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2019年度の厚生労働省の補助金事業による米国、カナダ、EU等の医療用大麻、産業用大麻、嗜好用大麻調査を解説付きで公表

日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)は、2019年度の厚生労働省の補助金事業による米国、カナダ、EU等の医療用大麻、産業用大麻、嗜好用大麻調査を本学会WEBページにて解説付きで今月12日に公表した。

この報告書は、16年度、17年度、18年度に引き続き、欧州における医療向け大麻製品の現状と品質規格、大麻の識別のための分析手法、米国における大麻規制の現状、大麻・フィトカンナピノイドの有害性と医薬品としての応用、危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発の方法などについて調査結果を145ページにまとめたものです。

日本ではほとんど取り上げられていない1次情報の貴重な日本語情報であり、医療用大麻だけでなく、産業用大麻(マリファナの主成分THCが少ない品種)、成人向けの嗜好用大麻についても海外の調査を実施しており、規制緩和状況の全体像をつかもうとしています。


目次

I.総括研究報告書
危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究・・・1
井村伸正(公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター)

II.総括・分担研究報告書

1.欧州における医療向け大麻製品の現状と品質規格について・・・21
花尻(木倉}瑠理(国立医薬品食品衛生研究所)

目的:前年度、国の政策として医療用大麻を認めていたオランダの現状を調査したが、今年度はオランダ以外の欧州での大麻製品(大麻由来医薬品を含む)の現状を調べた。また医師の処方箋により薬局で医療向け大麻を受領できる国が増加しているので、各国の薬局方等で定められている医療向け大麻の品質規格を調査した。

2.大麻の識別のための分析手法(文献情報)・・・29
花尻(木倉}瑠理(国立医薬品食品衛生研究所生薬部)

目的:大麻草及びそれに由来する製品が大麻である。大麻草にはカンナビノイドと総称される固有の化合物群が含まれている。これまでの報告では大麻草中には565種の化合物が含まれており、そのうち120種がカンナビノイドとされている。大麻草のケモタイプは、THCAとΔ9−THC を主体とするdrug-typeと主カンナビノイドがCBDAとCBDであfiber-type及び中間型のintermediate-typeに分けられる。これらのカンナビノイドの分析手法について文献調査を行った。

3.大麻の分子生物学的手法を用いた近年の解析手法や分析事例・・・37
花尻(木倉}瑠理(国立医薬品食品衛生研究所生薬部)

目的:次世代シークエンサーの開発により大麻の分子生物学的研究は著しい進展を見せている。2019年には遺伝子を導入された酵母株がガラクトース添加培養で大麻が産生する須要カンナビノイドを合成することや生物工学的技術による無細胞系でのカンナビノイド合成が報告された。分子生物学的技術やマーカーの開発は植物材料としての大麻の潜在的な機能を明らかにしてきた。そこで、近年の分子生物学的解析手法を用いた大麻の研究事例や分析技術の動向を調査し情報収集を図ることとした。

4.大麻草の成分分析、海外の規制情報の把握(総合研究報告書)・・・43
花尻(木倉}瑠理(国立医薬品食品衛生研究所生薬部)
(3年間の研究成果の要約)

産業用大麻は世界的に市場を拡大しつつある。欧州ではTHC0.2%以下という基準のもとに栽培・生産が行われている。EU内ではその基準を満たした68栽培品種が認証されているが年度ごとの分析で基準を超える品種には栽培禁止の措置がとられている。

他方、医療用大麻に関しては国によって大麻の法的位置づけが異なっており、オランダやドイツは医療向けの大麻(乾燥大麻の花穂またはその抽出物)の使用を認めているが、ブルガリや、ルーマニア、ハンガリーは医療向け大麻のみならず大麻由来医薬品(大麻成分含有製剤・合成カンナビノイド含有製剤)も使用が許されない。

5.米国における大麻規制の現状
カリフォルニア州とコロラド州における大麻合法化の社会的影響について・・・47
舩田 正彦(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部)

目的:世界的に大麻規制を緩和する流れが生じている。大麻の使用が連邦法である物質規制法により最も厳しいカテゴリーのScheduleIとして規制している米国でも州によっては医療目的または嗜好品目的の大麻使用を合法化する動きが活発化している。そこで、米国における医療用大麻法及びレクリエーション用大麻法について調査し、各州の医療用大麻及び嗜好品としての大麻の規制の現状を比較した。さらに、大麻をはじめとする薬物の濫用防止を目的とする薬物濫用防止教育の実態を調べた。

6.大麻および関連化合物の法規制と薬物乱用防止対策に関する調査研究
(3年間のまとめ)・・・67
舩田 正彦(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部)

7.大麻・フィトカンナピノイドの有害性と医薬品としての応用に関する調査研究・・・81
山本経之(長崎国際大学大学院薬学研究科 薬理学研究室)

目的:国内外での大麻合法化の流れの影響を受けてか、国内で大麻に関する誤った情報が流布されていることから、大麻と大麻由来の生理活性を有する植物成分(フィトカンナビノイド)の有害性と医薬品としての可能性を最近(2016年〜2019年)の報告を中心に調査し問題点を考察した。

8.危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発の方法・・・105
鈴木 順子(北星大学薬学部薬学教育研究センター社会薬学部門)

目的:2019年現在の薬物情勢の分析・検討を行うとともに、第五次薬物乱用防止五か年戦略の目標と想定される対策等との整合性を検証する。

9.危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発の方法
(3年間の研究総括)・・・127
鈴木 順子(北星大学薬学部薬学教育研究センター社会薬学部門)

平成29年から令和元年までの3年間に行った研究の流れと成果を各年度にわけて骨子・総括として記述している。

10.大麻乱用防止を目的とした啓発資料の作製・・・137
鈴木 勉(星薬科大学薬学部)

目的:我が国における薬物乱用事犯検挙者数では覚醒剤に次いで多い大麻は特に最近若者層の乱用が問題となっている。覚醒剤に比べて大麻に対する禁制意識が低いこともその一因であると思われ、大麻について正しい情報を普及することが喫緊の課題となっている。

1976年に当時の厚生省薬務局麻薬が大麻に関する情報を小冊子「大麻」に纏めて発行したが、その後世界の大麻事情は大きく変化してきた。そこで、氾濫する大麻に関する誤った情報を正して乱用の拡大を阻止するために大麻乱用防止教育の啓発・広報の資料として小冊子(大麻問題の現状)を作成することになった。



【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000228189&id=bodyimage1

WEBサイト:
タイトル:危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する特別研究(2020年3月、2019年度)
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=108590

日本臨床カンナビノイド学会

2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2019年7月段階で、正会員(医療従事者、研究者)67名、賛助法人会員12名、 賛助個人会員23名、合計102名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法 Cannabis Control Act

我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2016年の時点で、全国作付面積7.9ha、大麻栽培者34名、大麻研究者400名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。



配信元企業:一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会
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