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薬物使用防止に関する国際基準(第2版)の和訳を公表、予防教育において「情報提供のみ、特に恐怖の覚醒」は効果や有効性がないと指摘

この報告書は、世界保健機関(WHO)及び国連薬物犯罪事務所(UNODC)が2018年11月に発行した“International Standards on Drug Use Prevention: Second Updated Edition”の仮訳版です。初版は、2013年に発行されており、その改訂版となります。日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)は、本報告書の和訳を20年8月22日に本学会サイトにて公表し、ダウンロードできるようにしました。持続可能な開発のための2030アジェンダ「目標3.5:麻薬乱用やアルコールの有害な摂取を含む、薬物乱用の防止・治療を強化する」の基準となる基礎資料としてご利用いただければと思います。

はじめに(抜粋)

この基準の初版は2013年に発行され、効果的な戦略を特定し、子どもと若者、特に最も社会から取り残された貧困層の人々が、成人期と高齢期になっても健康で安全に成長し続けることを確実にすることを目的として、世界レベルでの薬物使用防止のエビデンス(科学的根拠)をまとめたものである。

加盟国及び他の国内及び国際的な利害関係者は、このツールの価値を認識し、この基準は、科学的根拠に基づく予防の適用範囲及び質を改善するための有用な科学的根拠として、何度も認められた。さらに、2015年には、国連加盟国は、2030年までに達成される持続可能な開発目標及びターゲット3.5の中で、物質乱用の防止と治療を強化することを約束した。2016年4月、世界の薬物問題に関する国連特別総会は、バランスのとれた健康を中心としたシステム・アプローチにより薬物使用と薬物使用障害に対処する新たな時代の到来を告げた。

人々の健康と福祉へのこの新たな強調の文脈において、UNODCとWHOは力を合わせ、この最新版第2版を発表することを喜ばしく思う。第1版の場合と同様に、本基準は、最近のシステマティック・レビューの概要に基づいて、現在入手可能な科学的根拠を要約し、薬物使用の予防効果を改善することが判明している介入と政策を記述している。さらに、この基準は、効果的な国の予防システムの主要な構成要素と特徴を特定している。本研究は、薬物使用防止の様々な側面に関する他の基準やガイドラインを策定してきた多くの他の組織(例:EMCDDA、CCSA、CICAD、CP、NIDA )の研究を基礎として、認識し、補完するものである。

内容(目次より抜粋)

1.予防とは、子供の健康で安全な発達を図ること
2.向精神薬使用の防止
3.予防科学
4.国際基準

I.薬物予防介入と政策

幼年期及び幼少期の初期
幼少期の中期
青年期初期
青年期及び成人期

II.さらなる研究が必要な予防問題

放課後の活動、スポーツその他の計画的な余暇活動
医薬品の非医学的使用の防止
特に危険にさらされている子どもと若者を対象とした介入と政策
条約に基づいて規制されていない新しい精神作用物質の使用の防止
メディアの影響

III.効果的な予防システムの特徴

科学的根拠に基づく介入・政策の範囲
支援策と規制の枠組み
研究・科学的根拠に基づく強力な証拠
様々なレベルの様々な部門
デリバリーシステムの強固なインフラ
持続可能性

【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000221383&id=bodyimage1

内容(本文より抜粋)

<専門家の協議に基づき、青年期初期予防教育において、効果や有効性のあるもの>
インタラクティブな方法を使用する
週1回の一連の構造化されたセッション(通常は10〜15)を通じて提供され、多くの場合、複数年にわたるブースターセッションを提供
トレーニングを受けたファシリテータ(訓練を受けた同僚も含む)が提供
特に対処、意思決定、抵抗力のスキル、特に物質使用に関連したスキルを含む、個人的及び社会的スキルの広い範囲を練習し、学ぶ機会を提供する
物質使用に関連するリスクの認識に影響を与え、直ちに影響が出ることを強調する
物質使用に関連する規範的性質及び期待に関する誤解を払拭する

<専門家の協議に基づき、青年期初期予防教育において、効果や有効性がないもの>
講義などの非対話な方法を主要な提供戦略として使用すること
情報提供のみ、特に恐怖の覚醒
構造化されていない対話セッションに基づくこと
自尊心と情動教育の構築のみに焦点を当てること
倫理的/道徳的な意思決定または価値のみに対処すること
元薬物使用者を証言として用いること

原文は、こちらのページよりPDFファイルでダウンロードできます。
https://www.unodc.org/unodc/en/prevention/prevention-standards.html

薬物使用防止に関する国際基準(第2版)の和訳を公表
ダウンロードはこちらへ
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=105664

本学会は、大麻草およびカンナビノイド医療に関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

日本臨床カンナビノイド学会

2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2019年7月段階で、正会員(医療従事者、研究者)67名、賛助法人会員12名、 賛助個人会員23名、合計102名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法 Cannabis Control Act

我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。

つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2016年の時点で、全国作付面積7.9ha、大麻栽培者34名、大麻研究者400名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。






配信元企業:一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会
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