<書評>KPMGジャパン編『ビッグデータ分析を経営に活かす』
[16/10/06]
提供元:@Press
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KPMGジャパン(本部:東京都新宿区、チェアマン:高橋 勉)は、2016年3月20日に刊行したKPMGジャパン編『ビッグデータ分析を経営に活かす』(中央経済社)の重版に際し、当該書籍ならびに筑波大学准教授 岡田 幸彦氏による書評をご紹介します。
■筑波大学准教授 岡田 幸彦氏の書評は、以下のとおりです。
日本では昨今、人工知能、IoT(モノのインターネット)、フィンテックなど、これからの時代を変革する新技術に注目が集まっている。これらの新技術に共通する経営資源が、ビッグデータである。本書は、ビッグデータをいかに利活用し、経営上の競争優位につなげていくかを示す、挑戦的かつ実践的な著作である。これからの時代のデータ経営に興味がある企業人・学生にとって、本書は、非常に有益な「大人の教養」を教えてくれる。
本書が示す特に有益な「大人の教養」は、(1)データ経営の観点と事例紹介、(2)データ経営の留意点の誠実な提示、という2点にある。
データ経営の観点と事例紹介について、本書では、GCR(Growth、Cost、Risk)という企業経営上重要な3つの観点を取り上げている。企業がビッグデータを重要な経営資源として認識し、その利活用を目指すとき、(a)「信頼関係の構築・維持」を通じた事業機会の創出、(b)「資源の最適配置による効率化」を通じたコスト削減、(c)「科学的な意思決定」を通じたリスク管理の高度化、の3つのいずれかの目的を選択すべきであると本書は論ずる。実際に、本書が取り上げるデータ経営の事例を読むと、まずは特定された1つの目的のために、小規模で試験的にデータ経営への移行を目指すことの重要性を痛感する。
また、データ経営の留意点について、本書は「勝算のないかもしれない初めての博打に誰が最初から大金を掛けるのか。勝算があるかどうかは、まずは小金をかけて様子を見て、いけると判断した後に大金を張るのである。」(150頁)という立場をとる。企業経営では、「よくわからないことは、やらない」という姿勢も重要であるが、一方で「よくわからないから、試しにちょっとだけやってみる」という遊び心も必要ではなかろうか。
ただし、データ経営への移行には、組織文化の制約、組織構造・体制の制約、組織内の人材の制約といったさまざまな課題を克服せねばならない。また、データ経営を追求すると個人情報保護に関する問題や、想定外の社会からの反発についても、常に頭を悩ますことになるだろう。本書ではこれらについても丁寧かつ誠実に取り上げている。
今から約30年後の2045年には、技術的特異点(Technological Singularity)と呼ばれる、人工知能が人の手を介さず自律的に学習・成長する時代が来るという予測がある。この予測に関して、米国では、シリコンバレーにSingularity Universityという教育機関が創設されるなど、すでに人的・技術的な対応が進められている。日本の企業人も、技術的特異点が生じる可能性を考慮しながら、グローバルなデータ経営への移行を検討すべきではなかろうか。また、若手の企業人や学生は、技術的特異点に向かうかもしれないこれから30年において、企業人として活躍する充分な準備をしておくことが必要ではなかろうか。そのための入門書として、本書をお薦めしたい。
【本書の特徴】
<Growth、Cost、Riskの3つの観点で活用事例を紹介>
・IoT、AIとの関係も踏まえわかりやすくポイントを整理
・検討すべき組織体制や、プライバシーなどの留意点も豊富に解説
・将来を見据えた経営のイノベーションを起こすトリガーに
【目次】
第1章 ビッグデータや最新ITトレンドを経営に活かす観点
1.ビッグデータとは何か
2.相互に関連する最新ITトレンド
3.経営に活かす観点
第2章 Growthに活かす
1.マーケティング&セールスにおけるビッグデータの活用
2.自社ノウハウの外販による新たな企業成長
3.画像データを活かす
4.IoTをGrowthに活かす
第3章 Costに活かす
1.内部監査におけるビッグデータの活用
2.部門の発注パターン分析からCost改善
3.人事マネジメントに関するビッグデータの活用
4.滞納解消のための督促業務コスト削減
第4章 Riskに活かす
1.不正・不祥事の調査、検知にビッグデータを活かす
2.海外子会社のデータ分析からRiskを検出
3.安全を保障するための審査によるリスク低減
4.リスク管理モデルにビッグデータを活かす
第5章 活用するにあたっての留意点
1.目的の明確化における留意事項
2.データ活用におけるリスク
3.文化、組織、体制、人材
4.インターフェースと結果の受け入れについて
5.データの資産価値
6.将来における社会貢献
【評者紹介】
筑波大学准教授 岡田 幸彦
【執筆者紹介】
執筆責任者:
土居 貢
有限責任 あずさ監査法人 常務理事
KPMGコンサルティング株式会社 代表取締役副社長
執筆者:
松本 剛 KPMGコンサルティング株式会社 パートナー 常務取締役
堀田 知行 株式会社KPMG FAS ディレクター
土方 宏治 KPMGコンサルティング株式会社 ディレクター
山根 慶太 KPMGコンサルティング株式会社 パートナー
林 泰弘 KPMGコンサルティング株式会社 ディレクター
寺崎 文勝 KPMGコンサルティング株式会社 パートナー
小野 幸恵 KPMGコンサルティング株式会社 マネジャー
山浦 広大 有限責任 あずさ監査法人 IT監査部 マネジャー
【商品情報】
『ビッグデータ分析を経営に活かす』中央経済社
刊行日 :2016年3月16日
ページ数:200ページ
定価 :2,400円(税別)
ISBN :978-4-502-18341-6
■KPMGジャパンについて
KPMGジャパンは、KPMGインターナショナルの日本におけるメンバーファームの総称であり、監査・保証、税務、アドバイザリーの3つの分野にわたる7のプロフェッショナルファームに約7,300名の人員を擁しています。
クライアントが抱える経営課題に対して、各分野のプロフェッショナルが専門的知識やスキルを活かして連携し、またKPMGのグローバルネットワークも活用しながら、価値あるサービスを提供しています。日本におけるメンバーファームは以下のとおりです。
有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人、KPMGコンサルティング株式会社、株式会社KPMG FAS、KPMGあずさサスティナビリティ株式会社、KPMGヘルスケアジャパン株式会社、KPMG社会保険労務士法人
■KPMGコンサルティングについて
KPMGコンサルティングは、KPMGインターナショナルのメンバーファームとして、ビジネストランスフォーメーション(事業変革)、テクノロジー、リスク&コンプライアンスの3分野でサービスを提供するコンサルティングファームです。戦略、BPR、人事・組織、PMO、アウトソーシング、ガバナンス・リスク・コンプライアンス、ITなどの専門知識と豊富な経験を持つコンサルタントが在籍し、金融、保険、製造、自動車、製薬・ヘルスケア、エネルギー、情報通信・メディア、サービス、パブリックセクターなどのインダストリーに対し、幅広いコンサルティングサービスを提供しています。
■筑波大学准教授 岡田 幸彦氏の書評は、以下のとおりです。
日本では昨今、人工知能、IoT(モノのインターネット)、フィンテックなど、これからの時代を変革する新技術に注目が集まっている。これらの新技術に共通する経営資源が、ビッグデータである。本書は、ビッグデータをいかに利活用し、経営上の競争優位につなげていくかを示す、挑戦的かつ実践的な著作である。これからの時代のデータ経営に興味がある企業人・学生にとって、本書は、非常に有益な「大人の教養」を教えてくれる。
本書が示す特に有益な「大人の教養」は、(1)データ経営の観点と事例紹介、(2)データ経営の留意点の誠実な提示、という2点にある。
データ経営の観点と事例紹介について、本書では、GCR(Growth、Cost、Risk)という企業経営上重要な3つの観点を取り上げている。企業がビッグデータを重要な経営資源として認識し、その利活用を目指すとき、(a)「信頼関係の構築・維持」を通じた事業機会の創出、(b)「資源の最適配置による効率化」を通じたコスト削減、(c)「科学的な意思決定」を通じたリスク管理の高度化、の3つのいずれかの目的を選択すべきであると本書は論ずる。実際に、本書が取り上げるデータ経営の事例を読むと、まずは特定された1つの目的のために、小規模で試験的にデータ経営への移行を目指すことの重要性を痛感する。
また、データ経営の留意点について、本書は「勝算のないかもしれない初めての博打に誰が最初から大金を掛けるのか。勝算があるかどうかは、まずは小金をかけて様子を見て、いけると判断した後に大金を張るのである。」(150頁)という立場をとる。企業経営では、「よくわからないことは、やらない」という姿勢も重要であるが、一方で「よくわからないから、試しにちょっとだけやってみる」という遊び心も必要ではなかろうか。
ただし、データ経営への移行には、組織文化の制約、組織構造・体制の制約、組織内の人材の制約といったさまざまな課題を克服せねばならない。また、データ経営を追求すると個人情報保護に関する問題や、想定外の社会からの反発についても、常に頭を悩ますことになるだろう。本書ではこれらについても丁寧かつ誠実に取り上げている。
今から約30年後の2045年には、技術的特異点(Technological Singularity)と呼ばれる、人工知能が人の手を介さず自律的に学習・成長する時代が来るという予測がある。この予測に関して、米国では、シリコンバレーにSingularity Universityという教育機関が創設されるなど、すでに人的・技術的な対応が進められている。日本の企業人も、技術的特異点が生じる可能性を考慮しながら、グローバルなデータ経営への移行を検討すべきではなかろうか。また、若手の企業人や学生は、技術的特異点に向かうかもしれないこれから30年において、企業人として活躍する充分な準備をしておくことが必要ではなかろうか。そのための入門書として、本書をお薦めしたい。
【本書の特徴】
<Growth、Cost、Riskの3つの観点で活用事例を紹介>
・IoT、AIとの関係も踏まえわかりやすくポイントを整理
・検討すべき組織体制や、プライバシーなどの留意点も豊富に解説
・将来を見据えた経営のイノベーションを起こすトリガーに
【目次】
第1章 ビッグデータや最新ITトレンドを経営に活かす観点
1.ビッグデータとは何か
2.相互に関連する最新ITトレンド
3.経営に活かす観点
第2章 Growthに活かす
1.マーケティング&セールスにおけるビッグデータの活用
2.自社ノウハウの外販による新たな企業成長
3.画像データを活かす
4.IoTをGrowthに活かす
第3章 Costに活かす
1.内部監査におけるビッグデータの活用
2.部門の発注パターン分析からCost改善
3.人事マネジメントに関するビッグデータの活用
4.滞納解消のための督促業務コスト削減
第4章 Riskに活かす
1.不正・不祥事の調査、検知にビッグデータを活かす
2.海外子会社のデータ分析からRiskを検出
3.安全を保障するための審査によるリスク低減
4.リスク管理モデルにビッグデータを活かす
第5章 活用するにあたっての留意点
1.目的の明確化における留意事項
2.データ活用におけるリスク
3.文化、組織、体制、人材
4.インターフェースと結果の受け入れについて
5.データの資産価値
6.将来における社会貢献
【評者紹介】
筑波大学准教授 岡田 幸彦
【執筆者紹介】
執筆責任者:
土居 貢
有限責任 あずさ監査法人 常務理事
KPMGコンサルティング株式会社 代表取締役副社長
執筆者:
松本 剛 KPMGコンサルティング株式会社 パートナー 常務取締役
堀田 知行 株式会社KPMG FAS ディレクター
土方 宏治 KPMGコンサルティング株式会社 ディレクター
山根 慶太 KPMGコンサルティング株式会社 パートナー
林 泰弘 KPMGコンサルティング株式会社 ディレクター
寺崎 文勝 KPMGコンサルティング株式会社 パートナー
小野 幸恵 KPMGコンサルティング株式会社 マネジャー
山浦 広大 有限責任 あずさ監査法人 IT監査部 マネジャー
【商品情報】
『ビッグデータ分析を経営に活かす』中央経済社
刊行日 :2016年3月16日
ページ数:200ページ
定価 :2,400円(税別)
ISBN :978-4-502-18341-6
■KPMGジャパンについて
KPMGジャパンは、KPMGインターナショナルの日本におけるメンバーファームの総称であり、監査・保証、税務、アドバイザリーの3つの分野にわたる7のプロフェッショナルファームに約7,300名の人員を擁しています。
クライアントが抱える経営課題に対して、各分野のプロフェッショナルが専門的知識やスキルを活かして連携し、またKPMGのグローバルネットワークも活用しながら、価値あるサービスを提供しています。日本におけるメンバーファームは以下のとおりです。
有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人、KPMGコンサルティング株式会社、株式会社KPMG FAS、KPMGあずさサスティナビリティ株式会社、KPMGヘルスケアジャパン株式会社、KPMG社会保険労務士法人
■KPMGコンサルティングについて
KPMGコンサルティングは、KPMGインターナショナルのメンバーファームとして、ビジネストランスフォーメーション(事業変革)、テクノロジー、リスク&コンプライアンスの3分野でサービスを提供するコンサルティングファームです。戦略、BPR、人事・組織、PMO、アウトソーシング、ガバナンス・リスク・コンプライアンス、ITなどの専門知識と豊富な経験を持つコンサルタントが在籍し、金融、保険、製造、自動車、製薬・ヘルスケア、エネルギー、情報通信・メディア、サービス、パブリックセクターなどのインダストリーに対し、幅広いコンサルティングサービスを提供しています。