カナダ・オンタリオ州のマックマスター大学、がん幹細胞を破壊する薬を発見 〜再発予防など新たながん治療の確立へ期待〜
カナダ・オンタリオ州のマックマスター大学(McMaster University、同州ハミルトン)の研究チームは、このたび、抗精神病薬のチオリダジンが、正常な幹細胞には全く影響を与えずに、ヒトのがん幹細胞を破壊することを発見しました。
カナダ・オンタリオ州のマックマスター大学(McMaster University、同州ハミルトン)※1の研究チームは、このたび、抗精神病薬のチオリダジンが、正常な幹細胞には全く影響を与えずに、ヒトのがん幹細胞を破壊することを発見しました。チオリダジンは、従来の化学療法や放射線療法と異なり、毒性のある副作用を引き起こすことはありません。がん幹細胞は抗がん剤治療などへの抵抗性があり、がんの再発・転移に関わっているとされています。今回の発見は、がん幹細胞にターゲットを絞った治療法の開発を前進させるもので、今後、さまざまながんの治療に用いられる抗がん剤の開発戦略と開発から販売までの過程を一新する可能性があります。研究チームは、同様の治療効果をもつ可能性のある薬剤がほかにも十数点あることを確認しました。研究成果は米科学誌「CELL」に掲載されました。※2
「今回の発見が並外れているのは、ヒトの服用できる薬が、がん幹細胞を非がん性の細胞に変換することで、実際にがん幹細胞を破壊する点にあります」と、研究の主任研究者を務めるマックマスター大学のマイケル・G・デグルート医学部(Michael G. DeGroote School of Medicine)幹細胞・がん研究所(Stem Cell and Cancer Research Institute: SCC-RI)のサイエンティフィック・ディレクター、ミック・バティア(Mick Bhatia)博士は述べています。
15年ほど前から、多くのがんにおいて、幹細胞が がん細胞を生み出す元の細胞になっていると考えられるようになり、1997年にはカナダの研究者が初めて、ある特定の種類の白血病にがん幹細胞があることを確認しました。以来、がん幹細胞は血液がん、乳がん、脳腫瘍、肺がん、消化管がん、前立腺がんや卵巣がんで確認されています。
今回、十数種以上の化合物を評価するために、マックマスター大学の研究者は、完全自動化されたロボットシステムを開発して利用し、チオリダジンなどの効果的な薬剤をいくつか特定することができました。「今では何千もの化合物を評価して、正常な幹細胞にほとんど影響を与えず、がんの元になる細胞のみを破壊する薬剤の候補を見極めることができます」とバティア博士は述べます。
研究の次の段階は、化学療法後に再発した急性骨髄性白血病の患者を対象に、チオリダジンの臨床試験を行うことです。バティア氏は、この薬剤でがん細胞を消失させることができるのか、また、がんの元であるがん幹細胞を狙い撃ちすることで再発を防げるのかを検証したいと考えています。マックマスター大学の研究チームはすでに臨床試験の実施計画を立てています。
バティア氏の研究チームは、チオリダジンが白血病と乳がん患者のがん細胞の表面にあるドーパミン受容体を介して作用することを突き止めました。これは、チオリダジンをバイオマーカーとして、乳がんと白血病の早期発見と治療に役立てられる可能性があることを意味します。研究チームの次のステップは、他の種類のがんでチオリダジンの作用を調査することです。また、チオリダジンと一緒に特定された複数の薬剤についても研究を進める予定です。将来、産学連携で、マックマスター大学の幹細胞スクリーニングロボットシステムを活用して、何千もの化合物を分析するようになります。
「この研究に関わる全ての参加者の目標は同じです。がんの取り組みと治療のあり方を変えることのできる優れた薬剤を発見することです」とバティア博士は述べています。
同研究は、Canadian Institute of Health Research(カナダ保健研究所、CIHR)、Canadian Cancer Society Research Institute(カナダがん協会研究所、CCSRI)およびオンタリオ州政府経済開発革新省のOntario Consortium of Regenerating inducing Therapeutics (オンタリオ州再生医療コンソーシアム、 OCRiT)※3からの資金支援を受けて行われています。ミック・バティア博士が率いるコンソーシアムOCRiTには、州政府経済開発革新省が、ライフサイエンス分野など革新的な共同研究を支援するファンド「Global Leadership Round in Genomics & Life Sciences grant (GL2)」を通じて、1,150万カナダドル(約:8億8,500万円)の資金支援をしています。
※1 マックマスター大学について
カナダ・オンタリオ州ハミルトンに位置するマックマスター大学は、1887年に創立された医学、工学、ビジネス、社会科学、人文科学の分野に特に強みを持つ総合大学です。学部における生徒数は、21,173名(2009年-2010年)、また大学院における生徒数は3,025名(2009年-2010年)です。革新的な教育と独創的な研究によって、同大学はカナダにおけるトップの大学の1つに数えられています。詳細は下記のURLをご覧ください。
http://www.mcmaster.ca/ (英語)
※2 「CELL」に掲載された論文について
今回の研究成果に関する論文「Identification of Drugs Including a Dopamine Receptor Antagonist that Selectively Target Cancer Stem Cells」のアブストラクトを、以下でご覧頂けます。
http://www.cell.com/abstract/S0092-8674%2812%2900571-5#Summary (英語)
※3 Ontario Consortium of Regenerating inducing Therapeutics(OCRiT)について
同コンソーシアムには、ウォータールー大学、トロント大学、オタワ大学のほか、University Health Network(大学保健ネットワーク)、Ottawa Health Research Institute(オタワ保健研究所)、オンタリオがん研究所(Ontario Institute for Cancer Research)やトロント小児病院(Hospital for Sick Children)などが参加しています。OCRiTウェブサイト: http://fhs.mcmaster.ca/ocrit/index.html (英語)
■ミック・バティア博士へのご取材のご案内
研究の陣頭指揮をとっている博士への取材が可能です。取材方法はメールでのご質問となりますので、その旨ご了承ください。ご取材に関するお問合せは、カナダ・オンタリオ州政府 経済開発革新省 日本広報窓口 株式会社トークス (Tel: 03-3261-7715、E-mail: ontario@pr-tocs.co.jp) までご連絡をお願い致します。
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為替レートは1カナダドル=77円で計算。
■オンタリオ州について
オンタリオ州はカナダ経済の中心地となっており、カナダ全体のGDPの38%、人口の39%、カナダの輸出品の39%がオンタリオ州に集中しています。あらゆる規模の事業者に対する財政面や事業面でのサポート体制、イノベーションや研究開発を促進させる資金支援プログラム、G7の中で最も高い教育水準を誇る労働力などをベースにして、オンタリオ州は、カナダ最大の経済圏、かつ、北米でトップ10の経済圏となっています。
詳細は、「インベスト・イン・オンタリオ」日本語サイトhttp://www.investinontario.com/Japan 、「Ontario Exports」http://www.ontarioexports.com をご覧ください。
オンタリオ州政府サイト: http://www.gov.on.ca/
オンタリオ州政府経済開発革新省(Ministry of Economic Development and Innovation)サイト:
http://www.InvestinOntario.com
■オンタリオ州政府在日事務所について
オンタリオ州政府在日事務所(Ontario International Marketing Centre、東京都港区カナダ大使館内)は、日本とオンタリオ州の貿易・投資促進を図る目的で2006年6月、オンタリオ州政府経済開発革新省(Ministry of Economic Development and Innovation)によって、開設されました。同在日事務所は、日本企業の投資誘致活動、オンタリオ企業・輸出業者への支援、日本の行政・媒体関係者の協調関係を深めるなど、様々な活動を通じてオンタリオ州の産業、ビジネスを紹介し、日加間のビジネス交流・貿易の促進に取り組んでいます。
URL: http://www.sse.gov.on.ca/medt/investinontario/jp/Pages/ontario_and_japan.aspx
プレスリリースに関するお問合せ
カナダ・オンタリオ州政府経済開発革新省
日本広報窓口
株式会社トークス 森田、中村、工藤
Tel: 03-3261-7715 FAX: 03-3261-7174 E-mail: ontario@pr-tocs.co.jp
東京都千代田区九段南4-8-8 日本YWCA会館5F
カナダ・オンタリオ州のマックマスター大学(McMaster University、同州ハミルトン)※1の研究チームは、このたび、抗精神病薬のチオリダジンが、正常な幹細胞には全く影響を与えずに、ヒトのがん幹細胞を破壊することを発見しました。チオリダジンは、従来の化学療法や放射線療法と異なり、毒性のある副作用を引き起こすことはありません。がん幹細胞は抗がん剤治療などへの抵抗性があり、がんの再発・転移に関わっているとされています。今回の発見は、がん幹細胞にターゲットを絞った治療法の開発を前進させるもので、今後、さまざまながんの治療に用いられる抗がん剤の開発戦略と開発から販売までの過程を一新する可能性があります。研究チームは、同様の治療効果をもつ可能性のある薬剤がほかにも十数点あることを確認しました。研究成果は米科学誌「CELL」に掲載されました。※2
「今回の発見が並外れているのは、ヒトの服用できる薬が、がん幹細胞を非がん性の細胞に変換することで、実際にがん幹細胞を破壊する点にあります」と、研究の主任研究者を務めるマックマスター大学のマイケル・G・デグルート医学部(Michael G. DeGroote School of Medicine)幹細胞・がん研究所(Stem Cell and Cancer Research Institute: SCC-RI)のサイエンティフィック・ディレクター、ミック・バティア(Mick Bhatia)博士は述べています。
15年ほど前から、多くのがんにおいて、幹細胞が がん細胞を生み出す元の細胞になっていると考えられるようになり、1997年にはカナダの研究者が初めて、ある特定の種類の白血病にがん幹細胞があることを確認しました。以来、がん幹細胞は血液がん、乳がん、脳腫瘍、肺がん、消化管がん、前立腺がんや卵巣がんで確認されています。
今回、十数種以上の化合物を評価するために、マックマスター大学の研究者は、完全自動化されたロボットシステムを開発して利用し、チオリダジンなどの効果的な薬剤をいくつか特定することができました。「今では何千もの化合物を評価して、正常な幹細胞にほとんど影響を与えず、がんの元になる細胞のみを破壊する薬剤の候補を見極めることができます」とバティア博士は述べます。
研究の次の段階は、化学療法後に再発した急性骨髄性白血病の患者を対象に、チオリダジンの臨床試験を行うことです。バティア氏は、この薬剤でがん細胞を消失させることができるのか、また、がんの元であるがん幹細胞を狙い撃ちすることで再発を防げるのかを検証したいと考えています。マックマスター大学の研究チームはすでに臨床試験の実施計画を立てています。
バティア氏の研究チームは、チオリダジンが白血病と乳がん患者のがん細胞の表面にあるドーパミン受容体を介して作用することを突き止めました。これは、チオリダジンをバイオマーカーとして、乳がんと白血病の早期発見と治療に役立てられる可能性があることを意味します。研究チームの次のステップは、他の種類のがんでチオリダジンの作用を調査することです。また、チオリダジンと一緒に特定された複数の薬剤についても研究を進める予定です。将来、産学連携で、マックマスター大学の幹細胞スクリーニングロボットシステムを活用して、何千もの化合物を分析するようになります。
「この研究に関わる全ての参加者の目標は同じです。がんの取り組みと治療のあり方を変えることのできる優れた薬剤を発見することです」とバティア博士は述べています。
同研究は、Canadian Institute of Health Research(カナダ保健研究所、CIHR)、Canadian Cancer Society Research Institute(カナダがん協会研究所、CCSRI)およびオンタリオ州政府経済開発革新省のOntario Consortium of Regenerating inducing Therapeutics (オンタリオ州再生医療コンソーシアム、 OCRiT)※3からの資金支援を受けて行われています。ミック・バティア博士が率いるコンソーシアムOCRiTには、州政府経済開発革新省が、ライフサイエンス分野など革新的な共同研究を支援するファンド「Global Leadership Round in Genomics & Life Sciences grant (GL2)」を通じて、1,150万カナダドル(約:8億8,500万円)の資金支援をしています。
※1 マックマスター大学について
カナダ・オンタリオ州ハミルトンに位置するマックマスター大学は、1887年に創立された医学、工学、ビジネス、社会科学、人文科学の分野に特に強みを持つ総合大学です。学部における生徒数は、21,173名(2009年-2010年)、また大学院における生徒数は3,025名(2009年-2010年)です。革新的な教育と独創的な研究によって、同大学はカナダにおけるトップの大学の1つに数えられています。詳細は下記のURLをご覧ください。
http://www.mcmaster.ca/ (英語)
※2 「CELL」に掲載された論文について
今回の研究成果に関する論文「Identification of Drugs Including a Dopamine Receptor Antagonist that Selectively Target Cancer Stem Cells」のアブストラクトを、以下でご覧頂けます。
http://www.cell.com/abstract/S0092-8674%2812%2900571-5#Summary (英語)
※3 Ontario Consortium of Regenerating inducing Therapeutics(OCRiT)について
同コンソーシアムには、ウォータールー大学、トロント大学、オタワ大学のほか、University Health Network(大学保健ネットワーク)、Ottawa Health Research Institute(オタワ保健研究所)、オンタリオがん研究所(Ontario Institute for Cancer Research)やトロント小児病院(Hospital for Sick Children)などが参加しています。OCRiTウェブサイト: http://fhs.mcmaster.ca/ocrit/index.html (英語)
■ミック・バティア博士へのご取材のご案内
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為替レートは1カナダドル=77円で計算。
■オンタリオ州について
オンタリオ州はカナダ経済の中心地となっており、カナダ全体のGDPの38%、人口の39%、カナダの輸出品の39%がオンタリオ州に集中しています。あらゆる規模の事業者に対する財政面や事業面でのサポート体制、イノベーションや研究開発を促進させる資金支援プログラム、G7の中で最も高い教育水準を誇る労働力などをベースにして、オンタリオ州は、カナダ最大の経済圏、かつ、北米でトップ10の経済圏となっています。
詳細は、「インベスト・イン・オンタリオ」日本語サイトhttp://www.investinontario.com/Japan 、「Ontario Exports」http://www.ontarioexports.com をご覧ください。
オンタリオ州政府サイト: http://www.gov.on.ca/
オンタリオ州政府経済開発革新省(Ministry of Economic Development and Innovation)サイト:
http://www.InvestinOntario.com
■オンタリオ州政府在日事務所について
オンタリオ州政府在日事務所(Ontario International Marketing Centre、東京都港区カナダ大使館内)は、日本とオンタリオ州の貿易・投資促進を図る目的で2006年6月、オンタリオ州政府経済開発革新省(Ministry of Economic Development and Innovation)によって、開設されました。同在日事務所は、日本企業の投資誘致活動、オンタリオ企業・輸出業者への支援、日本の行政・媒体関係者の協調関係を深めるなど、様々な活動を通じてオンタリオ州の産業、ビジネスを紹介し、日加間のビジネス交流・貿易の促進に取り組んでいます。
URL: http://www.sse.gov.on.ca/medt/investinontario/jp/Pages/ontario_and_japan.aspx
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カナダ・オンタリオ州政府経済開発革新省
日本広報窓口
株式会社トークス 森田、中村、工藤
Tel: 03-3261-7715 FAX: 03-3261-7174 E-mail: ontario@pr-tocs.co.jp
東京都千代田区九段南4-8-8 日本YWCA会館5F