゾンビ企業)
※調査期間:2023年11月時点まで
※調査機関:株式会社帝国データバンク
[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-3a842be2fd4d78c6f792-0.jpg ]
ゾンビ企業率17.1%に急上昇、過去最大の上昇率
国際決済銀行(BIS)が定める「ゾンビ企業」の基準である「3年連続でインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満、かつ設立10年以上」の定義に基づき、2022年度のゾンビ企業率を算出した。帝国データバンクが保有する企業財務データベース「COSMOS1」(2023年11月末時点)において、2022年度の財務データが判明している「3年連続でICRが判明、かつ設立10年以上」の企業は10万1478社あった。このうち、「3年連続でICRが1未満、かつ設立10年以上」の企業は1万7387社を数え、この2つの数値をもとにゾンビ企業率を算出すると17.1%にのぼることが判明した。
2007年度以降のゾンビ企業率の推移(下グラフ)をみると、2019年度の10.0%から、コロナ禍で上昇傾向を示していることが分かる。2020年度は11.6%、2021年度は13.5%となり、さらに直近1年で3.6ポイント上昇した。上昇率は調査開始の2007年度以降で最も大きかった。
[画像2: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-53ebc7f9da522d889ee9-0.jpg ]
さらに2022年度の17.1%は過去10年間で最も高く、東日本大震災後の2012年度(17.0%)と同水準。この結果、日本企業全体の約6社に1社で、企業の“ゾンビ化”が進んでいるとの見方もできる。
業種別では「小売」、地域別では「東北」がゾンビ企業率トップ
[画像3: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-f0808dfced227154d3bd-0.jpg ]
2022年度のゾンビ企業率を業種別にみると、「小売」が27.7%と最も高かった。次いで、「運輸・通信」が23.4%、「製造」が17.8%で続いた。2021年度に比べると、全業種でゾンビ企業率が高まっており、これら3業種は全体平均の17.1%を上回った。
[画像4: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-765ea21519d8341e9558-0.jpg ]
従業員数別では、「5人以下」が25.1%で最も高く、「6〜20人以下」が18.7%で続いた。他方、「1000人超」は2.8%と最も低く、総じて従業員数が少なくなるにつれて、ゾンビ企業率が高まる傾向にある。
[画像5: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-bc969266fea8ff9568ff-0.jpg ]
地域別では、「東北」(21.3%)と「中国」(20.2%)がそれぞれ2割を超えた。なかでも「東北」は、東日本大震災後の各種金融支援策の影響もあり、震災から10年経った今もなお借り入れ負担が重荷になっている。他方、「関東」(14.8%)が最も低く、とりわけ「東京」は12.9%と都道府県別で最も低い水準となった。
収益力、借り入れ負担は依然厳しく、自己資本比率がさらに悪化
[画像6: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-a79bd4de68339f958126-0.jpg ]
ゾンビ企業の財務状況について、「売上高経常利益率」「有利子負債月商倍率」「自己資本比率」の指標でそれぞれ平均値を算出し、全企業の平均[1]と比較した。なお、平均値は1%トリム平均(最大値および最小値からそれぞれ1%分を除外)としている。
企業の収益力を示す「売上高経常利益率」をみると、2022年度のゾンビ企業平均は△4.04%となった。全企業平均(2.75%)を6.79ポイント下回っており、2021年度から改善したものの、ゾンビ企業の収益力は依然として低いままであることが分かる。
[画像7: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-2118cf34825c6246d678-0.jpg ]
「有利子負債月商倍率」をみると、2022年度のゾンビ企業平均は9.87倍と、月商の約10倍の債務を抱えていることが分かる。2021年度からわずかに改善傾向はみられるが、ゾンビ企業の有利子負債は全企業平均(5.58倍)の2倍近くにのぼり、依然として過剰債務の状態が続いている。
[画像8: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-51906add3a0e79c19055-0.jpg ]
企業の安定性を示す「自己資本比率」をみると、2022年度のゾンビ企業平均は△5.36%。2021年度からさらに悪化しており、債務超過状態が続いた。全企業平均(28.29%)と比べると、ゾンビ企業は会社経営の安定性で大きく見劣りする状態にあることが分かる。
ゾンビ企業数は25万1000社、2011年度(27万4000社)に次ぐ2番目の社数
[画像9: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-c5df12704ab84586da1e-0.jpg ]
2022年度のゾンビ企業率17.1%を、帝国データバンクが保有する企業概要データベース「COSMOS2」収録の約147万社を母集団として当てはめると、2022年度のゾンビ企業数は約25万1000社と推計された。集計開始の2007年度以降で、2011年度(約27万4000社)に次いで、2番目の推計社数となった(2010年度と同数)。
2021年度(約19万6000社)から5万5000社増え、ゾンビ企業数は3年連続の増加となった。
「経常赤字」かつ「過剰債務」かつ「債務超過」企業、4万1000社
[画像10: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-5af56e453f7c3f3e153e-0.jpg ]
2022年度の約25万1000社について、収益力・過剰債務・資本力の3項目から分析した。
収益力については、経常赤字企業は推計14万4000社で全体の57.4%にのぼった(2021年度[2]=推計11万2000社、59.8%)。過剰債務状況については、有利子負債が月商の8.5倍以上の企業が推計10万4000社で全体の41.5%(2021年度=推計8万3000社、44.4%)。加えて、資本力については、債務超過企業が推計9万5000社で全体の37.7%にのぼった(2021年度=推計6万8000社、36.4%)。
3項目すべてに該当する企業は推計4万1000社、16.4%(2021年度=推計3万3000社、17.7%)となり、1年で推計8000社増加している。
政府は昨年11月、金融機関による事業者支援の軸足を「コロナ禍の資金繰り支援」から「経営改善・事業再生支援」に移す姿勢を鮮明にした。金融機関の取り組みを推進すべく、金融庁は今春に金融機関向けの監督指針を改正する。ゼロゼロ融資で膨らんだ過剰債務に苦しむゾンビ企業への金融機関の対応も、今後はこれまでの安易な返済猶予や借り換えを繰り返すことが事実上難しくなるかもしれない。
ゾンビ企業の動向は、2024年の企業倒産動向にも少なからず影響しそうだ。2023年の企業倒産は8497件に達し、バブル崩壊後で最も高い増加率(前年比33.3%増)を記録、2015年(8517件)以来8年ぶりの水準となった。金融機関の支援スタンスの変化次第で、2024年の倒産件数が大きく増えるおそれもある。
「金利のある世界」に向けて、日銀が4月にマイナス金利解除に動くとの見方もある。実際に利上げとなるのは先になるかもしれないが、企業にとっては借入金の利払い負担が増すことになる。物価高や人手不足、賃上げ等にともなうコスト増に苦しむ中小・零細企業にとっては死活問題となりかねず、ゾンビ企業のさらなる増加につながる可能性は十分ある。
[1] 全企業の平均は、帝国データバンク「第66版 全国企業財務諸表分析統計」より算出
[2] 2021年度の数値は、帝国データバンク『「ゾンビ企業」の現状分析(2022年11月末時点の最新動向)』(2023年1月13日発表)より算出
コロナ禍以降、ゾンビ企業が増加している。企業倒産(2023年=8497件)の約30倍まで膨れ上がった企業の“ゾンビ化”が進んだ要因のひとつに、実質無利子・無担保のゼロゼロ融資が挙げられる。2022年9月末時点で約245万件、実行額約43兆円にのぼる資金がコロナ禍で中小企業の資金繰りを支えた半面、足元ではコロナ支援策の反動が顕在化しつつある。なかには、業績改善できないまま事業継続を断念する企業も目立つ。
帝国データバンクでは、これまで2022年7月、8月、12月、2023年1月と、ゾンビ企業(※)の実態をレポートしてきた。今回は2022年度のデータをもとに、最新動向をまとめた。
※ ゾンビ企業の定義は、国際決済銀行(BIS)が定める「ゾンビ企業」の基準に準拠
<調査結果(要旨)>
ゾンビ企業率17.1%に急上昇、過去最大の上昇率
業種別では「小売」、地域別では「東北」がゾンビ企業率トップ
収益力、借り入れ負担は依然厳しく、自己資本比率がさらに悪化
ゾンビ企業数は25万1000社、2011年度(27万4000社)に次ぐ2番目の社数
「経常赤字」かつ「過剰債務」かつ「債務超過」企業、4万1000社
※調査対象:3年連続でICRが1未満、かつ設立10年以上の企業(ゾンビ企業)
※調査期間:2023年11月時点まで
※調査機関:株式会社帝国データバンク
[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-3a842be2fd4d78c6f792-0.jpg ]
ゾンビ企業率17.1%に急上昇、過去最大の上昇率
国際決済銀行(BIS)が定める「ゾンビ企業」の基準である「3年連続でインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満、かつ設立10年以上」の定義に基づき、2022年度のゾンビ企業率を算出した。帝国データバンクが保有する企業財務データベース「COSMOS1」(2023年11月末時点)において、2022年度の財務データが判明している「3年連続でICRが判明、かつ設立10年以上」の企業は10万1478社あった。このうち、「3年連続でICRが1未満、かつ設立10年以上」の企業は1万7387社を数え、この2つの数値をもとにゾンビ企業率を算出すると17.1%にのぼることが判明した。
2007年度以降のゾンビ企業率の推移(下グラフ)をみると、2019年度の10.0%から、コロナ禍で上昇傾向を示していることが分かる。2020年度は11.6%、2021年度は13.5%となり、さらに直近1年で3.6ポイント上昇した。上昇率は調査開始の2007年度以降で最も大きかった。
[画像2: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-53ebc7f9da522d889ee9-0.jpg ]
さらに2022年度の17.1%は過去10年間で最も高く、東日本大震災後の2012年度(17.0%)と同水準。この結果、日本企業全体の約6社に1社で、企業の“ゾンビ化”が進んでいるとの見方もできる。
業種別では「小売」、地域別では「東北」がゾンビ企業率トップ
[画像3: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-f0808dfced227154d3bd-0.jpg ]
2022年度のゾンビ企業率を業種別にみると、「小売」が27.7%と最も高かった。次いで、「運輸・通信」が23.4%、「製造」が17.8%で続いた。2021年度に比べると、全業種でゾンビ企業率が高まっており、これら3業種は全体平均の17.1%を上回った。
[画像4: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-765ea21519d8341e9558-0.jpg ]
従業員数別では、「5人以下」が25.1%で最も高く、「6〜20人以下」が18.7%で続いた。他方、「1000人超」は2.8%と最も低く、総じて従業員数が少なくなるにつれて、ゾンビ企業率が高まる傾向にある。
[画像5: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-bc969266fea8ff9568ff-0.jpg ]
地域別では、「東北」(21.3%)と「中国」(20.2%)がそれぞれ2割を超えた。なかでも「東北」は、東日本大震災後の各種金融支援策の影響もあり、震災から10年経った今もなお借り入れ負担が重荷になっている。他方、「関東」(14.8%)が最も低く、とりわけ「東京」は12.9%と都道府県別で最も低い水準となった。
収益力、借り入れ負担は依然厳しく、自己資本比率がさらに悪化
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ゾンビ企業の財務状況について、「売上高経常利益率」「有利子負債月商倍率」「自己資本比率」の指標でそれぞれ平均値を算出し、全企業の平均[1]と比較した。なお、平均値は1%トリム平均(最大値および最小値からそれぞれ1%分を除外)としている。
企業の収益力を示す「売上高経常利益率」をみると、2022年度のゾンビ企業平均は△4.04%となった。全企業平均(2.75%)を6.79ポイント下回っており、2021年度から改善したものの、ゾンビ企業の収益力は依然として低いままであることが分かる。
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「有利子負債月商倍率」をみると、2022年度のゾンビ企業平均は9.87倍と、月商の約10倍の債務を抱えていることが分かる。2021年度からわずかに改善傾向はみられるが、ゾンビ企業の有利子負債は全企業平均(5.58倍)の2倍近くにのぼり、依然として過剰債務の状態が続いている。
[画像8: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-51906add3a0e79c19055-0.jpg ]
企業の安定性を示す「自己資本比率」をみると、2022年度のゾンビ企業平均は△5.36%。2021年度からさらに悪化しており、債務超過状態が続いた。全企業平均(28.29%)と比べると、ゾンビ企業は会社経営の安定性で大きく見劣りする状態にあることが分かる。
ゾンビ企業数は25万1000社、2011年度(27万4000社)に次ぐ2番目の社数
[画像9: https://prtimes.jp/i/43465/809/resize/d43465-809-c5df12704ab84586da1e-0.jpg ]
2022年度のゾンビ企業率17.1%を、帝国データバンクが保有する企業概要データベース「COSMOS2」収録の約147万社を母集団として当てはめると、2022年度のゾンビ企業数は約25万1000社と推計された。集計開始の2007年度以降で、2011年度(約27万4000社)に次いで、2番目の推計社数となった(2010年度と同数)。
2021年度(約19万6000社)から5万5000社増え、ゾンビ企業数は3年連続の増加となった。
「経常赤字」かつ「過剰債務」かつ「債務超過」企業、4万1000社
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2022年度の約25万1000社について、収益力・過剰債務・資本力の3項目から分析した。
収益力については、経常赤字企業は推計14万4000社で全体の57.4%にのぼった(2021年度[2]=推計11万2000社、59.8%)。過剰債務状況については、有利子負債が月商の8.5倍以上の企業が推計10万4000社で全体の41.5%(2021年度=推計8万3000社、44.4%)。加えて、資本力については、債務超過企業が推計9万5000社で全体の37.7%にのぼった(2021年度=推計6万8000社、36.4%)。
3項目すべてに該当する企業は推計4万1000社、16.4%(2021年度=推計3万3000社、17.7%)となり、1年で推計8000社増加している。
政府は昨年11月、金融機関による事業者支援の軸足を「コロナ禍の資金繰り支援」から「経営改善・事業再生支援」に移す姿勢を鮮明にした。金融機関の取り組みを推進すべく、金融庁は今春に金融機関向けの監督指針を改正する。ゼロゼロ融資で膨らんだ過剰債務に苦しむゾンビ企業への金融機関の対応も、今後はこれまでの安易な返済猶予や借り換えを繰り返すことが事実上難しくなるかもしれない。
ゾンビ企業の動向は、2024年の企業倒産動向にも少なからず影響しそうだ。2023年の企業倒産は8497件に達し、バブル崩壊後で最も高い増加率(前年比33.3%増)を記録、2015年(8517件)以来8年ぶりの水準となった。金融機関の支援スタンスの変化次第で、2024年の倒産件数が大きく増えるおそれもある。
「金利のある世界」に向けて、日銀が4月にマイナス金利解除に動くとの見方もある。実際に利上げとなるのは先になるかもしれないが、企業にとっては借入金の利払い負担が増すことになる。物価高や人手不足、賃上げ等にともなうコスト増に苦しむ中小・零細企業にとっては死活問題となりかねず、ゾンビ企業のさらなる増加につながる可能性は十分ある。
[1] 全企業の平均は、帝国データバンク「第66版 全国企業財務諸表分析統計」より算出
[2] 2021年度の数値は、帝国データバンク『「ゾンビ企業」の現状分析(2022年11月末時点の最新動向)』(2023年1月13日発表)より算出