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世界が絶賛する監督、<岩名雅記>をあなたは知っているか!? 10月6日公開映画『シャルロット すさび』岩名雅記監督インタビュー

世界が絶賛する監督、<岩名雅記>をあなたは知っているか!?
10月6日公開映画『シャルロット すさび』岩名雅記監督インタビュー

構想16年。在仏30年にして今尚、現役の舞踏家・岩名雅記(いわなまさき)、73歳による、
パリ、東京、福島を舞台にした171分に及ぶ渾身の衝撃作『シャルロット すさび』が、
10月6日(土)より、新宿K’s cinemaにて公開される。

監督の岩名雅記は、慶応義塾大学経済学部卒業後、ドラマ演出を目指して東京放送(TBS)に入社。
2年半で同社を依頼退社し、以降俳優として、劇団人間座、劇団三十人会など演劇世界に身を置く。
1988年秋にパリに移住。舞踏家としてのみならず、2004年より映画製作を開始。
初監督作品『朱霊たち』(07)がロッテルダム国際映画祭で公式選考、
ポルトベロ国際映画祭では最優秀映画賞受賞など欧米8つの映画祭で公式上映され、一躍、鮮烈デビュー。
その後、『夏の家族』(10)、『うらぎりひめ』(12)など、精力的な映画製作に取り組み、
待望されて5年、遂に最新作『シャルロット すさび』が完成。
この度、9月27日、岩名雅記監督のインタビューが、発表された。

Q:映画「シャルロット すさび」を製作した、いきさつを教えてください。
20年ほど前に前妻が自死したことで、懺悔の念から最初の作品『朱霊たち』を作りました。
とはいえ、映画の内容はそれとは全く関係はなく、モチーフ(動機)だけがあったのです。
今回『シャルロット すさび』で初めて前妻との関わりを僕の記憶や思い出を素材にして
シナリオを書き始めました。
それだけでは私小説ならぬ私映画になってしまうので、
創作によって更に生命論的な広がりを描いたのがこの映画です。

Q:本作の撮影で、監督としての取り組み方、苦労した点はありますか?
ほとんどが苦労の連続でした(笑)。まあ日仏伊の混合チームといえば聞こえはいいですが、
経済の問題とは別に日本に住む日本人のキャストやスタッフが外国で仕事をするということが
いかに大変なことかーー思い知りました。食生活や習慣の違い、言葉の壁、
外国人スタッフとの関係、そうしたことが演技や撮影に少なからず影/波紋を落としましたね。

Q:本作で、印象に残ったエピソードはありますか?
一つだけ挙げるとしたら、やはり大団円の河での撮影ですかね。
撮影の年(2015)は雨の少ない年で、初めは自宅(南ノルマンディ)の池を使って
撮影しようと思って掘削までして半年間準備したのですが、
普段は豊富な水がその年に限って水量が少ない。
そこで村長に急遽相談して近くを流れるユジン川を使えるように
川べりを所有している人に口利きをしてもらいました。
撮影用のクレーンなどはとても経費がかさんで使えないので、
農業用のクレーンを借りて6mの高さまで台座を引き上げて撮りました。
感心したのは主演のエレナ・クーダ(シャルロット役)です。
夏とは言っても川の水はすぐに震えがくるほど冷たい。
そこに彼女、30分も入ったままだったのに文句ひとつ言わずにやってくれました。

Q:本作の撮影で、一番苦労したシーン、是非、観て欲しいシーンを教えてください。
日本人アーティストK(成田 護)は過去、現在、夢想の中の女たちと交渉し、
時には性的な欲望に身をまかせます。
そんなKが覚醒するのがシャルロットの着ていた白シャツに書かれた文字を発見するシーンです。
僕は、釜ヶ崎に住みながら住民の救済にあたっている本田哲郎司祭の書かれた著作に
数年来注目していて、司祭が考えるキリスト像というもの言葉化しようとしてこのシーンを
書いたのですが、何度書き直しても良いテキストにならない。
撮影が終わっても更にテキストを5回も書き直し再々度撮影もしましたが、
いまでもじゅうぶん納得がいっていません。

Q:本作には自伝的要素あるように見受けられます。
監督自身はどのくらい作品に反映されていると思いますか?
前半の部分はかなりの「自分史」になっています。自分が舞踏家としてそれなりに
やってこられたのはひとえに前妻の励ましと協力があったからで、
それを思うと結果的に妻を裏切ってしまったことへの悔やみ/懺悔の想いは今でも変わりません。

Q:本作の公開を迎えるにあたって、どんな人に観て欲しいですか?
私と同世代の方々には共感していただける部分が多いと思います。
ですからむしろ若い方達にぜひ観ていただきたい。物語としてではなく、
方法としてこういう映画もある/あっていいということを是非知っていただきたい。
試写会に来てくださったある方が「この映画には現代の映画のような
<観る人に媚びた分かりやすさ>は微塵もない」と書いておられた。
現代の映画の全てが「媚びている」とは思いませんが、
「わかる」前に「感じる」余地/隙間のある映画を僕は作りたいのです。
この映画には「いつ/どこで/どうして」がほとんど描かれていない筈です。

Q:舞踏家であった岩名監督が映画製作を始めたきっかけ、理由を教えてください。
約40年踊って来ましたがこの20年ほどは即興的な要素/物語性に
頼らない踊りに変わってきています。一方で、もともと僕はテレビ局で
ドラマの演出をやりたかった人間です。
ですから(恐らく)踊りで物語性を描けない分、
映画で物語を展開しようとしているのかも知れません。
もう一つ。映画が生フィルムで撮られていた時代には
「フィルムは死んだ俳優さんたちを生きたまま保存する」ということが
舞踏の「死の哲学」と共通していると言えたのですが、
今やデジタル画像は何度でも消したり、録画できるので
それも言えなくなってしまいました(苦笑)。
ちなみに最初の2作は16ミリで撮っています。

Q:現役の舞踏家である岩名監督が映画製作で注意しているところは何ですか?
注意しているというよりも自然にそうなってしまうのですが、人間の身体の動き、
特に身体の部分へのこだわりがあります、指とか顎とか眼とかね。
もっと言うと身体をモノとして捉えているところがあります。
机や椅子、水や石と、身体は繋がっているという感じ方です。
もっとも昨今のプラスチック製のモノには興味がない。
何故ならプラスチックは最初から「時間の成熟」を拒否しているからです。
古くなったプラスチック製品に魅力はないけれど古い机や椅子や老人には魅力がある。
それは「熟成した時間」をたっぷりと湛えているからです。

Q:監督の作品は多くの海外映画祭で招待を受け、賞を授与されています。
海外で監督の作品はどのように受け止められていますか?
また、日本での反応、受け取り方の違いなどを感じたりしますか?
「平成の不在者」である僕は日本の映画世界を知らないので
外国の映画祭に応募しているだけなんですが(笑)。
最近は日本も世界も「商業主義」という点では一致しているので、
ますます多様性やユニークさは遠ざけられています。
ただ外国の場合は日本に比べてはるかに許容力が大きい。
例えば日本では舞踏家と聞けば<何する者ぞ?>という感じがありますが、
外国ではアーティストとして認めてくれる。
それと映画作品を許容する姿勢には共通点があります。

Q:昭和が終わる頃日本を離れ、平成の終わり日本に戻ってきた監督に
「平成」はどのように見えますか?
また、平成が終わることをどのように感じますか?
正確には「戻って来た」わけではなく、一時滞在ですけれど(笑)。
--そうですね、僕は戦中生まれで日本の戦後をある程度知っています。
モノのない分だけ心が豊かであった時代をね。それが高度成長を実現していく中で
だんだん傲慢というか、「豊かで当たり前」になってしまった。
ですから成長の止まってしまった平成の30年間は、そのしっぺ返しの30年とも言えます。
やはり今こそ「モノと心がバランスの取れた時代」を取り戻すべきです。
この映画にも古い時代へ戻っていくシーンがありますが、
これは単なるノスタルジーではなく強い願望を込めたつもりです。

Q:この記事を読んでいる読者へ、メッセージをいただけますか。
何といっても「自由に生きてほしい」ということですね。生活が大変なのはわかりますが、
何も定められた道を誰もが辿る必要はないと思うのです。好きなようにやればいい、
好きなことができれば苦労は苦労でなくなるということです。
それともう一つ。おとなしい羊になるな、クレージーホース(狂った馬)になれという事です。
嫌なことは嫌だとはっきり言うべきです。もの言わぬことが今の日本をダメにしているのです。

Q:最後に何か言い残したことがあれば、おっしゃってください。
是非、この映画を観てください!

『シャルロット すさび』は、10月6日(土)より、新宿K’s cinemaにて公開 。

■ストーリー■
現代のパリ。自身のアート活動に深くのめり込んだために前妻スイコを失った
日本人パフォーマー・カミムラ(以後<K>)は、以前のようにシンバルを使った
パフォーマンスが出来ないでいた。初夏のある午後、Kは公演に使う板ガラスを買うため、
パリ13区、トルビアックにあるガラス店を訪れ、日本人の女主人・朝子に出会う。
何故かほろ酔いの朝子。同じ日、突然の雨で、メトロ構内に入り込んだKが見たのは、
大勢の人々の視線にさらされるイタリア人の美しいフリークスの女性・シャルロットだった。
「夢で逢いましょう」と告げるシャルロット。その晩、Kはシャルロットとの
エロティックなサイドショーの夢をみる。
パリ、東京、福島。未来とも終焉ともつかない、心のおもむくままの旅が始まる――。

監督・脚本:岩名雅記
出演:クララエレナ・クーダ(シャルロット)/成田護(カミムラ)/
高橋恭子(朝子)/大澤由理(スイコ)
企画・製作:Solitary Body/2017年/日仏合作/171分/
白黒+パートカラー/16:9/デジタル撮影
配給: Solitary Body HP:http://www.iwanabutoh.com/film/susabi/indexJP.html

なお、lighthouseは映画『シャルロット すさび』においてSolitary Bodyより委託を受け、
劇場の手配や広報などを行っています。

■監督:岩名雅記(いわなまさき)プロフィール■
1945(昭和20)年2月東京生まれのソロ舞踏家。1975年、演劇から舞踏の世界へ。
1988年フランスに渡り、現在まで70カ国/200都市でソロ公演。
1995年フランス南ノルマンディに拠点をつくり、2004年から映画製作を開始、
2007年初監督作品『朱霊たち』を発表。






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