【調査分析】日本ではたらく外国人社員の従業員支援プログラム相談傾向分析調査2021〜コロナ禍で相談件数の増加率は日本人社員の倍以上も〜
企業向けに『はたらくをよくする®』支援事業を展開するピースマインド株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:荻原英人)は、今般のコロナ禍の長期化を踏まえ、近年増加している外国人社員が心身ともに健康的に働くためのポイントを明らかにする目的で、2021年度「日本ではたらく外国人社員の従業員支援プログラム相談傾向分析調査」を実施しました。
企業向けに『はたらくをよくする®』支援事業を展開するピースマインド株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:荻原英人)は、今般のコロナ禍の長期化を踏まえ、近年増加している外国人社員が心身ともに健康的に働くためのポイントを明らかにする目的で、2021年度「日本ではたらく外国人社員の従業員支援プログラム相談傾向分析調査」を実施しました。
コロナ禍で全体の相談件数は51%増加
はじめに、コロナ禍以前である2019年度の従業員支援相談窓口に寄せられた全相談のうち、分析可能な件数と内容を、年度初頭に新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発令された2020年度、さらにコロナ禍が長期化している2021年度上半期とを比較し、統計的な分析を行いました。
本調査において、2019年度上半期を「コロナ前」、2019年度下半期〜2020年度下半期を「コロナ混乱期」、2021年度上半期を「コロナ継続期」と定義しています。
「コロナ継続期」の2021年度上半期の相談件数は、「コロナ前」の2019年度上半期に比べて51%増加したことが分かりました(*1)。相談内容を大きく「職場」と「プライベート」に分け、統計的な分析を行った結果、「職場」、「プライベート」に関する相談が共に増加したことが示されました。
また、内閣府が2021年4月30日〜5月11日に実施した第3回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(*2)によると、「コロナ疲れを感じる」、「やや感じる」が72%であったことから、「コロナ疲れ」の精神的負担の影響が相談件数として反映された結果といえるでしょう。
コロナ禍で外国人社員の相談件数増加率は142%に
外国人社員は、従前から存在する自国との文化差がベースにあり、さらにコロナ禍による急激な情報、情勢、社会変化による影響が日本人社員に比して大きいことが予想されます。こうしたことから、「コロナ前」の2019年度上半期をベースラインとし、外国人社員の相談件数の経時的変化を分析しました。その結果、「コロナ混乱期」の2020年度上半期では増加率41%、そして「コロナ継続期」の2021年度上半期では増加率142%となりました。一方、日本人社員においては、「コロナ混乱期」の2020年度上半期の増加率27%、「コロナ継続期」の2021年度上半期は増加率46%であることから、外国人社員の相談件数は日本人社員に比べて顕著に増加したことがわかりました。
[資料: https://files.value-press.com/czMjYXJ0aWNsZSMxODI0MiMyODcxODcjMTgyNDJfaGR2a1lHaGJTTS5qcGc.jpg ]
コロナ禍においても外国人社員は「プライベート」に関する相談が多い
相談内容の大分類である「職場」、もしくは「プライベート」に関しては、第1回調査(*3)では、外国人社員は、「プライベート」に関することで相談に至る比率が「職場」に比べて高いこと、かつその比率は、日本人社員よりも高いことが示されましたが、「コロナ混乱期」、そして「コロナ継続期」においても、第1回調査同様、「職場」に比して「プライベート」に関する相談比率が高く、その比率は、日本人社員よりも高い結果となりました。(図2、3)
[資料: https://files.value-press.com/czMjYXJ0aWNsZSMxODI0MiMyODcxODcjMTgyNDJfc2ZuS2FLVk5Rbi5qcGc.jpg ]
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※相談内容の詳細は、以下の通りです。
「職場」・・・「休職・復職問題」、「職場のストレス、仕事の質や量といった仕事の問題」「雇用や組織全体に関する組織の問題」、「職場の対人関係」、「キャリア・人材開発」、「ハラスメント」、「クライシスマネジメント=労災・事故、仕事上での離別・死別体験といったクライシスマネジメント」
「プライベート」・・・「『プライベートの対人関係』=職場以外におけるセクハラ、パワハラ、いじめ、いやがらせ、家族・パートナーへの暴力・虐待等など」、「『生活問題』=法律、金銭、介護、子どもの教育、仕事と家庭の両立、育児相談、住環境、海外生活、本人の学業・進路・就職など」、「『健康問題』=自身や家族・パートナーの身体的健康・メンタルヘルスなど」
コロナ禍で外国人社員の「健康」に関する悩みが顕著に増加
外国人社員における「プライベート」の相談内容の内訳を分析したところ、「コロナ前」・「コロナ混乱期」・「コロナ継続期」、各期においても「健康」の比率の急増が目立ちました。特に「コロナ混乱期」の2020年度下半期には61%、「コロナ継続期」の2021年度上半期でも54%と過半数を占め、新型コロナウイルス感染拡大による「健康」への直接的な影響が窺えます(図4)。さらに、日本人社員との比較においても、相談内容に占める「健康」の比率はより高いことが示されました(図4、5)。こうしたことから、外国人社員の、コロナ禍によるインパクトは日本人社員よりも大きかったといえるでしょう。また、「プライベートの対人関係」に関する相談比率が一定数あることから、パンデミックといった事態においては、パンデミック自体への適切な安全確保、不安への対処、そして、プライベートの対人関係に主眼をおいた対処の工夫が外国人社員のメンタルヘルス悪化の低減に役立つと思われます。
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※相談内容の詳細は、以下の通りです。
「生活」・・・法律に関る問題、金銭問題、介護問題、子どもの教育問題、仕事と家庭の両立、育児相談、住環境、海外生活、本人の学業・進路・就職など
「健康」・・・自身、もしくは、家族・パートナーの身体的健康・メンタルヘルス
「プライベートの対人関係」・・・家族・パートナー関係、その他の対人関係、ストーキング、脅迫、暴力行為、職場以外におけるセクハラ、家族・パートナーへの暴力・虐待、プライベートでの離別・死別体験、職場以外のパワハラ、いじめ、いやがらせなど
コロナ禍で外国人社員の「仕事の問題」が顕著に増加
外国人社員の「職場」に関する相談内容の内訳を分析したところ、第1回調査(*3)では、外国人社員は、仕事の質や量から生じる職場のストレスといった「仕事の問題」の比率がより高く、かつ、日本人社員に比しても高い傾向にありましたが、「コロナ前」の2019年度上半期と「コロナ継続期」の2021年度上半期の外国人社員の「職場」に関する相談内容の比率を比較すると、「仕事の問題」に関する相談内容の比率が一層増加、かつ日本人社員に比しても高いことが明らかになりました。こうしたことから、外国人社員にとっては、新型コロナウイルスの有無に関わらず、常に「仕事の問題」が悩みとなっており、メンタルヘルスの要である可能性が示唆されます。
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※相談内容の詳細は、以下の通りです。
「ハラスメント」・・・セクハラ、パワハラ・アカハラなど
「組織の問題」 ? ・・・雇用に関する問題、組織自体の問題など
「キャリア・人材開発」・・・キャリア、人材開発
「クライシスマネジメント」・・・労災・事故、仕事上での離別・死別体験など
「休職・復職問題」・・・休職・復職問題など
「職場の対人関係」・・・仕事上の対人関係、職場の対立関係など
「仕事の問題」・・・職場のストレス (仕事の質や量)など
「職場」と「プライベート」の問題との相互関係がより顕著に
相談内容や件数の変化をさらに深堀すべく、「コロナ継続期」の2021年度上半期の相談内容記述をベースに、単語の頻出度や関係性の分析(テキストマイニング)を行いました。その結果、外国人社員の相談内容においては「仕事」の中心性・出現頻度が圧倒的に高く、次いで「上司」「関係」「時間」「転職」「リモート」といった単語が相談の核になっていることが分かりました(図8)。つまり、外国人社員は、コロナ禍によって、仕事の質や量から生じる職場のストレス、「上司」との関係、就労環境が「リモート」(テレワーク)へ変わったことによる「ストレス」、さらにこれらから生じるキャリアに対する不安、といった悩みを抱えている可能性が窺えます。 また、外国人社員の相談においては「コロナ」「リモート」という単語が出現したことから、環境変化のインパクトが顕著に強かったことが示唆されます。なお、外国人社員が日本人社員に比べて、新型コロナウイルスやテレワークの影響をより受けやすい要因としては、サポート欠如、情報不足、文化慣習の違い、対面での交流減少に伴う孤独感の増加などが考えられます。
内閣府の「第3回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(*2)では、コロナ禍において、大きな環境変化があったものの、急激な仕事の増加や生産性の大きな変化はみられず、つまり、仕事への影響は目立ちませんでした。一方で、本調査においては、外国人社員の「職場」に関する相談比率が増加したこと、さらに、「仕事」という単語の中心性・出現頻度共に高くなった結果に鑑みると、日本で働く外国人社員の「仕事」への影響が目立ったことは、大変特徴的でした。
相談内容比率は「プライベート」の相談が多い一方で、テキストマイニングで「仕事」の中心性の高さが示されたことについては、外国人社員は「仕事」にまつわる悩みが中心となりながらも、それらを取り巻く悩みとして、プライベートの諸問題が語られていることが推察されます。
こうしたことから、第1回調査(*3)同様、外国人社員は「プライベート」の相談が多い事実は依然存在し、また、外国人社員の「プライベート」の悩みの背景には、仕事の質や量から生じる職場のストレスの問題が潜んでいること、コロナ禍においては、「職場」と「プライベート」の各問題の相互関係が、より顕著になったと考えられます。また「職場」の具体的な悩みは、上司との関係に伴うストレス、テレワークによる仕事の時間管理・オンとオフの切り替えの難しさ、コロナ禍による先行き不安から生じるキャリア問題など、多岐に渡っていることが推察されます。
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ウィズ/アフターコロナにおける外国人社員のウェルビーイングを高める秘訣「ソーシャル・サポート」
本調査の結果、外国人社員は、第1回調査(*3)同様、「プライベート」に関する相談、とりわけ「健康」に関する相談が多かった、つまり、新型コロナウィルス感染拡大によって健康不安が増大し、相談件数が増加したこと、また、「プライベート」の悩みと、仕事の質や量にまつわる職場のストレスを筆頭に、上司との関係やテレワークから生じるストレスが自身のキャリアに対する不安といった「職場」の悩みは相互関係にある可能性が高いことが示唆されました。こうしたことから、表向きは「職場」、とりわけ「仕事」に関する相談であっても、真の相談テーマは「プライベート」にまで及ぶことが、コロナ禍においても示されました。また、日本人社員との比較においては、コロナ禍における外国人社員の相談件数の増加率が、日本人社員に比して高かったことから、心身への影響をより受けやすい傾向が示されました。
今般の新型コロナウィルス感染拡大といった、世界レベルで流動的な有事の際、危機を正しく察知し、心理的負担を低減させることや、仕事、上司、テレワークといった就業環境の変化がもたらすキャリアへの不安に対して、外国人社員のウェルビーイングを保つためには「ソーシャル・サポート」がキーワードになると考えます。このソーシャル・サポートとストレスの密接な関係については、これまでも多くの研究がなされており、メンタルヘルス不調を予防する大切な要素であります。こうしたことから、まず、コロナ禍といったパンデミック時における外国人社員のメンタルヘルス悪化防止の鍵となるソーシャル・サポートの強化、および仕事上でのストレス予防策についてお伝えします。
ソーシャル・サポートとは、主に3つのタイプに分かれます。
?情報的サポート:問題の解決や安全確保に必要なアドバイスや情報を得ること
?情緒的サポート:お互い励まし、不安など感情を共感すること
?道具的サポート:直接的に支援の手を差し伸べる支援
? 情報的サポート・・・パンデミックといった不測の事態への対処
外国人社員にとっては、新型コロナウィルスのパンデミックといった不測の事態への遭遇時は、基本的には自国の在外公館(大使館、領事館)が発信する情報を入手することが推奨されます。しかし、流動的な情勢においては、刻一刻と情報が変わり、かつ、滞在国の対応と異なる場合が生じます。言語コミュニケーションの観点からは、このような情勢の把握の難しさも加わり、本国と滞在国の情報や対策の相違等が生じやすい環境になります。例えば、東日本大震災時においては、滞在国である日本と異なる情報のもと、各国から退避勧告が示され、本国へ退避を求める在日外国人が成田空港に殺到し、空港が一時パニックに陥る事態になりました。こうしたことから、外国人社員にとって、非常時下では適切な情報的サポートが必要不可欠でしょう。さらに、不測の事態に正しく恐れるメディアリテラシーや、自発的な情報の取捨選択が必要でしょう。
? 情緒的サポート・・・勤務先における多文化相互理解
今回の調査結果からは、異国の地での不測の事態に対する外国人社員の不安が、日本人社員に比べて一層高いことが推察されました。そこで、企業や上司、同僚からのこまめなラインケアによる情緒的サポート、言語の壁から孤立を防ぐよう配慮をした、情勢変化に対する企業対応のこまめな情報発信が、外国人社員のメンタルヘルス悪化予防に役立ち、見通しがつかない不安から生じるキャリアに対する不安低減などに繋がるでしょう。
? 道具的サポート・・・テレワークによる孤独感への支援
外国人社員は、本国にいるような人的サポートネットワークが不足する可能性が高いことは、先の研究でも明らかとなっています。ゆえに、先述のラインケアに加え、情報の混乱から生じる葛藤に対し、いざという時に相談ができるよう、常日頃から同郷人同士のネットワークや、滞在国の状況に詳しい人的ネットワークの構築を促進することが、外国人社員の孤独感を低減させる一助となるでしょう。
EAP(従業員支援プログラム)では、従業員に対し、上記のような企業ではカバーの難しいプライベートな課題へのサポートを行ったり、業務遂行上に求められるレジリエンス力・コミュニケーション力・アサーション力などのスキル獲得・向上の個別カウンセリングを提供することができます。また、職場に対しては、部下をマネジメントする上でのあらゆる課題解決に関するコンサルテーションを行っています。またこれらについての集団向け研修等のご相談も承っています。
別紙1(添付「【プレスリリース】2021-12-23_日本ではたらく外国人社員の従業員支援プログラム相談傾向分析調査2021.pdf」P8、9)にEAPの活用で相談者の課題解決支援をした事例をご紹介しておりますのでご参照ください。
今後もピースマインドでは、はたらく人と組織のウェルビーイングに寄与する研究とソリューションの開発・提供を進めてまいります。
*1 【調査分析】コロナ禍で、はたらく人は何に悩んでいるのか? 〜コロナ禍で相談件数は51%増加。従業員支援プログラムに寄せられた、はたらく人の相談12,545件の傾向分析〜
https://www.peacemind.co.jp/newsrelease/archives/323
*2 ?内閣府 第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/result3_covid.pdf
*3 ?外国人社員の相談の約7割はプライベートに関する悩み〜「日本ではたらく外国人社員のメンタルヘルスサービス利用調査」
https://www.peacemind.co.jp/newsrelease/archives/237
【調査概要】
調査対象期間:2019年4月〜2021年9月
調査方法:当社EAP(従業員支援プログラム)サービスの利用実績から、今回の調査に適合するものとして抽出した12,545件の外国人社員、日本人社員の各相談内容を対象にコロナ禍前後の変化を分析
調査実施者:ピースマインド EAPコンサルタント :
後藤麻友(公認心理師・臨床心理士・コンサルティング部長)
黒田隆太(公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラー)
岩?優里(公認心理師・臨床心理士)
【参考情報】
● ピースマインドのEAP( 従業員支援プログラム)
https://www.peacemind.co.jp/service/eap
●【調査分析】日本における外資系企業のメンタルヘルスサービス利用調査 〜「ハラスメント」相談は、日系に比べて3倍以上も〜
https://www.peacemind.co.jp/newsrelease/archives/310
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【ピースマインド株式会社について】
1998年創業、日本・アジア地域におけるEAPサービスのパイオニア企業。アジア地域で、国際水準の品質認証「産業医科大学メンタルヘルスサービス機関機能認定」を取得している唯一の民間企業(医療機関を除く)です。
「はたらくをよくするエコシステムを創り、いきいきとした人と職場を増やす」を企業ビジョンとし、健全で、心豊かな、明るい未来社会に貢献し続けることを目指しています。
公認心理師・臨床心理士・精神保健福祉士・産業カウンセラー・保健師・看護師等の有資格社員および国内外の幅広いネットワーク体制で約1,000社のサポートをし、グローバル大手企業を中心に外資系企業の支援実績国内トップシェアを誇っています。
名称 : ピースマインド株式会社
本社所在地 : 〒104-0061 東京都中央区銀座3-10-6 マルイト銀座第3ビル8F
代表者 : 代表取締役 荻原英人
創業 : 1998年9月(設立2004年3月)
資本金 : 9,025万円
事業内容 : EAP(従業員支援プログラム)サービス、ストレスチェックの実施、組織分析、職場改善支援、研修・コーチング、健康経営支援
HP : https://www.peacemind.co.jp/
【取材等のお問い合わせ先】
ピースマインド株式会社 事業推進室 ブランドコミュニケーション
電話:03-3541-8660
メール:press@peacemind.co.jp
担当:末木(すえき)
お問合せ:https://www.peacemind.co.jp/contact/form
企業向けに『はたらくをよくする®』支援事業を展開するピースマインド株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:荻原英人)は、今般のコロナ禍の長期化を踏まえ、近年増加している外国人社員が心身ともに健康的に働くためのポイントを明らかにする目的で、2021年度「日本ではたらく外国人社員の従業員支援プログラム相談傾向分析調査」を実施しました。
コロナ禍で全体の相談件数は51%増加
はじめに、コロナ禍以前である2019年度の従業員支援相談窓口に寄せられた全相談のうち、分析可能な件数と内容を、年度初頭に新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発令された2020年度、さらにコロナ禍が長期化している2021年度上半期とを比較し、統計的な分析を行いました。
本調査において、2019年度上半期を「コロナ前」、2019年度下半期〜2020年度下半期を「コロナ混乱期」、2021年度上半期を「コロナ継続期」と定義しています。
「コロナ継続期」の2021年度上半期の相談件数は、「コロナ前」の2019年度上半期に比べて51%増加したことが分かりました(*1)。相談内容を大きく「職場」と「プライベート」に分け、統計的な分析を行った結果、「職場」、「プライベート」に関する相談が共に増加したことが示されました。
また、内閣府が2021年4月30日〜5月11日に実施した第3回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(*2)によると、「コロナ疲れを感じる」、「やや感じる」が72%であったことから、「コロナ疲れ」の精神的負担の影響が相談件数として反映された結果といえるでしょう。
コロナ禍で外国人社員の相談件数増加率は142%に
外国人社員は、従前から存在する自国との文化差がベースにあり、さらにコロナ禍による急激な情報、情勢、社会変化による影響が日本人社員に比して大きいことが予想されます。こうしたことから、「コロナ前」の2019年度上半期をベースラインとし、外国人社員の相談件数の経時的変化を分析しました。その結果、「コロナ混乱期」の2020年度上半期では増加率41%、そして「コロナ継続期」の2021年度上半期では増加率142%となりました。一方、日本人社員においては、「コロナ混乱期」の2020年度上半期の増加率27%、「コロナ継続期」の2021年度上半期は増加率46%であることから、外国人社員の相談件数は日本人社員に比べて顕著に増加したことがわかりました。
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コロナ禍においても外国人社員は「プライベート」に関する相談が多い
相談内容の大分類である「職場」、もしくは「プライベート」に関しては、第1回調査(*3)では、外国人社員は、「プライベート」に関することで相談に至る比率が「職場」に比べて高いこと、かつその比率は、日本人社員よりも高いことが示されましたが、「コロナ混乱期」、そして「コロナ継続期」においても、第1回調査同様、「職場」に比して「プライベート」に関する相談比率が高く、その比率は、日本人社員よりも高い結果となりました。(図2、3)
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※相談内容の詳細は、以下の通りです。
「職場」・・・「休職・復職問題」、「職場のストレス、仕事の質や量といった仕事の問題」「雇用や組織全体に関する組織の問題」、「職場の対人関係」、「キャリア・人材開発」、「ハラスメント」、「クライシスマネジメント=労災・事故、仕事上での離別・死別体験といったクライシスマネジメント」
「プライベート」・・・「『プライベートの対人関係』=職場以外におけるセクハラ、パワハラ、いじめ、いやがらせ、家族・パートナーへの暴力・虐待等など」、「『生活問題』=法律、金銭、介護、子どもの教育、仕事と家庭の両立、育児相談、住環境、海外生活、本人の学業・進路・就職など」、「『健康問題』=自身や家族・パートナーの身体的健康・メンタルヘルスなど」
コロナ禍で外国人社員の「健康」に関する悩みが顕著に増加
外国人社員における「プライベート」の相談内容の内訳を分析したところ、「コロナ前」・「コロナ混乱期」・「コロナ継続期」、各期においても「健康」の比率の急増が目立ちました。特に「コロナ混乱期」の2020年度下半期には61%、「コロナ継続期」の2021年度上半期でも54%と過半数を占め、新型コロナウイルス感染拡大による「健康」への直接的な影響が窺えます(図4)。さらに、日本人社員との比較においても、相談内容に占める「健康」の比率はより高いことが示されました(図4、5)。こうしたことから、外国人社員の、コロナ禍によるインパクトは日本人社員よりも大きかったといえるでしょう。また、「プライベートの対人関係」に関する相談比率が一定数あることから、パンデミックといった事態においては、パンデミック自体への適切な安全確保、不安への対処、そして、プライベートの対人関係に主眼をおいた対処の工夫が外国人社員のメンタルヘルス悪化の低減に役立つと思われます。
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※相談内容の詳細は、以下の通りです。
「生活」・・・法律に関る問題、金銭問題、介護問題、子どもの教育問題、仕事と家庭の両立、育児相談、住環境、海外生活、本人の学業・進路・就職など
「健康」・・・自身、もしくは、家族・パートナーの身体的健康・メンタルヘルス
「プライベートの対人関係」・・・家族・パートナー関係、その他の対人関係、ストーキング、脅迫、暴力行為、職場以外におけるセクハラ、家族・パートナーへの暴力・虐待、プライベートでの離別・死別体験、職場以外のパワハラ、いじめ、いやがらせなど
コロナ禍で外国人社員の「仕事の問題」が顕著に増加
外国人社員の「職場」に関する相談内容の内訳を分析したところ、第1回調査(*3)では、外国人社員は、仕事の質や量から生じる職場のストレスといった「仕事の問題」の比率がより高く、かつ、日本人社員に比しても高い傾向にありましたが、「コロナ前」の2019年度上半期と「コロナ継続期」の2021年度上半期の外国人社員の「職場」に関する相談内容の比率を比較すると、「仕事の問題」に関する相談内容の比率が一層増加、かつ日本人社員に比しても高いことが明らかになりました。こうしたことから、外国人社員にとっては、新型コロナウイルスの有無に関わらず、常に「仕事の問題」が悩みとなっており、メンタルヘルスの要である可能性が示唆されます。
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※相談内容の詳細は、以下の通りです。
「ハラスメント」・・・セクハラ、パワハラ・アカハラなど
「組織の問題」 ? ・・・雇用に関する問題、組織自体の問題など
「キャリア・人材開発」・・・キャリア、人材開発
「クライシスマネジメント」・・・労災・事故、仕事上での離別・死別体験など
「休職・復職問題」・・・休職・復職問題など
「職場の対人関係」・・・仕事上の対人関係、職場の対立関係など
「仕事の問題」・・・職場のストレス (仕事の質や量)など
「職場」と「プライベート」の問題との相互関係がより顕著に
相談内容や件数の変化をさらに深堀すべく、「コロナ継続期」の2021年度上半期の相談内容記述をベースに、単語の頻出度や関係性の分析(テキストマイニング)を行いました。その結果、外国人社員の相談内容においては「仕事」の中心性・出現頻度が圧倒的に高く、次いで「上司」「関係」「時間」「転職」「リモート」といった単語が相談の核になっていることが分かりました(図8)。つまり、外国人社員は、コロナ禍によって、仕事の質や量から生じる職場のストレス、「上司」との関係、就労環境が「リモート」(テレワーク)へ変わったことによる「ストレス」、さらにこれらから生じるキャリアに対する不安、といった悩みを抱えている可能性が窺えます。 また、外国人社員の相談においては「コロナ」「リモート」という単語が出現したことから、環境変化のインパクトが顕著に強かったことが示唆されます。なお、外国人社員が日本人社員に比べて、新型コロナウイルスやテレワークの影響をより受けやすい要因としては、サポート欠如、情報不足、文化慣習の違い、対面での交流減少に伴う孤独感の増加などが考えられます。
内閣府の「第3回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(*2)では、コロナ禍において、大きな環境変化があったものの、急激な仕事の増加や生産性の大きな変化はみられず、つまり、仕事への影響は目立ちませんでした。一方で、本調査においては、外国人社員の「職場」に関する相談比率が増加したこと、さらに、「仕事」という単語の中心性・出現頻度共に高くなった結果に鑑みると、日本で働く外国人社員の「仕事」への影響が目立ったことは、大変特徴的でした。
相談内容比率は「プライベート」の相談が多い一方で、テキストマイニングで「仕事」の中心性の高さが示されたことについては、外国人社員は「仕事」にまつわる悩みが中心となりながらも、それらを取り巻く悩みとして、プライベートの諸問題が語られていることが推察されます。
こうしたことから、第1回調査(*3)同様、外国人社員は「プライベート」の相談が多い事実は依然存在し、また、外国人社員の「プライベート」の悩みの背景には、仕事の質や量から生じる職場のストレスの問題が潜んでいること、コロナ禍においては、「職場」と「プライベート」の各問題の相互関係が、より顕著になったと考えられます。また「職場」の具体的な悩みは、上司との関係に伴うストレス、テレワークによる仕事の時間管理・オンとオフの切り替えの難しさ、コロナ禍による先行き不安から生じるキャリア問題など、多岐に渡っていることが推察されます。
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ウィズ/アフターコロナにおける外国人社員のウェルビーイングを高める秘訣「ソーシャル・サポート」
本調査の結果、外国人社員は、第1回調査(*3)同様、「プライベート」に関する相談、とりわけ「健康」に関する相談が多かった、つまり、新型コロナウィルス感染拡大によって健康不安が増大し、相談件数が増加したこと、また、「プライベート」の悩みと、仕事の質や量にまつわる職場のストレスを筆頭に、上司との関係やテレワークから生じるストレスが自身のキャリアに対する不安といった「職場」の悩みは相互関係にある可能性が高いことが示唆されました。こうしたことから、表向きは「職場」、とりわけ「仕事」に関する相談であっても、真の相談テーマは「プライベート」にまで及ぶことが、コロナ禍においても示されました。また、日本人社員との比較においては、コロナ禍における外国人社員の相談件数の増加率が、日本人社員に比して高かったことから、心身への影響をより受けやすい傾向が示されました。
今般の新型コロナウィルス感染拡大といった、世界レベルで流動的な有事の際、危機を正しく察知し、心理的負担を低減させることや、仕事、上司、テレワークといった就業環境の変化がもたらすキャリアへの不安に対して、外国人社員のウェルビーイングを保つためには「ソーシャル・サポート」がキーワードになると考えます。このソーシャル・サポートとストレスの密接な関係については、これまでも多くの研究がなされており、メンタルヘルス不調を予防する大切な要素であります。こうしたことから、まず、コロナ禍といったパンデミック時における外国人社員のメンタルヘルス悪化防止の鍵となるソーシャル・サポートの強化、および仕事上でのストレス予防策についてお伝えします。
ソーシャル・サポートとは、主に3つのタイプに分かれます。
?情報的サポート:問題の解決や安全確保に必要なアドバイスや情報を得ること
?情緒的サポート:お互い励まし、不安など感情を共感すること
?道具的サポート:直接的に支援の手を差し伸べる支援
? 情報的サポート・・・パンデミックといった不測の事態への対処
外国人社員にとっては、新型コロナウィルスのパンデミックといった不測の事態への遭遇時は、基本的には自国の在外公館(大使館、領事館)が発信する情報を入手することが推奨されます。しかし、流動的な情勢においては、刻一刻と情報が変わり、かつ、滞在国の対応と異なる場合が生じます。言語コミュニケーションの観点からは、このような情勢の把握の難しさも加わり、本国と滞在国の情報や対策の相違等が生じやすい環境になります。例えば、東日本大震災時においては、滞在国である日本と異なる情報のもと、各国から退避勧告が示され、本国へ退避を求める在日外国人が成田空港に殺到し、空港が一時パニックに陥る事態になりました。こうしたことから、外国人社員にとって、非常時下では適切な情報的サポートが必要不可欠でしょう。さらに、不測の事態に正しく恐れるメディアリテラシーや、自発的な情報の取捨選択が必要でしょう。
? 情緒的サポート・・・勤務先における多文化相互理解
今回の調査結果からは、異国の地での不測の事態に対する外国人社員の不安が、日本人社員に比べて一層高いことが推察されました。そこで、企業や上司、同僚からのこまめなラインケアによる情緒的サポート、言語の壁から孤立を防ぐよう配慮をした、情勢変化に対する企業対応のこまめな情報発信が、外国人社員のメンタルヘルス悪化予防に役立ち、見通しがつかない不安から生じるキャリアに対する不安低減などに繋がるでしょう。
? 道具的サポート・・・テレワークによる孤独感への支援
外国人社員は、本国にいるような人的サポートネットワークが不足する可能性が高いことは、先の研究でも明らかとなっています。ゆえに、先述のラインケアに加え、情報の混乱から生じる葛藤に対し、いざという時に相談ができるよう、常日頃から同郷人同士のネットワークや、滞在国の状況に詳しい人的ネットワークの構築を促進することが、外国人社員の孤独感を低減させる一助となるでしょう。
EAP(従業員支援プログラム)では、従業員に対し、上記のような企業ではカバーの難しいプライベートな課題へのサポートを行ったり、業務遂行上に求められるレジリエンス力・コミュニケーション力・アサーション力などのスキル獲得・向上の個別カウンセリングを提供することができます。また、職場に対しては、部下をマネジメントする上でのあらゆる課題解決に関するコンサルテーションを行っています。またこれらについての集団向け研修等のご相談も承っています。
別紙1(添付「【プレスリリース】2021-12-23_日本ではたらく外国人社員の従業員支援プログラム相談傾向分析調査2021.pdf」P8、9)にEAPの活用で相談者の課題解決支援をした事例をご紹介しておりますのでご参照ください。
今後もピースマインドでは、はたらく人と組織のウェルビーイングに寄与する研究とソリューションの開発・提供を進めてまいります。
*1 【調査分析】コロナ禍で、はたらく人は何に悩んでいるのか? 〜コロナ禍で相談件数は51%増加。従業員支援プログラムに寄せられた、はたらく人の相談12,545件の傾向分析〜
https://www.peacemind.co.jp/newsrelease/archives/323
*2 ?内閣府 第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/result3_covid.pdf
*3 ?外国人社員の相談の約7割はプライベートに関する悩み〜「日本ではたらく外国人社員のメンタルヘルスサービス利用調査」
https://www.peacemind.co.jp/newsrelease/archives/237
【調査概要】
調査対象期間:2019年4月〜2021年9月
調査方法:当社EAP(従業員支援プログラム)サービスの利用実績から、今回の調査に適合するものとして抽出した12,545件の外国人社員、日本人社員の各相談内容を対象にコロナ禍前後の変化を分析
調査実施者:ピースマインド EAPコンサルタント :
後藤麻友(公認心理師・臨床心理士・コンサルティング部長)
黒田隆太(公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラー)
岩?優里(公認心理師・臨床心理士)
【参考情報】
● ピースマインドのEAP( 従業員支援プログラム)
https://www.peacemind.co.jp/service/eap
●【調査分析】日本における外資系企業のメンタルヘルスサービス利用調査 〜「ハラスメント」相談は、日系に比べて3倍以上も〜
https://www.peacemind.co.jp/newsrelease/archives/310
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【ピースマインド株式会社について】
1998年創業、日本・アジア地域におけるEAPサービスのパイオニア企業。アジア地域で、国際水準の品質認証「産業医科大学メンタルヘルスサービス機関機能認定」を取得している唯一の民間企業(医療機関を除く)です。
「はたらくをよくするエコシステムを創り、いきいきとした人と職場を増やす」を企業ビジョンとし、健全で、心豊かな、明るい未来社会に貢献し続けることを目指しています。
公認心理師・臨床心理士・精神保健福祉士・産業カウンセラー・保健師・看護師等の有資格社員および国内外の幅広いネットワーク体制で約1,000社のサポートをし、グローバル大手企業を中心に外資系企業の支援実績国内トップシェアを誇っています。
名称 : ピースマインド株式会社
本社所在地 : 〒104-0061 東京都中央区銀座3-10-6 マルイト銀座第3ビル8F
代表者 : 代表取締役 荻原英人
創業 : 1998年9月(設立2004年3月)
資本金 : 9,025万円
事業内容 : EAP(従業員支援プログラム)サービス、ストレスチェックの実施、組織分析、職場改善支援、研修・コーチング、健康経営支援
HP : https://www.peacemind.co.jp/
【取材等のお問い合わせ先】
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