【矢野経済研究所プレスリリース】車載用リチウムイオン電池世界市場に関する調査を実施(2023年)〜2025年の車載用リチウムイオン電池世界市場は約1TWhと予測、2023年は電動化加速感に変化の兆し〜
[23/12/28]
提供元:DreamNews
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株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、車載用リチウムイオン電池(Lithium-ion Battery、以下LiB)世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、世界の車載用LiB市場推移・予測について公表する。
1. 市場概況
2023年の車載用LiB世界市場規模は容量ベースで前年比124.5%の775GWh、xEV(EV、PHEV、HEV)の世界生産台数増加と連動し、車載用LiB市場も拡大する見込みである。xEVタイプ別に見ると、HEVが6.7GWh(前年比124.0%)、PHEVが57.5GWh(同126.0%)、EVは710GWh(同124.4%)と推計する。
コロナ禍以降も電動車市場は成長を継続しており、中国に続き、欧州、北米へと成長エリアは広がりを見せている。世界の自動車生産台数(全体)がコロナ禍以前の規模に回復しない中で、電動車は2022年には生産台数全体の10%を超える構成比となっており、2023年では15%台が視野に入る見込みとなっている。
Conservative(市場ベース)予測:xEVタイプ別車載用LiB世界市場規模推移・予測
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000292461&id=bodyimage1】
Aggressive(政策ベース)予測:車載用LiB世界市場規模予測
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000292461&id=bodyimage2】
2.注目トピック〜電動車普及計画や目標の加速感に変化の兆し
欧州では、欧州委員会「Fit for 55」(2021年発表)の中で「2035年から内燃機関(ICE)車の新車販売禁止」が打ち出され、2022年には欧州議会が2035年までに乗用車と商用車のCO?排出ゼロとする法案を採択し、加盟国からなる理事会での審議が行われる流れとなっていた。2023年に入り、欧州議会は2035年以降のエンジン車の新車販売を実質的に禁止する法案を採択したが、ドイツ等が反対を表明し、温暖化ガスの排出ゼロと見なす合成燃料(e-fuel)の利用に限り販売を認める形となった。これにより事実上、2035年からの内燃機関車の新車販売禁止は撤回される形となった。なお、イギリスでも2023年9月、2030年に設定していた国内でのガソリン車、ディーゼル車の新車販売禁止を2035年に先送りする事が発表されている。
米国はバイデン政権の元で連邦政府としての電動車普及政策が推進されており、大統領令で2030年までに新車販売の50%を電動車(PHEV、EV)と燃料電池車(FCV)とする目標が定められている。また、カリフォルニア州は2035年にはHEVを含むガソリン車の新車販売を全面禁止する規制案(電動航続距離80km以上のPHEVはZEVとして認証)を決定している。一方、自動車メーカー側ではGM、FordでEV生産の開始延期やLiBメーカーとの合弁によるバッテリー工場計画の計画撤回、設立延期の動きが見られる。
中国は「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」(2020年発表)において、2035年には新車販売の全てを環境対応車(50%:EVを柱とする新エネルギー車、残り50%:HEV)とする方針が打ち出されている。中国EV市場では2021年〜2022年にかけて急拡大を見せていた「宏光MINI」を始めとする低容量EVに関して、2023年には成長率に鈍化傾向が見られる。
日本では、2030年代半ばまでにHEVを除いた内燃機関(ICE)車の新車販売ゼロが目標とされており、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は、2023年度(令和5年度)補正予算では約1,291億円と大幅に増額されるなど、電動車の普及拡大に向けた政策補助が手厚くなる向きにある。
3.将来展望
xEV市場を取り巻く市場環境を考慮し、成長率高めの「Aggrecive(政策ベース)予測」と成長率低めの「Consevative(市場ベース)予測」の2つのシナリオで成長を予測した。
Aggrecive予測では、世界的な環境規制強化の動きと各国政府の普及政策、それに対応した自動車メーカー各社の電動化シフトを背景に、各国政府のxEV導入目標台数が概ね計画通りに実現されることを想定し、比較的高い成長率で推移するシナリオとした。Aggrecive予測における車載用LiB世界市場は容量ベースで、2025年で1,248GWh、2030年には2,241GWh、2035年では3,164GWhになると予測する。
一方、Consevative予測では、使い勝手の良さや車両価格の求めやすさ等の消費者側のニーズを含め、xEV普及拡大の各種課題の解決にある程度の時間を要する設定とし、Aggrecive予測に比べて成長率は低めのシナリオとなっている。
PHEV、EVの市場成長は中国を除き、引き続き政策依存の側面が強いと考える。
欧州では英国、ドイツ等での補助金打ち切り・減額を受け、PHEV、EVの市場成長率は鈍化傾向にある。2022年のLiB部材コスト上昇による車載用LiB価格の値上げや、ロシア・ウクライナ情勢に起因するエネルギーコスト上昇、高インフレが重なった事で、PHEV、EV普及拡大のハードルはより上がる形となった。欧州自動車メーカーには「PHEV見直し」のような動きも見られ、EV市場は期待された程の成長に至らない可能性がある。
北米では2023年にEV生産の開始延期やLiBメーカーとの合弁工場計画に関する見直しの動きが相次いでいる。米国のIRA(インフレ抑制)法の補助金政策が追い風ではあるが、自動車メーカーが掲げた当初の目標程には足元のEV販売は伸びておらず、また、中国のサプライヤーを除外するIRA法の条件が故に戦略再考を迫られている側面もある。自動車メーカーの生産拠点やLiBメーカーの生産拠点に関して北米への進出が積極的に推進される等、北米の電動車市場は今後伸びていく流れにあるが、その成長率はAggrecive予測程の伸びには至らないと予測する。Consevative予測における車載用LiB世界市場は、2025年で989GWh、2030年には1,536GWh、2035年では2,231GWhになると予測する。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3430
調査要綱
1.調査期間:2023年8月〜11月
2.調査対象:自動車メーカー、車載用リチウムイオン電池メーカー(日本、欧州、中国、韓国)
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2023年11月30日
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株式会社矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム
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1. 市場概況
2023年の車載用LiB世界市場規模は容量ベースで前年比124.5%の775GWh、xEV(EV、PHEV、HEV)の世界生産台数増加と連動し、車載用LiB市場も拡大する見込みである。xEVタイプ別に見ると、HEVが6.7GWh(前年比124.0%)、PHEVが57.5GWh(同126.0%)、EVは710GWh(同124.4%)と推計する。
コロナ禍以降も電動車市場は成長を継続しており、中国に続き、欧州、北米へと成長エリアは広がりを見せている。世界の自動車生産台数(全体)がコロナ禍以前の規模に回復しない中で、電動車は2022年には生産台数全体の10%を超える構成比となっており、2023年では15%台が視野に入る見込みとなっている。
Conservative(市場ベース)予測:xEVタイプ別車載用LiB世界市場規模推移・予測
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Aggressive(政策ベース)予測:車載用LiB世界市場規模予測
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000292461&id=bodyimage2】
2.注目トピック〜電動車普及計画や目標の加速感に変化の兆し
欧州では、欧州委員会「Fit for 55」(2021年発表)の中で「2035年から内燃機関(ICE)車の新車販売禁止」が打ち出され、2022年には欧州議会が2035年までに乗用車と商用車のCO?排出ゼロとする法案を採択し、加盟国からなる理事会での審議が行われる流れとなっていた。2023年に入り、欧州議会は2035年以降のエンジン車の新車販売を実質的に禁止する法案を採択したが、ドイツ等が反対を表明し、温暖化ガスの排出ゼロと見なす合成燃料(e-fuel)の利用に限り販売を認める形となった。これにより事実上、2035年からの内燃機関車の新車販売禁止は撤回される形となった。なお、イギリスでも2023年9月、2030年に設定していた国内でのガソリン車、ディーゼル車の新車販売禁止を2035年に先送りする事が発表されている。
米国はバイデン政権の元で連邦政府としての電動車普及政策が推進されており、大統領令で2030年までに新車販売の50%を電動車(PHEV、EV)と燃料電池車(FCV)とする目標が定められている。また、カリフォルニア州は2035年にはHEVを含むガソリン車の新車販売を全面禁止する規制案(電動航続距離80km以上のPHEVはZEVとして認証)を決定している。一方、自動車メーカー側ではGM、FordでEV生産の開始延期やLiBメーカーとの合弁によるバッテリー工場計画の計画撤回、設立延期の動きが見られる。
中国は「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」(2020年発表)において、2035年には新車販売の全てを環境対応車(50%:EVを柱とする新エネルギー車、残り50%:HEV)とする方針が打ち出されている。中国EV市場では2021年〜2022年にかけて急拡大を見せていた「宏光MINI」を始めとする低容量EVに関して、2023年には成長率に鈍化傾向が見られる。
日本では、2030年代半ばまでにHEVを除いた内燃機関(ICE)車の新車販売ゼロが目標とされており、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は、2023年度(令和5年度)補正予算では約1,291億円と大幅に増額されるなど、電動車の普及拡大に向けた政策補助が手厚くなる向きにある。
3.将来展望
xEV市場を取り巻く市場環境を考慮し、成長率高めの「Aggrecive(政策ベース)予測」と成長率低めの「Consevative(市場ベース)予測」の2つのシナリオで成長を予測した。
Aggrecive予測では、世界的な環境規制強化の動きと各国政府の普及政策、それに対応した自動車メーカー各社の電動化シフトを背景に、各国政府のxEV導入目標台数が概ね計画通りに実現されることを想定し、比較的高い成長率で推移するシナリオとした。Aggrecive予測における車載用LiB世界市場は容量ベースで、2025年で1,248GWh、2030年には2,241GWh、2035年では3,164GWhになると予測する。
一方、Consevative予測では、使い勝手の良さや車両価格の求めやすさ等の消費者側のニーズを含め、xEV普及拡大の各種課題の解決にある程度の時間を要する設定とし、Aggrecive予測に比べて成長率は低めのシナリオとなっている。
PHEV、EVの市場成長は中国を除き、引き続き政策依存の側面が強いと考える。
欧州では英国、ドイツ等での補助金打ち切り・減額を受け、PHEV、EVの市場成長率は鈍化傾向にある。2022年のLiB部材コスト上昇による車載用LiB価格の値上げや、ロシア・ウクライナ情勢に起因するエネルギーコスト上昇、高インフレが重なった事で、PHEV、EV普及拡大のハードルはより上がる形となった。欧州自動車メーカーには「PHEV見直し」のような動きも見られ、EV市場は期待された程の成長に至らない可能性がある。
北米では2023年にEV生産の開始延期やLiBメーカーとの合弁工場計画に関する見直しの動きが相次いでいる。米国のIRA(インフレ抑制)法の補助金政策が追い風ではあるが、自動車メーカーが掲げた当初の目標程には足元のEV販売は伸びておらず、また、中国のサプライヤーを除外するIRA法の条件が故に戦略再考を迫られている側面もある。自動車メーカーの生産拠点やLiBメーカーの生産拠点に関して北米への進出が積極的に推進される等、北米の電動車市場は今後伸びていく流れにあるが、その成長率はAggrecive予測程の伸びには至らないと予測する。Consevative予測における車載用LiB世界市場は、2025年で989GWh、2030年には1,536GWh、2035年では2,231GWhになると予測する。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3430
調査要綱
1.調査期間:2023年8月〜11月
2.調査対象:自動車メーカー、車載用リチウムイオン電池メーカー(日本、欧州、中国、韓国)
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2023年11月30日
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