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特許力からみた業界分析 −繊維業界 【特許力指数ランキング、業界最大手の東レがトップ】

工藤一郎国際特許事務所は、特許価値を評価するための特許価値評価手法(YKS手法)を用いたサービスを提供している。今回はそのYKS手法を用いて、特許力の面から見た繊維業界についての分析を試みる。
工藤一郎国際特許事務所では、特許の経済的価値を客観的に評価する手法としてYKS手法を用いたサービスを提供している。YKS手法により算出される特許力指数(YK値)は、いわば特許がお金を稼ぐ力を指数化したものであり、各企業の特許による競争力を指数で示したものだ。

東証一部上場企業の繊維業界における特許力指数ランキングベスト10は次のようになった。

【繊維業界の特許力指数ランキング】
   企業名         YK値   業界内YK偏差値
1位 東レ         10733.21    99.42
2位 東洋紡        7917.36    85.53
3位 帝人          3967.52    66.05
4位 三菱レイヨン     3431.72    63.41
5位 ユニチカ        2105.13    56.87
6位 グンゼ         1131.40    52.07
7位 ダイワボウ       795.68    50.41
8位 日本バイリーン    391.85    48.42
9位 セーレン        385.85    48.39
10位 クラボウ        322.69    48.08
(算出基準日:2008年11月1日)


以上のように、繊維業界の特許力指数ランキングでは業界最大手の東レがトップに立った。以下にも、東洋紡、帝人と大手企業が名を連ね、繊維業界における大手企業の技術力の高さが浮き彫りとなった。

東証一部企業全体のランキングでも東レは8位、東洋紡も21位と好位置をキープし、非常に高い特許力を持っている。一方で、YK値が1000を超える企業が6社しかなく、繊維業界の特許力の二極化が見て取れるランキングとなった。



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個別特許ランキング
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次に、先程紹介した繊維業界の上位10社が保有する特許のうちで最も価値の高い特許ベスト3は次のようになった。

【特許別の特許力指数ランキング】
   発明の名称              【企業名】
1位 ラベル用低温熱収縮性フィルム 【グンゼ】
2位 流量計およびろ過装置       【東レ】
3位 ポリエステルの製造方法      【東洋紡】

本ランキング1位はグンゼの特許であった。この特許は、プラスチック容器などに装着される、商品名や使用上の注意等を伝えるためのラベルとして用いられる熱収縮性フィルムに関する発明である。

この発明は低温領域で優れた熱収縮性を有し、さらに紫外線吸収性能にも優れた熱収縮フィルムを提供することを目的としている。これにより、公害への対策等により耐熱性の無い、もしくは薄膜となったプラスチック容器にも熱収縮性フィルムを装着できるようになった。また、低温での装着が可能になったこと、紫外線吸収性能を併せ持ったことで、商品の品質保持に大きく影響を与えることとなった。

次いで2位の特許は東レのもので、浄水器などに用いられる流量計およびろ過装置を、磁石を錆びさせる流体でも使用可能とした発明である。この発明には、特に飲料水を提供するような浄水器などにおいてより安全・確実に浄水を提供できるなどの効果がある。

3位は東洋紡の特許で、ポリエステルチップの水処理時の処理層・配管の汚れを少なくし、成型時での金型汚れを発生させにくく、ボトルの透明性や口栓部結晶化が良好となるポリエステルを製造する方法に関する発明である。この発明により、ポリエステルが用いられる飲料容器等の品質向上や、製造時の生産性向上やコストダウンに大きく影響を与えることとなる。



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各社の特許戦略
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今度は視点を変えて、各社の特許戦略の効率性を見比べてみることにする。
以下のランキングは、YK値上位10社のYK値を各々の保有特許数で割ったものである。

   企業名     YK値/保有特許数
1位 ダイワボウ     3.68 
2位 東レ         3.27
3位 帝人         2.95
4位 グンゼ        2.84
5位 東洋紡        2.80
6位 ユニチカ       2.77
7位 セーレン       2.72
8位 三菱レイヨン     1.70
9位 クラボウ       1.65
10位 日本バイリーン   0.99

このランキングは、少ない特許保有数で高いYK値を獲得した企業でのランキングで、この値の高い企業は無駄な特許が少ない効率的な特許戦略を行っている企業といえる。
ランキングトップのダイワボウは、YK値順位では7位とそれほど高くないものの、非常に少ない特許保有数で最も効率的にYK値を獲得した企業である。2位は東レで、10000を超える高いYK値を保有しながらも、非常に効率的な特許戦略を行っていることがわかる。
特許の申請や維持には多額の資金が必要となるため、効率的な特許戦略を行うことは企業にとって非常に重要であり、このような観点から企業を分析するのもまた有力な手段のひとつであるといえるだろう。



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技術的にみた割安銘柄企業
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次は、YK値上位10社のBI(Bargain INDEX)を見てみよう。

   企業名      YK値/時価総額
1位 東洋紡        6.19
2位 ユニチカ       4.43
3位 ダイワボウ      2.15
4位 三菱レイヨン     1.93
5位 東レ          1.58
6位 日本バイリーン    1.38
7位 帝人          1.14
8位 グンゼ         1.07
9位 セーレン        1.03
10位 クラボウ        0.70



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繊維業界とYK値
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ここで、繊維業界におけるYK値と他の経済指標との相関を見ていただきたい。

  YK値との相関係数
時価総額   0.8193
売上高     0.8718
営業利益   0.8750
経常利益   0.8534
(相関係数とは二つの現象の間の相関的関係の程度を表す係数で、1に近いほど関係性が強いと言える。)

これをみると、YK値と各経済指標の間には強い相関関係があるといえる。これは、特許力の高い企業ほど高い業績を残しているということであり、繊維業界における特許の重要性が窺い知れる。

次に、繊維業界のYK値上位10社と東証一部上場46社のROE(株主資本利益率)を見比べてみた。

                連結ROE
YK値上位10社平均     5.51
東証一部上場46社平均   2.01

ここでは、YK値上位10社のROEは、繊維業界東証一部上場企業46社の平均を大きく上回っていることがわかる。

ROEとは、どれだけ株主資本を効率的に利用して利益を稼ぎ出しているかを見る経済指標で、投資などの際に最重要視される指標の一つである。そこでは、どれだけ製品に付加価値をつけられるかといったことが問われていて、そこには技術力が大きく寄与するため、一般的に特許力・技術力が高いとROEが高くなるといえる。

YK値の高い企業ほどROEが高くなる傾向が見て取れ、ここでも繊維業界における特許の重要性が見て取れるであろう。


以上の分析により、繊維業界におけるYK値(特許力)の重要性がわかっていただけたと思う。近年、企業価値における無形資産の比重はますます増大しており、企業の競争力の源泉は有形資産から無形資産へとシフトしている。無形資産の中で、ブランドと並んで特に重要なのが知的資産、すなわち特許力であり、企業が競争力を高め、企業価値を向上させるためには、優れた特許戦略を行っていかなければならない。

特許戦略は最も重要な企業戦略のひとつであり、今後その重要性はますます大きくなって行くと予想される。今回の分析は現時点での繊維業界各社の知的資産の現状を比較した点で非常に重要な分析であるといえるだろう。また、各社の特許戦略が今後の成長のカギを握っているといえ、その動向にも注目していきたい。


【YKS手法とは】
YKS手法とは、特許の独占排他力を評価することに主眼をおいた特許価値評価手法であり、工藤一郎国際特許事務所において独自に開発された手法である。独占排他力の大きな特許とは競争相手から見れば自身に事業障害をもたらす原因であり、この障害を検知し、排除しようとする行動が必然となる。そこで、特許に対して起こされる競争相手のアクションを評価することで特許の独占排他力を評価する。


【本件に関するお問い合わせ先】
工藤一郎国際特許事務所
担当 : 小林
電話 : 03-3216-3770
E-mail:office@kudopatent.com


《関連URL》
http://www.kudopatent.com/
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