バテル記念研究所が運営するオークリッジ国立研究所が、ナノ小孔グラフィン膜を使った新たな淡水化方法を発見
バテル記念研究所(以下、バテル)の運営するオークリッジ国立研究所の研究者たちは、薄くて強度の高いグラフィンを用いた膜を使った海水の淡水化に成功し、その模様はNature Nanotechnology 5月号に掲載されました。
地球上には飲料に適した水の量はわずか1%と言われています。飲料用水のみならず農業用水や工業用水を将来にわたって絶え間なく供給し続けるためには、海水から塩分などのミネラルを除去する技術が必要となるでしょう。しかしながら、海水の淡水化には多くのエネルギーが必要とされるなど、いまだに多くの課題が存在しています。
バテル記念研究所(以下、バテル)の運営するオークリッジ国立研究所の研究者たちは、薄くて強度の高いグラフィンを用いた膜を使った海水の淡水化に成功し、その模様はNature Nanotechnology 5月号に掲載されました。
「私たちの成果は、独立した小孔グラフィンで海水を淡水化出来ることを証明しています。」とオークリッジ国立研究所化学ディビジョンのシャノン・マーリンは述べています。「これまでもグラフィンを使った膜は存在していましたが、高性能ポリマー逆浸透膜比べると処理能力は劣っていましたので、これは大きな進歩です。」
現在の主要な水浄化方法には蒸留法と逆浸透膜が採用されています。蒸留法は大きなエネルギー量を必要とし、逆浸透膜は比較的経済的なやり方ではありますが、エネルギー対効果が課題となっています。
バテルの研究成果のカギは、グラフィンに小孔を作ることでした。孔(あな)が無ければ、水の分子はグラフィンの表面を通り抜ける事はできません。しかし、適切な大きさの孔を開ける事で、水の分子はグラフィンの膜を浸透することができます。つまり、多孔性の膜が溶液の濃度の高い側へ移動する半浸透性を可能にするのです。
今日利用されている逆浸透膜の多くはポリマー製です。しかし、ポリマー製のフィルターは浄水処理に大きな圧力、つまり、大きなエネルギーを必要とします。膜をもっと多孔化し、薄くすることができれば膜の流動量を増やし、浄化に必要なエネルギーを削減することができます。
グラフィンのアドバンテージ
グラフィンの厚さはわずかに1原子分しかありませんが、その強度は高く、同時にフレキシブルな素材であるので、機能的、化学的な安定性は分離膜として理想的です。多孔性のグラフィン膜はポリマー製よりも浸透性が高く、同じ条件下ではより速い浄化を可能にします。もし、単一層のグラフィン膜の実用化に成功することができれば、流動量をさらに増やし、膜面積を減らすことができます。つまり、淡水化のエネルギー効率をさらに高めることができます。
グラフィンで膜を作る手順は、1000℃に熱したメタンから銅膜を触媒として炭素と水素を発生させることから始まります。すると、1原子の厚さの炭素原子が六角形に並ぶシートを自己組織化します。これがグラフィン膜です。出来上がったグラフィン膜をマイクロメートルサイズの小孔のあるサポート窒化シリコンにのせ、酸素プラズマで格子構造の中から炭素原子を押出して孔を作ります。プラズマを浴びる時間が長いと孔は大きくなります。これらの手順を経て作成された膜は塩水を素早く分離し、100%近い塩イオンを分離することに成功しました。
さらに、バテルの研究者たちは、淡水化に最適な孔のサイズを調べるために、原子レベルで画像化できる走査透過型電子顕微鏡を使うことができるCenter for Nanophase Materials Sciences (CNMS)に協力を呼びかけました。
その結果、彼らとともに、グラフィンに最適な浸透孔の大きさは0.5から1ナノメートルであることを発見しました。さらに、淡水化に最適な孔の密度が、100平方ナノメートルあたり1つであることも見つけました。孔は多い方がいいのですが、ある限度までしか設計できません。限度を超えてしまうと耐久性を犠牲にしてしまうのです。
「多孔性グラフィン膜の量産は現在の産業レベルで十分に可能です。いくつかの生産方法を試した結果、今のところ酸素プラズマ方式が最も優れたやり方と思われます。ただし、心配なことがあります。それは私たちがグレムリンと呼んでいる逆浸透膜を詰まらせる生物が付着することと、圧力下での安定性を確保することです。」と前述のシャノン・マーリンは述べています。
オリジナル論文:Water Desalination Using Nanoporous Single-Layer Graphene
【オークリッジ国立研究所について】
オークリッジ国立研究所の米国防省科学オフィスはバテルによって運営されています。米国防省科学オフィスは、社会に差迫った研究テーマを扱う米国最大の自然科学基礎研究を行う助成機関です。
【バテル記念研究所について】
バテル記念研究所は1929年に米オハイオ州で設立された世界最大規模の非営利研究機関です。設立以来、アメリカのエネルギー政策、環境政策、ホームランドセキュリティーなど、さまざまな分野で研究開発を行い、ゼロックスコピー機の事業化、コンパクトディスクやバーコード開発などの成果を上げてきました。
所在地 : 505 King Avenue, Columbus, OH 43201
設立 : 1929年
代表者 : 代表取締役兼CEO Jeffrey Wadsworth
URL : http://battelle.org/
事業内容: 研究所の運営管理、エネルギー・環境・医療・ナショナルセエキュリティ分野などの受託研究開発
【バテルジャパン株式会社について】
バテルジャパン株式会社は、1970年より共同で新技術の研究開発や技術開発支援などを3,000件以上行ってきたバテル記念研究所と三菱商事株式会社との合弁会社として2006年に設立されました。「最先端の科学技術から、明日のビジネスイノベーションへ」をスローガンに、バテル記念研究所の研究者たちとの連携を通して日本およびアジアの企業に科学技術とビジネス戦略の融合、世界をつなぐマーケット・デベロップメント、シーズ育成支援サービスを提供しています。
所在地:東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル17F
代表者:代表取締役 ジェラルド・ハネ
設立:2006年2月
資本金:1億円
URL:http://www.battelle-japan.co.jp
事業内容: 受託研究開発、技術開発に基づいた事業化・技術戦略提案、海外動向調査
【本件に関するお問い合わせ先】
企業名 :バテルジャパン株式会社
担当者名:村上・松原
TEL:03‐3593‐2190
Mail: info@battelle-japan.co.jp
地球上には飲料に適した水の量はわずか1%と言われています。飲料用水のみならず農業用水や工業用水を将来にわたって絶え間なく供給し続けるためには、海水から塩分などのミネラルを除去する技術が必要となるでしょう。しかしながら、海水の淡水化には多くのエネルギーが必要とされるなど、いまだに多くの課題が存在しています。
バテル記念研究所(以下、バテル)の運営するオークリッジ国立研究所の研究者たちは、薄くて強度の高いグラフィンを用いた膜を使った海水の淡水化に成功し、その模様はNature Nanotechnology 5月号に掲載されました。
「私たちの成果は、独立した小孔グラフィンで海水を淡水化出来ることを証明しています。」とオークリッジ国立研究所化学ディビジョンのシャノン・マーリンは述べています。「これまでもグラフィンを使った膜は存在していましたが、高性能ポリマー逆浸透膜比べると処理能力は劣っていましたので、これは大きな進歩です。」
現在の主要な水浄化方法には蒸留法と逆浸透膜が採用されています。蒸留法は大きなエネルギー量を必要とし、逆浸透膜は比較的経済的なやり方ではありますが、エネルギー対効果が課題となっています。
バテルの研究成果のカギは、グラフィンに小孔を作ることでした。孔(あな)が無ければ、水の分子はグラフィンの表面を通り抜ける事はできません。しかし、適切な大きさの孔を開ける事で、水の分子はグラフィンの膜を浸透することができます。つまり、多孔性の膜が溶液の濃度の高い側へ移動する半浸透性を可能にするのです。
今日利用されている逆浸透膜の多くはポリマー製です。しかし、ポリマー製のフィルターは浄水処理に大きな圧力、つまり、大きなエネルギーを必要とします。膜をもっと多孔化し、薄くすることができれば膜の流動量を増やし、浄化に必要なエネルギーを削減することができます。
グラフィンのアドバンテージ
グラフィンの厚さはわずかに1原子分しかありませんが、その強度は高く、同時にフレキシブルな素材であるので、機能的、化学的な安定性は分離膜として理想的です。多孔性のグラフィン膜はポリマー製よりも浸透性が高く、同じ条件下ではより速い浄化を可能にします。もし、単一層のグラフィン膜の実用化に成功することができれば、流動量をさらに増やし、膜面積を減らすことができます。つまり、淡水化のエネルギー効率をさらに高めることができます。
グラフィンで膜を作る手順は、1000℃に熱したメタンから銅膜を触媒として炭素と水素を発生させることから始まります。すると、1原子の厚さの炭素原子が六角形に並ぶシートを自己組織化します。これがグラフィン膜です。出来上がったグラフィン膜をマイクロメートルサイズの小孔のあるサポート窒化シリコンにのせ、酸素プラズマで格子構造の中から炭素原子を押出して孔を作ります。プラズマを浴びる時間が長いと孔は大きくなります。これらの手順を経て作成された膜は塩水を素早く分離し、100%近い塩イオンを分離することに成功しました。
さらに、バテルの研究者たちは、淡水化に最適な孔のサイズを調べるために、原子レベルで画像化できる走査透過型電子顕微鏡を使うことができるCenter for Nanophase Materials Sciences (CNMS)に協力を呼びかけました。
その結果、彼らとともに、グラフィンに最適な浸透孔の大きさは0.5から1ナノメートルであることを発見しました。さらに、淡水化に最適な孔の密度が、100平方ナノメートルあたり1つであることも見つけました。孔は多い方がいいのですが、ある限度までしか設計できません。限度を超えてしまうと耐久性を犠牲にしてしまうのです。
「多孔性グラフィン膜の量産は現在の産業レベルで十分に可能です。いくつかの生産方法を試した結果、今のところ酸素プラズマ方式が最も優れたやり方と思われます。ただし、心配なことがあります。それは私たちがグレムリンと呼んでいる逆浸透膜を詰まらせる生物が付着することと、圧力下での安定性を確保することです。」と前述のシャノン・マーリンは述べています。
オリジナル論文:Water Desalination Using Nanoporous Single-Layer Graphene
【オークリッジ国立研究所について】
オークリッジ国立研究所の米国防省科学オフィスはバテルによって運営されています。米国防省科学オフィスは、社会に差迫った研究テーマを扱う米国最大の自然科学基礎研究を行う助成機関です。
【バテル記念研究所について】
バテル記念研究所は1929年に米オハイオ州で設立された世界最大規模の非営利研究機関です。設立以来、アメリカのエネルギー政策、環境政策、ホームランドセキュリティーなど、さまざまな分野で研究開発を行い、ゼロックスコピー機の事業化、コンパクトディスクやバーコード開発などの成果を上げてきました。
所在地 : 505 King Avenue, Columbus, OH 43201
設立 : 1929年
代表者 : 代表取締役兼CEO Jeffrey Wadsworth
URL : http://battelle.org/
事業内容: 研究所の運営管理、エネルギー・環境・医療・ナショナルセエキュリティ分野などの受託研究開発
【バテルジャパン株式会社について】
バテルジャパン株式会社は、1970年より共同で新技術の研究開発や技術開発支援などを3,000件以上行ってきたバテル記念研究所と三菱商事株式会社との合弁会社として2006年に設立されました。「最先端の科学技術から、明日のビジネスイノベーションへ」をスローガンに、バテル記念研究所の研究者たちとの連携を通して日本およびアジアの企業に科学技術とビジネス戦略の融合、世界をつなぐマーケット・デベロップメント、シーズ育成支援サービスを提供しています。
所在地:東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル17F
代表者:代表取締役 ジェラルド・ハネ
設立:2006年2月
資本金:1億円
URL:http://www.battelle-japan.co.jp
事業内容: 受託研究開発、技術開発に基づいた事業化・技術戦略提案、海外動向調査
【本件に関するお問い合わせ先】
企業名 :バテルジャパン株式会社
担当者名:村上・松原
TEL:03‐3593‐2190
Mail: info@battelle-japan.co.jp