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新潟医療福祉大学【健康スポーツ学科】睡眠中の推定深部温を用いて排卵の有無を判定する手法の有効性を確認




NSGグループの新潟医療福祉大学健康スポーツ学科【健康スポーツ学科 スポーツ生理学ラボ】は、月経周期による体温変化と人の神経機能に関する研究を実施してきました。その研究成果として、睡眠中の推定した深部体温(以下、推定深部温)において、実測した深部温(消化器温)との相関が高く、一般的に用いられる起床時の口腔温計測(以下、口腔温計測)と比べて、月経周期における排卵の有無を判定する手法として有効である可能性を明らかにしました。

■研究の背景と研究概要
1.月経周期や受胎可能期間を把握することは、女性の生活の質(Quality of Life, QOL)を高めるために重要です。そのため、簡便かつ正確に排卵の有無を把握する方法の確立が求められており、本研究では、睡眠中の推定深部温の計測方法の妥当性および排卵の有無を判定する手法としての有効性を検証しました。


 なお、推定深部温の測定には、睡眠中の胸部皮膚温と衣服内の外気側の温度(以下、外気温)から深部温を推定する手法を採用しました。その手法を実現するツールとして、「わたしの温度」の胸部計測用ウェアラブルデバイスを用いました。なお、 スポーツ生理学ラボは、2021年12月よりTOPPANエッジ株式会社と共同研究を行っています。
https://www.edge.toppan.com/news/2022/0228.html


2.睡眠中の消化器温の実測値と推定深部温との関係を検証することで、計測方法の妥当性を確認しました。また、起床時の口腔温計測と睡眠中の推定深部温計測による排卵の有無を判定する精度を比較することで、有効性を確認しました。


3.睡眠中の推定深部温は、実測された消化器温よりも低い値を示しましたが、月経周期における体温変化パターンは一致していることを確認しました。また、睡眠中の推定深部温は、口腔温計測と比較して、月経周期における体温の二相性変動を捉えることができ、高い精度で排卵の有無を判定できることが確認されました。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/32951/1466/32951-1466-5bb26caeb50e12a4f90a3a80215e4b9d-3900x1267.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


◆結果
1.睡眠中の推定深部温は、実測した深部温(消化器温)よりも低い値を示しますが、深部温の変化を十分に捉えることができていました。

(左の図)
睡眠中の消化器温(横軸)と推定深部温(縦軸)の関係を表しています。消化器温は ピル型のe-Celsius(BodyCap社)を摂取して測定しました。結果としては、二つの温度が等しいことを示すライン(青点線)から下にずれていることから、実測した深部温(消化器温)と比較して、推定深部温の方が低く見積もられています。しかし、対象者毎に卵胞期(低温期)と黄体期(高温期)の温度変化の関係性を調べると(実線)、消化器温と推定深部温に高い相関関係が認められています(rrm=0.642)。


(中央の図)
睡眠中の消化器温(横軸)と胸部皮膚温(縦軸)の関係を表しており、二つの温度が等しいことを示すライン(青点線)から下にずれていることから、消化器温と比較して、胸部皮膚温の方が低いことが分かります。胸部皮膚温も消化器温との間に相関関係が認められますが、その関係は推定深部温との関係と比べて弱いことが分かりました(rrm=0.362)。


(右の図)
睡眠中の外気温(横軸)と胸部皮膚温(縦軸)の関係を表しており、二つの温度が強い相関関係にあることが分かります(rrm=0.961)。これは、胸部皮膚温が外気温の影響を強く受けることを示しています。このことが胸部皮膚温と消化器温との関係性が、推定深部温との関係と比較して弱い理由の一つであると考えられます。

2.推定深部温は、月経周期による温度変化を捉えることができていました。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/32951/1466/32951-1466-5084eebe90ed1e05f6929a50f6981015-1774x1773.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


卵胞期(低温期)と黄体期(高温期)に消化器温 (横軸)と推定深部温(縦軸)から睡眠中の平均値 を算出した結果、二つの計測方法で計測された温度 変化の間には、高い相関関係が認められました (rrm=0.866)。このことから、推定深部温が月経周 期による温度変化を捉える手法として妥当であるこ とを確認できました。

3.基礎体温測定に用いられる口腔温と、睡眠中の推定深部温にて排卵の有無を判定する精度を比較した結果、胸部の皮膚温と外気温から推定する「推定深部温」の有効性を確認しました。


■対象者26名(月経周期74サイクル)を対象に、推定深部温と口腔温の二相性変動から各周期の排卵の有無を推定し、尿中の黄体形成ホルモンの上昇(LHサージ)に基づく判定結果(排卵有無)との一致性を検証しました。
■その結果、推定深部温では、感度(LHサージにより排卵有りと判定された周期のうち、二相性変動が見られた周期の割合)85%、特異性(LHサージにより排卵無しと判定された周期のうち、二相性変動が見られなかった周期の割合)92.86%という高い判定精度を示し、口腔温における感度68.33%、特異性78.57%を大きく上回りました(下表)
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/32951/1466/32951-1466-16e9c9671796393f744354d8a1d51637-1123x727.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


◆結論
睡眠中の推定深部温は、実測された深部温(消化器温)よりも低い値を示しましたが、月経周期における温度変化パターンは一致していることを確認しました。また、睡眠中の推定深部温は、口腔温計測と比較して、月経周期における体温の二相性変動を捉えることができ、高い精度で排卵の有無を判定できることが確認されました。


◆今後の展開
9割以上の女性が月経前や月経中に、体重増加や身体のむくみ等の身体的症状や、記憶機能の低下、うつ様症状等の精神的症状を経験していると言われます。これまでに新潟医療福祉大学スポーツ生理学ラボでは、月経周期によって運動学習能や細かな運動調節能、それに関連する脳神経活動が変動することを明らかにしています(Ikarashi et al., 2024; Ikarashi, Iguchi, et al., 2020; Ikarashi, Sato, et al., 2020)。本研究の結果を基に、今後は睡眠中の生体情報データから認知機能の変動予測や月経随伴症状の発症予測の技術を確立し、デジタルヘルス技術を用いた周期予測に留まらず、日々のコンディショニングツールの開発を目指します。


【参考情報:スポーツ生理学ラボのこれまでの研究成果】
1. Ikarashi, K., Iguchi, K., Yamazaki, Y., Yamashiro, K., Baba, Y., & Sato, D. (2020). Influence of Menstrual Cycle Phases on Neural Excitability in the Primary Somatosensory Cortex and Ankle Joint Position Sense. Women’s Health Reports (New Rochelle, N.Y.), 1(1), 167-178.
2. Ikarashi, K., Sato, D., Edama, M., Fujimoto, T., Ochi, G., & Yamashiro, K. (2024). Fluctuation of fine motor skills throughout the menstrual cycle in women. Scientific Reports, 14(1), 15079.
3. Ikarashi, K., Sato, D., Iguchi, K., Baba, Y., & Yamashiro, K. (2020). Menstrual Cycle Modulates Motor Learning and Memory Consolidation in Humans. Brain Sciences, 10(10). https://doi.org/10.3390/brainsci10100696


◆掲載論文
【題目】 Novel methodology for identifying the occurrence of ovulation by estimating core body temperature during sleeping: Validity and effectiveness study.
【著者名】 Sato Daisuke, Ikarashi Koyuki, Nakajima Fumiko, Fujimoto Tomomi.
【掲載雑誌】 JMIR Formative Research 2024, 8(1), e55834.


【新潟医療福祉大学】 https://www.nuhw.ac.jp/
全国でも数少ない、看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITを学ぶ6学部15学科の医療系総合大学です。この医療系総合大学というメリットを最大限に活かし、本学では、医療の現場で必要とされている「チーム医療」を実践的に学ぶことができます。また、全学を挙げた組織的な資格取得支援体制と就職支援体制を構築し、全国トップクラスの国家試験合格率や高い就職実績を実現しています。さらに、スポーツ系学科を有する本学ならではの環境を活かし、「スポーツ」×「医療」「リハビリ」「栄養」など、スポーツと融合した学びを展開しています。

<NSGグループについて>
NSGグループは、教育事業と医療・福祉・介護事業を中核に、健康・スポーツや建設・不動産、食・農、商社、広告代理店、ICT、ホテル、アパレル、美容、人材サービス、エンタテイメント等の幅広い事業を展開する108法人で構成された企業グループです。それぞれの地域を「世界一豊かで幸せなまち」にすることを目指して、「人」「安心」「仕事」「魅力」をキーワードに、地域を活性化する事業の創造に民間の立場から取り組んでいます。

<NSGグループホームページ>
https://www.nsg.gr.jp/
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