国連は大麻及び大麻樹脂を附表IVから削除を決定。「最も危険で医療価値なし」という分類を変更し、医療価値を認める
[20/12/03]
提供元:DreamNews
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国連麻薬委員会(CND)は、12月2日に行われた第63会期で19月1月の大麻及び大麻関連物質のWHO勧告に対する投票を実施しました。国連麻薬委員会(CND)で投票権のある国は、53カ国あり、そのうち16カ国が既に医療用大麻が合法化しています。
日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)は、国連の決定に関する結果の翻訳を本日付でホームページに公表しました。
1.経緯
大麻草を規制している国際条約は、1961 年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)、1971 年の向精神薬に関する条約(向精神薬条約)、1988 年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約)の3つがあります。
スケジュール(附表)リストとは、国際的に薬物統制するシステムのことであり、WHO(世界保健機関)の ECDD(依存性薬物専門家委員会)が薬物の有害性や医療価値についての評価を行っています。
WHO(世界保健機関)のECDD(依存性薬物専門家委員会)では、最初に日本政府から提案した決議52/5(2009年)を受け、第38会期ECDD(2016年)の第三者の審査呼びかけに応じて、2010年にWHO事務局で定められた精神作用物質の審査方法の手順に基づき、2018年に事前審査、批判的審査を経て、2019年1月24日にスケジュール(附表)変更について国連にWHO勧告として通知しました。
2020年3月に投票予定でしたが、議論が不十分として延期され、複数の会議を経て、20年12月2日に投票することになりました。
2.勧告と投票の結果の概要
単一条約は、スケジュール(附表)のIV>I>II>IIIの順番で精神作用物質の危険性の高さを表しています。特に附表IVは、最も危険で医療価値なしという位置づけで、大麻及び大麻樹脂、ヘロインなどの20の物質が分類されています。
今回の投票では、「勧告5.1:大麻及び大麻樹脂を1961年麻薬単一条約の附表IVから削除する。」を賛成27、反対25,棄権1で削除が承認されました。他の5つの勧告はすべて否決されました。
これまでの60年間、単一条約附表IVは、世界の大麻禁止政策の象徴となっていましたが、これが削除されたことにより、医療目的での研究および治療応用が進むことが期待されます。
一方で、他の附表変更の伴う勧告はすべて否決されたことにより、モルヒネやコカインと同じ厳格な管理を求められる単一条約附表Iのままであり、特に変更がないことを意味します。
3.WHO勧告と日本の法律について
WHO勧告で大麻及び大麻樹脂について、
「委員会は、大麻の治療効果に関する情報と、進行中の医学的用途について考慮した。幾つかの国々では、腰痛、睡眠障害、うつ、外的障害後の痛みや、多発性硬化症などの治療に大麻の使用を許可している。委員会に提出されたエビデンスでは、大麻と大麻樹脂が、他の附表VIにリストされている物質と類似した有毒性を認められない。よって、大麻と大麻樹脂を附表VIにリストしている事は、この附表の定義と一致しない」
と記されており、この勧告を国連が承認したということは、本質的な有害性が高くないことを認め、その薬効を認めたことになります。
これによって、日本の大麻の医療目的使用の禁止条文となっている
大麻取締法第四条
二. 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
三. 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
の両条文は、その根拠を一部失ったことになります。
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000227449&id=bodyimage1】
4.勧告内容と投票結果(詳細)
●大麻および大麻樹脂
勧告5.1:大麻及び大麻樹脂を1961年麻薬単一条約の附表IVから削除する。
賛成27 反対25 棄権1
日本国:反対
賛成国:オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、コロンビア、クロアチア、チェコ、エクアドル、エルサルバドル、フランス、ドイツ、インド、イタリア、ジャマイカ、メキシコ、モロッコ、ネパール、オランダ、ポーランド、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、タイ、英国、米国、ウルグアイ
反対国:アフガン、アルジェリア、アンゴラ、バーレーン、ブラジル、ブルキナファソ、チリ、中国、コートジボアール、キューバ、エジプト、ハンガリー、イラク、カザフスタン、ケニア、キルギス、リビア、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、ロシア、トーゴ、トルコ
トルクメニスタン、日本
棄権国:ウクライナ
●ドロナビノール(Δ9-THC)、テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC異性体)
勧告5.2.1:ドロナビノール(Δ-9-THC)及びその立体異性体を1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する。
勧告5.2.2:ドロナビノール(Δ-9-THC)とその立体異性体を1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する勧告を委員会が採択することを条件に、1971年向精神薬条約の附表IIからドロナビノール(Δ-9-THC)とその立体異性体を削除する。
勧告5.3.1:ドロナビノール(Δ-9-THC)を1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する勧告を委員会が採択したことを条件に、テトラヒドロカンナビノール(1971年向精神薬条約の附表Iに現在列記されている6つの異性体を指す)に1961年麻薬単一条約の附表Iを追加する。
勧告5.3.2:テトラヒドロカンナビノールを1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する勧告を委員会が採択したことを条件に、テトラヒドロカンナビノール(1971年向精神薬条約の附表Iに現在列記されている六つの異性体を指す)を1971年向精神薬条約から削除する。
賛成23 反対28 棄権2
日本国:反対
●大麻エキスおよび大麻チンキ
勧告5.4:大麻エキス及び大麻チンキを1961年麻薬単一条約の附表Iから削除する。
賛成24 反対27 棄権2
日本国:反対
●カンナビジオール製剤
勧告5.5:1961年麻薬単一条約の附表Iに、「主たる成分がカンナビジオールで、Δ-9-THCが0.2%以下の製剤は国際的な統制を受けない。」という脚注を追加する。
賛成6 反対43 棄権4
日本国:反対
●大麻およびドロナビノール(Δ-9-THC)の製剤
勧告5.6:化学合成または大麻由来の製剤として製造されたΔ-9THC(ドロナビノール)を含有する製剤であって、一つまたは二つ以上の成分を含む医薬製剤として配合しており、かつ、Δ-9-THCドロナビノール)が、容易に用いうる手段により又は公衆衛生に危険をもたらすような収量で医薬製剤を回収することができないものについて、1961年麻薬単一条約の附表IIIに追加する。
追加勧告を否決(投票なし)
参考資料
https://www.unodc.org/unodc/en/commissions/CND/session/63Reconvened_Session_2020/reconvened-session-63-of-the-commission-on-narcotic-drugs.html
UNITED NATIONS MEDICAL CANNABIS VOTE: THE RESULT
https://kenzi.zemou.li/cndmonitor-results/
歴史的瞬間:国連が大麻の麻薬分類を変更
https://hemptoday-japan.net/9880/ (日本語)
日本臨床カンナビノイド学会ホームページ
「国連は大麻及び大麻樹脂を附表IVから削除を決定」について
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=108328
日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2020年10月段階で、正会員(医療従事者、研究者)74名、賛助法人会員10名、 賛助個人会員19名、合計103名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/
配信元企業:一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会
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日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)は、国連の決定に関する結果の翻訳を本日付でホームページに公表しました。
1.経緯
大麻草を規制している国際条約は、1961 年の麻薬に関する単一条約(麻薬単一条約)、1971 年の向精神薬に関する条約(向精神薬条約)、1988 年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(麻薬新条約)の3つがあります。
スケジュール(附表)リストとは、国際的に薬物統制するシステムのことであり、WHO(世界保健機関)の ECDD(依存性薬物専門家委員会)が薬物の有害性や医療価値についての評価を行っています。
WHO(世界保健機関)のECDD(依存性薬物専門家委員会)では、最初に日本政府から提案した決議52/5(2009年)を受け、第38会期ECDD(2016年)の第三者の審査呼びかけに応じて、2010年にWHO事務局で定められた精神作用物質の審査方法の手順に基づき、2018年に事前審査、批判的審査を経て、2019年1月24日にスケジュール(附表)変更について国連にWHO勧告として通知しました。
2020年3月に投票予定でしたが、議論が不十分として延期され、複数の会議を経て、20年12月2日に投票することになりました。
2.勧告と投票の結果の概要
単一条約は、スケジュール(附表)のIV>I>II>IIIの順番で精神作用物質の危険性の高さを表しています。特に附表IVは、最も危険で医療価値なしという位置づけで、大麻及び大麻樹脂、ヘロインなどの20の物質が分類されています。
今回の投票では、「勧告5.1:大麻及び大麻樹脂を1961年麻薬単一条約の附表IVから削除する。」を賛成27、反対25,棄権1で削除が承認されました。他の5つの勧告はすべて否決されました。
これまでの60年間、単一条約附表IVは、世界の大麻禁止政策の象徴となっていましたが、これが削除されたことにより、医療目的での研究および治療応用が進むことが期待されます。
一方で、他の附表変更の伴う勧告はすべて否決されたことにより、モルヒネやコカインと同じ厳格な管理を求められる単一条約附表Iのままであり、特に変更がないことを意味します。
3.WHO勧告と日本の法律について
WHO勧告で大麻及び大麻樹脂について、
「委員会は、大麻の治療効果に関する情報と、進行中の医学的用途について考慮した。幾つかの国々では、腰痛、睡眠障害、うつ、外的障害後の痛みや、多発性硬化症などの治療に大麻の使用を許可している。委員会に提出されたエビデンスでは、大麻と大麻樹脂が、他の附表VIにリストされている物質と類似した有毒性を認められない。よって、大麻と大麻樹脂を附表VIにリストしている事は、この附表の定義と一致しない」
と記されており、この勧告を国連が承認したということは、本質的な有害性が高くないことを認め、その薬効を認めたことになります。
これによって、日本の大麻の医療目的使用の禁止条文となっている
大麻取締法第四条
二. 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
三. 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
の両条文は、その根拠を一部失ったことになります。
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000227449&id=bodyimage1】
4.勧告内容と投票結果(詳細)
●大麻および大麻樹脂
勧告5.1:大麻及び大麻樹脂を1961年麻薬単一条約の附表IVから削除する。
賛成27 反対25 棄権1
日本国:反対
賛成国:オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、コロンビア、クロアチア、チェコ、エクアドル、エルサルバドル、フランス、ドイツ、インド、イタリア、ジャマイカ、メキシコ、モロッコ、ネパール、オランダ、ポーランド、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、タイ、英国、米国、ウルグアイ
反対国:アフガン、アルジェリア、アンゴラ、バーレーン、ブラジル、ブルキナファソ、チリ、中国、コートジボアール、キューバ、エジプト、ハンガリー、イラク、カザフスタン、ケニア、キルギス、リビア、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、ロシア、トーゴ、トルコ
トルクメニスタン、日本
棄権国:ウクライナ
●ドロナビノール(Δ9-THC)、テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC異性体)
勧告5.2.1:ドロナビノール(Δ-9-THC)及びその立体異性体を1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する。
勧告5.2.2:ドロナビノール(Δ-9-THC)とその立体異性体を1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する勧告を委員会が採択することを条件に、1971年向精神薬条約の附表IIからドロナビノール(Δ-9-THC)とその立体異性体を削除する。
勧告5.3.1:ドロナビノール(Δ-9-THC)を1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する勧告を委員会が採択したことを条件に、テトラヒドロカンナビノール(1971年向精神薬条約の附表Iに現在列記されている6つの異性体を指す)に1961年麻薬単一条約の附表Iを追加する。
勧告5.3.2:テトラヒドロカンナビノールを1961年麻薬単一条約の附表Iに追加する勧告を委員会が採択したことを条件に、テトラヒドロカンナビノール(1971年向精神薬条約の附表Iに現在列記されている六つの異性体を指す)を1971年向精神薬条約から削除する。
賛成23 反対28 棄権2
日本国:反対
●大麻エキスおよび大麻チンキ
勧告5.4:大麻エキス及び大麻チンキを1961年麻薬単一条約の附表Iから削除する。
賛成24 反対27 棄権2
日本国:反対
●カンナビジオール製剤
勧告5.5:1961年麻薬単一条約の附表Iに、「主たる成分がカンナビジオールで、Δ-9-THCが0.2%以下の製剤は国際的な統制を受けない。」という脚注を追加する。
賛成6 反対43 棄権4
日本国:反対
●大麻およびドロナビノール(Δ-9-THC)の製剤
勧告5.6:化学合成または大麻由来の製剤として製造されたΔ-9THC(ドロナビノール)を含有する製剤であって、一つまたは二つ以上の成分を含む医薬製剤として配合しており、かつ、Δ-9-THCドロナビノール)が、容易に用いうる手段により又は公衆衛生に危険をもたらすような収量で医薬製剤を回収することができないものについて、1961年麻薬単一条約の附表IIIに追加する。
追加勧告を否決(投票なし)
参考資料
https://www.unodc.org/unodc/en/commissions/CND/session/63Reconvened_Session_2020/reconvened-session-63-of-the-commission-on-narcotic-drugs.html
UNITED NATIONS MEDICAL CANNABIS VOTE: THE RESULT
https://kenzi.zemou.li/cndmonitor-results/
歴史的瞬間:国連が大麻の麻薬分類を変更
https://hemptoday-japan.net/9880/ (日本語)
日本臨床カンナビノイド学会ホームページ
「国連は大麻及び大麻樹脂を附表IVから削除を決定」について
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=108328
日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2020年10月段階で、正会員(医療従事者、研究者)74名、賛助法人会員10名、 賛助個人会員19名、合計103名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/
配信元企業:一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会
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