積水ハウス、お客様と共に20年、「5本の樹」計画で都市の生物多様性保全推進 〜生物多様性の財務価値化の幕開け、ネイチャー・ポジティブ方法論を公開〜
[21/11/26]
提供元:DreamNews
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積水ハウス株式会社は、2001年から「5本の樹」計画として、都市の住宅地に緑のネットワークを作り、生物多様性保全を推進してきました。
この度、20年間で、100万世帯※1のお客様と共に取り組んできた「5本の樹」計画の成果を、琉球大学※2と共同検証し、世界初の都市の生物多様性の定量評価の仕組みを構築しました。この定量評価の仕組みは、生物多様性保全の推進に役立つネイチャー・ポジティブ方法論として、本日公開します。
■「5本の樹」計画
1970年代以降、都市化に伴い、都市における生き物の生息地が激減してきました。
積水ハウスは、生物多様性の保全の取り組みとして、お客様のお庭で、生態系に配慮した造園緑化事業である「5本の樹」計画を2001年から開始しました。「5本の樹」計画は、”3本は鳥のために、2本は蝶のために、地域の在来樹種を”という思いを込め、その地域の気候風土・鳥や蝶などと相性の良い在来樹種を中心とした植栽にこだわった庭づくり・まちづくりの提案です。その考えは日本古来の里山を手本とした庭づくり計画に基づいています。
2001年から2020年までの20年間で累計1,700万本以上植樹してきました。その他にも、集合住宅やまちづくりの取り組みでも緑地計画の中で「5本の樹」の考え方を取り入れ日本全域の都市緑化を促進しています。
■生物多様性の定量評価
積水ハウスは、2019年から琉球大学理学部久保田研究室・株式会社シンクネイチャーとの共同検証によって、このネットワーク型の緑化が、都市の生物多様性にどの程度貢献できているかの定量評価を進めてきました。
久保田教授が立ち上げた株式会社シンクネイチャーが管理運営する「日本の生物多様性地図化プロジェクト:J-BMP※3」を基に、積水ハウス「5本の樹」計画の20年間で植栽した樹木本数・樹種・位置情報の蓄積データを分析し、生物多様性保全や再生に関する定量的な実効性評価を実現しました。
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000249014&id=bodyimage1】
定量評価分析結果(1)
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000249014&id=bodyimage2】
定量評価分析結果(2)
この定量評価により、生物多様性の劣化が著しい都市部(三大都市圏)において、園芸品種や外来樹種などの従来の庭木と比べて「5本の樹」計画に沿った在来樹種を中心に庭木を選定して植樹してきたことで、以下の生物多様性の効果が確認出来ました。※4
● 生物多様性の基盤となる地域の在来種の樹種数が10倍に
● 住宅地に呼び込める可能性のある鳥の種類は約2倍に
● 住宅地に呼び込める可能性のある蝶の種類は約5倍に
● 3大都市圏で生物多様性に関する根拠データが存在する1977年の30%まで回復
これは、世界初の都市の生物多様性の定量評価の仕組み構築、及び実例への適用となり、数値データが開示できることで、生物多様性が財務価値化に繋がり、民間の貢献を可視化して示すことができるものです。
■ネイチャー・ポジティブ方法論
近年、世界中で生物多様性保全への動きが加速しています。今年6月には、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が発足し、10月には生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が開催されました。日本でも民間取組等と連携した自然環境保全(OECM)などの都市緑化における民間の力の活用についての議論が本格化しています。
この社会背景の中で、積水ハウスの20年間の生物多様性の取り組みを、ネイチャー・ポジティブ方法論として公開します。
「5本の樹」計画のネイチャー・ポジティブ方法論は、都市部における生物多様性を財務価値化するための方法論です。積水ハウスは、この方法論を一般に向けて公開し、認知を広げ、ノウハウを活用してもらい緑化の促進と生物多様性保全への貢献へつなげていくことを目指します。
「ネイチャー・ポジティブ方法論」公開サイト
https://www.sekisuihouse.co.jp/gohon_sp/method/
■将来予測される効果
共同検証の結果、1977年の樹木・鳥・蝶の種数、多様度指数、個体数を100%とし、「5本の樹」計画を開始前の2000年を基準として、緑地の劣化が著しい三大都市圏(関東・近畿・中京)の2070年までの変動をシミュレーションしました。このシミュレーションによれば、地域の生き物にとって活用可能性の高い在来樹種を植栽することで(「5本の樹」計画)、「5本の樹」計画開始前の2000年と比較して、国際的にも生物多様性保全の目標年とされる2030年には37.4%、2050年には40.9%、さらに2070年には41.9%まで回復できることが確認されました。
この在来樹種による取り組みが当社だけでなく、今後日本で新築される物件の30%について「5 本の樹」計画が採用された場合、その回復効果は84.6%まで上昇するという予測ができています。
これは、COP15のテーマである「POST2020」において目指す、企業と市民が一体となった活動によって生物多様性回復に向けた改善を表すリバースカーブの実現が可能であること、「5本の樹」計画がこれに貢献できることを示すものと考えています。
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000249014&id=bodyimage3】
将来予測される効果
■積水ハウスの取り組み/ネイチャー・ポジティブ方法論公開へのエンドースメントコメントのご紹介
● MS&ADインターリスク総研 フェロー、MS&ADインシュアランスグループホールディングス サステナビリティ推進室 TNFD専任SVP 原口 真 様
MS&ADグループに参画。ビジネスと生物多様性の接点である企業緑地の研究とコンサルティングに従事、現在では、日本人で唯一、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)メンバーとしても活躍され世界の生物多様性保全をリードしている原口様より、以下のエンドースメントをいただいております。
「20年間に渡る「5本の樹」プロジェクトの一次データを、このような形で生物多様性緑化の効果の評価と予測のツールとして公表されることを歓迎いたします。
世界は今、2050年に向けてネイチャー・ポジティブを目指す大きな転換点にあります。この移行を成功させるためには、今後も人口が集中する都市の計画とマネジメントが鍵を握ります。これは、行政による公園整備等だけでは不十分で、都市の多くを占める民有地での取組が不可欠です。とくに、市民一人一人がネイチャー・ポジティブに生活実感を持って関わるためには、住宅での取組は戦略的に推進する必要があります。住宅の省エネルギー基準の適合義務化、市民が生活実感を持って消費も含む生活様式を変えていければ、日本の都市はレジリエントでサステナブルな社会への移行に大きく貢献することになります。また、ESG投資家に対して情報開示義務を負う、都市開発、建設の事業セクターにとっても希望をもたらすツールとなることでしょう。」
● 国際自然保護連合日本委員会 事務局長 道家 哲平 様
これまで、IUCNや生物多様性条約に関係する国際会議への出席、海外NGOとの多彩な連携、国際的な情報収集・分析を行い、日本の生物多様性保全の底上げに長年取り組んでこられ、OECMにもお詳しい道家様より、以下のエンドースメントをいただいております。
「196か国が加盟する生物多様性条約中心に国際社会では、現在、生物多様性版パリ協定とも呼べる、意欲的な生物多様性の目標や指標の設定を交渉し、来年5月までにまとめようとしています。
生物多様性に配慮した緑地空間の都市における確保、保護地域や自然共生エリア(OECM)の拡大、 企業経営の中核に生物多様性の視点を組入れることなどが俎上にのっており、今回のようなツールと定量的な評価が可能だという実証が、意欲的な数値目標の国際合意への大きな後押しとなるでしょう。同時に、「5本の樹」というアプローチは、都市開発から、個人住宅という多くの人々に生物多様性のための行動の選択肢を提供する手段であるということも、注目すべき点と考えています。」
● 立教大学 特任教授/不二製油グループ本社 CEO補佐 河口 眞理子 様
サステナビリティ関連全般に精通し、SDGsの諸課題について経済主体(企業、金融、消費者)での提言活動に力を入れてこられたサステナビリティ経営の第一人者である河口様より、以下のエンドースメントをいただいております。
「気候変動枠組み条約のCOP26が幕を閉じました。気温上昇幅を1.5℃に抑えるという目標に対して全く進捗は遅れているものの、気候変動を食い止めるために金融システムから転換させる動きが始まっています。一方で、気候変動と同様、人類の持続可能性に脅威となる生物多様性の取り組みに関しては「わかりづらい」「定量化できない」「何をすればいいのかわからない」とされて、取り組みは大幅に遅れています。
生物多様性の定量化・数値化は、生物多様性の保全にむけて社会を動かすためのカギを握っています。「5本の樹の実効性評価」は、個人レベルの庭木植栽を国レベルの生物多様性の定量評価は待ち望まれてきた生物多様性の定量化に成功した画期的な取り組みです。
また、サイエンスと企業そして個人の協力というパートナーシップがあって成功した点も、これからのサステナブルな取り組みをリードする好事例です。また一方で、都市部に暮らす個人の立場からは、多様な生態系ネットワークは 遠い野山や海のことのように思いがちですが、自分の庭において生物多様性をはぐくむことができる、生物多様性は実は青い鳥のように身近な世界であることへの気づきを与えてくれます。
気候変動対策としても、自然資本を活用した取り組みが求められる今、この「5本の樹」プロジェクトがきっかけとなって世界各地で多様な生物多様性の取り組みが、科学とビジネス、市民とのパートナーシップで加速されることを願っています。」
● 琉球大学理学部 教授/(株)シンクネイチャー 代表取締役 久保田 康裕 様
生物多様性の適切な保全と利用を、科学的に具現化するためのマクロ生態学の研究を国際的に展開。現在は生物多様性ビッグデータを基に研究チームを企業化し、保全科学の社会実装を推進しておられ、今回の定量評価の公開では積水ハウスとの共同検証で実効性評価に成功された久保田教授より、以下のエンドースメントをいただいております。
「人新世は地球史上6度目の大量絶滅の時代になる可能性があり、生物多様性の消失を原因とした社会の混迷を、私たちは目の当たりにしつつあります。自然資本としての生物多様性は、人間社会のサステナビリティの根源です。もはや、待ったなしの状況において、ネイチャー・ポジティブへ向けた実効性のあるアクションが、ビジネスセクターにも例外なく求められています。
グローバルに展開する企業は、各々のビジネスを通じて、この危機的状況を好転させるチャンスを有しています。ビジネスの国際的成長戦略という観点に基づいた、生物多様性の保全再生事業へのコミットメントです。我々研究者は、サイエンスを基に、現実的かつ効果的なソリューションを提供します。ビッグデータや機械学習(AIなど)を駆使したマクロ生態学の分析は、企業の実績をKPI化し、様々なアクションの実効性を比較可能にします。生き物の分布、生き物の遺伝子、生き物の機能、生き物の食う食われる関係を網羅した生物多様性ビッグデータは、積水ハウスの事例のように、ビジネス活動がダイレクトに自然資本の保全再生に貢献することを科学的に証明します。
相反するように見える経済収益活動と生物多様性の保全再生活動は、お互い科学的に調和され、ビジネスを通じたネイチャー・ポジティブ、すなわち社会変革を推進します。」
※1:2001年2月から2021年1月までの累積建築戸数1,001,977戸。
※2:琉球大学理学部久保田研究室との共同研究です。
※3:「日本の生物多様性地図化プロジェクト(J-BMP)」URL:https://biodiversity-map.thinknature-japan.com
※4:2001年から2020年までの20年間に、従来の庭木の選定での植栽を続けた場合と「5本の樹」計画に沿って選定した
植栽を続けた場合を比較しています。
配信元企業:積水ハウス株式会社
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