企業進出が急増するミャンマーで、長期フィールドワークを継続する勝田吉彰研究室が駐在環境の最新レポートを発表。
渡航医学・海外メンタルヘルスの調査研究を行う、関西福祉大学 勝田吉彰研究室が、調査報告「ミャンマー在留邦人を取り巻くメンタルヘルス環境~2015 年の現状~」を取りまとめました。製造業とサービス産業が同時に成長するミャンマーで起きている変化を、現地在留邦人の抱える問題から見なおすことで、新たな課題が明らかになりました。
外務省医務官として世界各国で海外勤務者の健康管理を行い、主に感染症およびメンタルヘルスを研究テーマとしてきた勝田吉彰(関西福祉大学教授)が、ミャンマー進出企業派遣者を取り巻く環境に関する調査報告「ミャンマー在留邦人を取り巻くメンタルヘルス環境~2015 年の現状~」を発表いたしました。
■政治経済さまざまな分野が動くミャンマーで、海外勤務者を取り巻く環境を継続的に調査
今回の発表は、ミャンマー連邦共和国にて 2012年よりフィールドワークを継続してきた結果に基づき、海外に進出する個人・団体に対して、知見を提供するものです。これまでに、精神神経学会および、日本渡航医学会での発表と学会誌への掲載が行われました。
ミャンマーを対象とした類似研究は無く、独立行政法人日本学術振興会の科学研究費に採択されるなどの評価を得てまいりました。今回の発表では、現地在留邦人、医療関係者を対象に 2014年〜15年までの変化を比較しています。
これまでASEAN諸国において、日本企業進出が広がる過程では「製造業が育ったらサービス産業にも進出が広がる」というパターンが一般的であったのに対して、ミャンマーでは製造業とサービス産業が同時に進行し、ダイナミックな成長を遂げています。このような多面的な拡大、在留邦人数の急増の中で、在留邦人のストレス要因や解消手段にも変化がありました。渡航前に机上で学んだミャンマーに対する限られた知識で対応せざるを得なかったかつての状況から、実際の生活を通して得た同国への理解へと進んでいる反面で、狂犬病やデング熱といった感染症の脅威や、目の前に展開する政治的展開など、成長する国ならではの課題・不安要素も山積しています。
■変化するストレス要因と、その解消方法。アルコール依存が将来の課題に
国内での生活環境と比較して各種のインフラがきわめて貧困な状態はストレス要因として依然高水準にあげられています。一方で「ミャンマー人」をストレス要因に挙げる人の割合が減りました。これは、ミャンマーに進出した当初には、現地人の思考・行動様式について過去の成書に書かれた「勤勉・正直・真面目」といった一面的情報しか得られず、現実に目の前で発生する事象に戸惑いつつも、経験値の蓄積により改善してきたものと思われます。具体的には、現地の人々が酒を飲んで投石の喧嘩を始める。日本人に対して家賃請求額を倍につり上げる。といった日本国内では起こりにくい状況に対して、あらかじめ想定して対応できる知識を身につけたと考えられます。 このことから、今後の新しく開拓されゆく進出先においては、進出企業関係者に対して、文化人類学的知見を提供するシステムの構築も望まれます。
ストレス解消手段については、ミャンマーで生活する中でも日本コンテンツを視聴するしか楽しみがない「インターネット依存型」の状況が緩和される一方で、独り酒を含めた飲酒関連が依然として高水準です。将来のアルコール関連問題の発生が危惧されます。
感染症関連では、日本に比べると絶対数が多いデング熱への不安と、狂犬病の脅威感が目立ちました。当地では市内中心部でさえ野犬の徘徊が日常的に観察されます。予防注射など適切な処置を受けていない犬を見かけることが影響していると考えられ、感染症にかかわる予防策などの情報提供が求められます。
■グローバリゼーションの中で、残された“最後のフロンティア”にむかう日本人を支援する必要性
グローバリゼーションを背景に、大企業から中小零細企業さらには個人事業主まで海外進出が広がっています。また、進出先もアジア後発国やアフリカなど、これまで実績のなかった”最後のフロンティア”と呼ばれる地域に拡大していくことは間違いありません。現時点においても、駐在者や出張者など海外勤務者のメンタル不調の発生が報じられ、対策は急務です。拡大してゆく海外勤務に対して国や企業がどのような支援を行わなければならないのか国策としても把握してゆく必要があります。当研究は特に変化率の大きい場所(ミャンマー)で定点観測を長期継続することにより、経済発展や日本人社会拡大の各段階に応じて、必要な支援がどう変化するのかを明らかにする初の取り組みです。今後2019年以降まで知見を蓄積し海外在留邦人支援の政策提言をおこなう予定です。
本文は本リリースの添付ファイルまたは
または大学リポジトリからpdfダウンロードできます(「関西福祉大学リポジトリ 勝田」で検索)
https://kusw.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=480&item_no=1&page_id=24&block_id=42
【勝田吉彰研究室について】
研究室:関西福祉大学 勝田吉彰研究室
代表者:勝田吉彰教授
(外務省医務官OB、スーダン・セネガル・フランス・中国に在勤)
所在地:〒678-0255 兵庫県赤穂市新田380-3
TEL:0791-46-2525(関西福祉大学・代表)
FAX:0791-46-2526(関西福祉大学・代表)
mail:myanmar@zaz.att.ne.jp
専門分野:
渡航医学(国境を越える感染症・海外の医療)
多文化間精神医学(国境を越えるメンタルヘルス)
ミャンマーよもやま情報局:http://www.myanmarinfo.jp/
新型インフルエンザ・ウォッチング日記 〜渡航医学のブログ〜:http://blog.goo.ne.jp/tabibito12
Amazon著者ページ(勝田 吉彰):
http://www.amazon.co.jp/gp/entity/store/B004LOLZSW/
パンデミック症候群〜国境を越える処方箋〜(エネルギーフォーラム新書)
https://www.amazon.co.jp/dp/4885554543
外務省医務官として世界各国で海外勤務者の健康管理を行い、主に感染症およびメンタルヘルスを研究テーマとしてきた勝田吉彰(関西福祉大学教授)が、ミャンマー進出企業派遣者を取り巻く環境に関する調査報告「ミャンマー在留邦人を取り巻くメンタルヘルス環境~2015 年の現状~」を発表いたしました。
■政治経済さまざまな分野が動くミャンマーで、海外勤務者を取り巻く環境を継続的に調査
今回の発表は、ミャンマー連邦共和国にて 2012年よりフィールドワークを継続してきた結果に基づき、海外に進出する個人・団体に対して、知見を提供するものです。これまでに、精神神経学会および、日本渡航医学会での発表と学会誌への掲載が行われました。
ミャンマーを対象とした類似研究は無く、独立行政法人日本学術振興会の科学研究費に採択されるなどの評価を得てまいりました。今回の発表では、現地在留邦人、医療関係者を対象に 2014年〜15年までの変化を比較しています。
これまでASEAN諸国において、日本企業進出が広がる過程では「製造業が育ったらサービス産業にも進出が広がる」というパターンが一般的であったのに対して、ミャンマーでは製造業とサービス産業が同時に進行し、ダイナミックな成長を遂げています。このような多面的な拡大、在留邦人数の急増の中で、在留邦人のストレス要因や解消手段にも変化がありました。渡航前に机上で学んだミャンマーに対する限られた知識で対応せざるを得なかったかつての状況から、実際の生活を通して得た同国への理解へと進んでいる反面で、狂犬病やデング熱といった感染症の脅威や、目の前に展開する政治的展開など、成長する国ならではの課題・不安要素も山積しています。
■変化するストレス要因と、その解消方法。アルコール依存が将来の課題に
国内での生活環境と比較して各種のインフラがきわめて貧困な状態はストレス要因として依然高水準にあげられています。一方で「ミャンマー人」をストレス要因に挙げる人の割合が減りました。これは、ミャンマーに進出した当初には、現地人の思考・行動様式について過去の成書に書かれた「勤勉・正直・真面目」といった一面的情報しか得られず、現実に目の前で発生する事象に戸惑いつつも、経験値の蓄積により改善してきたものと思われます。具体的には、現地の人々が酒を飲んで投石の喧嘩を始める。日本人に対して家賃請求額を倍につり上げる。といった日本国内では起こりにくい状況に対して、あらかじめ想定して対応できる知識を身につけたと考えられます。 このことから、今後の新しく開拓されゆく進出先においては、進出企業関係者に対して、文化人類学的知見を提供するシステムの構築も望まれます。
ストレス解消手段については、ミャンマーで生活する中でも日本コンテンツを視聴するしか楽しみがない「インターネット依存型」の状況が緩和される一方で、独り酒を含めた飲酒関連が依然として高水準です。将来のアルコール関連問題の発生が危惧されます。
感染症関連では、日本に比べると絶対数が多いデング熱への不安と、狂犬病の脅威感が目立ちました。当地では市内中心部でさえ野犬の徘徊が日常的に観察されます。予防注射など適切な処置を受けていない犬を見かけることが影響していると考えられ、感染症にかかわる予防策などの情報提供が求められます。
■グローバリゼーションの中で、残された“最後のフロンティア”にむかう日本人を支援する必要性
グローバリゼーションを背景に、大企業から中小零細企業さらには個人事業主まで海外進出が広がっています。また、進出先もアジア後発国やアフリカなど、これまで実績のなかった”最後のフロンティア”と呼ばれる地域に拡大していくことは間違いありません。現時点においても、駐在者や出張者など海外勤務者のメンタル不調の発生が報じられ、対策は急務です。拡大してゆく海外勤務に対して国や企業がどのような支援を行わなければならないのか国策としても把握してゆく必要があります。当研究は特に変化率の大きい場所(ミャンマー)で定点観測を長期継続することにより、経済発展や日本人社会拡大の各段階に応じて、必要な支援がどう変化するのかを明らかにする初の取り組みです。今後2019年以降まで知見を蓄積し海外在留邦人支援の政策提言をおこなう予定です。
本文は本リリースの添付ファイルまたは
または大学リポジトリからpdfダウンロードできます(「関西福祉大学リポジトリ 勝田」で検索)
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【勝田吉彰研究室について】
研究室:関西福祉大学 勝田吉彰研究室
代表者:勝田吉彰教授
(外務省医務官OB、スーダン・セネガル・フランス・中国に在勤)
所在地:〒678-0255 兵庫県赤穂市新田380-3
TEL:0791-46-2525(関西福祉大学・代表)
FAX:0791-46-2526(関西福祉大学・代表)
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専門分野:
渡航医学(国境を越える感染症・海外の医療)
多文化間精神医学(国境を越えるメンタルヘルス)
ミャンマーよもやま情報局:http://www.myanmarinfo.jp/
新型インフルエンザ・ウォッチング日記 〜渡航医学のブログ〜:http://blog.goo.ne.jp/tabibito12
Amazon著者ページ(勝田 吉彰):
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パンデミック症候群〜国境を越える処方箋〜(エネルギーフォーラム新書)
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