東京藝術大学の学生を中心としたアーティストユニットがWEB企画「MAPプロジェクト」を公開。複雑な社会問題をめぐる状況をありのままに可視化
「MAPプロジェクト」は、長崎県の石木ダム問題に関わる人々が抱える思いを、自らの思いを述べた文章とその人に見えている風景の写真を合わせて地図上に位置づけするものです。石木に限らず日本各地のダム建設がはらむさまざまな側面を描写する多角的な作品をWEB上で展開します。
東京藝術大学の大学院生を中心に2019年7月に結成されたアーティストユニット『soiのてはじめ』は、WEB企画「MAPプロジェクト」を8月30日(日)に一般公開します。アート関係者はもちろん、環境や社会問題に興味のある方に向け、「石木ダム問題」に関して調査してきたことを新しいプラットフォーム・作品としてWEBサイトで発表。これからのアート界を担う若手アーティストによる複雑な社会問題をめぐる状況をありのままに可視化したものや、『soiのてはじめ』のこれまでの活動のアーカイブも公開します。
▼ MAPプロジェクト|soiのてはじめ:https://soinotehajime.com/map.html?
■アーティストユニット『soiのてはじめ』がオンラインで公開する新しいプラットフォーム
私たち『soiのてはじめ』は、2019年7月より長崎県東彼杵郡川棚町石木郷こうばる地区を訪れ、約60年もの間くり広げられている「石木ダム問題」についての取材やリサーチを半年以上にわたり重ねました。
公共事業の開発における土地の権利をめぐり、長年行政と住民との間で対立が繰り広げられているなか、昨年、土地の所有権が住民から国へと移されました。このようななか、数週間にわたる現地滞在を複数回行ったり、また現地の子ども向けに葉っぱを用いたワークショップを開催したり、さまざまな方法で現地の方々とのコミュニケーションを図ってきました。そして住民や行政側、その他さまざまな関係者への取材・リサーチを重ねていくなかで見えてきたのは、ダム建設への賛成・反対といった二項対立では説明しきれない立場・環境に置かれて、複雑な思いを抱えている人々がいるということです。
WEB企画「MAPプロジェクト」は、そうしたさまざまな立場に置かれた人々が抱えるそれぞれの思いを、自らの思いを述べた文章とその人に見えている風景の写真を合わせて地図上に位置づけるものです。そうすることで、「石木ダム問題」をめぐる複雑な状況を、ありのまま可視化させることを目指します。また、人々の思いをそれぞれの視線によって切り取られた風景とともに見せることで、立場や環境による景色の見え方の違いもあらわにすることができると考えています。
2020年3月には、長崎県美術館の運河ギャラリーで「『soiのてはじめ』第一回滞在・取材報告展」を開催しました。こうばる地区の風景をそこで見つけた葉っぱに写真として現像した作品や、現地で暮らす人々にとっての日常を「何が心地よいか」という視点から切り取った写真作品、さらには現地に生える植物の意味を象徴的に表現した立体作品など、ダム問題の影で失われていく自然や人々の日常に対して思いを巡らせる作品を紹介。
住民の暮らしのリアル、そして石木に限らず日本各地のダム建設がはらむさまざまな側面を描写する多角的な展示としました。3日間という短い会期にも関わらず、約1,000名の方々にご来場いただき、9つのメディアにもご紹介いただきました。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、アートの世界ではオフラインでの展示が極めて難しい状況となっています。新しい作品を多くの方に見ていただく機会が減り、アーティストの存在意義を示せないでいます。しかし、そのような厳しい状況もポジティブにとらえ、オンラインの強みを生かし、新しいプラットフォーム・作品として今回の「MAPプロジェクト」を公開することとしました。
通常のオンライン展示の多くは実際の展示会場をスキャンして3Dで公開するもの、あるいは展示の機会を失った作品の展示の場所としてWEBを利用するものです。それに対して「MAPプロジェクト」は、オンラインの強みを生かして、WEBならではのこだわり、新たな可能性を試みました。
地域アートでは、実際に作家が現地に赴き作品を公開することが主流です。しかし、コロナ禍の現状では非常に困難で大きな課題となっています。そこで、地域アートの新たな可能性として本企画を提示するものです。
■アーティスト以外にキュレーターやアートマネージャーを含む新しい構成のユニット
“solution of issue”と“寄り添い”の2つの意味が込められた『soiのてはじめ』は、東京藝術大学大学院生を中心に2019年7月に結成。これからのアート界を担うアーティストによる、アートを通して社会について考えるユニットです。その強みは、アーティストだけではなく、キュレーター、アートマネージャーを含めた構成で成り立っていることです。
『soiのてはじめ』のコンセプトは以下のようなものです。
現代は、効率性の名の下に絶えず新しいものが生みだされ続けています。その一方で、長い歴史を通し培われてきた暮らしに根付いた生きる術が失われていることもまた自明です。
このような状況では、周囲に溢れる新しいモノの価値を精査したり、何かが失われていくという事実に気付いたりすることが難しいのではないでしょうか。私たちはさまざまな人々や生物、自然とのコミュニケーションを通して、そうした"新しいもの"により"失われていくもの"に寄り添うことを目指します。そのような実践によって、未来に必要なものについて考えるきっかけを、アートを通して生み出すことを目的としています。
<『soiのてはじめ』メンバー紹介>
・岩崎広大 Iwasaki Hiromasa:アーティスト
1994年 東京生まれ。2020年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻在籍
地球にあるものはすべて、この星でおきた出来事の記録だといえる。すべて偶然とも必然ともいえるような数々の出来事によって、間違いなくここにある。それらの記録に触れることで、彼らの記憶に触れ、彼らの知り得た情報を追体験していくことが、今をより良く生きるための、なにかヒントになるような気がしてならない。一つずつ世界に溢れている未現像のネガフィルムを発見していき、それらを現像し、どうにかして触れ得るものにしていきたいと考え制作している。
主な展示歴に「imshow」(2020年、Alt_Medium、東京)「Medias」(2019年、あざみの市民ギャラリー、横浜)「YouFab 2018 Exhibition Polemica!」(2018年、九段house、東京 ) 「孤独の地図」(2018年、四ツ谷未確認スタジオ、東京)など
https://iwasakihiromasa.myportfolio.com/
・亀倉知恵 Kamekura Chie:アーティスト
1992年 新潟県出身。2020年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了
私のこの身体が存在する目の前の景色は、どんな地理地誌的背景、また要因により作られたのか。それらへ想いを馳せながら、インスタレーションの手法によってリアリティを感じられる場を作ることを目指す。現在は「風景の条件」をテーマに制作を行う。
主な展示歴に「素時 SOJI」(2018年、アートラボあいち、愛知)、「Article Art Week」(2018年、Kakslauttanen Arctic Resort、フィンランド)
https://chiekamekura.theblog.me/
・西尾佳那 Nshio Kana:アーティスト
1994年 神奈川出身。2020年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了
イデオロギー化してしまった物事、文化や習慣に関心があり、それらを再認識、再解釈することを試みている。 フィールドワークを通じて、記録的な写真や映像を用いて制作している。
主な展示歴に「セコンドハンド」(2018年、アキバタマビ21、東京)、「Ecologies, Matters of Coexistence」(2017 年、Connecting Spaces、香港)など
https://www.kananishio.com
・岩田智哉 Iwata Tomoya:キュレーション
1995年 愛知県出身。2020年 東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科在籍
立ち止まることも流れを変えることもできる場所としての踊り場。そのような「『踊り場』としての展示空間」をテーマにキュレーションを行う。現在はキュレーターのハンス・ウルリッヒ・オブリストについて研究。
主な展示に「Alter-narratives −ありえたかもしれない物語−」(2020年、オンライン)
・古家那南 Furuya Nanan:マネジメント
1997年 東京生まれ。2020年 武蔵野美術大学芸術文化学科在籍
「アートと社会をつなぐ」ということをテーマに企画、運営、マネジメントを行っている。
主な参加企画に「Stockholm Furniture&Light Fair2019Greenhouse」(2019年、スウェーデン)、「Journey on the Tongue」(2019年、東京)、「六本木アートナイト2019 紡音プロジェクト」(2019年、東京)など
【soiのてはじめについて】
代表者:アーティスト 岩崎広大
設立:2019年07月
協賛:パタゴニア日本支社
助成:東京藝術大学「I LOVE YOU」プロジェクト
URL:https://soinotehajime.com
【一般の方向けのお問い合わせ先】
チーム名:soiのてはじめ
担当:古家那南
Email:ishiki.project@gmail.com
東京藝術大学の大学院生を中心に2019年7月に結成されたアーティストユニット『soiのてはじめ』は、WEB企画「MAPプロジェクト」を8月30日(日)に一般公開します。アート関係者はもちろん、環境や社会問題に興味のある方に向け、「石木ダム問題」に関して調査してきたことを新しいプラットフォーム・作品としてWEBサイトで発表。これからのアート界を担う若手アーティストによる複雑な社会問題をめぐる状況をありのままに可視化したものや、『soiのてはじめ』のこれまでの活動のアーカイブも公開します。
▼ MAPプロジェクト|soiのてはじめ:https://soinotehajime.com/map.html?
■アーティストユニット『soiのてはじめ』がオンラインで公開する新しいプラットフォーム
私たち『soiのてはじめ』は、2019年7月より長崎県東彼杵郡川棚町石木郷こうばる地区を訪れ、約60年もの間くり広げられている「石木ダム問題」についての取材やリサーチを半年以上にわたり重ねました。
公共事業の開発における土地の権利をめぐり、長年行政と住民との間で対立が繰り広げられているなか、昨年、土地の所有権が住民から国へと移されました。このようななか、数週間にわたる現地滞在を複数回行ったり、また現地の子ども向けに葉っぱを用いたワークショップを開催したり、さまざまな方法で現地の方々とのコミュニケーションを図ってきました。そして住民や行政側、その他さまざまな関係者への取材・リサーチを重ねていくなかで見えてきたのは、ダム建設への賛成・反対といった二項対立では説明しきれない立場・環境に置かれて、複雑な思いを抱えている人々がいるということです。
WEB企画「MAPプロジェクト」は、そうしたさまざまな立場に置かれた人々が抱えるそれぞれの思いを、自らの思いを述べた文章とその人に見えている風景の写真を合わせて地図上に位置づけるものです。そうすることで、「石木ダム問題」をめぐる複雑な状況を、ありのまま可視化させることを目指します。また、人々の思いをそれぞれの視線によって切り取られた風景とともに見せることで、立場や環境による景色の見え方の違いもあらわにすることができると考えています。
2020年3月には、長崎県美術館の運河ギャラリーで「『soiのてはじめ』第一回滞在・取材報告展」を開催しました。こうばる地区の風景をそこで見つけた葉っぱに写真として現像した作品や、現地で暮らす人々にとっての日常を「何が心地よいか」という視点から切り取った写真作品、さらには現地に生える植物の意味を象徴的に表現した立体作品など、ダム問題の影で失われていく自然や人々の日常に対して思いを巡らせる作品を紹介。
住民の暮らしのリアル、そして石木に限らず日本各地のダム建設がはらむさまざまな側面を描写する多角的な展示としました。3日間という短い会期にも関わらず、約1,000名の方々にご来場いただき、9つのメディアにもご紹介いただきました。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、アートの世界ではオフラインでの展示が極めて難しい状況となっています。新しい作品を多くの方に見ていただく機会が減り、アーティストの存在意義を示せないでいます。しかし、そのような厳しい状況もポジティブにとらえ、オンラインの強みを生かし、新しいプラットフォーム・作品として今回の「MAPプロジェクト」を公開することとしました。
通常のオンライン展示の多くは実際の展示会場をスキャンして3Dで公開するもの、あるいは展示の機会を失った作品の展示の場所としてWEBを利用するものです。それに対して「MAPプロジェクト」は、オンラインの強みを生かして、WEBならではのこだわり、新たな可能性を試みました。
地域アートでは、実際に作家が現地に赴き作品を公開することが主流です。しかし、コロナ禍の現状では非常に困難で大きな課題となっています。そこで、地域アートの新たな可能性として本企画を提示するものです。
■アーティスト以外にキュレーターやアートマネージャーを含む新しい構成のユニット
“solution of issue”と“寄り添い”の2つの意味が込められた『soiのてはじめ』は、東京藝術大学大学院生を中心に2019年7月に結成。これからのアート界を担うアーティストによる、アートを通して社会について考えるユニットです。その強みは、アーティストだけではなく、キュレーター、アートマネージャーを含めた構成で成り立っていることです。
『soiのてはじめ』のコンセプトは以下のようなものです。
現代は、効率性の名の下に絶えず新しいものが生みだされ続けています。その一方で、長い歴史を通し培われてきた暮らしに根付いた生きる術が失われていることもまた自明です。
このような状況では、周囲に溢れる新しいモノの価値を精査したり、何かが失われていくという事実に気付いたりすることが難しいのではないでしょうか。私たちはさまざまな人々や生物、自然とのコミュニケーションを通して、そうした"新しいもの"により"失われていくもの"に寄り添うことを目指します。そのような実践によって、未来に必要なものについて考えるきっかけを、アートを通して生み出すことを目的としています。
<『soiのてはじめ』メンバー紹介>
・岩崎広大 Iwasaki Hiromasa:アーティスト
1994年 東京生まれ。2020年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻在籍
地球にあるものはすべて、この星でおきた出来事の記録だといえる。すべて偶然とも必然ともいえるような数々の出来事によって、間違いなくここにある。それらの記録に触れることで、彼らの記憶に触れ、彼らの知り得た情報を追体験していくことが、今をより良く生きるための、なにかヒントになるような気がしてならない。一つずつ世界に溢れている未現像のネガフィルムを発見していき、それらを現像し、どうにかして触れ得るものにしていきたいと考え制作している。
主な展示歴に「imshow」(2020年、Alt_Medium、東京)「Medias」(2019年、あざみの市民ギャラリー、横浜)「YouFab 2018 Exhibition Polemica!」(2018年、九段house、東京 ) 「孤独の地図」(2018年、四ツ谷未確認スタジオ、東京)など
https://iwasakihiromasa.myportfolio.com/
・亀倉知恵 Kamekura Chie:アーティスト
1992年 新潟県出身。2020年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了
私のこの身体が存在する目の前の景色は、どんな地理地誌的背景、また要因により作られたのか。それらへ想いを馳せながら、インスタレーションの手法によってリアリティを感じられる場を作ることを目指す。現在は「風景の条件」をテーマに制作を行う。
主な展示歴に「素時 SOJI」(2018年、アートラボあいち、愛知)、「Article Art Week」(2018年、Kakslauttanen Arctic Resort、フィンランド)
https://chiekamekura.theblog.me/
・西尾佳那 Nshio Kana:アーティスト
1994年 神奈川出身。2020年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了
イデオロギー化してしまった物事、文化や習慣に関心があり、それらを再認識、再解釈することを試みている。 フィールドワークを通じて、記録的な写真や映像を用いて制作している。
主な展示歴に「セコンドハンド」(2018年、アキバタマビ21、東京)、「Ecologies, Matters of Coexistence」(2017 年、Connecting Spaces、香港)など
https://www.kananishio.com
・岩田智哉 Iwata Tomoya:キュレーション
1995年 愛知県出身。2020年 東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科在籍
立ち止まることも流れを変えることもできる場所としての踊り場。そのような「『踊り場』としての展示空間」をテーマにキュレーションを行う。現在はキュレーターのハンス・ウルリッヒ・オブリストについて研究。
主な展示に「Alter-narratives −ありえたかもしれない物語−」(2020年、オンライン)
・古家那南 Furuya Nanan:マネジメント
1997年 東京生まれ。2020年 武蔵野美術大学芸術文化学科在籍
「アートと社会をつなぐ」ということをテーマに企画、運営、マネジメントを行っている。
主な参加企画に「Stockholm Furniture&Light Fair2019Greenhouse」(2019年、スウェーデン)、「Journey on the Tongue」(2019年、東京)、「六本木アートナイト2019 紡音プロジェクト」(2019年、東京)など
【soiのてはじめについて】
代表者:アーティスト 岩崎広大
設立:2019年07月
協賛:パタゴニア日本支社
助成:東京藝術大学「I LOVE YOU」プロジェクト
URL:https://soinotehajime.com
【一般の方向けのお問い合わせ先】
チーム名:soiのてはじめ
担当:古家那南
Email:ishiki.project@gmail.com