ついに完成「根岸一郎による伊福部昭全歌曲集」(2CD+BOOK) 声楽家の根岸一郎の長年の研究の成果をセッション録音。 小林淳による解説書は46頁で豊富な資料写真を掲載!
[21/12/07]
提供元:DreamNews
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スリーシェルズは、3SCD0066「伊福部昭全歌曲集」を2021年11月29日に発売したことを2021年12月7日に発表しました。
販売ページはこちら
https://3scdjrl.shopselect.net/
伊福部昭の全歌曲を収録したCDがついに完成!
「根岸一郎による伊福部昭全歌曲集」(2CD+BOOK)
声楽家の根岸一郎の長年の研究の成果をセッション録音。
小林淳による解説書は46頁で豊富な資料写真を掲載!
伊福部昭の全歌曲を収録したCDがついに完成!
伊福部昭による古代への眼差しを聴き取れるDISC1は、
ギリヤーク、サハリン、アイヌの北方民族三部作。そして、平安、因幡万葉など、古代から変わらぬ暮らしを営む南方民族への憧憬となる「聖なる泉」を収録。
DISC2は、更科源蔵の詩による4部作であるシレトコ、オホーツク、摩周湖、蒼鷺を収録。
更科の詩によって北海道の歴史に思いを巡らせた後に、未来を願い、祈るような北海道讃歌で締めくくる。
これまで楽譜が失われたとされていた「平安朝の秋に寄せる三つの歌 」を参考録音として収録した貴重盤。
46ページのBOOKは小林淳による楽曲解説と貴重な資料写真をカラーで掲載。
Acoustic ReviveのケーブルやFAZIOLIのピアノなど使用機材、楽器にもこだわった高音質の2枚組CDとして完成!
特別価格3056円(税込)!
同CDは文化庁芸術祭レコード部門に参加しております。
【CD詳細】
■ CD番号 3SCD-0066
■品名 CD「根岸一郎による伊福部昭全歌曲集」
■帯 伊福部昭の全歌曲を収録した待望のCDが完成!文化庁芸術祭参加!
■バーコード 4560224350665
■定価 3056円(税込)
■ 発売 2021年11月29日
■ 企画・発売元 スリーシェルズ
■ プロデュース 西耕一
■ 録音・編集 磯部英彬
■ 巻頭文 伊福部達
■ 解説 小林淳、根岸一郎
■ 表紙デザイン 山口翔悟
■収録 2021年5月6日、6月8日(渋谷ホール)、7月27日(古石場文化センター)、9月11日(えびらホール)
■使用ピアノ FAZIOLI F212
■使用ティンパニ 有賀誠門所有手締め本皮ティンパニ
■協力・Special Thanks:伊福部家、野坂惠璃、有賀誠門、竹内将也、Japan Percussion Center、Acoustic Revive
根岸一郎による伊福部昭全歌曲集
DISC1
1-4.ギリヤーク族の古き吟誦歌
I.アイ・アイ・ゴムテイラ 1:46
II.苔桃の果拾ふ女の歌 5:22
III.彼方の河び 4:03
IV.熊祭に行く人を送る歌 4:56
5-7.サハリン島先住民の三つの揺籃歌
I.ブールー・ブールー 3:49
II.ブップン・ルー 3:56
III.ウムプリ・ヤーヤー 2:15
8-10.アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌
I.或る古老の唄った歌 5:48
II.北の海に死ぬ鳥の歌 4:30
III.阿姑子と山姥の踊り歌 1:56
11-15.因幡万葉の歌 五首
I.あらたしき 6:56
II.はるののに 5:01
III.はるのその 5:03
IV.さよふけて 4:38
V.わがせこが 4:30
16.平安朝の秋に寄せる三つの歌(1934) 7:12〈参考録音〉
17.聖なる泉 3:56
DISC1収録:2021年5月6日(渋谷ホール/1-7)、6月8日(渋谷ホール/17)
7月27日(古石場文化センター/8-10)、9月11日(えびらホール/11-15)
DISC2
1.シレトコ半島の漁夫の歌 8:39
2.オホーツクの海 14:57
3.摩周湖 17:03
4.蒼鷺 9:49
5.北海道讃歌(独唱版)8:27
DISC2収録:2021年5月6日(渋谷ホール/1、5)、6月8日(渋谷ホール2-4)
演奏者
根岸一郎(ねぎしいちろう/バリトン・マルタン)
松元博志(まつもとひろし/ピアノ)
有賀誠門(あるがまこと/ティンパニ)
高本直(たかもとなお/アルト・フルート)
伊藤美香(いとうはるか/ヴィオラ)
金子展寛(かねこのぶひろ/二十五絃箏)
宮部貴絵(みやべきえ/ファゴット)
長谷川信久(はせがわのぶひさ/コントラバス)
三浦舞(みうらまい/オーボエ)
伊福部昭(1914-2006)の作曲によるコンサート用歌曲は、ティンパニ、ピアノ、アンサンブル(ヴィオラ、ピアノ/オーボエ、ピアノ、コントラバス/ファゴット、ピアノ、コントラバス/ファゴット、ヴィオラ、ピアノ/25絃箏、アルトフルート)などが存在します。
それらを年代順の収録ではなく、古代へ思いを馳せた楽曲(DISC1)と更科源蔵の詩による諸作(DISC2)として大まかにわけて収録しました。
伊福部昭の歌曲演奏をライフワークとして活動する根岸一郎は、グレゴリオ聖歌、中世音楽から現代作品まで幅広く演奏活動を行っている経験を踏まえて、伊福部昭が残した楽譜に改めて忠実なアプローチを行って演奏・録音しました。
伊福部昭との交流も深かった有賀誠門からの指導も受け、最新の研究や、根岸による比較文化・言語学的なアプローチも含む演奏となっています。
共演者は、打楽器界の巨匠、有賀誠門(ティンパニ)を筆頭に、若く優秀な演奏家も起用して、新たな展開と、作品の継承を祈って作りました。
楽器にもこだわり、有賀誠門の所有の本皮・手締めティンパニを使用しています。(使用したティンパニは、アウグスト・ユンケルが1904年・東京音楽学校に寄贈した楽器と、創立直後の新交響楽団が使用していて、実際にアイヌの叙事詩に依る対話体牧歌の初演を担当した小森宗太郎が使っていたティンパニであり、長い歴史を経て仙台フィルの首席ティンパニスト竹内将也によって保存され、演奏にも使われているものを使用させて頂きました)
伊福部達教授による序文より(抜粋)
私にとって、この根岸一郎氏のCDの歌声は今までないような土俗的な味わいを感じた。自然に歌っている素朴さが素直に伝わってきて、男性のバリトンの音色は叔父の歌曲にも合っているという印象を強く受けた。そして、叔父が思い蓄音機を持ち歩いてアイヌ、オロッコ、ギリヤークの幻の歌を夢中で録音・記録していた様子が眼に浮かぶようであり、このCDにある根岸一郎氏の音色はきっとその音源に近いのではないかと想像してしまう。CDにある他の曲とも合わせて伊福部昭歌曲の原点に思いを馳せて頂ければ幸いである。
演奏者プロフィール
根岸一郎(バリトン・マルタン)
武蔵野音楽大学声楽科、早稲田大学文学部フランス文学専修卒業。パリ第IV大学修士(比較文学)修了。第29回フランス音楽コンクール(大阪)第2位入賞および日仏音楽協会=関西賞、フランス総領事賞他受賞。第11回日仏声楽コンクール(東京)第3位入賞。アンリ・ソーゲ国際コンクール2000"L'art du Chant"(マルティグ)「フランス歌曲賞」受賞。カミーユ・モラーヌ、中村浩子、川村英司、村田健司の各氏に師事。演奏活動は幅広く、特に精緻なディクションによってフランス近代歌曲での評価が高く第17回以来日仏声楽コンクール審査員を務める。ヴォーカル・アンサンブル・カペラ、ムジカ・センペンティスなど古楽アンサンブルメンバーとして中世・ルネサンス音楽の分野で多くの演奏、録音に参加。 オペラへの出演も、グルック「思いがけない巡り会い」、トマ「ミニヨン」、マスネ「マノンの肖像」、ドビュッシー「アッシャー家の崩壊」、セヴラック「風車の心」、石桁眞礼生「河童譚」、三木稔「うたよみざる」、青島広志「火の鳥(ヤマト編)」、黛敏郎「MINOKO」など、日本初演作を含んで多彩である。伊福部昭氏の作品には深く傾倒し、意欲的に演奏を重ねている。日本フォーレ協会、コンセール・C、東京室内歌劇場会員、トロッタの会同人。日本合唱協会監事。2016年、日唱「伊福部昭個展」の企画運営に携わる。同年発売したCD「伊福部昭の団体歌」は、amazon、タワーレコードでもチャートインするなど高評価を受け「大御所作曲家が残した校歌・市歌、掘りおこしCD化」(日経新聞)として絶賛された。それ以後も、芥川也寸志、團伊玖磨、黛敏郎など、多くの作曲家の団体歌を特集して、コンサートを行っている。
有賀誠門(あるがまこと/ティンパニ)
1937年生まれ。幼少よりViolinを父に習う。1954年関東吹奏楽連盟主催管打個人コンクール第一位。東京藝術大学卒業後、NHK交響楽団首席ティンパニストを務める。1960年Tokyo Percussion Ensembleを創立、新しい世界潮流の一翼を担う。来日したボストン交響楽団に魅せられ、1963年単身貨物船でアメリカ留学、Vie Firth氏に師事。
Tanglewood、Boston、New Yorkでアメリカ最先端音楽に触れ、著名な音楽家たちと交流演奏を重ねUP感覚に目覚める。その違いを日常所作から読み解き「上の発想」を構築。東京藝術大学、東京音楽大学を礎石とし、打楽器隆盛の一時代を築く。日本初の「ティンパニ演奏会」などで芸術祭優秀賞を3度受賞。ジャズ、ダンス、演劇、障がい者等とのコラボと、境のない活動を続ける。München、Luxembourg国際コンクール審査員。Tanglewood、Mongolia、Chapas音楽祭招待演奏。Freiburg、北京、Seoul、 Cairo、London、Manchester、Chapasマスタークラス。Producer、Directorのキャリアも積む。心身統一合氣道初段。One of the Legendary Timpanists。東京藝術大学名誉教授。
伊藤美香(いとうはるか/ヴィオラ)
東京音楽大学に入学し同大学院修士課程に給費特待生として入学。在学中に特待生奨学金を得て修士課程修了。くらしき作陽大学音楽学部研究生修了後、くらしき作陽大学音楽学部非常勤講師を務めた。現在、オーケストラ・トリプティークの団長。
これまでに別宮貞雄、水野修孝、西村朗各氏の「ヴィオラ協奏曲」でソリストを務めて評価を受けた。共演は、井上道義氏指揮によるオーケストラ・アンサンブル金沢、水戸博之指揮、オーケストラ・トリプティーク等。第24回「四人組とその仲間たち」演奏会にて、西村朗氏の《無伴奏ヴィオラ・ソナタ第3番"キメラ"》を初演。NHK-FM「リサイタル・パッシオ」、東京オペラシティ文化財団主催リサイタルシリーズ「B→C」に出演。兎束俊之氏に師事。
金子展寛(かねこのぶひろ/二十五絃箏)
9歳より生田流箏曲を中條操由鶯氏に師事。NHK邦楽オーディション合格。その他コンクール受賞多数。2018年第一回リサイタル開催。国際交流基金アジアセンター主催事業参加。
2019年新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」のレコーディング参加。十二月大歌舞伎「本朝白雪姫譚語」にて二十五絃箏を演奏。桐朋学園芸術短期大学専攻科音楽専攻日本音楽専修卒業。在学中に野坂操壽氏、滝田美智子氏に師事。現在、野坂惠璃氏に師事。
箏を通じてソロでの活動や、邦楽器との共演はもちろん、洋楽器やアジアの音楽との共演、舞台やCDのレコーディング、アレンジなど隔たりない幅広いフィールドで活動を展開し、多くの方に箏の魅力を知ってもらえるよう活動をしている。
高本直(たかもとなお/フルート)
香川県高松市出身。東京音楽大学を経て、同大学院修士課程を修了後、渡独。ユーディ・メニューイン音楽財団、及びよんでん文化振興財団奨学生としてドイツ国立ハンブルク音楽演劇大学大学院において研鑽を積む。第11回びわ湖国際フルートコンクール入選、第14回フリードリヒ・クーラウ国際フルートコンクールセミファイナリスト。
これまでにフルートを岩崎範夫、細川順三、三上明子、ハンス=ウド・ハインツマンの各氏に師事。ソロ・室内楽を中心に、現代作曲家による新曲演奏やスタジオワーク等幅広く活動している。オーケストラ・トリプティークフルート奏者。
長谷川信久(はせがわのぶひさ/コントラバス)
東京音楽大学卒業。イーストマン音楽学校(米)にてマスタークラス修了。2000年より毎年霧島国際音楽祭にアーティストとして招聘され国内外の著名な演奏家と共演を重ねる。現在、東京フィルハーモニー交響楽団や群馬交響楽団にて客演首席コントラバス奏者を務める他、東京シンフォニエッタやアンサンブル・インタラクティブ・トキオのメンバーとして現代曲の分野でも活躍している。また近年は指揮者としても活躍の場を拡げている。コントラバスを吉田秀、永島義男、J.ヴァンデマークの各氏に、指揮法を小川晶久氏に師事。
松元博志(まつもとひろし/ピアノ)
国立音楽大学音楽学部器楽学科ピアノ専攻卒業。同大学院音楽研究科修士課程器楽専攻修了。
これまでにピアノを大内裕子、大黒康子、山内直美、安井耕一の各氏に、室内楽を徳永二男、長尾洋史の各氏に、伴奏法を浅井道子氏に師事。
現在、室内合唱団 日唱(日本合唱協会)をはじめ多くの合唱団にてピアニストを務め、声楽・器楽・合唱の共演者として多くの演奏会に出演。新作初演やレコーディングにも携わるなど、活発な演奏活動を行っている。
三浦舞(みうらまい/オーボエ)
岡山県出身。12歳よりオーボエを始める。東京音楽大学卒業。在学中、東京音楽大学シンフォニックウインドアンサンブルのメンバーとして台湾演奏旅行(指揮: 汐澤安彦氏)に参加し、台北、台中、高雄の各地にて演奏会に出演。2012年、第4回ドルチェ楽器デビューコンサートin東京に出演。また同年11月、地元岡山の岡山 県立美術館ホールにてデビューコンサートを行い、好評を博す。2017年、岡山市ジュニアオーケストラとモーツァルトのオーボエ協奏曲を共演。現在、フリーのオーボエ奏者として全国各地で、室内楽や吹奏楽、オーケストラ等の演奏活動 や、中高生の指導など幅広く活動中。島村楽器音楽教室オーボエ科講師。
これまでにオーボエを、上田美佐、広田智之の両氏に、室内楽を宮本文昭、浜道晃、安原理喜、中野真理、霧生吉秀の各氏に師事。
宮部貴絵(みやべきえ/ファゴット)
埼玉県出身。武蔵野音楽大学卒業。第7回日本アンサンブルコンクール室内楽部門優秀演奏者賞、全音楽譜出版社受賞。レインボウ21サントリーホールデビューコンサート2008に出演。桐朋学園大学音楽学部嘱託演奏員、埼玉県立芸術総合高等学校非常勤講師を経て、現在フリーランスとしてオーケストラや吹奏楽、アンサンブル等の演奏活動を行っている。
これまでにファゴットを岡崎耕治氏に師事、吉田將、グスタヴォ・ヌネッツ、ヴァレンティーノ・ズッキアッティ、マルテ・レファート、向後崇雄の各氏のレッスンを受講。室内楽を吉田將、鈴木良昭、猶井正幸、岡本正之、亀井良信の各氏に師事。オーケストラ・トリプティーク団員。
『アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌』の録音で使用されたティンパニについて
今回の録音で使用されたティンパニは、有賀誠門の所有する2種の楽器である。このティンパニの特徴は、楽器のヘッド(打面となる皮膜の部分)に、本皮を使用していることである。本作品で指定された奏法に応えるには、現在主流となっているプラスティックのヘッドを持つ楽器ではなく、本皮の楽器が必要であるという有賀誠門たっての希望でこの楽器の使用が決定した。その理由は、皮による温かな音色だけではなく、プラスティックヘッドだと、表面に引っかかりがなく滑ってしまうが、皮を使うと、ザラザラとして、手で打ったり爪を使った叩き方が効果を発揮しやすいことを踏まえてであった。
この楽器のもう一つの特徴は、「手締め式のティンパニ」であることだ。現代のティンパニは足ペダルによって皮の張力を張ったり緩めたりすることで音程を変化させるが、ここで使用したティンパニは、楽器自体が回転することで皮の張力を変化させる。チューニングボルトを手で締め、楽器を回転させることによって音程を調節するのである。
なお、使用された2種類のうちの片方は、NHK交響楽団の前身である新交響楽団で使用されていたものである(当時のティンパニ奏者は、『アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌』の初演奏者である小森宗太郎もいた)。ティンパニが現役を退き、倉庫に眠っていたのを、有賀誠門が払い受けた。この楽器がどのようにして日本にたどり着いたのかは不明だが、楽器を作ったのはイギリスで活躍したドイツ人音楽で発明家のJohann Stumpff(1769-1846)であり、1815年頃に作成したモデルと推測されている。
もう片方は、ヴァイオリン奏者で東京音楽学校の外国人教師であったアウグスト・ ユンケル(独 1868-1944)が、1904年に東京音楽学校に寄贈したものである。ユンケルはベルリンフィルのコンサートマスターなど歴任して来日、東京音楽学校でオーケストラを編成して多くの弟子を育てた。つまりこの楽器は日本のオーケストラ黎明期に使用されたのと形容できる。
釜の胴体には「PRESENTED TO TOKYO ACADEMY OF MUSIC BY PROF. A JUNKER 1904」と刻印されており、後の調査で皮を押さえる枠の裏側から主に西洋でしか使われなかった塗料が確認され外来の楽器であることが証明された。戦後、東京音楽学校が東京藝術大学に統合されてからも使用され、指揮者の故岩城宏之が打楽器科に在籍時代にも演奏していたとされる。その後、新型のペダルティンパニが輸入されてからは現役を退き、倉庫に眠っているのを有賀誠門が見つけて、払い下げを受けた。有賀は東京藝術大学退官後も自宅で保管してきたが、その愛弟子である仙台フィルハーモニー管弦楽団ティンパニ奏者の竹内将也が保管を委託され、現在、仙台フィルの演奏会 などでも使用されている。現代の楽器に比べて釜の径が小さく、皮を張る為のネジは7本ついている。楽器を支える木製の四脚や木製の蓋もついており、歴史を語る貴重な楽器である。
今回の録音だけのために、有賀誠門、竹内将也、両氏と、仙台フィルハーモニー管弦楽団の協力によって仙台から東京へ輸送して、レコーディングを行った。日本の洋楽史と共に生き、今も重厚な響きを奏でる楽器と、先人への深い感謝の思いと共に本稿を執筆した(西耕一)。
■伊福部昭(いふくべ・あきら)プロフィール
1914年5月31日、釧路町幣舞にて誕生、音更にて育つ。アイヌとともに育った幼少時が音楽的原体験となる。伊福部家の家学は『老子』、幼い頃から父に教え込まれる。北海道帝国大学農学部林学科に進みつつ音楽を独学、ヴァイオリンを弾く。二人の兄や、早坂文雄、三浦淳史らと、ストラヴィンスキー、ラヴェル、サティなどに触れ、熱き音楽的青春を過ごす。21歳の時「日本狂詩曲」がチェレブニン賞を受賞するが、大学卒業後は林務官として北海道に留まる。戦後、1946年に作曲家として生きる決意を胸に32歳で上京。東京音楽学校(現・東京藝大)講師として芥川也寸志、黛敏郎、矢代秋雄、池野成、小杉太一郎、三木稔、学外で松村禎三、石井眞木、真鍋理一郎、今井重幸等を育てる傍ら、多くの映画音楽を生み出した。1954年40歳、映画『ゴジラ』の音楽を担当、日本の映画音楽において奇跡的出会いであった。同年、初の交響曲「シンフォニア・タプカーラ」を発表。多くの作品、弟子、映画音楽を残して、2006年2月8日に91歳でこの世を去った。
■本件や所属・関連アーティストに関するお問い合わせは下記までお願い致します。
株式会社スリーシェルズ
〒111-0052 東京都台東区柳橋1丁目4-4 ツイントラスビル8階
TEL:070-5464-5060
http://www.3s-cd.net/
メール jcacon@gmail.com
担当 西
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000249719&id=bodyimage1】
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000249719&id=bodyimage2】
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000249719&id=bodyimage3】
配信元企業:株式会社スリーシェルズ
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伊福部昭の全歌曲を収録したCDがついに完成!
「根岸一郎による伊福部昭全歌曲集」(2CD+BOOK)
声楽家の根岸一郎の長年の研究の成果をセッション録音。
小林淳による解説書は46頁で豊富な資料写真を掲載!
伊福部昭の全歌曲を収録したCDがついに完成!
伊福部昭による古代への眼差しを聴き取れるDISC1は、
ギリヤーク、サハリン、アイヌの北方民族三部作。そして、平安、因幡万葉など、古代から変わらぬ暮らしを営む南方民族への憧憬となる「聖なる泉」を収録。
DISC2は、更科源蔵の詩による4部作であるシレトコ、オホーツク、摩周湖、蒼鷺を収録。
更科の詩によって北海道の歴史に思いを巡らせた後に、未来を願い、祈るような北海道讃歌で締めくくる。
これまで楽譜が失われたとされていた「平安朝の秋に寄せる三つの歌 」を参考録音として収録した貴重盤。
46ページのBOOKは小林淳による楽曲解説と貴重な資料写真をカラーで掲載。
Acoustic ReviveのケーブルやFAZIOLIのピアノなど使用機材、楽器にもこだわった高音質の2枚組CDとして完成!
特別価格3056円(税込)!
同CDは文化庁芸術祭レコード部門に参加しております。
【CD詳細】
■ CD番号 3SCD-0066
■品名 CD「根岸一郎による伊福部昭全歌曲集」
■帯 伊福部昭の全歌曲を収録した待望のCDが完成!文化庁芸術祭参加!
■バーコード 4560224350665
■定価 3056円(税込)
■ 発売 2021年11月29日
■ 企画・発売元 スリーシェルズ
■ プロデュース 西耕一
■ 録音・編集 磯部英彬
■ 巻頭文 伊福部達
■ 解説 小林淳、根岸一郎
■ 表紙デザイン 山口翔悟
■収録 2021年5月6日、6月8日(渋谷ホール)、7月27日(古石場文化センター)、9月11日(えびらホール)
■使用ピアノ FAZIOLI F212
■使用ティンパニ 有賀誠門所有手締め本皮ティンパニ
■協力・Special Thanks:伊福部家、野坂惠璃、有賀誠門、竹内将也、Japan Percussion Center、Acoustic Revive
根岸一郎による伊福部昭全歌曲集
DISC1
1-4.ギリヤーク族の古き吟誦歌
I.アイ・アイ・ゴムテイラ 1:46
II.苔桃の果拾ふ女の歌 5:22
III.彼方の河び 4:03
IV.熊祭に行く人を送る歌 4:56
5-7.サハリン島先住民の三つの揺籃歌
I.ブールー・ブールー 3:49
II.ブップン・ルー 3:56
III.ウムプリ・ヤーヤー 2:15
8-10.アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌
I.或る古老の唄った歌 5:48
II.北の海に死ぬ鳥の歌 4:30
III.阿姑子と山姥の踊り歌 1:56
11-15.因幡万葉の歌 五首
I.あらたしき 6:56
II.はるののに 5:01
III.はるのその 5:03
IV.さよふけて 4:38
V.わがせこが 4:30
16.平安朝の秋に寄せる三つの歌(1934) 7:12〈参考録音〉
17.聖なる泉 3:56
DISC1収録:2021年5月6日(渋谷ホール/1-7)、6月8日(渋谷ホール/17)
7月27日(古石場文化センター/8-10)、9月11日(えびらホール/11-15)
DISC2
1.シレトコ半島の漁夫の歌 8:39
2.オホーツクの海 14:57
3.摩周湖 17:03
4.蒼鷺 9:49
5.北海道讃歌(独唱版)8:27
DISC2収録:2021年5月6日(渋谷ホール/1、5)、6月8日(渋谷ホール2-4)
演奏者
根岸一郎(ねぎしいちろう/バリトン・マルタン)
松元博志(まつもとひろし/ピアノ)
有賀誠門(あるがまこと/ティンパニ)
高本直(たかもとなお/アルト・フルート)
伊藤美香(いとうはるか/ヴィオラ)
金子展寛(かねこのぶひろ/二十五絃箏)
宮部貴絵(みやべきえ/ファゴット)
長谷川信久(はせがわのぶひさ/コントラバス)
三浦舞(みうらまい/オーボエ)
伊福部昭(1914-2006)の作曲によるコンサート用歌曲は、ティンパニ、ピアノ、アンサンブル(ヴィオラ、ピアノ/オーボエ、ピアノ、コントラバス/ファゴット、ピアノ、コントラバス/ファゴット、ヴィオラ、ピアノ/25絃箏、アルトフルート)などが存在します。
それらを年代順の収録ではなく、古代へ思いを馳せた楽曲(DISC1)と更科源蔵の詩による諸作(DISC2)として大まかにわけて収録しました。
伊福部昭の歌曲演奏をライフワークとして活動する根岸一郎は、グレゴリオ聖歌、中世音楽から現代作品まで幅広く演奏活動を行っている経験を踏まえて、伊福部昭が残した楽譜に改めて忠実なアプローチを行って演奏・録音しました。
伊福部昭との交流も深かった有賀誠門からの指導も受け、最新の研究や、根岸による比較文化・言語学的なアプローチも含む演奏となっています。
共演者は、打楽器界の巨匠、有賀誠門(ティンパニ)を筆頭に、若く優秀な演奏家も起用して、新たな展開と、作品の継承を祈って作りました。
楽器にもこだわり、有賀誠門の所有の本皮・手締めティンパニを使用しています。(使用したティンパニは、アウグスト・ユンケルが1904年・東京音楽学校に寄贈した楽器と、創立直後の新交響楽団が使用していて、実際にアイヌの叙事詩に依る対話体牧歌の初演を担当した小森宗太郎が使っていたティンパニであり、長い歴史を経て仙台フィルの首席ティンパニスト竹内将也によって保存され、演奏にも使われているものを使用させて頂きました)
伊福部達教授による序文より(抜粋)
私にとって、この根岸一郎氏のCDの歌声は今までないような土俗的な味わいを感じた。自然に歌っている素朴さが素直に伝わってきて、男性のバリトンの音色は叔父の歌曲にも合っているという印象を強く受けた。そして、叔父が思い蓄音機を持ち歩いてアイヌ、オロッコ、ギリヤークの幻の歌を夢中で録音・記録していた様子が眼に浮かぶようであり、このCDにある根岸一郎氏の音色はきっとその音源に近いのではないかと想像してしまう。CDにある他の曲とも合わせて伊福部昭歌曲の原点に思いを馳せて頂ければ幸いである。
演奏者プロフィール
根岸一郎(バリトン・マルタン)
武蔵野音楽大学声楽科、早稲田大学文学部フランス文学専修卒業。パリ第IV大学修士(比較文学)修了。第29回フランス音楽コンクール(大阪)第2位入賞および日仏音楽協会=関西賞、フランス総領事賞他受賞。第11回日仏声楽コンクール(東京)第3位入賞。アンリ・ソーゲ国際コンクール2000"L'art du Chant"(マルティグ)「フランス歌曲賞」受賞。カミーユ・モラーヌ、中村浩子、川村英司、村田健司の各氏に師事。演奏活動は幅広く、特に精緻なディクションによってフランス近代歌曲での評価が高く第17回以来日仏声楽コンクール審査員を務める。ヴォーカル・アンサンブル・カペラ、ムジカ・センペンティスなど古楽アンサンブルメンバーとして中世・ルネサンス音楽の分野で多くの演奏、録音に参加。 オペラへの出演も、グルック「思いがけない巡り会い」、トマ「ミニヨン」、マスネ「マノンの肖像」、ドビュッシー「アッシャー家の崩壊」、セヴラック「風車の心」、石桁眞礼生「河童譚」、三木稔「うたよみざる」、青島広志「火の鳥(ヤマト編)」、黛敏郎「MINOKO」など、日本初演作を含んで多彩である。伊福部昭氏の作品には深く傾倒し、意欲的に演奏を重ねている。日本フォーレ協会、コンセール・C、東京室内歌劇場会員、トロッタの会同人。日本合唱協会監事。2016年、日唱「伊福部昭個展」の企画運営に携わる。同年発売したCD「伊福部昭の団体歌」は、amazon、タワーレコードでもチャートインするなど高評価を受け「大御所作曲家が残した校歌・市歌、掘りおこしCD化」(日経新聞)として絶賛された。それ以後も、芥川也寸志、團伊玖磨、黛敏郎など、多くの作曲家の団体歌を特集して、コンサートを行っている。
有賀誠門(あるがまこと/ティンパニ)
1937年生まれ。幼少よりViolinを父に習う。1954年関東吹奏楽連盟主催管打個人コンクール第一位。東京藝術大学卒業後、NHK交響楽団首席ティンパニストを務める。1960年Tokyo Percussion Ensembleを創立、新しい世界潮流の一翼を担う。来日したボストン交響楽団に魅せられ、1963年単身貨物船でアメリカ留学、Vie Firth氏に師事。
Tanglewood、Boston、New Yorkでアメリカ最先端音楽に触れ、著名な音楽家たちと交流演奏を重ねUP感覚に目覚める。その違いを日常所作から読み解き「上の発想」を構築。東京藝術大学、東京音楽大学を礎石とし、打楽器隆盛の一時代を築く。日本初の「ティンパニ演奏会」などで芸術祭優秀賞を3度受賞。ジャズ、ダンス、演劇、障がい者等とのコラボと、境のない活動を続ける。München、Luxembourg国際コンクール審査員。Tanglewood、Mongolia、Chapas音楽祭招待演奏。Freiburg、北京、Seoul、 Cairo、London、Manchester、Chapasマスタークラス。Producer、Directorのキャリアも積む。心身統一合氣道初段。One of the Legendary Timpanists。東京藝術大学名誉教授。
伊藤美香(いとうはるか/ヴィオラ)
東京音楽大学に入学し同大学院修士課程に給費特待生として入学。在学中に特待生奨学金を得て修士課程修了。くらしき作陽大学音楽学部研究生修了後、くらしき作陽大学音楽学部非常勤講師を務めた。現在、オーケストラ・トリプティークの団長。
これまでに別宮貞雄、水野修孝、西村朗各氏の「ヴィオラ協奏曲」でソリストを務めて評価を受けた。共演は、井上道義氏指揮によるオーケストラ・アンサンブル金沢、水戸博之指揮、オーケストラ・トリプティーク等。第24回「四人組とその仲間たち」演奏会にて、西村朗氏の《無伴奏ヴィオラ・ソナタ第3番"キメラ"》を初演。NHK-FM「リサイタル・パッシオ」、東京オペラシティ文化財団主催リサイタルシリーズ「B→C」に出演。兎束俊之氏に師事。
金子展寛(かねこのぶひろ/二十五絃箏)
9歳より生田流箏曲を中條操由鶯氏に師事。NHK邦楽オーディション合格。その他コンクール受賞多数。2018年第一回リサイタル開催。国際交流基金アジアセンター主催事業参加。
2019年新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」のレコーディング参加。十二月大歌舞伎「本朝白雪姫譚語」にて二十五絃箏を演奏。桐朋学園芸術短期大学専攻科音楽専攻日本音楽専修卒業。在学中に野坂操壽氏、滝田美智子氏に師事。現在、野坂惠璃氏に師事。
箏を通じてソロでの活動や、邦楽器との共演はもちろん、洋楽器やアジアの音楽との共演、舞台やCDのレコーディング、アレンジなど隔たりない幅広いフィールドで活動を展開し、多くの方に箏の魅力を知ってもらえるよう活動をしている。
高本直(たかもとなお/フルート)
香川県高松市出身。東京音楽大学を経て、同大学院修士課程を修了後、渡独。ユーディ・メニューイン音楽財団、及びよんでん文化振興財団奨学生としてドイツ国立ハンブルク音楽演劇大学大学院において研鑽を積む。第11回びわ湖国際フルートコンクール入選、第14回フリードリヒ・クーラウ国際フルートコンクールセミファイナリスト。
これまでにフルートを岩崎範夫、細川順三、三上明子、ハンス=ウド・ハインツマンの各氏に師事。ソロ・室内楽を中心に、現代作曲家による新曲演奏やスタジオワーク等幅広く活動している。オーケストラ・トリプティークフルート奏者。
長谷川信久(はせがわのぶひさ/コントラバス)
東京音楽大学卒業。イーストマン音楽学校(米)にてマスタークラス修了。2000年より毎年霧島国際音楽祭にアーティストとして招聘され国内外の著名な演奏家と共演を重ねる。現在、東京フィルハーモニー交響楽団や群馬交響楽団にて客演首席コントラバス奏者を務める他、東京シンフォニエッタやアンサンブル・インタラクティブ・トキオのメンバーとして現代曲の分野でも活躍している。また近年は指揮者としても活躍の場を拡げている。コントラバスを吉田秀、永島義男、J.ヴァンデマークの各氏に、指揮法を小川晶久氏に師事。
松元博志(まつもとひろし/ピアノ)
国立音楽大学音楽学部器楽学科ピアノ専攻卒業。同大学院音楽研究科修士課程器楽専攻修了。
これまでにピアノを大内裕子、大黒康子、山内直美、安井耕一の各氏に、室内楽を徳永二男、長尾洋史の各氏に、伴奏法を浅井道子氏に師事。
現在、室内合唱団 日唱(日本合唱協会)をはじめ多くの合唱団にてピアニストを務め、声楽・器楽・合唱の共演者として多くの演奏会に出演。新作初演やレコーディングにも携わるなど、活発な演奏活動を行っている。
三浦舞(みうらまい/オーボエ)
岡山県出身。12歳よりオーボエを始める。東京音楽大学卒業。在学中、東京音楽大学シンフォニックウインドアンサンブルのメンバーとして台湾演奏旅行(指揮: 汐澤安彦氏)に参加し、台北、台中、高雄の各地にて演奏会に出演。2012年、第4回ドルチェ楽器デビューコンサートin東京に出演。また同年11月、地元岡山の岡山 県立美術館ホールにてデビューコンサートを行い、好評を博す。2017年、岡山市ジュニアオーケストラとモーツァルトのオーボエ協奏曲を共演。現在、フリーのオーボエ奏者として全国各地で、室内楽や吹奏楽、オーケストラ等の演奏活動 や、中高生の指導など幅広く活動中。島村楽器音楽教室オーボエ科講師。
これまでにオーボエを、上田美佐、広田智之の両氏に、室内楽を宮本文昭、浜道晃、安原理喜、中野真理、霧生吉秀の各氏に師事。
宮部貴絵(みやべきえ/ファゴット)
埼玉県出身。武蔵野音楽大学卒業。第7回日本アンサンブルコンクール室内楽部門優秀演奏者賞、全音楽譜出版社受賞。レインボウ21サントリーホールデビューコンサート2008に出演。桐朋学園大学音楽学部嘱託演奏員、埼玉県立芸術総合高等学校非常勤講師を経て、現在フリーランスとしてオーケストラや吹奏楽、アンサンブル等の演奏活動を行っている。
これまでにファゴットを岡崎耕治氏に師事、吉田將、グスタヴォ・ヌネッツ、ヴァレンティーノ・ズッキアッティ、マルテ・レファート、向後崇雄の各氏のレッスンを受講。室内楽を吉田將、鈴木良昭、猶井正幸、岡本正之、亀井良信の各氏に師事。オーケストラ・トリプティーク団員。
『アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌』の録音で使用されたティンパニについて
今回の録音で使用されたティンパニは、有賀誠門の所有する2種の楽器である。このティンパニの特徴は、楽器のヘッド(打面となる皮膜の部分)に、本皮を使用していることである。本作品で指定された奏法に応えるには、現在主流となっているプラスティックのヘッドを持つ楽器ではなく、本皮の楽器が必要であるという有賀誠門たっての希望でこの楽器の使用が決定した。その理由は、皮による温かな音色だけではなく、プラスティックヘッドだと、表面に引っかかりがなく滑ってしまうが、皮を使うと、ザラザラとして、手で打ったり爪を使った叩き方が効果を発揮しやすいことを踏まえてであった。
この楽器のもう一つの特徴は、「手締め式のティンパニ」であることだ。現代のティンパニは足ペダルによって皮の張力を張ったり緩めたりすることで音程を変化させるが、ここで使用したティンパニは、楽器自体が回転することで皮の張力を変化させる。チューニングボルトを手で締め、楽器を回転させることによって音程を調節するのである。
なお、使用された2種類のうちの片方は、NHK交響楽団の前身である新交響楽団で使用されていたものである(当時のティンパニ奏者は、『アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌』の初演奏者である小森宗太郎もいた)。ティンパニが現役を退き、倉庫に眠っていたのを、有賀誠門が払い受けた。この楽器がどのようにして日本にたどり着いたのかは不明だが、楽器を作ったのはイギリスで活躍したドイツ人音楽で発明家のJohann Stumpff(1769-1846)であり、1815年頃に作成したモデルと推測されている。
もう片方は、ヴァイオリン奏者で東京音楽学校の外国人教師であったアウグスト・ ユンケル(独 1868-1944)が、1904年に東京音楽学校に寄贈したものである。ユンケルはベルリンフィルのコンサートマスターなど歴任して来日、東京音楽学校でオーケストラを編成して多くの弟子を育てた。つまりこの楽器は日本のオーケストラ黎明期に使用されたのと形容できる。
釜の胴体には「PRESENTED TO TOKYO ACADEMY OF MUSIC BY PROF. A JUNKER 1904」と刻印されており、後の調査で皮を押さえる枠の裏側から主に西洋でしか使われなかった塗料が確認され外来の楽器であることが証明された。戦後、東京音楽学校が東京藝術大学に統合されてからも使用され、指揮者の故岩城宏之が打楽器科に在籍時代にも演奏していたとされる。その後、新型のペダルティンパニが輸入されてからは現役を退き、倉庫に眠っているのを有賀誠門が見つけて、払い下げを受けた。有賀は東京藝術大学退官後も自宅で保管してきたが、その愛弟子である仙台フィルハーモニー管弦楽団ティンパニ奏者の竹内将也が保管を委託され、現在、仙台フィルの演奏会 などでも使用されている。現代の楽器に比べて釜の径が小さく、皮を張る為のネジは7本ついている。楽器を支える木製の四脚や木製の蓋もついており、歴史を語る貴重な楽器である。
今回の録音だけのために、有賀誠門、竹内将也、両氏と、仙台フィルハーモニー管弦楽団の協力によって仙台から東京へ輸送して、レコーディングを行った。日本の洋楽史と共に生き、今も重厚な響きを奏でる楽器と、先人への深い感謝の思いと共に本稿を執筆した(西耕一)。
■伊福部昭(いふくべ・あきら)プロフィール
1914年5月31日、釧路町幣舞にて誕生、音更にて育つ。アイヌとともに育った幼少時が音楽的原体験となる。伊福部家の家学は『老子』、幼い頃から父に教え込まれる。北海道帝国大学農学部林学科に進みつつ音楽を独学、ヴァイオリンを弾く。二人の兄や、早坂文雄、三浦淳史らと、ストラヴィンスキー、ラヴェル、サティなどに触れ、熱き音楽的青春を過ごす。21歳の時「日本狂詩曲」がチェレブニン賞を受賞するが、大学卒業後は林務官として北海道に留まる。戦後、1946年に作曲家として生きる決意を胸に32歳で上京。東京音楽学校(現・東京藝大)講師として芥川也寸志、黛敏郎、矢代秋雄、池野成、小杉太一郎、三木稔、学外で松村禎三、石井眞木、真鍋理一郎、今井重幸等を育てる傍ら、多くの映画音楽を生み出した。1954年40歳、映画『ゴジラ』の音楽を担当、日本の映画音楽において奇跡的出会いであった。同年、初の交響曲「シンフォニア・タプカーラ」を発表。多くの作品、弟子、映画音楽を残して、2006年2月8日に91歳でこの世を去った。
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担当 西
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