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【佐渡金山が世界遺産に!】世界遺産登録って本当にめでたい? 看過できない意外なマイナスと現地の苦労を、日本人唯一の世界遺産条約専門官が徹底解説した『日本人が知らない世界遺産』発売決定!




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くす玉を割って祝う「佐渡を世界遺産にする会」会長の中野洸さんら(提供 朝日新聞社)

林菜央著『日本人が知らない世界遺産』(朝日新書)が、2024年8月9日(金)朝日新聞出版より発売されます。毎年、7月から8月にかけて、ユネスコ(UNESCO)世界遺産委員会が、新規登録された世界遺産を発表します。今年(2024年)は新潟・佐渡金山が選ばれました。佐渡金山の歴史的価値を世界に知らしめるとともに、観光客の大幅な増加が期待できることもあって、現地は大いに盛り上がっています。しかし、世界遺産登録はめでたいこと、プラスのことばかりなのでしょうか? 日本人唯一の世界遺産条約委員である著者が、世界遺産の「光」だけでなく「影」についても詳しく解説した1冊です。全国の書店やネット書店でも予約受付中です。
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●地域住民のために橋を架けたら登録抹消に
世界遺産に登録されると、地元の観光産業には大きなプラスになります。例えば、島根県の石見銀山。それまで年間30万人前後で推移していた観光客が、登録となった2007年には70万人を突破、翌08年にはピークとなる80万人超えを記録しました。
このように現地に恩恵をもたらす世界遺産ですが、意外なマイナス面もあります。

例えば、ドイツのドレスデン・エルベ渓谷。2004年に世界遺産に登録されましたが、わずか5年後の2009年に、世界遺産リストから抹消されました。景観の中心部に建設された四車線のワルトシュレスヘン橋が、登録時に認められた普遍的な価値を損ねると判断されたからです。しかし、この橋はドレスデン旧市街の交通緩和を目的としたもので、計画そのものは世界遺産に選ばれるはるか以前、第二次世界大戦前にさかのぼるとも言われています。つまり、地元住民の長年の夢だった橋を架けたために、登録抹消となったのです。

世界遺産に指定されたことで、地域住民の埋葬に使えなくなった墓地もあります。パキスタン南部のシンド州「サッタのマクリ歴史建造物群」です。ここは、インダス川のデルタ近くにある約10平方キロメートルの面積に50万基もの霊廟や墓を有する巨大な墓地遺跡が中心となる遺跡です。この墓地には、周辺の住民が家族の遺体を埋葬し続けてきました。歴史上の英雄や偉人が眠る墓地に、愛する家族の冥福を祈って埋葬する。それは慣習ともいえる行いでした。しかし、世界遺産登録後、この習慣に対して専門家から意見が度々出され、現在は登録地のすぐ横にある指定地に死者を埋葬するという法令が出されました。世界遺産になったために、長年の地元の習慣が崩れてしまったのです。
●どちらの領土? 国際紛争のきっかけになった世界遺産
もっと極端な例として、国境紛争のきっかけになった世界遺産もあります。
2008年に世界遺産に登録されたプレアヴィヒア寺院は、登録をきっかけに一時期はカンボジアとタイとの国境紛争にまで発展しました。
寺院は9世紀末に建築されたものです。カンボジアの最北端に位置しており、1962年にオランダのハーグにある国際司法裁判所は、領土をカンボジアに帰属すると認める判決を出しています。土地の帰属はカンボジアとタイにとって積年の争点でしたが、2008年に世界遺産に登録されるまでは沈静化していました。当初、タイはこの寺院の世界遺産登録を支持すると表明していました。しかし登録後にタイ国内で世論がこの支持が法律に反しているという方向に高まり、またタイ人が寺院に不法侵入したとしてカンボジア側に拘束されたことをきっかけにタイの軍隊が派遣され、交戦状態となりました。
2011年には再び、両軍が交戦状態に入り、数千人の民間人が避難し、数十人の死者も出ています。その後2013年11月には、帰属が未確認として問題視されていた寺院周辺の土地について、国際司法裁判所がカンボジアに帰属するとの見解を表明しました。
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国境紛争のきっかけになったプレアヴィヒア寺院((C)UNESCO)

●「世界遺産条約専門官」という知られざるお仕事
本書はこのように、世界遺産に選ばれることの「デメリット」について詳しく解説しています。世界遺産条約専門官である著者が、自身の経験を踏まえて詳しく解説しています。
同時に、「世界遺産条約専門官」の仕事についても説明しています。デスクワーク中心のお仕事のようなイメージですが、とんでもない! 移動中に後ろの男性が地元警察に撃たれたり(イスラエル)、2日連続で洞窟で野宿したり(ベトナム)、イメージと異なるお仕事の日々が淡々と描かれています。
 さらに巻末には、林さんが実際に訪れた場所を中心に、「本気のお薦め」リストも掲載しています。海外旅行の際のヒントに使えます。
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ベトナムのソンドン洞窟(提供 著者)

『日本人が知らない世界遺産』著者略歴
林菜央(はやし・なお)
日本人唯一のユネスコ世界遺産条約専門官。上智大学、東京大学大学院で古代地中海・ローマ史専攻。フランス政府給費留学生としてパリ高等師範学校客員研究員、パリ第四大学ソルボンヌ校で修士号取得、ロンドン大学で持続的開発も学ぶ。在フランス日本大使館の文化・プレス担当アタッシェを経て、2002年よりユネスコ勤務。ユネスコ・博物館プログラム主任などを経て現職。直接担当してきた世界遺産・博物館のある国はアフガニスタン、カンボジア、ベトナム、ラオス、スリランカ、バングラデシュ、パキスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタン、イラン、エジプト、シリア、イラク、チュニジア、モロッコ、イスラエル、パレスティナ、サブサハラ諸国、ジョージア、ウクライナなど。

『日本人が知らない世界遺産』目次
まえがき 
1章 世界遺産の本当の魅力は「多様性」
2章 世界遺産はどのように選ばれ登録されるのか
3章 世界遺産のメリットとデメリット
付録 私のお薦め世界遺産とその見どころ
あとがきにかえて


『日本人が知らない世界遺産』(朝日新書)
著者:林菜央
予価:990円(本体900円+税10%)
発売日:2024年8月9日(金曜日)
体裁:256ページ+4色4ページ、新書判
https://www.amazon.co.jp/dp/402295275X
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